小泉再訪朝問題
 

 

小泉再訪朝問題
           西尾 幹二  H16/05/28(Fri)12:22 No.99


 二度目の小泉訪朝について、私も産経新聞コラム「正論」に書きました。

 現在日録は、九段下会議の考え方について連載中ですが、この件に関して私の発言を待っている人がいると思いますので、間に挟んで掲載します。

 今回、大きな枠で、東アジア情勢の全体の中で位置づけて書いてみました。

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  今後100年の半島政策不在を懸念す

  ——小泉再訪朝の国家戦略なき外交——


 《《《2度の訪朝に共通する点》》》

 二回目の小泉首相訪朝の反響は一回目とよく似ている。歓迎し評価したのが共産党、社民党、朝鮮総連、そして中国、韓国、ロシア、このところ露骨に中国寄りのフランス。反発し否定したのが拉致被害者の家族会。自民党が二つに割れたのも前回と同様で、政府筋は建前上反対できない。自民党の党関係者は成果に懐疑的であった。

 会談が完全に北朝鮮ペースで運ばれ、日本の首相が金正日に手玉に取られた印象は一回目と同じで、「外交は急ぎ過ぎる方が負け」(中曽根元首相)「外交を選挙の手段にすることがあってはならない」(仙谷由人民主党政調会長)はそれぞれ正論である。

 私もせっかく首相が御輿を上げたからには、もっと大成果が得られたのに、詰めが甘いと思った。が、それよりも二回の訪朝で共通して分かったことは、朝鮮半島をこれからどうしようとしていくのか、日本の国家意思がはっきり見えないことだ。首相の言動に今後百年の朝鮮半島政策がにじみ出ていないことである。私にはそれが一番残念だし、一番恐ろしい。


 
 《《《日本の最終選択肢は3つ》》》

 ここ数ヶ月で起こったことは、韓国の総選挙の結果、北へさらに一段と傾斜し、金正日に膝を屈さんばかりになっていること、金正日が中国を緊急訪問したこと、中国人が尖閣諸島に不法上陸し、その後日本の専管海域に調査船が平然と居座ったこと、イラク情勢が混沌の度を深め大統領選もあってアメリカが以前になく弱腰に見えること、等である。

 小泉首相は金正日政権を承認したまま国交正常化をするつもりか。金正日を排除して別の独裁体制を相手にする気か。中国の意向に逆らってでも日米協力で半島全域の民主主義化を目指すのか。この三つのどれを最終の国家計略と考えているか。

 次の問いは、小泉首相は今の朝鮮半島が半島全域として自己管理能力を失った日清戦争前の情勢に似ていることに気が付いているか。北は金日成というソ連の、南は李承晩という米国のひも付き国家で始まった戦後の半島が、米ソの冷戦が終わって、ひもは切れたが、ドイツのように自己管理のできる統一国家にすんなりなり得るか誰しも疑問で、1910年日韓併合が必然的であった時代に再び近づいていることに気付いているか。日本は二度と管理者に名乗りを上げるのは真っ平である以上、アメリカか中国かのいずれかが半島の現実の力の行使者になるだろう。首相は北朝鮮に星条旗が翻るのと、韓国の南端まで北京政府の事実上の支配下に置かれるのと、日本の国益と安全保障にとってどちらが有利で、どちらが致命的であると考えているか。国交正常化をしたがる小泉首相は、どの未来図を頭に置いているのか。あるいは何も考えていないのか。

 拉致問題を解決しない限り国交正常化はしない、と小泉政府は言っているが、右の朝鮮半島政策が国家戦略としてはっきり決定していなければ、何をもって拉致の「解決」とするかで両国の調査はたちどころに暗礁に乗り上げるだろう。


