坦々塾研修会・懇親会 ご報告①

吉田圭介

11月9日、恒例の坦々塾研修会・懇親会が開催されました。
不順な天候が続いた本年ですが、当日は秋らしい穏やかな晴天に恵まれ、これまでとは違う会場の中野サンプラザ研修室に35名の方々が集い、和やかなうちにも熱心な考究の場となりました。
まず研修会第一部として、坦々塾会員でもある、朝鮮問題研究家・松木國俊先生を講師に、「反日韓国の行方」のタイトルで、悪化する日韓関係についてご講演を頂きました。

初めに松木先生は、1980年から4年間商社マンとして韓国に駐在したご経験を振り返り、当時の50代以上の韓国人は日本の統治時代のことをよく覚えていて対日感情も良かったというご自身の印象、また昭和17年における日本軍への朝鮮人志願兵の倍率は62倍超にもなったという歴史的事実、さらに朴朁雄氏の著作『日本統治時代を肯定的に評価する』の記述から、戦前戦中には無かった反日感情が李承晩の個人的偏見と政治的策略に基づく徹底した反日教育によって引き起こされ、その後の日本統治時代を知らない世代が自家中毒をおこしていったのだと、韓国の反日感情形成の経緯を分析されました。

続いて先生は近年の日韓間の諸問題について、
・朝鮮人戦時労働者問題(徴用工問題)は1965年の日韓基本条約で完全に解決と明記されたことであり、最高裁判所が条約を覆すのはウィーン条約違反であること。
・レーダー照射問題に関しては100%韓国側に非があること。
・日本から送られた戦略物資の20%が行方不明でありイラン・北朝鮮に渡った恐れもある以上、日本の国際的義務としても韓国のホワイト国除外は当然であること。
...等々を列挙され、対抗措置と称してGSOMIA破棄やビール等日本製品の不買運動に奔る韓国を批判し、就中、福島の放射線被害を誇張して国際社会に喧伝する行為は、風評被害と戦い続ける被災地の人々に対し、人道上許されない行為だと強く非難されました。

さて、このような韓国人の不条理なまでの反日感情がどこから生まれるのか?という点について、先生は次にご自身の現地調査の結果を数々の映像を交えて披露してくださいました。
・ソウルの独立記念館における、日本兵が朝鮮の少女を捕らえてトラックに積み込む情景や慰安所で少女が犯される様子を描写したジオラマ。独立運動家の女性を日本の官憲が拷問し、骨の折れる音や悲鳴までついた動く蝋人形。しかしそれは実際には、余りに残酷すぎるからと日本が禁止した李氏朝鮮時代の拷問であること。
・西大門刑務所歴史館や2015年に出来たばかりの釜山の国立日帝強制動員歴史館等でも同様の展示が並べられ、日本兵による強姦場面等がサド・マゾ趣味の成人映画さながらに流されていること。
・韓国の子供たちが授業の一環としてそれを見せられ、絶えず「これが日本人の仕業だ」と引率の教師から指導されていること。
・軍艦島(端島)を「地獄の島」として描いた幼児教育用の絵本。
・日本大使館前の「少女像」や「徴用工像」の周囲には、日本への呪詛の言葉を記した札や石が絵馬のように並んでいること。ただし肝心の徴用工像は、日本の新聞に載った日本人労働者の写真がモデルであること。
...等々の惨状を紹介された先生は、こんなことでは1000年経っても日本人と韓国人が仲良くなれるわけがない!と嘆かれ、本当に日韓の友好を考えるなら駐韓日本大使館はこれらにキッチリ反論すべきであり、そうしないのは職務怠慢だ!と強く憤られました。

昨今流行の浅薄な嫌韓言辞とは違う、真に日韓の未来を憂える松木先生の誠意を見る思いが致しました。

お話は自然と日本側にも大いに責任があるという点に及び、捏造事実に基づく反日映画に自己のキャリアアップだけを目的に平気で出演してしまう人気俳優や、相手の求めるがままに謝罪すべきと主張する流行作家等々の、深い思慮に欠けた日本人の言動を批判され、その根本原因として、過去無分別に謝罪を繰り返してきた日本政府の責任を指摘されました。
そして謝罪というものの意味について述べられ、謝罪をするからには責任者の処罰と相手への賠償が必ず伴うのが国際社会の常識であり、そこまでする覚悟が無ければ謝罪などしてはならないこと、日韓の謝罪に対する認識の違いが摩擦の原因の一つである、と分析されました。さらに、武貞秀士氏や呉善花氏の考察を引用し、韓国人の求める謝罪の有り様とは、韓国が日本を35年間支配し、日本人が地に頭を打ち付けて許しを請い、日本人が世界中から蔑まれるようにすることなのだ、と喝破されました。

