1月17日 北朝鮮事情
年末の26日に行われたつくる会緊急シンポジウム「拉致家族との対話集会」は大成
功裡に終ったが、一番忙しい日々のさなかで、「日録」に内容報告はなされていな
い。今日小池広行さんから手紙を頂いて、その中にこう書かれてあった。
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シンポも成功裡に終了し、「家族会」「救う会」「拉致議連」そして「つくる会」と
が堅い絆を結べたことは喜ばしいことであります。なにより当初、シンポ出席に躊躇
していた蓮池さんが会席の帰り際に「小池、今日は涙が出るほど嬉しかった」と仰っ
てくれたことが私にとっても喜びでありました。シンポの進行は先生の工夫かと思い
ますが、時間にも制約がある中とてもすばらしかったと思います。
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懇親会のあと、小池さんは蓮池透さんと一緒に帰られた。翌朝早くテレビの予約が
入っていて、懇親会にはちょっと顔を出すだけだと承っていたのに、最後まで私の右
隣りで酒杯をあげて、愉快そうに皆と談笑していた蓮池さん、また私の前の席に横田
さんご夫妻がいて、鍋の料理を手ずから私の器に入れて下さった横田早紀江さん、皆
さん本当に有難うございました。横田滋さんは、たしか私より歳上のはずであるが、
なかなかにお酒が強い。毎晩お飲みになるらしい。これは新発見で、とてもたのもし
い。
私の左隣りに平沢勝栄議員がいて、私はこんな話をした。「今日のあなたの演説はも
のすごい迫力だった。会場をあんなに盛り上げられる政治家のスピーチは最近たえて
聞いていない。」とまず言った。これは正直な感想である。当日の会場にいた人はみ
んな唸ったはずだ。
それから私は遠慮なく次のようにも言った。「あなたのテレビのご発言にもつねづね
敬意を表しています。ただ、あんなにしっかりした発言をされる方が、なぜ田中真紀
子の応援団だったのか、これだけが疑問であって、いつも家もそう話していまして
ね。・・・・」「西尾先生、それはちょっと違います。田中真紀子は狂ってる人だけ
れど、宗男は腹黒い悪ですよ。・・・・真紀子のおかげで外務省、宗男スキャンダル
が表に出たんですから。」「わかった、わかった、じゃあ乾杯といこう!」とまた酒
を平沢先生の杯に波々と注いだのだった。
シンポジウムは『正論』3月号に掲載される。司会の私のことばはほとんど全部削ら
れたが、司会は黒子だから当然である。なお会場の義援金は70万円余りで、「家族
会」と「救う会」にそのまま渡し、二分していただいた。
1月18日(一)
15日にアメリカが北朝鮮に核開発をやめたら食糧やエネルギーの援助を与えると提
案し、北がにべもなくこれを断り、アメリカの謀略だとなじった。それ以来、日本の
新聞に2日ほど新しい情報が出ていない。
私は1月17日付Washington Post と New York Tim
esに出ていた三つの記事を今日読んだ。ここに全文を紹介する余裕も、ダイジェス
トする気持ちもないが、いくつかの言葉を引用しながら、気ままな感想を記してみた
い。
Korea Follies(朝鮮をめぐる愚行)by Charles Krau
thammer,Washington Post,January17,200
3,pageA23 にこんな言葉がある。「北朝鮮の指導者たちは気違いかもしれ
ないが馬鹿ではない。彼らはわれわれが侵攻するつもりがないことを知っている。だ
からわれわれの側の力の放棄の公言は、彼らの安心感
(reassurance 最終的保証となるもの)にはならず、われわれの弱さの
サインとなった。北朝鮮に対してだけではなく、もっと深刻なことだが、われわれの
同盟国に対してアメリカの弱さとうつったのである。」
「人参やお菓子をぶら下げてみても、北朝鮮の核計画を中止させようはないであろ
う。ヒトラーは、自分の望むのはLebensraum(生存の空間)だと言った。
彼は実行した。安心感を彼は探してはいなかった。ピョンヤンも、自分の望むのは爆
弾だと言っている。彼らは実行する。安心感を探してはいないからだ。勿論、北朝鮮
