西尾幹二全集発刊にからむニュース(1)

 これからときどき全集発刊までに少しづつ完成していく全集関連の新しい具体的情報をお知らせするようにしたい。

 全集の制作はやはり容易でない。大きな山を登攀(とうはん)する苦しさにも似ている。毎日毎日心をゆるめずに作業しなくてはならない。細心の注意と大胆な判断を必要とする。時間がかゝり、まだるっこしく、いらいらするが、自分のことなので投げ出すわけには行かない。協力者から自分のことなのにちゃんとやらないと叱られたりもしている。

 やっと第5巻(第一回配本)『光と断崖――最晩年のニーチェ』が先週校了となった。内容見本の最終ページをごらん下さい。本はこんな形になる。ここには目次の大略も書いてある。

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 箱入りの古典的全集スタイルだが、箱には帯がつき、帯には宣伝文句が記されることになる。帯の表側と裏側の両方に言葉がある。やっと先週帯の二面に添える言葉がきまった。

すべてを凌駕する決定版 
西尾幹二のニ ー チエ!!!
発狂寸前のニーチェ像を立体化する
名著『ニーチェ』に続く未収録を集大成
『光と断崖―最晩年のニ ー チェ』
国書刊行会 定価:本体5,800円+税

『光と断崖』より
ニーチェの生の概念も、ゴッホの光の効果も、近代を支えていた明るい現世肯定の、影も憂いもない理性に導かれた楽天的な安定性を誇っていない。それらはぐらぐらと揺れている。背後の闇から突き上げて来るものを抱えている。しかも、二人はともに自己崩壊し、精神のこの闇に吸い込まれてしまう直前に、いずれも仏教あるいは浮世絵という思いがけぬものを手掛かりに、自分らの知らぬはるか遠い「異世界」に期待の目を向けたのだった。

次回配本 第1巻『ヨーロッパの個人主義』’12年1月刊。

                    

第5巻の読みどころはやはり「光と断崖」という『新潮』(1987年10月号)に掲載された160枚の論文であろう。もうひとつ逸せられないのは「ドイツにおける同時代人のニーチェ像」で、私が初めて打ち出した、資料に語らせる新しい形式のニーチェ像である。これはなかなか魅力のある読み物だときっと読者は言ってくれるだろう。本邦初公刊である。

「西尾幹二全集発刊にからむニュース(1)」への2件のフィードバック

  1. 外国人単純労働者受け入れ問題でのNHKの討論番組で先生を初めて知ったときから(その時は手塚治虫さんに似てるななどと思ってたものですが)「ヨーロッパの個人主義」を手にとって以来、ずっと先生の評論とともに生きてきました。おそらくまだ読んでないのはニーチェ関連の御著作だけなのですがこの全集の発刊を期に拝読させていただきます。私は高校の美術教師でむかしからゴッホが気になっていた分、今日のブログを拝見しなお興味をかきたてられました。また岸田秀氏との共著も期待しています。

  2. 私も1(↑)の方と同様に西尾先生を知ったのは、外国人労働者問題がキッカケでした。確か、朝生だったと思います。ほとんど孤立無援の状態で議論していた西尾先生のお姿が、とても当時印象に残りました。

    その後、大学の図書館で偶然手にとった「自由の悲劇」が私の胸に響くものがあり、すっかり今日までファンになってしまいました。

    一度渋谷の講演会にお邪魔した際には、「壁の向こうの狂気」に私の名前
    と先生の直筆サインを頂きました。とても嬉しく思い、宝物になっています。

    全集も楽しみにしています。

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