Subject:平成15年6月16日 /:西尾幹二(B) /H15/06/17
18:40
「オール紀伊国屋日別ベストセラー」というのがあって、売行きが上昇に向いてきた『日韓大討論』がようやく15日(日)のリストの第48位に入った。紀伊国屋のこのリストの指標に毎日のように書店業界が注意しているそうである。それにしてもやっと48位である。なんとも情けない。これから上昇するなら別だが、このまま下降すればそれで一巻のお仕舞いである。
47位より上位にある本の標題をみていると、真剣なタイトルの重要な本はほとんど、というよりまったく存在しない。人の心を鼓舞するような、国難に訴えるような本は一冊もリストにのぼっていない。1位から10位をご参考までにここに掲げておく。
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1.ダレン・ジャン8 ダレン・ジャン 橋本恵 小学館
2.陰山メソッド徹底反復「百ます計算」基礎編 陰山英男 小学館
3.少年カフカ 村上春樹 新潮社
4.魔法の杖 ジョージ・ルーシス・サバス 鏡リュウジ ソニー・マガジンズ
5.世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 小学館
6.生病検査薬=性病検査薬 飯島 愛 朝日新聞社
7.朝には紅顔ありて 大谷光真 角川書店
8.開放区 木村拓哉 集英社
9.大悟の法 大川隆法 幸福の科学出版
10.学力は家庭で伸びる 陰山英男 小学館
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恒文社21が古森義久『国の壊れる音を聴け』という素晴らしい題と内容の本をさきごろ出したが、どうか各自ご関心を寄せていただきたい。じつに胸に響く標題ではないか。今の読書人の心をゆさぶってくれればよいがと思う。出たばかりなので、行方を見守っている。
『日韓大討論』の売行きがほんの少し上向きになった理由は分かっている。次に掲げる石井英夫氏筆の、6月13日付『産経抄』のお蔭である。昔ならこれだけ強く書いてもらえば1万部の増刷である。今はそうはいかない。どうしてであるか誰にも分からない。
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盧武鉉大統領が韓国マスコミから袋だたきにあっている。攻撃の矢は左右双方から飛んできて、ねじれ現象にもなっているようだ。しかし日本での盧氏の発言を「低姿勢」「屈辱」「間抜け」などとたたくことでは一致している。
盧氏も世論に配慮し、日本の防衛政策に懸念を表明するなど発言をつかい分けていた。だが韓国マスコミは何でもかんでも日本を悪者に仕立てなければ収まらない。論理より感情が先行するのだが、韓国の若い世代には“歴史離れ”が出始めた。社会との間にギャップが生じているそうだ。
その韓国マスコミが目をむくような本が新しく出た。西尾幹二氏と金完燮氏の対談『日韓大討論』(扶桑社)である。金さんは例の『親日派のための弁明』の著者だが、じつはこれはそれ以上に衝撃的な対談集であった。
西尾さんが問う。「思想や宗教の問題で、たった一人で国家の思想上の抑圧に耐えて闘うというような事例は(日本には)あまりありません。大塩平八郎や吉田松陰も同志に支えられていました」。それに対し、金さんはすらり事もなげに答える。
「韓国は長い間、軍事政権だったため、それに対抗する歴史があった。歴史的にも起伏が非常に激しいので、一人の人間が体制に反抗することはそれほど珍しいことではありません」。反骨と勇気ある論客の対談だから、気が合ってシャンシャン大会的なやりとりかと思いきや、決してそうではない。
漢字制限や金正日氏や朝鮮半島の安全保障についてなどでは、二人は対立し、火花を散らして激論をたたかわすのである。この本は夏には韓国でも翻訳出版されるそうだ。さて向うのマスコミはどう論ずることだろう。強い興奮を禁じえない理由である。
6月13日『産経抄』より
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石井さんの目の付け所が、日本人と違う韓国人の個人的逆境への強さ、独り芝居、悲劇的個人のドラマの平常化に向けられているのを面白いと思った。アメリカをよく知る私の友人が、「ニューヨークあたりで飲んでいるとね、韓国の元大統領補佐官みたいなむかしの高官が半ば亡命のかたちで在米市民になって、ひっそり暮らしているんだな。大統領が替わって失脚したんだね。もう本国へ戻れない。日本じゃ考えられないよね。〈罪を憎んで人を憎まず〉とかいって万事優しいのが日本だからね。」と言っていたのを思い出す。