 《《《金政権で安否解明は困難》》》

 10人の安否だけでなく400人の安否も、北は全部すでに把握しているのである。地村・蓮池両家は北が日本に帰しても恥ずかしくない、良い扱いをしてきた、高い立場の人々である。とても公表できない悲惨なケースもあるに違いない。大韓航空機爆破事件や金王朝の一族絡みのケースは、無事に生存していても、金正日政権が倒れない限り、うその情報でお茶を濁し続けるだろう。
 
 小泉首相はだから、何を、どうするつもりなのか。金正日はルーマニアのチャウシェスクのように銃殺刑に処せられてしかるべき人物である。拉致というテロを裏で支援してきた朝鮮総連はとうに破防法の対象となっていなくては、日本は法治国家とはとても言えない。一番問題なのは、すべてが曖昧で中途半端のままの国交正常化である。それを期待しているのは北朝鮮、韓国、中国だけではない。日本の側で幕引きをして暗部を隠したい人々が、左翼にも自民党にも多数いるのだ。

 97年金正日総書記推載の祝賀会に顔を出していた者のリストを公表せよ。驚くべき高官から各テレビ局の幹部が名を並べているはずだ。日朝議員連盟の誰が、いつ訪朝し、総連と組んで何をしたか警察は今こそメスを入れ公開せよ。これから拉致をごまかそうとしていくるのは、むしろ日本人である。小泉氏はその協力者なのか。金正日の高笑いが聞こえてくるようである。
 
 
            5月28日産経新聞「正論」欄より
 


: 小泉再訪朝問題
 

 


今皆で考え、監視しよう (一)
             氏名:西尾 幹二  日:05/29(Sat)09:36 No.100

   
 先の私のコラム正論は25日の夜中に書いて、26日ファックス送稿,27日ゲラ返却,28日に掲載という順で、これでも最短距離なのである。

 28日の自民党の総連へのいち早いすりより、総連大会における小泉首相ノメッセージ代読の話は27日に聞いたが、私の原稿はすでに校了されていた。それでもなぜか悪い予感がして、最終段のあの文章になった。

 つくる会山形支援板で、中年zさん(No.11913)が両方を読んで、西尾幹二先生の「正論」を、悔しさと憤りで読みました。と書いてくださったことに御礼申し上げる。

 問題をいま深く考え、いまこそ危ういときと意識して立ち上がるために、考える材料に、私の友人の私あてのメールを以下に掲載する。

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西尾 兄

以下は @@が一昨日以降 友人に送ったメールです。
駄文で申し訳なし。

 一昨年9月の小泉訪朝のとき (いわゆる 9.17)、金正日が 「拉致」を小泉に対して正式に認めてしまったことについて、北朝鮮の上層部内 では これは大失敗 であり、多分拉致を認めることを進言したものは強く責任追及がなされているだろうと 言ってきました(メールが残っていればあるはずです)が、 案の定、いま TV朝日 で そのことを言っていました。

 北朝鮮の事は大体 想像がつきます。北朝鮮貿易の経験も役立ちます。
 北朝鮮は 「拉致を認めてしまったのは、北朝鮮史上類のない巨大チョンボ」 と認識しています。
 拉致を認めたことは、北朝鮮にとってはたいへんなマイナスでした。内部では大問題になりました。
 彼らにとっては現在のトラブルの多くは 拉致を認めたことに起因しています。

 北朝鮮のやったテロ行為は周知の事実でも、北朝鮮政府としては一切認めていません

 大韓航空爆破事件 (北朝鮮の韓国内世論操作でこの事件は 韓国のKCIAの犯行というふうに韓国民は思い込むようになりつつあります)も バンコクの事件も・・・・・一切認めていません。そして巧妙な世論操作で韓国内には韓国のKCIAが仕組んだ自国民への反逆・陰謀わなというように民衆に思い込ませるように工作し、80%方成功している。

