英国のEU離脱について

平成28年6月26日 坦々塾夏季研修会での私の談話

 6月25日のニュースを見ながら考えました。今回のイギリスの決定で、離脱派の党首と思しき人物がテレビで万歳をして、イギリスの独立、インディペンデント・デイだと叫びました。常識的に考えて、世界を股にかけ支配ばかりして、世界各国から独立を奪っていた国が、自ら「今日は独立の日だ」などと叫んでいるのですから、いったい地球はどうなっているのかと思いました。

 今日の段階で日本のメディアはヨーロッパの情勢ばかり言っています。アメリカや中国を含む地球全体の話をほとんどしません。そして英国のEU離脱、すなわちEUというグローバリズムの否定、英国ナショナリズムをさも悪いことのようにばかり言っていますが、そうなのでしょうか。

 ヨーロッパは今、確かに混乱していて、伝え聞くところでは、ドイツのメディアは気が狂ったかのようにイギリスを罵って、「こんな不幸なことを自ら招いている愚かなイギリスの民よ・・・、これからイギリスは地獄に向かってゆく。あれほど言ったではないか。」私には、これがドイツの焦りの声に聞こえます。さっそくドイツ、フランス、イタリアの外務大臣が会合して、意気盛んに「すぐにでも出てゆけ。来週の何曜日に出て行け。」まるで借家人を追い出すような勢いで言っているそうです。フランスもイタリアも次の「離脱国」になりそうで怖いのです。ですからイギリスはいろいろ長引かせようと思っても、そういう四囲の状況から早晩追い立てられるようにして出ていくことになるのではないか。いっぽうイギリスの中では後悔している人が何百万人もいて、再投票をしてその再投票願望のメディア、インターネット上の票数が何百万に達したとかいうような騒ぎもありますが、もうそんなことは出来ないでしょうから、決められたコースに従って粛々と動いてゆくことだろう思います。

 それもこれも日本のメディアがEUというグローバリズム、国境をなくす多文化主義を一方的に良い方向ときめつけて、それに反した英国の決定を頭から間違った方向と定めているからではないでしょうか。必ずしもそうではない、という見方が日本のメディアには欠けています。

 各国の思惑はそれぞれで、日本のメディアはとてもそこまで伝えていないけれど、基本的にはヨーロッパの情勢を伝えているだけですので、私は今日は今度の一件を端的にアングロサクソン同志の長い戦い、米英戦争の一環と考えてみたいと思います。アメリカとイギリスという国は宿命の兄弟国であり、また宿命のライバルでもあって、何かというと、どちらか片一方が跳ね上がると、すぐもう片一方が制裁を加えるということを繰り返しています。これはずっと昔からそうで、私が『天皇と原爆』の中でも書いたように、基本的に第二次世界大戦は「アメリカとドイツ」、「アメリカと日本」の戦いであると同時に、実は「アメリカのイギリス潰しの戦い」でもあったということを何度も何度も歴史的な展望で語ったのをご記憶かと思いますが、私の見る限りではそういうことは度々あるわけです。

 今回のイギリスはやり過ぎていますね。何をやり過ぎたかというと、キャメロン首相とオズボーン財務大臣というのは組んでいて、オズボーンはキャメロンと大の友達で、キャメロンの後を継ぐことにもなっていて、キャメロンを首相に持ち上げた人ですが、大英帝国復活の夢を露骨に言い立てています。しかし今の自分の国の力だけでは出来ないので中国の力を借りるという路線に踏み込んで、オズボーンは中国に出かけて行って「ウイグルは中国の領土だ」と言って習近平を喜ばせたりしてやっていたイギリスの勢力です。私なんかは日本人として苦々しく思っていましたが、アメリカの首脳部も苦々しく思っていたのだ、ということがいろいろ分かってきました。

