村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十四回)

71)日本人は自分がよくなるためには、社会や国家がよくならなければ駄目だと考えている最後の民族だという。

72)現代は知力はあっても、知性がない時代だ。現代の知性には節度と倫理性と想像力が欠けているのである。

73)なぜ明治以来、日本ではキリスト教は知識階級の愛玩物以上のものになりえないのか。(中略)キリスト教的な因襲や風俗の生きてないところに信仰は可能かだろうか。人間はさほどに純粋なものだろうか。さほどに抽象的に強いものだろうか

74)(ヨーロッパ)過去の文化遺産へのしつこさには・・・・・しだいに鬱陶しくもなってくる。

75)人間の弱さ、みじめさを知っているキリスト教が、したがってその弱さ、みじめさのために、かえってあのような過剰装飾、生きている人間の権勢欲念の表現に赴くのはなんという逆説であろうか。

出展 全集第一巻 ヨーロッパの個人主義
71) P362下段より
72) P369下段より
73) P432下段より 掌篇留学生活から
74) P488下段より 掌篇ヨーロッパ放浪
75) P499下段より 掌篇ヨーロッパ放浪

村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十三回)

66)自由とは役割を知ること。自己をつつむ共同体の力学全体への最大の想像力を働かせつつ、その枠のなかで自己の役割に徹し、自己の利害と全体の利益との調和のなかに自由を見出していこうとする忍耐強い意志。

67)人間は自己を統御するなにものかを持たないかぎり、自らの力だけでは、自己自身をよりよく統御することさえもできない。

68)人間への信仰、・・・・・進歩への希望、「解放」という概念はことばの厳密な意味においてエゴイズムのはてしない拡大とアナーキーにしか通じていない。精神的なアナーキーと全体主義は一つの事柄の二面である。

69)ヨーロッパには、進んでいることは価値ではない。むしろ場合によっては悪である、という思想がある。

70)疑ってばかりいてはなに一つ行動ができないのは、疑っているのではなく、はじめから信じる力をもたないから、なんでも信じ、なんでもゆるせるふりができるのだ。

出展 全集第一巻 ヨーロッパの個人主義
66) P339上下段より
67) P338下段より
68) P338上下段より
69) P348下段より
70) P349下段より

『GHQ焚書図書開封 9』の刊行(四)

GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書)
(2014/03/19)
西尾 幹二

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宮崎正弘氏の書評

西尾幹二『GHQ焚書図書開封9 アメリカからの宣戦布告』(徳間書店)
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 このシリーズ、はやくも第九巻である。初巻から愛読してきた評者としては一種の感慨がある。今回、焦点が当てられるのは、GHQがまっさきに没収した『大東亜戦争調査会』叢書である。

 これが日本国民に広く読まれるとまずい、アメリカにとって不都合なことが山のようにかかれていて、戦争犯罪がどちらか、正義がどちらにあるかが判然となるので焚書扱いしたのだ。

 ところが、GHQ史観にたって戦後、アメリカの御用学者のような、歴史をねじ曲げた解釈が横行し、いまもその先頭に立って占領軍史観を代弁しているのが半藤一利、北岡伸一、加藤陽子らである、と西尾氏は言う。かれらの主張は『語るに値しない』と断言されている。

 当時のシナは「内乱」状態であり、さらにいえば「いまの中国だって、内乱状態にあるといっても言い過ぎではありません。

1960-70年代の毛沢東の文化大革命だって内乱のうちに入ります。ところが戦後に書かれた日本の歴史書は中国をまともな国家として扱っています。

中国を主権をもったひとつの国家であるがごとく扱っています。しかしシナとはそんなところではなかった。日本はなんとかしてシナを普通の国にしようと努力した」というのが歴史の真相に近いのである。

 アメリカは端から日本に戦争をしかける気で石油禁輸、在米資産凍結、パナマ運河通行禁止などと戦争とは変わらない措置を講じた。ルーズベルト大統領が狂っていたからだ。だから「悪魔的であった」と『大東亜戦争調査会』の叢書は書いた。

 同書には次の記述がある。
 「通商条約は破棄され、日米関係は無条約状態に入ったとはいえ、外交交渉は引き続き継続されていたのである。その最中において、かくも悪辣きわまる圧迫手段を実行した米国の非礼と残虐性とは、天人ともに許されざるところである」
と。

