第26回参議院議員選挙全国区 に立候補を予定している自民党公認候補の元熊本大学教授の高原朗子(あきこ)氏に対し、6月7日靖国会館で開かれた「高原あきこを励ます会」に西尾幹二が寄せた激励のメッセージです。当日の代読者は坦々塾幹事長の浅野正美氏です。
「高原さんと私の出会いは、もうかれこれ22年になります。
私が歴史教科書改善運動を始めていて、高原さんは有力な協力者の一人でした。
私が長崎で講演をした折、聴衆の一人として前に座っておられたのが最初の出会いでした。
その時は確か長崎大学の助教授だったと思いますが、国立大学の教官で、しかも政治文化運動の協力者であったのはありがたく、女性であってきっぱりとした意思の持ち主であることもたのもしく、何かと力になっていただき、貴重なご存在でした。
専門は心理学、特に臨床心理学と聞いています。これは、直接人の為に役立つ学問です。
弱い立場にある個人への心理学的支援というのが目的の学問でしょう。そういう専門知を目指す人が、いつの間にか国家社会の安全保障を考えるまでに大きく変貌かつ成長されました。それは、必然的な変化でもあったのです。
どちらも危機救済という点で根は一つだという彼女の思想の深さに私は感動しています。
自分が関わっている障害者の救済、その背後にある家族、郷土、ひいては国家社会の問題、その存立と安全を考える国防というところまで手を伸ばした開かれた姿勢とパワーに敬意を表します。さらに、日本を守るためには今の憲法を変えていくことが重要ですが、その点も高原さんは深く認識し、すでに精力的に行動を始めています。
さて、ロシアがウクライナに突如侵攻してから三ヶ月が過ぎました。
現代日本の今後の運命をどう考えるべきかという課題は、あれ以来ロシアのこの戦争と切り離して論ずることは出来なくなりました。
端的に言います。日本が大切にし、あの戦争が露骨に奪ったものは、一体何でしょうか。たくさんありますが、最大なものは「自由」と「民主主義」だったと思います。日本は、自由の度合いが行き過ぎたくらいに自由の国であり、議会制民主主義も守られています。もし、ロシアが日本に侵攻したら、日本人は「自由」でなくなり、民主主義も奪われます。空気や水のように、当たり前に思っているわれわれの自由、われわれの民主主義的諸制度が失われることを考えてみて下さい。
それなら自由と民主主義の産みの親、母体をなすものは何でしょうか。
国際主義でしょうか。外国から来た理想の言葉でしょうか。国連などの日本の外の組織でしょうか。そう言うものも、無関係ではありませんが、自由と民主主義を生み出し、育てて来た発展の泉をなしてきたもの、それは、外にあるものではなく、国の中にあり、歴史が育んできたものであり、自分自身に発したものです。
私はあえて次の四つの言葉を強調します。
すなわち、(一)家族、(二)民族、(三)国民国家、(四)ナショナリズム(この四番目の言葉は、「愛国主義」と言い換えても構いません)
この四つは戦後久しく自由と民主主義の敵であるかのように言われてきました。それは完全な間違いです。
四つをもう一度言います。
家族、民族、国民国家、ナショナリズム、これら四つは自由と民主主義の敵ではなく、むしろ自由と民主主義の側にあり、自由と民主主義を守り育ててきた母胎があったものと敢えて言いたいのです。
アメリカナイズされた第二次世界大戦後の日本ではなく、明治の開国以来の日本の姿を思い浮かべて下さい。家族制度は健全に守られ、日本人は民族一丸となって誇りを持ち、恐らく幕藩制下に確立されたいち国家の意識も高く、そしてナショナリズムはすべての文化、教育、社会活動の隅々まで行き渡っていました。それが、今のわれわれの自由と民主主義を培ってきたのです。
日本は、もう一度あのレベルまでよみがえらせなくてはなりません。
それには、人材が必要です。高原朗子が、今、私の述べたすべてを理解し、体現されている方です。
今の時代、女性で国家観がある政治家が必要です。その代表格は、高市早苗自民党政調会長でしょうが、高原朗子さんも彼女を支える有力な同志として国政に行くべきであります。こういう理念を体得した高原さんこそが今の日本の政界に特に必要な人材です。
高原さんは、国立大学の教授だった第一線の知識人であり、3年半前にその地位を投げ打って、今までの知識や技能を国民のために役立てようとしています。
その人が女性であることは、女性の活力の拡大が期待されている自民党には求めても簡単に得られない人材でありましょう。
自民党にとってもチャンスなのです。
保守政界は、こういうチャンスをあだおろそかにしてはいけません。
政界の知的レベルの向上は日本の政治にとって今や焦眉の急です。時代はまさに人を得たというべきではないでしょうか。
ご健闘を祈ります。」
令和4年6月7日
西尾幹二