はゆすりの金をもぎ取ろうとするだろう。当然のことである。けれども、その代り
に、核計画を諦めるなんてことは絶対あるまい。」
「どうしたらよいのか。少なくともイラクが片付くまで、非交戦状態が保証されてい
ることだけは明らかである。単に二つの軍事危機を同時に扱うことが出来ないからに
すぎない。しかし戦争回避と(ブッシュ政権の対北政策の)全面崩壊とはあくまで別
のことである。われわれは制裁について議論すべきで、ごほうびについて議論すべき
ではない。」
じつはこの記事では冒頭に「全面崩壊」
total collapse というこ
とばが使われている。北朝鮮に関するブッシュの姿勢が「全面崩壊」している、と
言っている。米政府は一ヶ月も経たぬうちに、封じ込め政策をやめて、北をなだめす
かすやり方に変えてしまった。普通ならもっと時間をかけてよいはずだ。あまりにも
気が早い。「これは一つの深刻なミステイクだ」と述べている。なにもアメリカが相
手を威嚇する必要もないけれども、自分の側から、自分がどうしてよいかわからない
状態、手の打ちようもない状態(helplessness という語を使ってい
る)をあえて広告する必要もないではないか、というのである。こんなことは9年前
のクリントン政権でさえしなかった。「クリントンは少なくともヨンビョンのプルト
ニウム施設を破壊する可能性をかかげつづけていた。」
「経済制裁と政治的孤立化は悪いアイデアではなかった。けれども韓国と中国から批
判され、北朝鮮に制裁を無理強いしたら戦争をしかけるとおどされると、米政府はた
ちまち政策を急降下させてしまった。」
この論文は最後を次のように結んでいる。「三日に一度立場を放棄している。——制
裁案が脅迫されると、それなら制裁案は引き下げるという。話し合いには応じないと
誓っていたかと思うと、次には話し合いを開始するという。ごほうびはあげないと
誓っていたはずなのに、ごほうびが提案され、そのうえ四倍にもなっている——こう
いったことはやがて大災害をもたらすだろう。後向きに動きつづけるくらいなら、
いっさい何も言わない方が良いのである。」
日本から見ていてのブッシュ政権への疑問もほぼこの記事に尽きる。私が『Voic
e3月号』に書きかけている「アメリカ政府に問い正したき事」の内容がすでに言わ
れ尽くされてしまった観もある。
1月18日(二)
1月17日付の米紙には二つの興味深い韓国論がのっている。
South Korea Ready for War,Official Say
s(韓国は戦争準備に入った、と政府高官語る)by Peter S.Goodm
an,Washington Post Foreign Service,Jan
yuary 17,2003,Page A18 は日本の暢気な空気からは考えら
れない、オヤと思わせるなにかがある。
「韓国国防大臣Lee Junは『北朝鮮の核問題が平和裡に解決できずに、アメリ
カが北朝鮮を攻撃すれば、朝鮮半島での戦争は避けられない。わが軍は最悪のケース
のシナリオを念頭に置く準備体制に入った。』と語った。」
韓国は「太陽政策」でぼんやりしているのかと思っていたが、どうもそれだけではな
さそうだ。国防大臣は、核兵器が北で開発されたら、「多分それは韓国で試されるで
あろう。」と言っている。太陽政策にも拘わらず、「北朝鮮が1950〜53年の朝
鮮戦争の旧敵国のままである」ことを裏書きするのに役立つコメントであった、と記
されている。はっと考えさせられる指摘である。当たり前といえば当たり前なのだ
が、日本の新聞に出てこないニュアンスがある。
South Korea‘s President-Elect Rejects
Use of Force Against North Korea(韓国次期大
統領は北朝鮮に対する武力行使を拒否する)by Howard W.Frenc
h,New York Times,January 17,2003.は、盧武鉉
次期大統領は金大中現大統領よりも人間的に幅も魅力も柔軟さもあり、将来に期待が
もてるという話を伝えている。
しかし、盧氏が言っていることは、予想されるとおりかなり甘い。「盧氏はなぜあな
