書評:昭和天皇 七つの謎 

書評:昭和天皇 七つの謎 加藤康男著(ワック・1600円+税)

評論家 西尾幹二

きわどい皇室の歴史に肉薄

 皇室の中心部、すなわち天皇の側近に国民の常識とかけ離れた異質な集団が入りこんだら恐ろしいことが起こる。ことに非常時においては国家の運命を左右しかねない。私はそういう不安をずっと抱いているが、本書の「七つの謎」のうち最重要の第3章「天皇周辺の赤いユダ」、第7章「皇居から聞こえる賛美歌」は戦中戦後に皇室を現実に襲った事件を論じ、日本民族を本当に危うくしたきわどい歴史に肉薄している。

 近衛内閣は支那事変の不拡大方針を表明していたがどうしても実行できなかった。軍の中枢に共産主義者がいて、計画的に支那事変を拡大し、日米戦争までもっていって日本を破壊し、敗戦後の共産革命を一挙に果たすと計画していたらどうなるか。関東軍司令官の梅津美治郎にその疑いがあった。近衛文麿の身辺にマルクス主義者を配置したのは彼である。近衛はゾルゲ・尾崎グループの謀略に乗せられたことに時を経て気づき、不明を恥じるが、終戦の決断を急ぐように陛下に上奏(じょうそう)した際、和紙8枚を陛下側近の木戸幸一に渡した。その日のうちに梅津の手に渡り、2ヶ月後に吉田茂以下の和平工作派が逮捕された。

 木戸幸一は「赤いユダ」の中心人物だった。ソ連との和平交渉役に木戸は身内の都留重人を立てた。都留はハーバート・ノーマンらと組んで戦後日本の共産化を企てた学者だ。「天皇の知らないところで木戸は共産主義者と手を結び、近衛を陥れた」

 皇室が危うくなったもう一つのドラマは戦後のキリスト教への改宗の危機である。宮内庁長官、幹部、侍従職、女官まで含め、皇室とその主だった周辺はクリスチャンだった。天皇はもとより皇居や各宮家も聖書研究会を催し、キリスト教に感化された。「マッカーサーの戦略」は着々と進んでいた。

 共産主義とキリスト教は根が一つで、民俗信仰の独自性を大切にする皇室の伝統とは相いれない。著者は通説を疑い、批判し、そこから先は言えないぎりぎりまで推理し、誰も書かなかった歴史の闇を切り拓(ひら)くことに成功した。

産経新聞6月7日 読書 この本と出会った より

 この書評はわずか800字という制約があったので、同書の主張の中の最も重要なポイントの一つを私は取り上げることができなかった。それはさきごろ刊行された『昭和天皇実録』への加藤氏の疑問である。

 加藤氏は『実録』をよく調べておられる。昭和天皇の事績の中で、当然記されるべきことが『実録』には記されてなかったり、詳しく書かれるべきことが略記されたりしている例を多数発見している。実録と称して実録ではないのではないか。人を欺く一面がありはしないか。

 あまりにも早く編纂刊行された『実録』にはある種の政治的動機が潜んでいはしないか。私は氏の疑問を正当な批判であると感じた。

 上記書評では言及できなかったので、読者の皆さんは同署の、とくに最終章に注目して読んでいただきたい。大変に重要な氏の洞察であると私は思う。

「書評:昭和天皇 七つの謎 」への2件のフィードバック

  1. 西尾さん,最近よく,次のYouTube再生リストに移したGHQ焚書図書開封の動画を拝見しています。まだでも,一度見終えたのは,第20回前後までです。
    https://goo.gl/BZ6OB3

    焚書図書のご解説のとおり,確かに,軍部の認識の限りでは,「日本は侵略も植民地支配もしていない」というのはもっともだと思います。
    私のほうで収集した次の2つのYouTube再生リストによっても,同様の結論になります。
    http://goo.gl/KnhTNu
    http://goo.gl/D6SgoF

    ただ,しかし,昭和天皇の戦争責任についてはどのようにお考えでしょうか?
    私のほうは,次のYouTube再生リストを見ながら,歴史の真実の可能性を検討しています。
    https://goo.gl/ZMSMiG

    上の再生リストにある多くの動画では,そのソースが明確ではありません。
    したがって,動画の内容とは異なって,「本当に明治天皇はすり替えられたのかな」と思う余地があります。
    とはいえ,少なくとも戦前から天皇財閥というものが存在して,昭和天皇がアシュケナージ貴族ら(似非ユダヤ貴族ら)の手先として,明確には軍部の暴走を止める行動をとらず,戦時中のアヘン取引や人身売買に加担し,戦争を金儲けの手段に使っていた可能性は十分にあります。
    「軍部は先の戦争を望まなかったが,経済界と国民とは望んだ」といったようにもご説明ですが,アシュケナージ貴族らは1900年以前から,報道機関をうまくコントロールすることで一国の政治を操作することができることに気付いています。