 けっきょく、アメリカの悪逆なる政治宣伝と強引な禁輸政策によって日本は立ち上がらざるを得ないところまで追い込まれた。日本は自衛のために、そしてアジア解放のために立った。

 だからアジア解放史観を絶対に認めないアメリカは、その「宿痾」に陥った。しかし「アメリカがこれを認める日がこない限り、真の意味での、すなわち両国対等の『日米同盟』は成立しない」のである。

 いま、世界中で反日プロパガンダを展開しているのは中国と韓国だが、『正しい歴史』をもってアメリカ人を説得するために、国家を挙げて日本はお金を使えと西尾氏は提言される。

 つまり「国家を挙げて外交戦略とプロパガンダを繰り広げること。いいかえれば、外務省が『戦う外務省』となること、それが必要です。これを措いては、中韓の反日宣伝に対抗する方法はない」

 事態はそこまできた。日本の主張を声高に正々堂々と世界に発信する必要があり、外務省はそのために粉骨砕身努力せよ!
         

村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十二回)

61)ドイツとイタリアは、・・・・極端に細分化された地方分権意識をもっていた。(中略)民族統一が、排外的ナショナリズムの理念を必要とせざるをえなかった。

62)意識的に全体感情が強調されるということは、すでに「全体」が失われた証拠。

63)善かれ悪しかれ、日本は素朴な平和民族であり、自己完結の小世界である。お人好し集団が冷たい風に当たれば、たちまちカッと逆上するし、敗北すれば萎縮してもう手も足も出ない。

64)われわれ(日本人)は外国を「敵」として意識するよりも、「師」として意識することのほうが多く、(中略)文化的に劣った野蛮民族との闘争や戦乱からははじめから免れていていたのである。これも「海」の果たした役割である。

65)処罰する力のない弱い体制は、成員を保護する力においても弱い。成員にしっかりした保護を与える体制ほど、異端者や反逆者への加虐性も遠慮なく強まることになる。

出展 全集第一巻ヨーロッパの個人主義
61) P327上下段より
62) P328下段より
63) P330上段より
64) P332上段より
65) P337上下段より

『GHQ焚書図書開封 9』の刊行(三)

GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書)
(2014/03/19)
西尾 幹二

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アマゾンレビューより

By 真実真理

 本書は、日本を苦しめることになる1922年の9カ国条約の成立、ワシントン体制以後の史実を、第1部において、米英の東亜攪乱(毎日新聞社、昭和18年9月)、満州の過去と将来(長野朗 昭和6年10月)を参照し、第2部において、米英挑戦の真相(毎日新聞社、昭和18年6月)、米国の世界侵略(同、5月)を引用して、著者が解説した本である。

 日本は、日清戦争後のロシアの満州への領土拡張に自国防衛の危機を感じ、満州及び朝鮮からロシアを排斥する日露戦争を戦い勝利した。日本は、1905年のポーツマス講和条約により、南満州(関東州)、南満州鉄道及びその付属地に対する権益を得た。

 元来、満州は、清王朝を建国した満州民族の土地であり、清朝時代には行政権は及ばず、漢民族は万里の長城を超えて満州に入ることが禁止されていた(封禁の地)。1911年の辛亥革命により清朝が崩壊し、支那本土及び満州、内モンゴルは、各地で匪賊、軍属が支配し政府のない混沌とした状態であった。

 資源や生産物がなく、人口過剰の日本は、生命線を求めて、この満州に投資を拡大させた。1930年における投資比率は、日本70%、ソ連26%、米国1%、英国1%であった。また、1928~30年に掛けて、世界恐慌による米国の日本からの輸入品排斥のための高関税(ホーリースムート法)の実施、英国領への輸入禁止(ブロック経済)により、ブロックを持たない日本は、生きて行くため満州への投資を拡大させざるを得なかった。

 この間、1917年に、米国は満州及び内モンゴルにおける日本の特殊権益を認めるという石井-ランシング協定が米国との間で成立した。しかし、国際連盟に加入しなかった米国は、1921~22年に、日本を抑圧し、自らの海軍力を増強し要塞の整備のために、ワシントン会議を主催した。

 この会議において、米国は、満州における権益獲得のため、石井-ランシング協定を破棄し日英同盟を破棄させ、支那における機会均等、門戸開放、主権尊重を提唱する9カ国条約を成立させた(ワシントン体制)。