 国際的テロ行為で犯行を認めたのは日本の拉致事件だけです。

 金正日に対して「拉致を認めて、5人を一時帰国させれば、拉致問題に幕引きが可能であり、巨額の援助が得られる、そのことを田中 均も確認している」 と進言した責任者はすでに処刑されている可能性は50%ぐらいはあるあると推測しています。 
 少なくとも その官僚グループは元の地位を追われて、とんでもない僻地に左遷されているでしょう。

 もうひとつの未来の推測は、残り10人の消息については、
 北はろくなことを言ってこないか、あるいは 非常識な時間稼ぎをした上で、実のない回答を出してお茶を濁し、その段階で非難されたら、せいぜい1〜2名の生存者(10人ではなく)がいたと回答する、その上でその被害者はどうしても日本には帰りたくないと言っている、と言う。本当かどうかは日本政府に直接本人に確認してもらって結構、・・・・。 「曽我さんも北朝鮮には帰りたくない」と言っているように、お互いに当人の自由意志を尊重しあいましょうよ・・・・・」 と笑顔で北朝鮮代表は言うでしょう。

 10人および特定失踪者たちはすでに各地に分散、隔離され、証拠をつかまれないようにしています。
 特別の裏切りなどがない限り、殺したりはしない。

 もちろん食糧事情その他の困窮度や もぎ取れる援助によって、自他の展開によっていろいろなバリエーションがあるでしょう。
 日本側は 手の打ちようがなくなる。小泉さんには 手を打つ積極的な意志がそもそもない。
 日本国内の関心は 毎日放映される 蓮池/地村両家の帰国子女の生活状態・・・・・・北朝鮮は開放してくれてありがたい、日本人への慣れの過程への興味・・・・などから 拉致事件は風化しかねない。 小泉内閣は 絶対に 「急がない」。 「急がせることは国交正常化にマイナス」 という口実を使う。

  何れにせよ 年末までにはかなりのことが分かるはずです。
  小泉さんの心境も手に取るように分かります。

 北朝鮮の事は、自分が金正日 自身になったつもりで、想像の翼を拡げれば、簡単に想像がつきます。

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《これに対する友人の返事》

北朝鮮の金正日の周辺で「拉致を認めた大失敗」の責任者の処罰が行われるというようなメールは読ませて頂きました。

考えてみれば、あの金正日が判断を誤ったのは、どう考えても、それまでの日本があまりにも甘くて、金正日の思うことが、みんな苦も無く出来ていったことで、すっかり油断したのですね。

北朝鮮の起こしたテロがこれまで今回以外は 何一つ北朝鮮自身は認めてこなかった、ということは知りませんでした。具体的にはよく知りませんが、世界中が北朝鮮に対して、甘い態度で臨んだのでしょうかそうだとしたら、それは何故なのでしょう。

これから日本の拉致問題が、@@さんの言われるような展開になるかも知れない気がしますが、そうなったら、今度は日本の右翼といわれる団体が強硬策を主張し、極端な軍事力強化を言うことになりますね。

それからどうなるのか、注目せずにおれません。


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《これに対する@@の考え》

北朝鮮の事は語るのもしんどくなりました。

日本は右翼の強攻策などありません。
右翼ではなく世論です。
いまの日本は右翼によって動かされることはない。
いま日本の右翼は無力です。政治的な力も気骨もまったくありません。

日本には強攻策はありえません。
ありうるのはせいぜいミサイルの防衛網を作ることと経済制裁を実行することで、
積極的な攻撃的なことはできません。
金正日体制が崩壊するまで距離を置いて時間を待つ以外ありえません。

 もちろん 北が困りはてるまで拉致被害者は帰ってきません。
返して欲しければ膨大な援助を提供することが必要でしょうが、
小泉も国民世論を見ながら、小出しの援助しかできない。

北側の譲歩は、すでに認めているジンキンス一家が最後で、それ以後の
進展は当分ない・・・いや今回が最後なのかもしれません。

北の強硬派は 前回の大チョンボ(拉致を一部でも認めたこと)の教訓から、まず
10人の消息の正確な情報や、返還の意志はまず絶対に示さないでしょう。
調べたけど、見つからなかったで オシマイです。

貴君が 金正日の立場だったらどうしますか?

