日本の香港化 (一) 投稿者:西尾幹二 投稿日:2003/11/05(Wed)19時50分 |
私はあるところで次のように書いている。 =============== たび重なる北朝鮮の時間稼ぎ作戦に誤算が生じ、米朝双方が引っ込みがつかなくなって軍事衝突に至る可能性ももとより絶無とはいえないが、それよりもはるかに起こり得る可能性が高いのは、米国ならびに中国による北の核兵器の黙認である。 かりに北がいま核兵器保有宣言をしたとしても、国際社会はどんな手も打てまい。軍事制裁など論外である。としたら制裁は核の出来ぬうちが有利なのだが、米国にはその気はない。現在核の存在を不透明にしている北の作戦は、米国にとっても必ずしも不快ではないからなのだ。 =============== これは平成6年(1994年)5月9日付の産経新聞「正論」欄の私の文章である。題して「日本独自の朝鮮半島政策必要」で、これに「北と単独交渉の事態想定を」の副題がついている。 まるで平成15年11月初旬の今のことを語っているかのごとくである。今朝の新聞では6カ国協議の文書に拉致問題は記入しないことに日本外務省は合意している。そしてKEDOの停止も考え直そうという気運である。 平成6年の上記の文章をつづける。 =============== 北はNPT(核拡散防止条約)体制に事実上もう入っていないに等しいにも拘わらず、米国は無理に北を引き留めるようなポーズを示して、「核の不拡散」という建前にだけしがみついている。金日成外交の勝利である。 クリントン政権は中国の協力が得られないと分ってから、すでに保有済みと思われる二、三発の原爆は大目に見て、これ以上の開発は許さない、などという微妙な発言に変わってきている。4月29日北朝鮮はまたしてもIAEA(国際原子力機関)の条件を拒否し、期待された再査察は延期された。それなのに30日、米大統領はホワイトハウスでラジオ演説し、北の核疑惑には「根気強く」対処していく考えだ、などと表明している。そして再び北から5月5日書翰が届き、今動機分析が行われている。 恐らく対決回避に関係各国はほっと胸をなで下ろすだろう。けれども問題の先送りの結果、二、三年後に日韓両国は北の核兵器と共存しなければならなくなる。 韓国では今、左翼進歩史観が知識人の心を捉え、日本の戦後のような雰囲気だそうで、反米感情も根強い。米国がかりに北に先制攻撃をしかけたら、デモがソウルを埋め、米韓離反は決定的になるといわれている。北はそれを見越している。 つまり北の核武装は韓国をフィンランド化する。日本に恐怖を与え、在日米軍基地を無力化する。通常兵器の軍拡では得られない効果である。そうなったら日韓の利害は決して一致しない。韓国は無気力になり、北の言いなりになる。 今でも米国は韓国を相手にしないで北朝鮮と直接交渉しているが、米軍が消極的でありつづければ、日朝の直接対決交渉とならざるを得ないだろう。 日本に対する米国の冷淡さ、再び抬頭してきたロシアの大国化、中国の混乱と傍観——明治日本が日清・日露で苦闘した状況がわが列島に徐々に忍び寄っているといえないだろうか。 ただ単に他人事のように国連に「協力」したり、米韓と「連携」したりすることで日本の防衛は全うされるのだろうか。今われわれに必要なのは、冷戦後の新しい状況に備えたわが国独自の「朝鮮半島政策」ではないだろうか。 ============== ほぼ今の状況と同じである。国際政治を論じる文章には予言の能力が必要である。 東アジアの中の日本の位置について私が過去にどんなことを語っていたか、これからしばし材料だけを順次提供しよう。 |
日本の香港化 (二) 西尾幹二 - 2003/11/07(Fri)10時54分 |
平成7年(1995年)1月6日の私の文章(産経コラム「正論」)の一部を以下に掲げる。この年は国会謝罪決議でもめ、これが不成立となり、抜打ち的に村山談話が出され、閣議了解事項とされた。 |
日本の香港化 (三) 西尾幹二 - 2003/11/09(Sun)
09時31分 |
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日本の香港化 (四) 西尾幹二 - 2003/11/11(Tue) 09:19 |
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日本の香港化 (五) 西尾幹二 - 2003/11/12(Wed) 15:03 |
平成8年(1996年)12月、「新しい歴史教科書をつくる会」が赤坂プリンスホテルで記者会見しスタートしたときで、同じ12月の号、徳間書店の月刊誌『サンサーラ』(今は廃刊)に私は「ワイマール時代のドイツと日本の政治状況」を書いた。この一文は『歴史を裁く愚さ』(php研究所)に収録されているので、用いられた「香港化」という表現に気がついて下さった愛読者のかたは少くない。 |
日本の香港化 (六) 西尾幹二 - 2003/11/13(Thu) 21:23 |
平成8年の拙論「ワイマール時代のドイツと日本の政治状況」のつづきは次の通りである。 |
日本の香港化 (七) 西尾幹二 - 2003/11/14(Fri) 15:55 |
冷戦の終焉とドイツ統一このかた、私は経済のことはよく分からないが、漠然次のような譬えばなしを頭の中に思い浮かべてきた。 |
日本の香港化 (八) 西尾幹二 - 2003/11/15 15:46 |
ここで日録感想板に10月7日にとつぜん三回書いて、そのあとハタリと書かない高田雄二という方の書きこみを紹介してみたい。高田さんはどういう方か知らない。しかし、私には強烈な印象を与えた。私の感想はいっさい付記しないで、一回づつ掲載する。 |
日本の香港化 (十一) 西尾幹二 - 2003/11/24(Mon) 11:34 |
日本の香港化 (十一) : 西尾幹二 /2003年11月24日 11時34分 |
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日本の香港化 (十二) |
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