 しかし、このワシントン体制は、満州における権益の獲得を目指す米国が支那に加担し、これが支那を増長させ支那を条約無視(革命外交)に走らせた。これにより、ワシントン体制は1927年頃には崩壊して行くことになる。

満州は、日本人による満州鉄道及び付属地の発展、工業化により豊かになると、混乱の極みにある支那本土から豊かで平和な生活を求めて多くの漢民族が流入してきた。それにより漢民族が繁栄すると、漢民族は、満州人、蒙古人、朝鮮人、日本人を排斥し、多くの反日運動、匪賊による暴動が、支那及び満州において頻発した(この時の支那の事情は、満州事変と重光駐華公使報告書に詳しい)。

 このような混乱の中、1931年9月18日に、満州の安寧を目的として満州事変が起こるべくして起こった。その後、満州に、政治行政を至らしめるため、1932年に、5民族の共和による満州国が建国された(この時の日本人の情熱を持った公正な国造りは、見果てぬ夢 満州国外史 星野直樹 ダイヤモンド社に詳しい。)。

 この日本の行為に対して国際連盟は、リットン調査団(米国は連盟加盟国でないにもかかわらず団員が任命されている)を派遣して、満州事情を調査させた。

 報告書によると、満州は特殊な土地であり、単に日本が侵略占領したという単純な問題ではない、満州の事情に精通した者のみが適正な判断をする資格を有するとしているが、満州を国際連盟による管理とすることを結論とした。

 これに対して、日本の松岡全権は、「匪賊や不逞漢の跳梁するこの国を連盟管理で治安が維持できるとすることは、事情を熟知している日本から見ると荒唐無稽であり、有り得ないことである。人類は2000年前にナザレのイエスを十字架に懸けたが、今ではそれを後悔し世界はイエスを理解している。諸君は日本の行為を誤解し、日本をイエスと同じく十字架に懸けようとしているが、いずれ後悔し日本の行為は理解される日が来るであろう。」という各国代表に強い感銘を与えた有名な十字架演説を連盟総会で行っている。

 1937年7月7日に、支那側の挑発により支那事変が勃発したが、連盟を主導する英国は、非同盟国の米国を引きづり込むため、9カ国条約会議を開催し、日本を9ケ国条約違反として断罪するつもりであった。

 しかし、日本は、支那事変は支那側の挑発に対する自衛行動であるので、9ケ国条約の範囲外である、解決の要諦は支那が自粛自省し、日本との提携政策に転向することである、支那の事情を知らない東亜に関係の薄い諸国が会議において解決を図るのは却って有害であると、会議への参加を拒絶した。英国は米国ばかりでなくソ連も利用して日本を抑圧しようとしたが、英国と支那の連盟工作は実質上失敗に終わった、とある。

 また、本書第2部においては、米国の対日経済圧迫、対日石油圧迫、経済封鎖、資産封鎖、国際連盟の名を借りた英米の世界制覇、世界の1/3を占めた覇権国家・英米への日本の正当なる反逆について記述されている。

米国は、1939年7月26日、30年間、友好親善の礎となってきた日米通商条約の破棄を、突然、一方的に日本に通告した。これは、日本への輸出を自由に禁止できるようにするためであった。

 以後、米国は、1941年8月1日に石油の全面輸出禁止に至るまで、航空機燃料、機械、屑鉄、非鉄金属などほぼ全ての材料、商品につき、漸次、日本への輸出を禁止した。この間、米国は、自国からの輸出だけでなく、フィリピン、南米から日本への輸出を禁止させ、英国、オランダに対して東南アジアから日本へのゴム、錫などの資源の輸出を禁止させ、米の輸出を妨害した。また、米国は、日本とオランダとの石油輸入交渉を妨害し、オランダ領インドネシアからの石油の輸出を禁止させ、日本船のパナマ運河の通行を禁止した。また、支那及び米国本土において、日本製品を排斥し、第2次上海事変(1937年8月)でのプロパガンダ写真を流布するなど、反日世論の形成に手段を選ばなかった。航空機及びその部品の日本への輸出禁止は、通商条約破棄前に既に行われていた。

 遂に、米国は、1941年7月25日に在米日本資産を完全に凍結し日本の商業活動を完全に停止させ、8月1日には全面対日石油輸出禁止に踏み切きる一方、中立法を改正し武器貸与法を成立させ、資金、武器、軍人などの蒋介石への援助を増大させ、南京から日本本土への空爆を立案している(予備役、退役米軍人フライングタイガーの南京への派兵、ルーズベルトは出撃同意書に署名している)。