もうひとつの局面打開は、 日本の援助がなければ 北朝鮮は 二進も三進も行かなくなる
追い詰められたという状態が現出することです。この事態は近づいているともいえます。

北はミサイル輸出、麻薬輸出が封じられ、外貨も入らない。
リビアやパキスタンが北の悪事をばらしてしまった。
中国と韓国からの援助以外にまともな援助はなく、金正日も万景峰号による
夕張メロンがなくなってしまうとたいへん困るのです。

ピョンヤンは停電が増えて、夜も前より暗くなっているようです。
配給も止まったという話しも聞く。

この前 防衛庁の北朝鮮についての専門家に聞いたのですが、

「そもそも北朝鮮にはアルミ合金などのミサイル資材がなくて、日本の中古のゴルフクラブのヘッドや自動車のホイール/リム、いずれもアルミ合金などでできている・・・・が資材となっているほどで、そんな国にミサイルが大量に作れるのか?・・・・・・・・これに対して回答は「分からない」でした。これはたいへん大事なことです。

妙に国交正常化をしたいなどというから 事態がややこしくなるのです。

北朝鮮の核ミサイル問題はアメリカにやってもらうほかありません。
日本は相手にもされてない。
北朝鮮がいちばん恐れるのはアメリカからの攻撃と日本の経済制裁です。

しかし、アメリカはいま手一杯で、大統領選挙もあって、手が出せない。
小泉も手なづけた。日本の世論も分断した。ウハウハです。

朝鮮総連に対するイヤガラセにも釘をさした。
石原都知事もけん制した。
もう言った事ですが、こういう事態もあるのです。

 <日本は今後、在日朝鮮人に差別を行わず、友好的に対応する>
ということは「総連の会館に課税するのは友好的でない。」「経済制裁は友好的でない」「朝鮮学校に対する補助金を増額しないのは友好的でない」・・・・どうゆう風にも使えます。そのたびに「日本は条約を守らない」と来る。そして日本は常に一歩ずつ引く。
北朝鮮は永久に日本をしゃぶりつくすととれます。
これを北朝鮮が要求してこないとおもいますか? 今のところ参政権は要求していないようだが,それを要求されたら完全に特権階級になりますよ。
拉致をし,麻薬,脱税なんでもありの北朝鮮人に,われわれの税金が使われるということですよ,まさしく朝貢です。いいのですか?


さらに以下のような 政治的な動きもあります。

朝鮮総連がものすごく動いている。
社民党、共産党、朝日新聞もこの線上で動いているといわれています。

 「命がけの外交努力をしてくれた小泉首相に罵詈雑言を浴びせた拉致被害者家族会。多くの  国民が彼等の不遜な態度に憤りをおぼえました。
  彼等への批判をネットだけで済ませてよいわけがありません。
  そこで、有志を募って「反拉致被害者家族会集会」を近々催すことを決意致しました。
  ゆくゆくは社会運動にも繋げていきたいと考えており、運動名も仮名ではありますが、ブ  ルーリボン運動に対抗し、「レッドリボン運動」と名付けたいと思っております。開催日  は決定次第、このスレと関連サイトにてお知らせします。
  集会では参加者によるディスカッションを行うことも予定しております。
  先ずは集会に先駆けて、このスレでリハーサルを行いましょう。
  奮ってご参加ください。」