 基本的にヨーロッパはどの国も中国が怖くありません。煩くもないので、中国を利用したいという気持ちがつねにあり、そしてロシアが邪魔という気持ち、この二つがあります。それからドルは出来るだけ落ちた方がいい、ドルの力を削ぎたいという気持ち。これがヨーロッパ人が考えている基本姿勢です。ですから日本に対する外交も全部その轍の中に入っています。なんとかして日本を・・・、という考えは全く無く、この間の伊勢志摩サミットでどんな話が出たのか分かりませんが、結局今言った基本ラインがヨーロッパの政治の中枢にありますので、そういう方向だったでしょう。

 今中国が握っている人民元は2,200兆円(22兆ドル)です。ところが中国は3,000兆円もの借金をしています。だから2,200兆円を世界にばら撒いても、借金が3,000兆円で、年間150兆円の金利を払わなければいけないのですが、中国にそんな力はありません。ですからズルズルと中国経済がおかしなことになっているのが我々には見えているのです。そのズルズルとおかしなことになっている間に人民元が急落するでしょうから、そうなる前に何とか自国に取り込もうと、少しでも自分たちの利益になるようなことをしようということを、各国が目の色変えてやっているのです。その先陣を切ったのがイギリスでした。ご承知のAIIB、アジア・インフラ投資銀行でイギリスが真っ先に協力を申し出たというので、世界を震撼せしめました。それは先ほど言った財務大臣オズボーンの計略だったのです。中国の力を使ってシティを復活させたい・・・。中国もシティの金融のノウハウを手に入れたい・・・。

 中国共産党党員の要人が金を持ち出しているのは夙に有名ですが、その持ち出した金は1兆5千億ドルから3兆ドルの間と、はっきりした額は分らないのですが、1兆ドルは100兆円ですから、「裸官」によっていかに途轍もなく多くの金が海外に飛び出しているのです。しかし、なによりもそれをアメリカがしっかり監視し始めて、アメリカはこれを許さない、というスタンスになってきた。中国人からするとアメリカではもうダメだ、ということで、中国共産党の幹部たちはその資金をシティに逃がしたい。香港経由で専ら中国とイギリスは手を結んでいましたので、シティを使って自分たちのお金を逃したいということもあるのでしょう。

 それを暴露したのがパナマ文書ですよね。それでキャメロンが引っかかったではないですか。ものの見事にアメリカは虎の尾を捕まえたのです。おそらくEU離脱派を主導しているジョンソンという人が次の総理になる可能性が高いと思いますが、あの人物もトランプに顔が似ていてね・・・。(笑)ジョンソンが首相になったら、彼は反中ですから、イギリスはAIIBから抜けますと言う可能性は高いし、今まで支持していたSDRの人民元の特別引き出し権も止めるかもしれない。つまり、イギリスは中国から手を引いて一歩退くという方向に行くかもしれない。中国の悲願は、人民元が国際通貨ではないということをどうやったら乗り越えられるか、何とかして人民元を国際通貨にしたい、どこの国でも両替できる通貨にしたい。それができなかったので、今は香港ドルに替えて、そこから国債通貨にしていますから香港ドルに縛られていたのです。10月からSDRを認められて、人民元はいよいよ国際通貨になれると期待されていますが、英国の離脱でさてこれもどうなるか?疑問視されることになるでしょう。

 パナマ文書という言葉が先ほど出てきましたが、ついこの間までタックスヘイヴンやオフショア金融とかいう言葉が飛び交ったことはご記憶かと思います。タックスヘイヴンは「脱税システム」ということで有名です。私は、あぁこれこそ歴史上イギリス帝国が植民地を拡大した時の悪貨な金融システムなんだなぁと・・・。そうなのです。イギリスは酷いことをやっていたのですよ。タックスヘイヴンというのは、その中心、大元締め、つまり元祖みたいなものはシティです。シティというのは、イギリスの女王がシティに入るためにも許可がいるというほどイギリスの中の独立国みたいなものです。つまりローマの中のヴァチカンのような一つの独立国みたいなもので、それくらい権威が高く、しかも中世から続いているわけです。そしてそれを経て東インド会社ができて、世界中を搾取した、あの大英帝国の金融の総元締めであって、そしてそれによって皆が脱税などを繰り返した。そう、二重財布ですよね。つまり日本でも税金を納めないでやるために商店とかでも二重財布をやっているでしょう。実際の会計と、それから違う会計を作ってやってるではないですか。その二重財布みたいなことをやって、これで世界を支配していたんだなぁと。武力だけではなかったということです。日本は明治維新からずうっと手も足も出なかったではないですか。悪質限りの無いこのオフショア金融あるいはタックスヘイヴンのシステムというものを、今でもアングロサクソンは握っているのですが、結局この思惑が米英で今ぶつかったのですね。