 このとき、米国は、日本を窒息させる政策を行えば、日本を容易に屈伏させることができると考えていた。これにより、日本は、戦力と経済力が日々低下する中、否応なしに屈伏か、決起かの決断を強要されたとある。

 最後に、経済封鎖について、次のように記述している。
 平時封鎖は、戦闘が行われていないにも係わらず、強国がその専横を欲しいままにするため牽強付会の理屈を付けて弱国を虐げる用具としたもので、本質上敵性を有していることは議論の余地がない。したがって、被封鎖国は、当然に、これを何時でも戦争原因と見做し得るのである。
 逆に、弱小国が強国の港湾を単に封鎖しただけでも、強国は、直ちに、戦争を開始するのは必定である。
 このような我が儘な慣行は、建設されるべき世界秩序において容認できない。現実に即して考えれば、かくのごとき圧迫手段のために苦痛を蒙るものは、持たざる国とその国民のみである。
 豊富な資源と強力な海軍力を有するアングロサクソンは、この種の圧迫に対して何ら痛痒をも感じることはない。

 経済封鎖は、米英が自己保持のため、帝国主義的進出のために、仮借なき経済戦争を極力普及させて、世界制覇の夢を実現する手段とするものである。
 係る利己的制度は、国際連盟そのものと共に、新秩序下においてはこれを解消せしむべきこと勿論である。と記載している。

米国が連盟加盟国と結託して、日本を完全に経済封鎖し、外国から資源、材料が日本に完全に輸入されなくなったことが戦争の原因であるとする。

 本書に記載された米英の日本への軍事、経済圧迫は、東條英機の宣誓供述書の内容と完全に一致する。

 本書は、歴史の真実を追究し、日本の自虐史観を改めるに必須の書籍である。戦後、日本は一方的に侵略戦争を仕掛けて、アジアに迷惑を掛けてきたと教育され、それを疑わないできた日本人、特に、政治家、評論家、ジャーナリスト、学者などは、本シリーズ第5巻~8巻を合わせて、必読すべきである。
 多くの日本人が是非とも読まれることを薦める。

村山秀太郎が選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十一回)

56)日本に「市民意識」が育たないのは、日本人にはそういう外枠への想像力や構想力が弱く、ために、自分が属している小集団の価値観を絶対化し、それを外の世界へ主観的に押しひろげていこうとするわがままや無理強いが幅をきかすことになるためだろう。

57)日本人・・・・・・は行動というものをつねに一種のスポーツと考え、当意即妙に、現実に適応する爽快な遊戯精神はそこからは出てこない。(中略)欧米人の・・・・・仮面の裏に、いつでも人をも私をも傷つける強靭な合理主義の刃が顔をのぞかせているのは行動の規範が他人への見栄にではなく、自己への誠実さそのものにもとめられているからにほかならない。

58)ヨーロッパ社会では・・・・人間同士の横のつながりに、もう一つの重直の軸が置かれている。

59)われわれは、これまで、つねに、個人であり過ぎるか、日本人であり過ぎるか、そのいずれかでしかなく、両者の契約的な、仮説的な、とらわれのない、自由な関わり方をどうしても身につけることじゃできなかった。

60)部分が全体を目的とせず、全体が部分を圧殺しないこの自由な関わり方は、(中略)ヨーロッパ・キリスト教世界全体をささえるあり方であるともいえるだろう。

出展 全集第一巻ヨーロッパの個人主義
56) P307上段より
57) P310上段より
58) P313下段より
59) P324下段より
60) P325下段より

『GHQ焚書図書開封 9』の刊行(二)

GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書)
(2014/03/19)
西尾 幹二

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アメリカは、どのように「対日宣戦布告」をしたのか?, 2014/3/25

By閑居人

GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) (単行本)

「GHQ焚書図書開封」も九巻目を迎えた。日本人が二度と「白人」と「キリスト教文明」に立ち向かわないために、GHQが秘密裏に行った「日本人からの歴史の簒奪」は、本シリーズでの開示によって、隠されていた真実が静かに読者に浸透していきつつある。