驚くべきことが深く静かに進行しているのです。

額賀が「小泉訪朝で参議院選挙で勝利がかなり確実になった]・・・・・・まったく

拉致事件も政治的に利用しているとしか思えません。額賀には10人ことなどまったく眼中にない。

曽我ひとみさんが 北朝鮮や中国を嫌っていることは以外でした。やはり日本がいいのです。
北朝鮮のジェンキンスのところへ行きたいというと思っていましたが。
またここで いろいろな希望を言うと、「わがまま言うな」 という「人工」世論が
造成されるでしょう。(人工世論とは 2ch などに組織的に大量の意見を巧妙に流して、一見世論がそうであるかのように見せる技術・・・・いま朝日新聞は大げさに言えば、社運をかけて 2ch の世論を監視し、かつ操作している という話しも聞くし、まさにその通りだと見ている・・・・・いま日本国内ではたいへんな情報戦、操作、心理戦が行われているのです。インターネットの時代にはこういうことが手に取るようにわかる。自宅にいながら見えてくる。政治的意図を持った人は、利用しない手はないでしょう。)


指定暴力団 キムジョン組と 関係の正常化などありえない というのが基本でしょう。
 


小泉再訪朝問題
 

 


 今皆で考え、監視しよう (二)
                 西尾 幹二  H16/05/31(Mon)09:12 No.101


 今私たちの怒りをどう表現すべきか、考えねばならないが、私自身考えあぐねている。人のいい意見、傾聴すべき提案があれば、とびつきたい思いがする。

 日録感想板のほうに、貴重なお考えが提起された。ここと両方を見ている方には重複になるが、「総合学としての文学」さんの774、と777をご紹介する。私には大変に刺激的で、考えさせられる内容であった。

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題:次の参議院選挙では自民党を敗北させるべき
  氏名:総合学としての文学 日:2004/05/29(Sat) 15:14 No.774

 この度の小泉総理の訪朝関係の様々なニュースを見ての感想ですが、どうやら小泉総理は参議院選挙後の残り任期の最大政治課題を北朝鮮との国交正常化にしたのではないかなと思います。
 北朝鮮との国交正常化の最大の関門は、拉致問題ではなくアメリカ合衆国ブッシュ政権の対北朝鮮政策にほかなりません。したがって、ブッシュ大統領が次の大統領選挙で敗北すれば、その関門が無くなることになりみごと日朝国交正常化が成されることになるでしょう。
 小泉総理にしてもブッシュ大統領が敗北すれば、その権力源泉を失うことになります。野党や市民グループのイラク派兵に対する責任追及も激しくなるでしょう。そうなれば小泉総理は新たな権力源泉としてますます北朝鮮との国交正常化をしなければならなくなる。日朝国交正常化のためには北朝鮮も北朝鮮の友国中国も小泉総理の個人的ファナティックな嗜好性による靖国神社参拝については容認してくれるでしょう。
 小泉政権は世論の動きによってどのようにも変わります。最近我が国はタカ派政治思想の持ち主が増えてきていますが、反面、日本は中国・韓国・北朝鮮と友好関係を築いて北東アジア経済共同体を構築しようといったいわゆる大アジア主義的政治思想の持ち主の人もけっこう増えているのも事実です。
 今までの小泉政権の支持者層のコアはタカ派政治思想の持ち主でしたが、小泉政権は国際政治の動向によってはそれを大アジア主義思想の持ち主にすりかえる可能性があります。
 結局は今後の小泉政権の行く末はすべてはアメリカのブッシュ大統領が次の大統領選挙で再選されるか否かということに収斂されます。 
 小泉政権が私たち西尾幹二ホームページ愛好家達の喜ぶ政策を今後も採り続ける可能性はどこにもありません。とりあえず次の参議院選挙では自民党を敗北させて、小泉総理の自民党内での力を削がせ小泉総理の繰り出す政策を次々とデットロックに陥らせポスト小泉の政局に移すのが私たちにとって今とりうるベターな政治行動になるでしょう。

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小泉再訪朝問題
 
 


今皆で考え、監視しよう (三)
                :西尾 幹二  H16/06/02(Wed)08:56 No.102

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Re.ちょっとだけ
  氏名:総合学としての文学 日:2004/05/29(Sat) 19:20 No.777