 アメリカはイギリスのやり方がやり過ぎている、というか、チョッと待てと・・・。じつはアメリカだって隠れてやっているけれど、パナマ文書にアメリカは出てこなかった。イギリス人やロシア人や中国人は出てきたけれど、アメリカは国内にそういうシステムがあるものだから誤魔化せるわけですね。ですがアメリカは国際的に大々的にはやりませんよ。その代り各国の不正な取引は監視します、と。

 なぜそういうことになったかというと、一つにはリーマンショック。自分の不始末で金融がぐちゃぐちゃになって、これを何とかしなければいけない。監視しなければいけない。それからもう一つは、ダブついたお金がテロリストに回って、イスラム国みたいなテロリスト集団が出てきたから、これを何とか抑えなければいけないということ。この二つの動機からアメリカは断固取り締まるという方向になりました。そうすると目の色が変わるのはシティです。イギリスはシティによっていま一度大英帝国の夢を・・・、ということですから、これは当然ながらイギリスのシティがアメリカのドル基軸通貨体制の存立を脅かすということになってきます。深刻な対立が生まれていたことがお分りかと思います。

 「中国の野望」は「イギリスの野望」を裏から支えているという姿勢があります。つまり所謂プレトンウッド体制というものが毀れかかってきている。そのためにアメリカは過去にイラク戦争もしてきたわけですから、アメリカは焦っている。しかも身内であるイギリスがそういうことをやったということで、対応をとる処分に苦慮してきたのだろうと思います。

 それでもアメリカとイギリスが永遠に対立するなどということは無いので、結局イギリスの中の体制が変わってキャメロンが辞めて、きっと親米政権が生まれるでしょう。そして、どうせまたアメリカとイギリスは手を結ぶことでしょう。いずれはウォール街とシティは和解するのです。今度の出来事はその流れの一つではないかと思いますが、皆さんいかがでしょうか。

 そうなると、残ったEUはどうなるでしょうか。先ほども申したようにドイツは頻りに「哀れなイギリスよ、お前たちは泥船に乗ったのか?」と言っているそうです。メディアも頻りに「可哀想なイギリスよ」とやりたてている。テレビなどがイギリスは明日ダメになってしまう、というようなことをどんどん流しているそうです。そしてシティがEUから離れていくわけです。そうするとEUは必然的に没落します。それでシティの代わりにフランクフルトにいろんな金融機関が集まってくるということが興りかかっているそうです。しかし100パーセントそうはならないでしょう。つまりこのあとアメリカはイギリスの出方ひとつでシティを守るかもしれません。だから結局EUはドイツが中心。アメリカとドイツが永遠に仲良くなるとは思えませんし、結局アメリカとイギリスは和解してEUはダメになる。そしてシティはアメリカの管理下に置かれる。アメリカ、というかウォール街がシティの上に立つような構造になるのではないか、ということが当たるかどうか分かりませんが私の予想です。
ヨーロッパ全体はおかしくなってくる。フランスやイタリアもEUを否定する政権になるかもしれず、ドイツは英国を憐れんでいましたが、話は逆になるかもしれない。ドイツはEUという泥船をかかえてどうにもこうにもならなくなるかもしれません。

