前橋講演における皇室問題への言及(三)

女性天皇について

 ところがここにきて面倒な問題が沸き起こっております。実は専門の法律学者が主に発言すべき問題かと思っておりますが、皇位継承を考えるための懇談会というのが開かれました。第一回の会議も行われたようでございますが、私の知るかぎりでは専門知識を持つ人は一人しか入っていないように思います。

 そして、「女性天皇を認めよう」という簡単な答えで決着をつけようという官僚サイドの意図が、あるいはまた小泉首相の意図が最初から見え見えであるという粗略な印象を抱いております。小泉さんは最初から思い込みの強い方で、北朝鮮との国交回復、郵政民営化、もう決めたらワンパターンのアイデアにこだわる人であります。しかもスタートを成すとき、起点を成す問題点にそれほど深い考察を加えておられるようにみえない。知識も持っておられない。 

 皇室の問題を素人ばかりの集団で、かのジェンダーフリーの専門家が一人入っているような懇談会で、官僚やその他の世界で功なり名遂げた方であるかもしれないけど、歴史のことはほとんど知らない方々を集めて押し切ってしまっていい問題だろうかと思います。時間も足りないのじゃないかと不安を抱いています。9月までに答えを出すなんていうのは拙速です。3回か4回の会議で答えを出して、それで来年法律を作って決めるなんというので果していいのだろうかと不安を抱かざるを得ません。

 その理由は、万世一系の天皇の系譜を維持するには男系でなくてはならないという原則です。それはみなさん、新聞で論じられていますからお耳にしていると思うわけですが、女性を天皇にするということと、女系、女性の系列を皇統にするということとは別のことです。

 過去にわが国には8人、10代の女帝がございました。古代史に6人、江戸時代に2人。その女帝の方々のお子様が帝位につく、すなわち皇統を継承した例は一つもないのです。夫君である天皇と死別したお后が、自分の子供、あるいは皇子が、あるいは甥が、大きくなって帝を継ぐまでの中継ぎ役として女性天皇があったというのが現実でございまして、女性天皇がヨーロッパの王室と比較してこうだとか、男女平等の時代になったからこうだとか、という風なことをいって、歴史の事実を覆していいのだろうかという疑問を強く抱かざるを得ません。

 その心配は強く国民の中の歴史を知る人、保守系の皇統を尊重する人々の中から今澎湃と沸き起こっております。私だけでなく多くの人がそういう声を上げておりまして、何とかして男系に戻さなくてはいけないのではないか、と。

 ご承知のように戦後GHQが11宮家を廃絶してしまいまして、以来、今の天皇家の直系だけが宮家に残っているということでございます。他の系列の宮家を復活して将来に備える必要はないのだろうかと、そう正論を唱える人は少なくないのでありますが、しかし私自身はすべては遅すぎるのではないかという不安も強く抱いているのでございます。

 と申しますのは、それでは女帝ではなぜいけないのか?女帝ではいいのですけども、女系ではなぜいけないのか?今まで女帝は先ほども言ったように何人もおられる訳ですけども、大体女帝でご結婚されている方はおられないのですよ。女帝はみな寡婦であるか、生涯独身であるかのいずれかでした。すでに夫が、まあ天武天皇と持統天皇の関係とかですねぇ、夫が亡くなられた後、継いだケースはもちろんあるのですけれど、それであってもあと独身で通されている。

 ですから、今もし愛子様が天皇を引き受けて、そして相手になる男性の人が何十年か後に選ばれたとしても、その方をお呼びする呼び名が日本の歴史の中にないのです。男性の、つまり女帝のお相手というのが今までないのですから、その方の呼称がないのです。そのことも我々が考えてみなくてはならない問題だろうと思います。

 つまり、すべての女帝は中継ぎ役であって、宮家から男性の、皇統の男系の方を内親王と結婚させて、そして次の天皇を生み出す。それまでの中継ぎとしての女性天皇、時間稼ぎの、それが江戸時代もそうでございます。

 あるいは、何世代か前の別系列の天皇の血筋を引き継がせる。江戸時代における最後のケースは光格天皇という天皇ですが、この天皇の系譜がまっすぐ今の昭和天皇まで続いているということになっております。

「前橋講演における皇室問題への言及(三)」への5件のフィードバック

  1.  なぜ日本共産党がいち早く「女天皇」を認めたか。先生ご指摘のとおり、一見男女共同参画の趣旨に沿ったように見れますが、究極的には将来の皇位継承問題に楔を打ち込む為のものでしょう。「天皇制打倒」の為の第一歩です。必ず将来「正当性」の問題を持ち出し、国内撹乱に出てくるでしょう。