それにしても金完燮さんのこれからの運命はどうなるのだろうか、と心配である。ことの序でに言っておくと、8月7日熊本で金さんと私と占部賢志氏の三人が出会い、「日韓歴史大討論」というシンポジウムが行われる。熊本市の中心にある熊本文化会館ホールで、夕方だそうである。主催は日本会議熊本で、詳しくは℡0963−22−7484へお問い合わせいただきたい。
なお『日韓大討論』に関する「日録感想」の書きこみで、大変に有益で有難かったのはキルドンムさんの次の文章である。
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『日韓大討論』読後感(1) /投稿者:キルドンム /2003/06/11(Wed) 17:20
『日韓大討論』徹夜で読了しました。対談本の形式になっておりますが、西尾先生の御著作の中では、『ソ連知識人との対話』『壁の向こうの狂気』の系列に属する仕事、すなわち外国の知識人との対話を通じてその異質さや違和感を浮かび上がらせることを主眼としたものだと拝察しました。ただ、本書中の金完燮氏の発言の中に色々気になることもありましたので、以下にその箇所と私の感想とを述べてみたいと思います。もっとも今、職場で打っており(こんなことをしても、別に人から文句を言われることもない有難い職場です)生憎本を家に置いてきたのでメモを頼りに書いて行かざるを得ませんので、万一引用に間違いがあれば何卒ご容赦を。
p29で、日清戦争時の日・清両軍の軍紀の違いについて触れられた箇所で、二十世紀初頭の「朝鮮人に大変尊敬されていた学者」の著書から知ったと述べられています。これ以上何も言及されていないので断定はできかねますが、多分黄〔玉+玄〕の『梅泉野録』のことだろうと思います。彼やその友人の金澤榮などのように当時は日本についてできるだけ客観的に見つめ、その評価すべきところは評価しようと勉めた学者がいたことは決して忘れてはならない事実です。特に後者に至っては韓国(旧大韓帝国)の国定歴史教科書に「任那日本府の設置」や「神功皇后の新羅征討」を史実として書き込んだ位です。もっとも、前者は日韓併合に抗議して自裁し、後者は中国に亡命した(最後はやはり自殺する)わけですから「反日」の範疇に属する人物であるのは間違いないのですが、少なくとも最近の日本について頭の中で勝手な妄想を膨らませ、それに基づいて攻撃する連中よりは数千倍マトモです。
p43では金文学氏に対する批判が述べられています。まったく正当な批判で付け加えることもないのですが、ただ、最近目に触れた金文学氏の別の著書の中では、むしろ金完燮氏と近い趣旨の発言がなされているのに気が付きました。この件については引用を正確にしたいので、手元に本があるときに再び論じたいと思います。
p104の朝鮮の「朝」は「入朝」「朝貢」の「朝」とする説について。確かに現代中国語では朝鮮の「朝」はChao2と読んで、「入朝」「朝貢」という意味の発音になるのですが、古韻書などによれば、本来は「あさ」という意味のZhao1という発音だったようです。また、「入朝」「朝貢」の「朝」ならば、むしろ朝鮮が自らを「朝廷」として尊んだということになりはしませんか?
p105の「女真=朝鮮」説について。これは卓説です。ただ朝鮮と比較するならば「女真」よりも古い漢字表記(史書では一応別個の民族として扱っていますが)である「粛慎」の方がよかったように感じます。
p102の「中国語で勉強」云々について。これは明かに事実誤認です。確かに漢文を全面的に使ってたのですが、読み方は「吐」をつけて読む朝鮮式の訓読法でした(日本式の訓読に比べるとまだまだ未消化なものですが)。『熱河日記』の記載によれば、むしろ清朝の中国語を「胡」の言葉として軽蔑する風潮があったようです。朝鮮語こそが、本来の中国語であった位に思っていたのかも知れません(笑)(これが「小中華思想」の最たるものですが)。
これは編集の問題になるのかも知れませんがp107の「チムチョン道」は「忠清道(チュンチョンド)」のことでしょう。その上の「全羅道」は正しく表記されていたのも不思議ですが。p110の「定州」は「慶州」の誤植だと思います。
続きはまた明日書きます。
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インターネットの書き込み、情報交換も、こういう実質のある内容のものなら本当にありがたい。上記に書かれている事柄には私の知識を越えているものが多く、脱帽する。