 少なくとも中国の世界戦略は破綻した・・・。良かった!と思います。今度の事件で私は良かった、と思ったのですが、私はドルを少し持っています。ドル建て債券を持っていて、円高になるからみんな落っこっちゃったのです。私なんかほんとに僅かだけれど、その変化をみていると、企業や国家が持っているドルはどんどん目減りするわけですから、大変なことになるだろうなぁと思っています。アベノミクスがうまくいったとかいうのは、あれはほとんど円安政策です。円安があそこまでいったから経済が動き出したのですから、名目上のことです。とにかく個人的には不味いのだけれど、私の中の非個人的な部分は万歳と・・・。心の中で喜んでいます。

 私の短い人生の中でこんなことが沢山はないのです。つまり中国が台頭したのも理解できない。あの最貧国が大きな顔をして、お金で他国を威圧するなどということは5年くらい前までは夢にも考えられなかったということ。そしてあのアメリカがタジタジとして自分で自分を護れなくなっているというのもビックリする話で、イギリスもおかしくなってきた。おそらくスコットランドが独立するのではないかという気がします。スコットランドがもう一回独立投票をやれば確実に離れるでしょう。そうするとイギリスという国は無くなるのです。ブリティッシュという概念は無くなってイングランドになる。イングランドになると同時に大国ではなくなります。何がおこるかというと、おそらく第二次世界大戦の戦勝国としての地位を失う。即ち国連の常任理事国としての地位を継承できなくなると思います。だってそうでしょう。ブリティッシュ、ブリテン大国がイングランドになったら、これはもう違う国なのですから。そういうことが直ぐにではなくとも必然的に起こりますよね。これでイギリスに片がつくと・・・。明治以来日本の上に覆いかぶさっていた暗雲が私の短い人生の中で一つずつ消えてゆく、というようなことを考えながら昨日(6月25日)のニュースを見ていた次第です。

文章化:阿由葉秀峰

「英国のEU離脱について」への3件のフィードバック

  1. イギリスのEU離脱がなぜ現実化しようとされているのか。
    これは、単純な言い方は許されないとは思うが、どうしてもこの現実を解したいという感情が高まっていることは事実であり、私なりに身近な生活感からなんとかこれを具現化できないか考えてみた。

    イギリスという国がどれだけ産業的に国際貢献できているのか、正直わからないが、伝え聞く範囲で判断すると、国内産業が世界に輸出できるほどの技術大国ではもはやないという情報は何度か聞いている。
    この国の世界的地位がどういうものかはここでは省かせて語らせていくと、どんな国でも自国の本当の国力というものがよくわからなくなってきている現代であり、そうした現実に対して何かくぎを刺したい感情が生まれる人間の「性」を、やっぱり止められないということなのかな、というのが私の単純な感想である。

    例えばの話、自分の家計簿がかなり出入りが激しい現実を、普通の人間なら違和感を覚えるのは当たり前で、素っ裸になった自分の家の収支実態を知りたくなるのは普通の感情だろう。
    車や所持品はかなり豪勢なのに、やたらと請求書が束なって家に届く現実を、同居者の人間が不審に思うのと同じ原理で、イギリスの産業構造の実態に不信感が募っていた国民は相当存在しているという前提がまずあるように感じる。
    その意味で、今回のイギリスの判断は(政府の判断とは裏腹な結果だとはいえ)「感情」が前面に出た結果だろうと考える。離脱反対を促したキャメロンでさえも、本当の気持ちはどうなのか・・・。

    この点から見るイギリスの判断は、結果的に健全的だと考える。
    というより、選挙が行われる前の私の予測は、イギリスというお国柄が守られるならば離脱を選択するのではないかと判断した。

    ところが、これをきっかけに海外から進出してきた企業が撤退を余儀なくされるという情報が瞬時にささやかれ、そこで働く労働者はもちろんのこと、関連企業も暗雲を垂れ、いきなりマイナス要素ばかりが国内を襲った。
    選挙前こうした動揺がイギリス国内でどれほど予測されていたのか、さすがに知りえないが、どうやら一部の情報によると、他岸の火事のごとく過ごしていたという話もあるようだ。
    イギリス国民の感情を予測すると、移民問題によって、自分たちの仕事が激減する恐れがあるという情報過多が災いしたというのが現実ではないだろうか。
    ところが離脱を判断すると、今度は主要産業企業が撤退するという新たな情報が強大になり、慌てているというのが実態だろう。

