Subject:平成15年6月4日  /:西尾幹二(B) /H15/06/05 00:24

 今日も徳間書店の力石さんと電話で話をした。初校ゲラ刷りが出ていて、彼も読んでいる。北欧紀行から始まり、イラク戦後の東アジア情勢への不安で終わるこの「インターネット日録」の一冊を、最初から最後まで読み通した一番目の読者が、力石さんである。

 彼の口からでたことばはとてもうれしいニュースだ。「面白いですよ。」「読み易い。」「著者との距離がぐんと縮まった、と皆なきっと感じるでしょう。」「私はいつも先生と接しているから、近いも遠いもないはずなんだけど、その私が先生と近くなったって感じたんですよ。」「人柄にふれることができた。」「一寸した片言に、人柄の良さが出ている。」

 最後のことばは私が自分で書くべきではないが、力石さんの言った通りにメモしておいた。「人柄の良さ」なんて私は言われたことないから、「よしてよ君」と言いたい気持ちと、「そう、そんなこと言ってもらってもいいのかな、有難う」という気持ちと、両方ある。「喧嘩ばっかりして来た男なのに、泣かせるね、君。」

 急いで本造りをすると失敗するので、この本にはもっと時間をかけ、大事に売りたいから、6月中の急ごしらえは止めると彼は言う。すでに6月刊行が無理なことは分っている。というわけで、7月刊行予定ときまった。

 ところで、問題はすでにご承知の通り、一冊の書名である。力石さんは硬い題は避けたいという。今までの発想をがらりと変えて、ソフトに行きたい。「時代への怒り」を表題にするなら、阿川弘之氏の『国を思えば腹が立つ』とか何某氏の『腹立ち半分日記』とかは、自分はとてもいい題だと思う。怒っているのでも余裕をもって怒っているかんじがいいのだ。しかしこの本の場合は「怒り」を表題にしない方がいい。そう言って、彼の提案したのは、『私はこう考える』である。はて、さて?

 というわけで、書名はまた振り出しに戻った。


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Subject:平成15年6月5日  /:西尾幹二(B) /H15/06/06 07:33

 力石さんから4日付「日録」は内容が違う、と抗議(?)の電話があった。本の題名を『私はこう考える』と言ったんじゃない、微妙な違いだが、『私ならこう考える』と言ったんです、と。「なら」の二文字が入ることで—5・7調になっている。「先生、聞き間違えちゃぁ困るなァ」と叱られた。

 そう言われてみれば「なら」の二文字の有無は小さいが、与える効果の差は大きい。

 今日もずっと一日、「日録」書物化の作業に携わっているが、一年間のいろいろな出来事が思い出されて、感無量である。この本は北欧旅行から始まるが、「日録」の次の一冊は何から始めたらよいのであろうか。

 じつは6月3日から家内を連れて、ルーマニア、ブルガリアの旅に行くことにきまっていた。中国肺炎の流行のために中止になった。年をとったので、一年に一回は観光旅行をしたいと考えている。それもあと何回できるであろう。

 私の友人に夫婦で働いて家を作らず、子もなく、二億の金を貯めて、ものすごい贅沢な海外旅行で地球上を見きわめている人がいる。オーロラを見るためにグリーンランドにまで飛んで行く。一泊二人で20万円の豪華客船で2週間の旅をする。それも今までに4、5回はしている。一年の半分くらいは外国を周遊している。行っていない国はほとんどないくらいだ。

 私はこの話に不思議な感動を覚えた。大学時代の友人で、テレビ会社勤務だったまじめな人だが、無鉄砲に思われようとも、彼なりに計算があるのである。75歳まで生きるとして、金を残しても子のいない夫婦の遺産は国庫に没収されるだけである。それくらいなら蕩尽しようと考えたのである。かくて地球の果てまで見て歩くのが生命ある限りの日課となり、平生の生活となった。

 この間彼から電話があって、一時間も話したが、日本にいるときの生活は二人の年金で十分すぎるほどである。貯蓄した金は高度成長期にふくらんで、彼は会社をさっさとやめて十年になる。退職金も当時は高額だった。財テクにも抜群の才がある。もうやることが他にない。世界の旅はやりだしたら病みつきになる。私は旅行に自己消費する彼の徹底ぶりに舌を巻き、強い印象を持った。私ならきっと飽きるだろうが、飽きない人もいる。無限に生命を燃やせるものが一つでもあればいい。それがむしろ人生の悲しさであるかもしれない。けれどもその種の悲しさから人は逃れられまい。自分は一つでも命を燃やせるものを持っているのだろうか、とふと不安になる人がむしろ多いのではないか。


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Subject:コーヒーブレイク   11/:西尾幹二(B) /H15/06/29 17:03

 「日録」の本の題名その他がきまりました。

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   私は毎日こんな事を考えている
   ——西尾幹二の公開日誌——
     384ページ ¥1800 徳間書店
     発売日 奥付7月31日

     目 次

 I  ノルウェーの森と峽江(フィヨルド)
 II  みかんの花咲く丘
 III  「小泉訪朝」終日テレビ・ウォッチング
 IV  韓国人の対日観は変わるのか
 V  拉致家族五人の帰国とその後
 VI  嗚呼、なぜ君は早く逝ったのか
 VII  日日是憂国
 VIII  大晦日・朝まで生テレビに意味ありや
 IX  アメリカ政府に問い質したきこと
 X  靖国会館シンポジウムでの私の発言
 XI クラウトハマーとブキャナンとイラク戦争
 XII 世界は安定を捨て次の局面に入った

    あとがき

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 各章の題名に合わせ、内容を寄せ集めているのではなく、日録の日付の通りに並べてあり、章の題名は大雑把に区分けしたものをざっと代表させているだけです。内容は日録のとおりですが、かなり加筆されています。ノルウェーの写真が4枚入ります。本になるとサイトとは違った印象を与えると思います。

 インターネットの書物化であることは表紙には謳いませんが、「あとがき」には明記します。「インターネット日録」の成立のいきさつとアクセス数も記します。

 分量が予想よりはるかに多くなり、かなりどっしりした厚味の本なので、定価もあがりました。「日録」の読者のみなさまにいろいろ考えていただいた題名を採用できませんで申し訳ありません。ご協力に心から感謝いたします。

 発売日奥付よりかなり早く店頭にでます。