現代世界史放談(三)

宗教戦争

 もうひとつ、別のことをお話しします。イスラム教とキリスト教の宗教戦争が続いているという現実です。日本はどちらの宗教にも関係ないのですから口出しをしてはいけません。下手なことを言ってはならない。

 イスラムはオスマン帝国が18世紀の末まで大帝国を築いていて、19世紀の前半くらいまで、ヨーロッパはオスマン帝国に力においてだけでなく、文化においても頭が上がらなかったのです。

 多くの日本人がその歴史の流れを重視していなかったのは、日本での歴史教育が西洋の優位という一点において全て理解されていて、明治の多くの思想家というと、福沢諭吉も岡倉天心も中江兆民も頭のなかが欧米だった。明治維新以降、日本の歴史のなかにイスラムは入ってこなかった。現実は、明治維新の直前までイスラムが世界を支配していたにもかかわらずです。

 アフリカの西からインドネシアの端までイスラム社会が築かれており、それが逆転されたのが18世紀から19世紀へかけてです。代表のオスマン帝国が滅ぼされたのは第一次世界大戦後です。その恨み骨髄に徹しているのがいまのイスラム教徒で、絶対にキリスト教徒を許してはいません。キリスト教徒は敵なのです。いま起こっているのは、そのような流れの下にある宗教戦争です。

 日本の知識人は、イスラム諸国のイスラム教徒は決してテロリストではない、偏見をもたないようにとしきりに論説します。それはそのとおりでしょう。ですが、どこからお金が出ているのでしょうか。イスラム系の大商人から膨大なお金が流れているに決まっています。つまり積年の恨み、イギリス・フランス・ベルギー・ロシア――――皆、宿年の大敵なのです。

 だから私たち日本人は、黙って見ていたらいいのです。下手に口を出してもいいことは何もない。安倍総理は少し喋り過ぎではないでしょうか。私は西欧に味方するなど口先でも言わないほうがいいと思っています。わが国は神道と仏教の国、争いを知らない別の宗教の国なのです。

鎖国の真実

 イスラムと西欧の関係を、わが国を巡るアジアの展望図に投影してみるとどう見えるか。

 イスラムは長年、主役であったのが18世紀の終わりから20世紀はじめ頃までの百年間に逆転してしまって西洋に地位を奪われたのと同じように、シナは長年、覇者と信じていたのに19世紀になって日本に逆転されてしまいました。イスラムと西洋の二つの関係は、中国と日本の関係とパラレルです。この観点は誰も考えてこなかった。

 つまり、今日の中国人のあれほどの政治的な反日感情は昨日今日の話ではない。第二次世界大戦以後のことでもない。イスラムの西洋に対する敗北、劣等感と敵視、それと同じことがシナ大陸とわが国の間に起こっている。韓国もシナ大陸の属国です。こういう発想が日本の外務官僚には全くない。ずっとずっと分かりやすくなると思いますが、日本の歴史教育のなかにもそういう発想が全くない。

 キリスト教の歴史をみていると悪どいもので、たとえば「ジハード」という言葉があります。あれをイスラム教徒の聖戦に当てはめて、一方的な攻撃戦のように言いますが、剣を振りかざして虐殺したのはキリスト教徒で、それを全てイスラム教徒に擦り付けたのではないか。それがジハードです。

 ちょうど日本人虐殺の通州事件を南京虐殺と読み替えて、日本人がやったようにシナ人が擦り付けるのと同じように。世界中でそういうことがやられている。ところが日本人は、そういうことをされても「へへへっ」と笑っているだけで、糞!やられてたまるか、と国を挙げて反発反撃しようともしない。

 シナは自己中心の国で思い込みが激しく、閉ざされた地域です。もともとシナは鎖国文化圏なのですね。鎖国していたという点では、東アジアはどの国も同じです。海禁政策というのですが、江戸の日本だけではなくシナも朝鮮も同じだった。外と交わらず、自分が全ての中心だと思っている。ただ明、清のシナではキリスト教の布教は許されていました。

 明の時代に、マテオ・リッチというイエズス会宣教師が、地球は丸いことを示す大きな地図「坤與万国全図」を初めてシナにもたらしました(1602年)。それは日本にも伝わり、江戸の日本が地球は丸いということを知ったのは、リッチのこの一枚の大きな地図から始まる。
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 マテオ・リッチはシナの知識人に逆らわないようにするため、地図の真ん中にシナ大陸を置いて、ヨーロッパ中心ではない地図を見せました。すると、日本列島も真ん中に来るわけです。太平洋が右側、シナ大陸が左半分にある。

 それを見たシナの知識人の多くは、こんな地図は間違いだ、と言って聞き入れませんでした。地球の四分の三が自分たちの領土と思っていたからです。断固反対した。しかし、日本人は誰もそんなことを言う人はいませんでした。

 その意味で日本人は謙虚で、外から届けられる知識に対して非常に慎ましく対応して、自分を無にする心があると思います。日本人は鎖国していても、心は西洋に向けて開かれていた。鎖国は半ば以上、シナ大陸に対してなされていたのです。シナ人は江戸市中立ち入り禁止だったことはご存知ですか。

 日本人はキリスト教は禁じましたが、西洋の科学は「窮理の学」として早くから学ぶ気構えでした。自分に囚われず、遠い異文明に心を開くのが日本人の常です。これは他のアジア諸国、シナや韓半島とはまるきり違うところでしょう。

 とりわけ、韓国人はシナ人以上に自分が絶対です。滑稽なドラマがあるのはご承知のとおりです。自分のイデオロギーから抜け出ることができない民族なのですから。朴槿恵大統領は、日本の左翼よりももっと歪んだあのようなおかしな歴史観を本気で信じているのです。子供のときから習っている「正しい歴史観」に日本人を変えなければいけない、と本気で信じています。

 「正しい歴史観」とは、あくまで「韓国はえらい」という歴史観です。それに日本は全部従えと言っているだけですからきりがない話で、相手にしてもしょうがないのです。日本国民の多くはやっとそのことが少し解ってきたのですが、外務省だけがまだ分かっていない。何度でも騙される。繰り返し韓国に騙される日本の政治家と官僚群。

 驚くべきことに、最近の韓国国民は、朴槿恵大統領は外交で戦後一番成功を収めている政治家だと信じているそうです。呉善花さんから聞きました。

つづく

月刊Hanada 2016年6月号より

「現代世界史放談(三)」への3件のフィードバック

  1. 幹二先生!おはようございます!!!

    分からない事は、口に出せませんさ!・・です。

    反復して、何度も読みます。

    引き続き、ご教授下さい!

    16.10.21 , 07:17 , 子路 . .

  2. 幹二先生!おはようございます!

    *

    俺達は、平和に暮らしているんだから 邪魔をするな!!!

    ・・・そう言う事ですよね。

    16.10.22 , 10:56 , 子路 .

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