ここで松木先生は、今回の徴用工裁判問題が「日本の植民統治の不法性」を根拠とし、言わば「慰謝料」を請求してきているという点、関連する日本企業は二百数十社・請求総額は2兆円に及ぶ可能性もあるといった点で、慰安婦その他の問題よりも重大であるということを、ご自身の新著『恩を仇で返す国・韓国』から引用され、韓国の最高裁判所が示した判断が3つの点で誤っていると指摘されました。すなわち、
・日韓併合が両国政府の合意の上で合法的におこなわれた点を無視していること。
・過去の統治行為の合法・不法を現在の大韓民国憲法の価値観で判断していること。
・日本の最高裁の判断を否定し、外国である日本の財産を自国の裁判によって押収しようとする主権侵害行為であること。

さらに、日韓協定締結時に日本が支払った経済協力金8億ドルは、当時の韓国国家予算の半分であり日本の外貨準備高の4割にあたったこと、日本が朝鮮半島に残置し放棄した民間資産は10兆円以上にのぼること、そして、廬武鉉政権までは韓国政府自体も徴用工問題は日韓協定で終結したとの見解をとっており、2005年から2007年にかけて6万人の元徴用工に5000億ウォンを給付していること等々の事実から、如何に現在の韓国の要求が不当なものであるかを詳細に論証されました。

経済協力金8億ドルの話や日本の残置資産の話はメディアやインターネットでもよく取り上げられますが、韓国政府が既に徴用工に補償金を支払っているという事実などはあまり言及されることが無いように思います。日本人がきちんと押さえておかなければならないポイントだと感じました。

ここで先生は話題を変えて、現在の韓国の経済状態についてお話をされました。世界的な半導体需要の減少や中国企業の追い上げ、さらにトヨタよりも高くなったという現代自動車に代表される賃金の上昇等々の要因により、半導体と自動車以外主力輸出品の無い韓国の輸出額は19%も減少していること、中流層以下は教育費の負担から少子化と海外脱出が加速していること、日本の輸出管理強化に対抗して国産化を叫んでいるが、コストに見合うものが出来るわけがないこと、また、同じく対抗策として掲げる日本製品不買も、日本の会社員に聞くと韓国市場は無くなっても困らないという状態で影響力が無いこと、さらに根本的な問題として、韓国が輸出をする際、韓国企業の決済を担保するだけの信用力が韓国の銀行に無いため日本の銀行が信用状を出しているのが現状であること。
...等々の事実から、反日なんかやってる場合じゃない!と韓国経済の危機的状況を指摘されました。

この状況を文在寅大統領はどう乗り切ろうとしているのか?お話は文在寅という人物の解析へと進みました。
このまま経済不振が続き、財閥をはじめとする産業の低迷が進むと、自由主義経済が行き詰まり社会主義へと移行する道が拓けてしまう。実はそれこそが文大統領の狙いなのではないか...と、先生はご自身の衝撃的な推察を披露され、戦後の軍事政権と財閥を「日本と結託して私腹を肥やしてきた悪者・積弊」と規定して政権を獲った文大統領の目指すものは、北朝鮮との一国二制度を経由した高麗民主連邦共和国なのだと洞察されました。そしてそれは、政治的自由の無い核武装した反日国家の誕生を意味するが、その核によって歴史上初めて中国を含む周辺諸国に対抗できる国になれる以上、彼らは絶対にそれを手放さないであろうということ、その目的のためであればGSOMIA破棄などはむしろ望むところなのであろうということ、しかし、GSOMIA破棄が今後の韓国の外交カードになるようなことは絶対にあってはならず、輸出管理の透明化という筋が通るまで、日本はその国家意思である輸出管理強化を1ミリも妥協してはいけないことを強調されました。

彼らの目を覚まさせるにはどうしたら良いのか?先生はいくつかのポイントを挙げられました。すなわち、
・前出の信用状の問題のような、韓国に対する産業・金融面での日本の絶大な支援・影響力の実態を韓国国民に徹底的に知って貰うこと。
・韓国司法による日本企業の資産の現金化と差し押さえが行われた場合への、日本側の経済制裁措置を明確に示すこと。
・それらにより、日本を敵に回すことのデメリットを韓国国民に強く実感させること。
・韓国側の対抗措置を恐れる向きもあるが、制裁は返り血を浴びる覚悟を持って行うのが当然であり、アメリカの対中制裁の如く、日本も損害を恐れずに制裁を加えるべきであること。
・徴用工問題は我が国の名誉・尊厳、引いては国の将来が懸かっている問題であり、ここで韓国の歴史捏造を許せば我々の子孫までもが永久に屈辱に塗れ、財産を搾り取られることになる。肉を切らせて骨を断つくらいの覚悟で対処しなければならないこと。
そして、先生は再びご自身の在韓時代のご経験から、
・韓国人はその国民性として、交渉においてはダメ元で過大な要求を突き付けてくる。
・一方で日本人は、交渉の決裂を何より恐れてこちらの要求を下げてしまいがちである。
・韓国人との交渉で一番良い方法は、席を蹴って立つ覚悟を見せることであり、こちらの確固たる意志・決意を示して初めて、相手の妥協を引き出すことができる。
といった、日本側の持つべき心構えを説かれました。