たは北朝鮮に対する懐柔策に自信があるのかと尋ねられたとき、彼は『北朝鮮はなら
ず者国家の地位から脱却したがっているからである』と答えた。」というのである。
またこうも言っている。「金正日は真剣な気持ちで対話を欲していると私は信じてい
る。もしもあなたが誰かを不信感をもって遇すれば、相手もまたあなたにもっと大き
な不信感と猜疑心をもって対応する態度に立ち戻ってしまうだろう。」
「金正日と対話をするのは愚かだというのなら、彼に圧力を加えるほかない。しかし
もし彼が圧力に屈しなければ、われわれは前進し、攻撃を加えなければならないこと
になる。しかしもしそうだとすると、われわれは軍事攻撃はできないという事実にあ
らためて直面する結果になるだけだ。」
ここいらあたりに盧武鉉の考え方の基本があるのかもしれない。朝鮮半島で戦争はで
きない、という一つの基本原則からすべてが組み立てられている。そうなると「反
米」は成り立たない。アメリカの抑止力はいかに彼が平和主義者でも、大統領になる
以上無視できまい。そこで、彼の態度の急変があったことを同記事は伝えている。
「盧は当地の米軍に対する最近の抗議の波を小さく扱い始め、韓国の反米運動は重大
な位置を占めていないと語った。『韓国に反米の声があるにはあるが、それらの声の
大半は小さな声であり、指導者層の公論の場ではさらに小さな声になる』などと語っ
た。」
「私は選挙運動の期間中、対立候補の李氏と違って、いかなるキャンドルライトの徹
夜集会にも参加しなかったし、いかなる請願書にもサインしなかった。私が参加しな
かった、というのは正確ではない。私はそれらを拒否したのだ。選挙が終ってから、
私はキャンドルライトの徹夜集会を止めさせようと要望し、私の要望はある程度の成
果をもたらした。」
まあこんな風にアメリカへの態度を急に変え始めるのは、時局柄当然かもしれない。
ワシントンでは彼が好意をもたれ始めていると新聞は伝えている。
さて、日本の国内にはいかんせん危機感がない。アメリカが何とかしてくれるとみん
な思っている。一番の危機は必ずしも核弾頭ではない。500人くらいはいるといわ
れる国内潜伏中の工作員による各種のテロの一斉蜂起である。一番憂慮されていると
は、昨日『諸君!』(3月号)で中西輝政氏と対談したときにも氏が語っていた。ア
メリカの力で阻止する課題ではない。日本自身がしっかりしなくてはダメな問題では
ないか。
最近こんな話もきいている。北朝鮮の電力事情は確かに相当に危機的状況にあるが、
重油、石炭などの不足のせいだけではなく、ケーブルや発電機器などの老朽化のほう
がより深刻な原因となっているというものである。だとしたら、重油の援助がなされ
ても、生産力の回復は簡単にはなされないこととなる。核弾頭なんかそう簡単につく
れない状態ではないだろうか。
ただしさっきもあった通り、金正日はヒトラーと同様に、安心感(reassura
nce)を探しているのではなかった。彼の求めているものに終着点はない。国民の
9割が死亡しても、核弾頭にこだわりつづけるのではないか。
1月19日
1月16日付のアメリカの新聞に、昨日私が拾い書きした観点とは異なったポイント
が述べられている記事があった。
US rethinks North Korea Strategy(アメリカは
北朝鮮戦略を再検討する)by Howard La Franchi,The C
hristian Science Monitor,January 16,20
03.にあった、アメリカ政府の失敗を突く次の重要な指摘がそれである。
「アジア専門家のMarcus Noland が言っていることだが、2002年
の早い時期、現下の危機がかき立てられる前に、北は経済改革の関心を示すシグナル
を発していた。すなわち100万の軍隊の一部の動員を解除して、彼らに別の仕事を
与えることを考える用意があると示唆していた。ホワイトハウスが『その意向を突き
止めるのを怠った』のは、『ひとつの大きな手落ち』であった、と彼は言ってい
る。」
「アメリカが北朝鮮の核計画の操業を停止させることができるのは、北が本当に欲し