 アメリカ合衆国ブッシュ大統領が大統領選挙で敗北すれば、ブッシュ大統領との緊密な関係
だけをベースに外交戦略を繰り広げてきた小泉総理にとっては政権崩壊を起しかねないほどの
打撃を被るでしょう。その際の保険・担保として日朝国交正常化というアジアオプションを小泉総理は使おうとしているのではないかなと私は思っております。
 ブッシュ大統領が再選されれば日朝国交正常化は絶対にあり得ません。ブッシュ政権は対イラク戦争、その後のオペレーションもかたくなまでに原理原則を守っています。それから予測
するには、再選後は、北朝鮮に対して更なる強硬政策を仕掛け、最終的には軍事制圧もあり得ると思います。そうなれば小泉総理は今までの政策通りブッシュ大統領の忠実なる部下として
の政策を遂行すればよいのです。北朝鮮政策も再び強硬路線に戻るでしょう。

 私は小泉総理のことを自由民主党に癒着する既得権益との接点があまりなかったために、古きよき自由民主党の党員気質(反共産主義志向、自由主義経済・小さな経済志向、改憲志向、先の大戦における戦没者の名誉回復志向)を持った人だと思っています。つまり、あくまでも気質であって、そういった明確な国家理念・政治理念・政策提言能力を持った人物では無いということです。

 日朝国交正常化という政治課題は戦後日本のアジア外交に残された最後の課題です。私は端的に日朝国交正常化なぞ未来永劫しなくてもいいじゃないかという思想の持ち主ですが、どうも一般日本人はとりあえず日本と北朝鮮が友好的雰囲気につつまれれば、それを支持し日朝国交正常化大歓迎というムードになりそうな気がします。
 我々日本人は、現在も生存中の拉致被害者・秘密裏の核開発という見えない危険に対して極めて鈍感であり、表にみえる、例えばニュースショーに映し出される日本人と北朝鮮人がなかよく冷麺を食べるといった形だけの友好関係に情緒的に流さかねない危険性を持っています。

 小泉総理もまたしかり。小泉総理の心の中には日朝国交正常化という政策を遂行するにあたって、これは日本国としてはゆずれない、日本は今後北朝鮮と最低限これだけの約束事はしなければならない、こういう事態になれば国交正常化はしないといった政治理念は何もないでしょう。野放図で原理原則の無い日朝交渉が行われ、日本は北朝鮮に対して金正日政権の延命と核兵器といった日本の将来にとって最悪のプレゼントを渡すことになるでしょう。

 私が今まで小泉政権を一応支持していたのは、今まで小泉総理の古きよき自民党気質がうま
く政治に作用していたからこそ支持していたのであって、国家理念の欠如という政治家として
の致命的欠陥が政治に影響を及ぼす事態になれば支持しません。

 確かに今の民主党に政権をとられては困りますが、参議院選挙で自民党が敗北しても自民党
と公明党の連立で過半数は制するでしょう。参議院選挙で自民党が敗北し小泉総理の力が弱体化し、ポスト小泉政局となり安倍幹事長や平沼前産業経済大臣や高村元外務大臣を中心とした
国家理念に基づく自民党内部での国家理念抗争が起きるほうが我が国の将来にとってプラスであることは間違いありません。

 現代民主主義政治においては、どの政治家を支持するか、どの政党を支持するかということ
をどの政治家の政治信条、どの政党の政治信条を支持するかということで決めるのは無理があります。そういったマキャベリ的政治観は文明論としては傾聴に値するものはありますが、現実の政治行動に反映させることはもはや無理です。

 小泉政権の危険な愚行をとめるためには、自民党を次の参議院選挙で敗北させるしかない。そのためには自民党の候補者を落選させる力を持った候補者、すなわち民主党の候補者に投票
するしかないでしょう。

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