本巻では、前巻に引き続き、「日米百年戦争」の一環として「ワシントン会議から始まる英米主導の第一次大戦後の国際関係の中で起きた様々な出来事」が主題とされる。「ワシントン体制と満州事変、満州国成立と国際連盟脱退、支那事変とその拡大、そして日米開戦に至るプロセス」が語られていく。
著者は、全体を二つに分け、前半では歴史的事件の概略を紹介する。後半では、昭和十八年に毎日新聞から公刊された「大東亜戦争調査會篇」叢書をもとに、アメリカが計画的に日本を追い詰め、「経済戦争」に踏み切ることによって、日本が軍事的に「先制攻撃」を仕掛けざるをえないところに、《いかに巧妙に、そしていかに執拗に》追い込んでいったかを語ろうとする。
「戦後われわれの視野から隠されてきた(或いは日本人が忘れようとして眼を塞いできた)、我が国が開戦せざるを得なかったあのときの国際情勢、気が狂ったようなアメリカの暴戻と戦争挑発、ぎりぎりまで忍耐しながらも国家の尊厳をそこまで踏みにじられては起つ以外になかった我が国の血を吐く思い」(本書まえがき)が、この「大東亜戦争調査會篇『米英挑戦の真相』」に、具体的に、冷静な筆致で描かれている。
解説を交えて、このことを語ろうとする著者の口調も冷静そのものである。それは、恐らく、著者が、「大東亜戦争の真実」について、公正で、深い洞察に充ち満ちた分析と考察を残した「大東亜戦争調査會」への敬意を禁じ得ないからだろうと思われる。

本シリーズの「第一巻」で、著者は、GHQが秘密裏に没収した「連合国軍総司令指令『没収指定図書総目録』」の存在とGHQの動機を解明している。
GHQが行っていた「検閲」については、江藤淳の一連の著作によって知られていたが、没収された図書については、つい最近まで着目されなかった。著者は、十数年前にこの事実に気づき、また、既に千数百点収集していた水島聡氏に勧められて本シリーズの刊行を決意した。
(参考までに言えば、隔月刊行雑誌「歴史通」2013,5は、七千冊以上の没収本のうち六千冊を、鎌倉の自宅の書庫に集めた澤瀧氏をグラビアと関連記事で紹介している。)
著者が書くように、この「没収図書の選定」に、法学界の長老牧野英一(刑法)、若き東大助教授尾高邦雄(社会学)、金子武蔵(哲学・倫理学) が関与していた事実は衝撃的なことだった。なぜなら、本シリーズを読めば理解できる通り、没収された書物は、いずれも当時の日本人の観察力の高さと知性と洞察力を証明するものであるからである。いわば「日本人の誇りと存在証明」というべきものを抹殺することが何を意味するか、「分からなかった」とは口が裂けても言えないことであるからである。
著者も触れているが、最近、渡辺惣樹氏が丁寧な解題をつけて翻訳した「アメリカはいかにして日本を追い詰めたか」(米国陸軍戦略研究所、ジェフリー・レコード)は、戦前のアメリカ政治の正当性を擁護する「歴史正統派の論理」で、「経済戦争を仕掛けたアメリカは真珠湾以前に実質的に宣戦布告をしたも同然だ」という「歴史修正派」と同じ結論を述べている。「修正派」はアメリカでは少数派であるが、戦前の日本の主張とほぼ同様の考察を示している。こういったことは注目すべきことだ。

本書は、「GHQに没収された図書」を通して「日本を取り戻そうとする試み」の一環である、と捉えることもできるだろう。

村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十一回)

51)日本と西洋の歴史が似ているなどということにどれだけの意味があるのだろう?

52)言論人とは、言葉とじゃれつくだけであり、その言葉は現実に作用する力をもたず、ただ、現実を回避するための媚薬の役を果すに過ぎない。

53)ドイツ人・・・・の自己主張の激しさと、それとまるで対蹠的な彼らの秩序愛。

54)日本人は正確好きであり・・・・日本人の美感は乱れや、汚れや、歪みといったものにはいつも敏感に反応する・・・・それを支えているのは、必ずしも論理や形式や行動の型ではない。・・・・・美意識が道徳になる民族の弱さがある。

55)ヨーロッパ人の自我の強靭さ・・・・激しい自己主張のあるところにしか、たくましい自己犠牲の宗教も生まれるはずはなかったし、根源的な拒絶と不信のある世界にしか、愛の宗教も成立しないと思われるからである。

