オバマ広島訪問と「人類」の概念(四)

トランプはオバマと同じ

 11月の大統領選共和党候補トランプが声を大にして言い立ててきた外交戦略は、オバマがやってきた戦線縮小と、つまるところまったく同じです。同盟国により多くの責任と負担を押し付け、アメリカ一国の守りを固めようとする。ただオバマはそうはっきり明言しなかっただけです。勢いの赴くところ、トランプは日本と韓国の核武装の容認まで言い出した点に違いがあり、施政方針はどちらも同じで、論理的にはっきりさせたトランプのほうがずっと筋が通っています。

 アメリカの軍事予算大幅削減はけっきょく、誰が大統領になっても避けられない必然の方向なのでありましょう。日本の自主防衛への覚悟は強まらざるを得ず、日本の軍事大国化を恐れるアメリカの「ビンの蓋論」は勢いを失うでしょう。中国の強大化を抑えるためにも、アメリカのご都合主義は自己保存のために日本の「大国化」」を必要とするでしょう。

 戦後70年の次のメドは戦後百年となります。いくら何でも、もう「戦後」は使えません。これから30年かけて、わが国はようやくアメリカの桎梏を離れるのです。トランプが大統領になるかならぬかは別にして、彼のあの声明は利用価値があります。

トランプが、アメリカに日本は防衛費を支払えと言うのなら、一兆ドルにも及ぶ米国債の利息を払ってもらいましょう。全国で133か所の米軍基地(施設・区域)を徐々に撤廃してもらいましょう。自衛隊の装備品の米以外からの購入の自由と武器の自主開発の拡大を可能にしてもらいましょう。日本製の大型旅客機も自由に造れるようにしましょう。いちいちアメリカの意向に日本の金融政策を合わせなくてもいいことにしましょう。貿易決済の円建てをどんどん実行していきましょう。

 トランプはあまりにも無知で、アメリカの対日防衛費の何十倍の利益を日本からアメリカが得てきたことを彼は知らないのです。

つづく

Hanada-2016年7月号より

「オバマ広島訪問と「人類」の概念(四)」への3件のフィードバック

  1. 「米国債の利息が一兆ドルに及ぶ」というのは迂闊にも知りませんでした。
    他にも多くの日本人が知らないと思いますが、これが事実とすれば(西尾先生の言葉ですので事実と信じます)国民がこの事実を拡散し共有することが出来れば政府の防衛政策が変わらざるを得なくなります。財務省のHPで公表しているのでしょうか?外務省が秘匿しているのでしょうか?どなたか詳しい方に、元本の額と利率、その計算結果(一兆ドル)を教えて頂けないでしょうか。「利息免除」の他にも「思いやり予算」がある筈です。これら「日本側の負担の詳細とその総額」と「米軍駐在の全ての軍事的、経済的メリットを数値で客観的に定量化」した結果を対比することで、横田、沖縄をはじめとする在日米軍基地の撤退、それを自衛隊の軍備や自前の核で切り替えることの合理性が証明されるのではないでしょうか。自分の城は自分で守るのが日本の伝統であり日本人の常識であり、世界の常識です。自動車の製造販売はできても旅客機や戦闘機のそれが許されない、装備品の自主調達や、武器の自主開発も出来ないならば独立国ではなく、国際社会で日本がなめられ、貶められる遠因になっていると思います。米国の孤立主義はむしろ日本の真の独立に好都合という御意見に賛同します。

  2. 数分前に先のコメントを送信した後に西村慎吾氏のブログに以下の記述があることに気付きました。

    トランプ候補は国際政治状況に相当音痴であり、「大統領になれば、国の安全を無視して、金銭取引だけに関心を示し強盗(中共)とも取引し、我が国を含む東アジアを中共の覇権下に売り飛ばしかねない」危惧を記す一方で、「我が国に関してプラスに作用する点」もあると指摘しています。私も5月に、「真の日米同盟はトランプ共和党候補が喝破した「日本の核武装と米軍の日本からの撤退」の上に立ったものでなければならない。コストが何兆円かかっても日本はこの道を採るべきである。独立は金には換えられない価値がある」と書いて、トランプを「大明神」と呼びましたが、西村氏も、「トランプは、アメリカの都市に対する核攻撃の危険を冒してまでも他の国を守ることはできないと言っている。自らの力で、如何にして核の攻撃を抑止するか、この死活的な国家的課題に目覚める時が来た。私はこの時を告げてくれた土着の顔をした正直者のトランプを、高く評価する」と述べています。この意見にも賛同しますが皆様みな同じ思いなのではないでしょうか。

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