ていることを達成するのにほかの方法が存在するということを北に確信させる以外に
ないであろう、とNolandは言っている。」
「もし北朝鮮の狙いが経済的生き残りではなく、安全保障の高度化であるのなら、厄
介な問題が生じよう。そういう場合には、制裁と強行手段によるアプローチの時期が
いずれはやってくることになる。ことに北朝鮮が核保有国たらむと決心した場合には
である。」
「核兵器の開発と保持を彼らがあくまで主張しつづけた場合、国際社会は北朝鮮にペ
ナルティを科すほかに選択の余地はなくなってしまうだろう。」
やはりこの論文でも、結論は昨日記載したWashington Post(17日
付)の記事「朝鮮をめぐる愚行」と同じになってしまう。結論は悲観的である。我慢
ができなくなって暴発するのは北朝鮮ではなく、国際社会のほうだと言っているかに
みえる。
経済改革で最終的に満足してくれる国であったならなにも問題はなかったのだ。これ
を見落としたのははたしてアメリカ政府の怠慢、手落ちであろうか。今日あたりの切
迫したアメリカ援助提案への北の反発をみると、経済改革の意向はそれほど確度の高
い、実のあるシグナルではなかったのではないだろうか。
1月21日(一)
昨夜「アメリカ政府に問い正したき事」(25枚)を書き上げて、夜中に『Voic
e』編集部にファクスして、少し疲れてねた。朝、私が書いていた不安をまさに裏書
するような記事が『産経』に出ていて、ギョッとする。
来日中のコーエン米前国防長官が昨日午前、日本の国防関係議員をあつめた朝食会
で、北朝鮮の核保有を容認するシナリオを日本が受け入れるかどうかを打診する話を
していたというのである。
核兵器は第二次大戦の戦勝国の独占が許されている仕組みになっている。それ以外の
国々に核を保有できないようにするのがNPT(核不拡散条約)である。日本は署名
させられている。核をもつ国が核をもたない国の核防衛にはっきりした責任をもたな
くては、この条約は成立しない。核をもつ国の無責任や政策失敗は、核の拡散につな
がる。日本はまずNPTを脱退しなければ核武装できない。戦後日本の特殊な心理事
情もある。今度の核危機の急場に間に合わない。アメリカの責務は重大である。私は
昨日の論文にそう書いたばかりだった。
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関係者によると、朝食会には元防衛庁長官や現防衛庁幹部ら約十人が出席。この席で
コーエン氏は「北朝鮮が八個から十個の核兵器を持つことを日本は容認できないか」
と切り出し、続けて「その場合、日本に独自の核武装論は台頭するだろうか」と日本
の対応を探ったという。
これに対し、日本側からは「その考えはおかしい。イラクより核開発を進めている北
朝鮮の方が脅威だ」などと米国は北朝鮮問題をもっと重視すべきだとする反論が出た
とされる。
出席した議員の一人は「米国にとり北朝鮮の核の脅威は日本ほど切実ではない。ま
た、イラクとの二正面作戦は困難だから、米国は北朝鮮の核容認に踏み切る可能性と
その場合の日本の対応を探っていたようだ。米国には、危険を冒してまで北朝鮮を押
さえ込む意志はないのではないか」との懸念を示している。
『産経』1月21日
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日本の核ミサイルは、製造されれば必ず米大陸に届く。命中度も恐らく高い。そのこ
とを今後日本はアメリカ政府とアメリカ国民に明確に示していかなくてはいけない。
コーエン前国防長官は今は「私人」だが、共和党の重鎮の一人である。上記が米政府
のそのままの政策になるわけではないが、とても重要で、気になる発言である。日本
にやってきてわざわざこんな発言をするのは、「観測気球」をあげて、日本側の反応
を探るためであるにせよ、対北朝鮮政策に対するアメリカ政府の手詰まり状態を暗示
している。
1月21日(二)
朝鮮半島の38度線上に用意されている北の地対地ミサイル——生物・化学兵器搭載
——の破壊力は、瞬間的にきわめて高いらしい。アメリカも韓国も恐れている。手の