     所謂「天皇制」の打倒悲願は、自民党が手を握っている公明党にも潜在しておると思います。天皇家は神道であり、邪魔になるからですね。

     単に「男女共同参画国家」という「人造国家」を目指す勢力にとって、「天皇制」は大きな打倒するべき障壁に見えるものと確信します。

  2. 愛子内親王の婿殿が、「中村君」となって、嘗ての友人が、「おい!中村!天皇の婿の心地はどうかい?偶には、内情を漏らせよ!」

    まあ、そういう事が起きても、何の統制も出来ない制度のなかで、天皇制度は、溶けて行くのだろうと 想像出来る者は少ない。あらゆる意味で想像力の欠如が、今のソーリにも共通するオツムの問題かと。政治の世界に想像力を欠いた者が指導者となるとやっかいです。国防の想像をしたことが無い。かつて、国防は言うと、クビになった。

  3.  女性天皇問題は一般的には、それでいいんじゃないかで国民のコンセンサスがすでにできあがっていると思いますが、先生たちが父系と万世一系の解説をしはじめてから、なるほど、そういう重大な意味があったのかとは改めて思いました。
     けれども、やはり次の次の代に限っては愛子様でいいんじゃないかと思います。次の次の次がお説のとおり男系に戻ればいいんでしょうから。女性であっても男系に限ると皇室典範に書けばいい。少子化社会だから、皇室についてもこの女性天皇容認の趨勢はくつがえらないと思います。皇室だけにファミリーの観念に替えて、全面的にイエの観念を復活させるのは無理なんじゃないですかね。民法とあまり懸け離れてしまっても困ります。皇室が遠くなる。
     すご〜く、邪推すると、この女性天皇まった運動は最近の皇太子の動向ともからんでいるような気がします。皇太子はここんところ政治的発言を強めているし、やや” 意志的な “単独行動が目立つようです。これに危機感を強めている勢力がある。ここで一本釘をさしておきたい、じゃないかなーーなんて疑ってみました。あるいは、旧宮家の復活という、もっと大きな経済的野望があるのでしょうか?政治的野望?
     どっにしろ、こんなに国民に人気のある皇太子・雅子妃の進行方向に待ったをかけるような声が保守派と言われる人たちの間から挙っているのは、やや腑に落ちません。問題は愛子様うんぬんではないような気がする。今回、皇室典範を改正するときに、女性であっても男系でなければならないとするだけではだめなんでしょうか?これ以上の旧制度の復古には、ほんとに広範な国民の議論が必要です。天皇制度とはなんなのかという。
     なんにしろ、私は皇太子・雅子妃を支持します。愛子様が女性天皇でよろしいです。

  4. 皇室制度とは国家の連続性を象徴するものですよね。私たちが現在享受しているもろもろの権利、経済的地位、それらすべてが戦後突然与えられたものではありません。日本人が歴史を通じていわば共同作業として実現してきたものです。女性の権利ですら、既に江戸時代には妻の側から離婚を請求することもできたし、財産権も一定の限度あったことが明らかです。所有権の確立などは江戸時代には完全に実現されていました。しかし、残念ながら現在の議論はすべて戦後の憲法を前提としているところから、おかしな議論となっているのではないでしょうか。新憲法は八木先生が縷々説かれているようにジョンロックの社会契約説に立っているのですから、基本的には歴史を無視し、新たに社会を設計できるというフィクションに立っています。いうまでもなく、これはマルクス主義の立場と共通し、皇室制度とは明らかに矛盾するわけです。私たちが先祖から受け継いで来た日本、それは祖父母、ふるさと、もろもろの文化、歴史を大事にする思いと重なると思いますが、これを伝えようとするなら、歴史と伝統をまず、考えるべきと思いますね。皇統の危機について言えば、これは戦後の占領軍の間接的軍政によりもたらされた宮家廃絶が原因ですから、旧宮家を復活すれば済むことです。復古調とかいう人がいますが、これは単なる情緒ですね。国民感情とも合致する一番良い方法は愛子様が旧宮家のどなたかと結婚なさることですが、こればかりは分かりませんから、皇統の断絶を防ぐ、制度的な保証をつくるべきだし、かなりの識者が国民感情とかしきりにいうのは要するに言い出す勇気がないんでしょうね。岡崎さんがいっていますが、そのうち良い智慧がでるだろうから、先延ばしでも良いのではないかというのにわたしは賛成です。一番よくないのが、憲法とか、男女共同参画社会とか瞬間瞬間の事象をとらえて議論することではないでしょうか。それは西尾先生のおっしゃるように左翼の好餌となるばかりと思います。

  5. 民法で被害を受けていない奴は、金持ち貧乏なべて居ない筈だ。民法こそが、日本溶解の毒物。家族、家系、一族をを滅ぼす毒であるよ。子供ほどにかわゆいものは無い。親ほどに有り難いものはない。

    それを否定するものこそが、民法であるよ。民法攻撃をせにゃならんのよ。

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