    いったいイギリスという国はどれが本当の姿なのだろう。
    貧しいのか、富めるのか、個人的に言わせてもらうとはっきりしてほしいのである。
    単純な日本人の感情がこれだと思う。

    私の知り合いにオーストラリア人がいて、若いころ二回ほどお邪魔したことがある。
    彼の祖先はもちろんイギリスで、純粋なアングロサクソンだ。
    父親は食品輸入会社の社長をされていて、裕福な家庭だった。
    訪れたときは別世界のような豪邸に住んでいて、所持品もすごいものばかり。
    しかし、彼らの生活ぶりを細かにみていると、実に堅実的で、「無駄」を一切好まない家庭だった。成り上がりではないことがそんなことからも察知できた。
    はたして本国イギリスがどうなのかはわからないが、彼らは間違いなくオーストラリア人である前にイギリス人なんだろうと思う。そのプライドが間違いなく垣間見えた。
    別れる際も友人のお母さんが、スコットランド民謡の「ほたるのひかり」を歌ってくれた。私もつい日本語で歌い、涙した記憶がある。
    そのオーストラリアの友人は、ロータリーの交換留学生として、17歳のときに私の伯父の家にステイし、それがきっかけで仲良くなったのだが、当時は二歳年下の彼がまるで兄貴のような存在に見えた。それくらい彼は大人だった。もう37年前のことだ。
    そんな彼はイギリスをなぜか嫌っていた。その後彼はネスレーに勤めるようになり、世界各国を渡り歩いたようだが、いろんな国の空港の中でも、ロンドンのヒースローは最悪だと語っていた。これは彼の言葉なので、現実はわからないのだが。
    今考えてみると、そうした感情が生まれるということが、かえって彼の心のどこかに「イギリスよ何やってんだ、もっと頑張れよ。」という感情と、日本という国で暮らしその良さを知った彼の心の中で、比較できるものがはっきりしたのではないかとも予想できる。

    はたして本国イギリス人たちが今どんな内情の中でうごめいているのか、予測は絶えないのだが、おおざっぱに言えば、イギリスという国は近代の歴史において最初に行動する国だったわけで、その流れは今回もしっかり現実化したという判断はできると考える。

  2. 「明治以來日本の上に覆ひかぶさつてゐた暗雲が、(私の短い人生の中で、いま)
    一つづつ消えてゆく・・・」と、西尾先生がお話を了へようとされた時、私は必死
    に拍手しました。こんなに力を入れたことは最近なく、手が痛くなるほどでした。

    英國のオズボーン藏相は大英帝國復活の夢を露骨に言ひ立て、その爲に中國の力を
    借りようとして、「ウィーグルは中國の領土だ」と言つたりした。

    これをアメリカは苦々しく思つてゐた。今囘のことは「米英戰爭」の一環として捉
    へることもできるのではないか。

    AIIBにイギリスが眞つ先に協力を申し出たが、これはオズボーンの計略。一方、
    中國は、シティに這入り込んで人民元を國際通過にしたい、「裸官」等はアンダー
    マネーをシティに逃したい。中國の野望はイギリスの野望を裏で支へてゐる。

    イギリスのEU離脱で、それらがむづかしくなつた。
    ・・・ ・・・
    先生のお話の展開に、私は氣持よくついてゆきました。心地よさは結びで最高潮に
    達しました。
    あとの懇親會で、先生に「スカッとしたお話をしていただき、おかげで元氣が出て
    きました」と申上げました。

    何がそんなに嬉しいのか、ですつて? 私には難しいことは分りませんが、面白くな
    りさうぢやないですか。短い人生なのですから、樂しまなければ。こんなことは滅
    多にありませんよ。