この心構えの問題こそ、外務省はじめ日本政府・日本国民が未だに理解していない重大問題であり、韓国人を相手にまさしく返り血を浴びて論争してこられた松木先生だからこそ指摘できる、迫力に満ちたご提言だと強く感じました。

続いて先生は、その気迫に満ちた論戦の実践として、本年6月末に挙行された、ご自身の所属する国際歴史論戦研究所によるジュネーブの国連人権理事会への会員派遣の成果を報告されました。
端島(軍艦島)の元島民の坂本道徳氏による当時の平穏な生活の証言や韓国人研究者・李宇衍氏による朝鮮人徴用工の給与・待遇の実情報告等の日本側の反論スピーチの映像が紹介されましたが、松木先生の印象では、議長をはじめとする人権理事会の要人は日本人・韓国人・中国人の区別も碌に出来ないような何も判っていない人ばかりで、反日活動家による日本に対する根拠なき非難がこれまで10年以上に亘って言いたい放題になってきた実態が痛感されたとのことでした。そして、本来は日本政府が率先してこういう反論活動をすべきなのに、民間が孤軍奮闘しなければならない現状を嘆かれ、さらに、証言をした李宇衍氏はその直後から凄まじい脅迫・バッシングを受けているが、韓国人が真実の歴史を知ることこそが日韓友好の道という信念を持った李氏は少しも怯んでいないという心強い事実を披露されました。また、李氏の所属する落星台研究所の所長・李栄薫氏による、母国・韓国の歴史捏造を批判したインターネットTV『李承晩学堂』と、7月の発売以来、韓国では異例の15万部を売り上げている著書『反日種族主義』が紹介されました。この本は日本でも文芸春秋社から日本語版が刊行され大きな話題になっています。
これら韓国内の良識派の奮闘の結果か、韓国では保守派の勢いが盛り返してきており、10月3日の反文大統領デモ参加者は100万人を超え、また在日韓国人の中でも「自由韓国を守る協議会」を立ち上げるといった動きが出てきているとのことです。

最後に先生は、すべては結局のところ安全保障の問題に帰着するのだと総括し、それを考慮するに当たっては最悪の状況を想定しなければならないことを力説されました。すなわち、38度線が対馬海峡まで下がっても日本が自主独立を維持できるだけの国防力を備えることであり、当然に憲法改正が必要であり、そして外交的威圧装置としての核兵器を中国や統一韓国が保有する可能性が有る以上、日本が威圧に屈して属国となるのを防ぐためには核兵器の保有もやむを得ない、その実現可能な手段として、ドイツと同様のアメリカとの核シェアリング、米原潜への自衛隊員の同乗といった方法も検討すべきであること、等々。そして何より、中国をはじめとする侵略性を持った国家と対等に渡り合い、子孫に自由で豊かな誇りある日本を残すために「自分の国は自分で守る」という気迫を持つことである!という熱いお言葉で、先生はお話を締め括られました。

時折、韓国人と論争を交わした際の韓国語のやり取りも交えた、迫真に満ちた先生のお話は、韓国を深く知り愛するが故の誠実な憂いに満ちていて、強い感銘を受けました。また日本のメディアでは中々見られない現地の映像も数多く紹介され、極めて現実的・実践的な韓国論であったと思います。韓国を罵倒して気勢を上げるような次元の低い場ではなく、真の日韓の友好と相互理解を模索する講演会となったことを、松木先生に感謝申し上げる次第です。

令和二年謹賀新年

賀正

 昨年末三十一日は米韓、米朝という各々の対立の決着の日だった。米は韓、朝どちらをももう許さない。戦争になる可能性もなしとしない。朝鮮半島は昨年日本人には不快と忍耐の原点だった。そして無力の原点でも。

 米中貿易戦争が両国の覇権争いだというのは真実の半面でしかない。経済の急拡大で表面化したのは清朝以来の中国人の伝統的な生き方の異常さの露出である。日米援助の輸出で稼ぎ、不動産に集中し、集めた金は中国国民に回らず、一兆円規模の富豪が乱立し、世界経済を撹乱し、我々の努力の結晶である技術を横取りし、国内の購買力が育たないので輸入する力も今や尽きた。

 加えてウイグルの宗教弾圧、臓器移植の国家犯罪。もう我慢できないのは日米同じはずである。なぜか日本のメディアのみが沈黙している。私が怖れるのは、ここで日中の区別を世界にきちんと示さないと、大変なことになりかねないのだ。米国大衆は日中韓の区別がつかない人々なのである。

令和二年 元旦       西尾幹二