    次のブログ記事は,アシュケナージ貴族らが世界支配の指針として記したシオンの議定書についてまとめてみました。
    http://fanblogs.jp/miracletoypoodle/archive/97/0

    私のほうでの昭和天皇の戦争責任についての検討は,今のところ次のブログ記事のとおりです。
    http://fanblogs.jp/miracletoypoodle/archive/130/0

    アシュケナージ貴族らは,植民地時代の米欧諸国の悪事の限りをよく知っていて,したがって,米欧諸国は似非ユダヤ問題を大きく取り扱えず,例えば,スターリンが戦後にアウシュビッツ収容所でユダヤ虐殺用のガス室を捏造したことすら追及できないような気がします。
    捏造の事実については,次のブログ記事で説明しています。
    http://fanblogs.jp/miracletoypoodle/archive/84/0

    私のほうでは,「右翼左翼への分裂と,それらの間の対立は,アシュケナージ貴族らの陰謀によるものなのでナンセンス。まず,よく真実を知るべき」といったことを考えています。

  2.  マッカーサー元帥による「皇室のキリスト教改宗戦略」について、「天皇と原爆」を上梓された先生は、その本質を能くご洞察のことと存じますが、小生が注目するのは、マ元帥がその戦略を進めるために「カソリツク(旧教)」と「プロテスタント(新教)」の双方の力を動員した、ということです。そこから、次のことが明らかになると考えます。それは、マ元帥が「フリーメーソン」の高級幹部として「新旧両教」を超越する「或る一神教」の信仰を持ち、道具として「新旧両教」を使嗾したことです。

     そこから明確になるのは、フリーメーソンの高級幹部(フィリピンロッジのトップ)としてのマ元帥の目的は、「皇室のキリスト教化」そのものではなく、「皇室の非神道化」にあった、に相違ないと考えます。即ち、世界の宗教史は「一神教の世界制覇と、それによる古代からの民族信仰の絶滅」に他ならず、マ元帥の戦略目標は、次々と消滅させられてきた「古代からのミュトスを淵源とする民族信仰」の最後の一つである「日本の民族信仰・神道」とその宗家である「皇室」を形骸化させ立ち枯れ(消滅)させることであったと直観いたします。

     一神教は、おそらく古代エジプトのアテン信仰あたりを起源とし、その後「ユダヤ教」として巧妙に理論構成され、やがてキリスト教、イスラム教として世界的に蔓延した「疑似宗教」の濁流であり、「コスモス」としての「宇宙」を否定するフィクション(イデオロギー)に過ぎないものと直観するところです。而して「コスモス」としての生成化育する「宇宙」と、神話と祭祀を通じて感応道交する民族信仰・神道とは真逆にある存在であると認識いたします。(この先の論議はここでは省略いたします。)

     マ元帥の強引な皇室戦略は、皇族方と表(宮内庁)と奥(女官・侍従達)の多くを汚染し九分通り達成したように見えましたが、先帝陛下、今上陛下と僅かな内廷職員(掌典、内掌典の方々)のギリギリの抵抗により「宮中祭祀」が形骸化されることなく何とか存続し、それにより一筋の糸の如く命脈を保ってこられたものと認識いたします。しかし、これを妨害する策動は表奥双方の官僚共によって今も執拗に継続しているものと承知いたします。(斎藤吉久著「天皇の祈りはなぜ簡略化されたか-宮中祭祀の危機-」(並木書房)等ご参照下さい。)

     さて、その後、マ元帥は、大統領の座を狙い、同じフリーメーソンのルーズベルトと争って破れ、「ブナイブリス直系のFDRに対し、自分は傍流の田舎メーソンに過ぎなかったこと」に気づき、少しは反省したような様子でもありましたが、死後は、FDRと同じ地獄の窯に入れられて石川五右衛門と同じ苦しみを、いやその千万倍の苦しみを味わい続けていることでしょう。

     いずれにせよ、マ元帥自身も将棋の駒の一枚として使嗾されたところのこの「戦略」は、古代人そのままに祭祀を守られる今上陛下と、厳密な習礼によりそれを継承される皇太子殿下に照準を合わせ、現在も、将来も執拗に続けられていることを、心ある日本人は座臥念頭におき、皇室守護の祈念を深めるべきものと確信いたします。

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