出展 全集第一巻ヨーロッパ像の転換
51) P203上段より
52) P208下段より
    全集第一巻ヨーロッパの個人主義
53) P290下段より
54) P291下段より
55) P295上段より

『GHQ焚書図書開封 9』の刊行(一)

GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書)
(2014/03/19)
西尾 幹二

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アマゾンのレビューより

2014/3/25 By大サダトン (埼玉県和光市)

レビュー対象商品: GHQ焚書図書開封9: アメリカからの「宣戦布告」 (一般書) (単行本)

戦前我が帝国は米国からの悪辣な策謀に良く耐えたものだと感心する。国際連盟を隠れ蓑にしする英国。この英国を裏でコントロールし日本の満州利権を狙う米国。ろくに自国の治安を維持できず、国家の体をなしていないのに一人前に日本を批判しテロを加える中国、悪質な共産主義革命を輸出し近隣国を侵略するソ連。大日本帝国が直面した脅威と先人の苦労は日教組教育や歴史教育からうかがい知ることはできない。それにしても米国の策謀は悪質の一言に尽きる。宣戦布告と同様の対日経済制裁(石油、屑鉄、鉱石類等の輸出禁止)、パナマ運河通行拒否、通商条約の一方的破棄のみにかかわらず、事実上の軍事行動である蒋介石政権に対する空軍の派遣及び日本爆撃計画、日本が受諾困難と知りながら日本の主権と米国が日露講和会議で承認した日本の満州権益を事実上否定するハルノート等悪事に事欠かない。米国はなんら国益の侵害とならないフランス政府との合意に基づく南部仏印進駐に目くじらを立て、アイスランド、グリーンランド及び中東フランス領を平気で占領するばかりでなく、バルト3国やフィンランドを侵略するソ連に膨大な軍事・経済援助を提供する。米国は悪辣な侵略者や無責任・失敗国家(当時の中国)には随分と親切である。
 中国でうそをつく宣教師、反日記事で自国民をだます作家(ちなみにパール バック(この女性作家は中国で記事を書き本国に送っていた思われているが、実は安全で治安の良い日本にいて中国の現状を知らずに書いていたということがラルフ タウンゼントの「暗黒大陸中国の真実」で明らかにされている))もいる。
 今日平気でうその歴史本で金をもうける作家(半藤一利、加藤洋子、北岡伸一等)、米国の悪の系譜は今も日本に巣くっている。
 しかし米国の戦略は成功したのだろうか。大英帝国は解体し、東ヨーロッパとアジアの大部分は共産化し、共産主義からイスラムのテロリズムまで新たな脅威に対抗しなければならず、結局自らの国力を消耗させ、世界の警察官から転げ落ちようとしている。米国の世界での軍事行動を正当化する根拠は「平和の出来で侵略者日本とナチスドイツを打倒した」という実績であるがこれも崩れ去ろうとしている。しかしこの「虚構の歴史」を否定できず、世界中で米軍将兵が血を流し続け国家は疲弊する。米国は自らの悪行にはまり抜け出せないでいる。
- 3つの主張と2つの使命 ー
 西尾氏の著作を読んで確信することができた、戦前日本(今日も)の主張は
‘一 植民地の解放 二 資源と市場の独占の廃止 三 人種差別の撤廃ではないだろうか。
 そして我が国の使命あるいは天命は
‘一 欧米勢力の拡大阻止 二 有害な中華思想の破砕ではないだろうか。
 この主張と使命に日本の原点があるように思えてならない。

村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第十回)

46)ヨーロッパ人にとっては、今も昔も「日本」などはあってもなくても良い存在でしかない以上、両者の関係は徹底した無関係である。

47)外国人が日本をどう評論しているか(中略)しきりに気になって仕方がないという心理が一方にあり、それでいて他方には、外国を少しでも馬鹿にして安心してしまいたいというもうひとつの別の心理が日本人にはたしかにある。(中略)自信のなさ、孤独に耐ええない弱さの表明である。

48)自然科学のあの真理への情熱は、キリスト教の世俗化の一形式にほかならない。

49)終末に向って無限に進行していくという時間観念をもたない世界では、一般に歴史意識というものは育たなかった。

50)弁証法的な発展の思想、すなわち進歩の観念は(中略)、キリスト教の時間観念の裏返しであり、世俗化にほかならない。

出展 全集第一巻ヨーロッパ像の転換
46) P197上段より
47) P198上段より
48) P203下段より
49) P204上下段より
50) P203上段より