    面白いといへば、小池百合子といふ人、都知事選擧を俄然おもしろくしてくれまし
    たね。あの、出馬記者會見のタイミングは絶妙でした。
    石原伸晃都連會長・萩生田光一幹事長代理のうろたへやう! 「違和感を覺える」が
    一夜にして、「有力な一候補者と認識」に變りました。二人の政治センスの缺如、
    間拔けさ加減が白日のもとにさらされて愉快でした。
    それに比べて、小池さんの度胸、讀みは大變なものです。いやー、面白くなりまし
    た。けふも、目が離せません。
    彼女は兵庫から東京に落下傘候補として乘込んで、私の故郷の郵政潰しに加擔した、
    許すべからざる仇です。でも、もしも黨の推薦のないまま立候補するのなら、彼女
    に投票しようかと思ひます。安倍自民が搖らぐことを願つて。
    でも、もし前の舛添さんの時と同じやうに、安倍さんが勝馬は小池さんと讀んで、
    寄つてきた場合は、外の人に入れるつもりです。

  3. グローバリズムはかつて世界中で 猖獗を極め、多くの人々が熱病にうなされるように実現を模索した共産主義と似てはいないか?
    どちらも現実離れした理想主義が基点になっているから、現実社会との齟齬を生じ、矛盾を糊塗していく点がそっくりだ。
    危険なのは、こうした理想主義的イデオロギーは常にある種の人々によって巧妙に利用され、
    結局は理想と正反対の社会を生み出してしまうことだ。

    スターリンや毛沢東は共産主義を掲げる一方、多くの自国民を虐殺した。結局彼等は自らへの権力集中の手段に
    共産主義を利用したに過ぎず、消滅したソ連はともかく、中共に至ってはいまだに共産主義の看板を掲げ続けているのは滑稽至極である。

    共産主義の敗北によってその信奉者達が反省したり沈黙することは無かった。
    理想主義者の彼等は次なるイズム、すなわち環境保護や性差別の問題をことさらにあぶり出し、騒ぐことに活路を見出した。
    なかでも個々の国家の歴史や特殊性を無視して国境を無くし、労働者の移動を自由化したり共通通貨の導入により、ひとつの世界を目指すグローバリズムは、その最大のものである。
    ソビエト社会主義に勝利したはずの西欧諸国が、自ら掲げたEUによって自縄自縛に陥り、苦悶する姿は赤色革命直後のロシア人民に似てはいないだろうか?
    気高い理想であるほど疑いを持たずに信奉し、理想が実現できないのは改革が足りないからだ、とますます自らを追い込んでゆく。
    世界中の労働者が団結すれば国家は消滅する、かつて共産主義者が喧伝した理想主義はグローバリズムと奇妙に符号するのである。

    共産主義とグローバリズム、これらの「イズム」は人工的に合成された思想であり、はじめは一般大衆には理解されにくい。
    そのため砂糖でくるむような甘言で大衆をひきつける必要があるが、主導者と大衆の間のこの認識レベルの差が、主導者をしてエリート意識を持たしめ、
    自然に官僚的、専制的に流れ、最後は独裁に行き着くのである。批判者を抹殺しないとやっていけない矛盾に満ちた体制の必然であろう。

    このたびのイギリスのEU離脱も、この観点からの考察が欠かせない。 イギリス人は選挙で選ばれたわけでもないEU官僚集団による独裁体制を嫌い、これと決別したのである。
    しかもEU離脱の圧力は各国で高まり、フランスやイタリアなどが英国に続く可能性が高まった。
    グローバリズムという人工的な理想主義に疑問を持つ人が増えているのだ。

    ロシアや東欧、中国など、伝統的に強大な陸軍を要する大陸国家には、専制的な政治体制がなじむと言われる。 どちらかと言えば大陸国家のドイツも自らを西欧とは異なる中欧と位置づけ、西欧のヒューマニズムや民主主義とは一線を画す独自の理想主義を掲げることが多い。 論理的思考に優れるドイツ人が「イズム」に縛られやすく、理想に向かって独善的に暴走する傾向を持つと考えると、EUの問題点があぶりだされないだろうか? 伝統的に海洋国家であるイギリスは、やはり欧州大陸国家の理想につきあうのはゴメンだという考えが強いのだろう。