打ちようがない。アメリカ政府はどうしてよいか分らない。それなのに、北朝鮮を軍
事的に丸裸にするような内容の強引な要求を、「不可侵」と「体制保証」の代償とし
て北につきつけて、北を怒らせている。それが今の状況である。
『諸君!』3月号の中西輝政さんと私との対談のゲラ刷りが今朝送られてきた。前半
はこのテーマである。中西さんはイラクの後に北朝鮮を片づけるアメリカの実力を信
じ切っている。私は日米安保に対するアメリカの秘かな背信の匂いを嗅ぎつけ、いさ
さかの不安を語っている。意見対立のはっきりした対談となっていて、面白い。
一方『Voice』3月号の「アメリカ政府に問い正したき事」のゲラ刷りは明日届けら
れ、明後日返却となるが、北朝鮮とアメリカ、金正日とブッシュが互いに似ていると
いう観点を特徴の一つとしている。ただし、左翼進歩派がブッシュを罵倒するために
言う類似論では決してない。そんな底の浅い立論ではない。私はいわゆるブッシュ・
ドクトリンといわれる「アメリカ合衆国の国家安全戦略」National Security
Strategy of the United States
(September,2002)の理解者であり、支持者である。
対イラク戦争の成功に期待している一人でさえある。
住友商事元理事の粕谷哲夫君がコーエン・スピーチをインターネットで見つけたのを
私に報告しようと電話をかけてきて、「アメリカは少しひどいね。」と言った。10
分ほど話し合った。
池田俊二さんから次のファクスが入った。
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アメリカの對北朝鮮軟化、いよいよ著しくなってきたやうですね。今朝の産經は、
コーエン前國防長官が北核武装容認案なるものについて、日本の國防関係議員に打診
してゐたことを報じてゐます。ここまで來たかといふ感じです。
昨年『正論』12月号に先生が「アメリカにとっては國家解體を試みたい優先順位
は、明かに北朝鮮よりも、イラクの方が高い」「北朝鮮が今のままであるのはアメリ
カには一番有利かもしれない」とお書きになったのを讀んで虚をつかれた思ひがしま
したが、今改めてその慧眼に感じ入ってをります。
これも先生に繁はったことですが、ブッシュの「惡の樞軸」發言に驚き慌てて、日經
の元記者を解放した(そしてその延長として、拉致も認めた)とすると、日本として
は、アメリカの北を抑へこむ(もしくは、解體する)意思と力が最大の褚りですが、
その肝腎のアメリカがかくまでやる氣をなくし、それを北に讀まれてゐたのでは、拉
致問題の進展なぞ到底望めませんね。萬景峰號の入港とか北への送金とかを差しとめ
るなど自力でやらうと思へばやれることもあるかもしれませんが、今の爲政者にそれ
を期待することはできませんし、假にそれをやらうとしても、アメリカと呼吸が合は
なければ成果はえられないでせう。
自國民が誘拐されたら相手國に踏み込み叩きのめした上で取り返すー—さういふ當り
前のことがやれるだけの實力を養ふことを怠ってきた報いとして、我等アホ—な日本
人は諦めるしかないのでせうか。
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池田さんのいつもながらの辛辣で、少し屈折した文章の趣きは面白い。日本に入港す
る北の船は年間1000艘もあるそうである。入港禁止、すなわち経済封鎖は戦争以
上に効果があるので、日本人はみな断固やるべしというが、北が「宣戦布告」とみな
すと言っているのは脅しではない。体制に致命傷となるのは、どうやら真実であるら
しい。
けれどもこの船でメロンやパパイヤを取り寄せ、空便で伊勢蝦やブルゴーニュワイン
を運ばせるなど、世界中から最高級の食材を集めているあの男。酒を飲んでも身体を
こわさない新薬の人体実験をするために、自分に似た体型の人物を選んでモルモット
としたそうだ。国家予算の三分の一が金父子の長寿研究と贅沢品蒐集と性愛施設に注
がれてきた。余りにもバカバカしく、筆にするのもおぞましい。
アメリカはじめ核保有国がそのうえ8個の核爆弾をこの男に与えるほど、21世紀の
文明は早くも出口を失っているのだろうか。