    現在欧州で王室を持つのは英国、オランダ、ベルギー、スペイン、デンマーク、ノルウェイ、スエーデン等である。 バチカンを擁するイタリアもこれに加えていいかもしれない。
    いずれも海洋に進出した海洋国家であることに注目したい。
    近代的王室とはすなわち政治権力から離れつつ、国民統合の象徴として大切にされ、外交的にも一定の存在感を持ち、戦争を避け平和を希求する存在と言える。
    我が国の皇室もそうだが、王室の存在意義の第一は、現代ではこの国際的平和調整能力にあると言って良く、王室を持つ国は持たない国より外交の選択肢が多く、有利なのだ。

    いっぽうEUの中心メンバー、ドイツとフランスが血塗られた手段でそれぞれの王室を解体・追放した共和制国家であることは、彼等の理想主義的傾向を表すように思う。
    王室を廃棄しただけあって理想主義者は伝統や過去よりも未来を重視し、無理な理論を積み上げていく。
    そういう彼らがあるときはナポレオンに、あるときはナチズムに熱狂するのは実現不可能な夢に酔うからであろう。
    その実現不可能な夢の最新版がグローバリズムなのだ。

    王室や皇室は保守主義の目に見える原点である。
    王室を持たぬ国の保守主義はその拠り所が存在しないから、急進的な理想主義に流れやすい面がないだろうか。
    小難しいフランス現代哲学なども、その底流には王室などの伝統を拒否した荒涼とした世界観があり、常に漠然とした不安が感じられる。
    そこで信じられるのは人間知性のたゆまぬ発展のみで、必然的にインテリと「無知な大衆」が対比・対立されるようになる。
    フランスのインテリはいつだって大衆を小馬鹿にしてきたではないか。 だが理想主義に反旗を翻すのはいつも普通の人々=大衆であり、
    彼らの反動による「反革命」が起きると、取り残されるのはインテリ層なのだ。

    理想主義は時に奔流となって西欧諸国に騒擾をもたらすが、その理想主義者が旧大陸たるヨーロッパを追われ、建国したのがアメリカである。
    したがってこの理想主義という点においてヨーロッパ、特にフランスの理想主義者達はしばしばアメリカに同調するのである。
    フランス人がアメリカ人に「自由」を垂れ、称揚するという奇怪なモニュメント、ニューヨークに屹立する自由の女神の醜悪さを見よ!
    (あの像はアメリカのイギリスからの独立100年を祝って、フランスがイギリスへのあてこすりに送ったという見方も出来る。いずれにせよ共和制国家間らしい贈呈品である。
    女王のいるイギリスにこれは建てられないだろう)

    フランスの政治学者トクヴィルはその著作「アメリカの民主主義」において米仏両国の共和制を比較し、アメリカの政治風土を冷静に分析する。 
    王室を持たない共和制国家どうしの比較により、その政治・統治体制の理想形を模索・提言するが、王室を持つ国々の利点に言及しなければ話にならない。

    結局グローバリズムとは保守主義とは相容れず、保守主義は王室・皇室を戴く国において、より濃密に醸され、強くなっていくと思われる。
    保守主義がしっかりとあるかないか、これがグローバリズム反対運動の今後を左右するのではないか?
    今後フランスなどの共和制国家が、反グローバリズム=保守主義の拠り所をどこに持ってくるかが注目される。
    そして、グローバリズムをうまく退治したあとに、共和制国家が、またぞろ奇妙な「イズム」を提唱しないか心配である。
    共和制制国家にはアメリカ、中国、ロシア、フランス、ドイツを筆頭に世界のほとんどの国が含まれる。

    わが皇室が世界の王室と連携し、過激な理想主義に対抗していくことを祈る。

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