どういう訳だろう、よく分らないが、今月は雑誌発表の仕事が集中した。先月からやってきた課題がひとつづつ片づいてきたせいだが、全生活がスケジュールにハイジャックされているような拘束状況がつづき、少し疲れた。すでに表に出たものとこれから出るものを合わせ、一覧し、ご報告する。
1)「思想の誕生」(連載)『撃論ムック』西村幸祐責任編集 第一回「ひとり暗い海にボートを漕ぎ出す」(20枚)店頭にすでに出ている。
『撃論ムック』にはしばしば書いてきたが、今度月刊になるという。西村さんの新門出を祝し、連載をひき受けた。
連載の内容はむかし日録に書いてきたような思想散策である。
2)「決定版・坂東眞理子の品格を斬る!」『新潮45』7月号(24枚)店頭にすでに出ている。
編集部がつけたリードには「『女性の品格』308万部、『親の品格』87万部――。著者は元高級官僚にして、昭和女子大学長。その品格を稀代の論客が問う」となっている。
なぜこんな論文をわざわざ書いたかというと、秋に出す『真贋の洞察』(文藝春秋)という私の評論集で「贋」の実例を丸山真男以下何人も取り上げたのだが、今の読者は知らない人ばかりだ、というので、じゃあみんなが知っている「贋」の一例を出そう、と思いついて、二冊の「品格」を串刺しにした。新刊の『親の品格』に主に焦点を当てているが、著者は男女共同参画社会基本法をつくった張本人。そのときの内閣府の初代局長である。
『女性の品格』『親の品格』ともに論じる必要のない無内容の本だが、官僚として彼女のやったことを背景に置くと、本とそれを書いたキャリア官僚の興味深い像がみえてくる。
小さな評論を書くためにも、彼女の若い頃の本(菅原眞理子の名で出していた)や役人として参加していた対談、座談会、講演録までさがし出して、虱潰しに読んでみた。
何をやるにも容易ではない。少し面倒でいやになったが、出来映えはまぁ面白いので、褒めて下さい。
3)イスラム教徒のインドネシア人を大量に受け入れる政府の政治的無知。大量失業、国情不安定を防ぐために「労働鎖国」を敷くべきである。
『SAPIO』7月9日号(6月25日発売)(10枚)「移民」は救世主か問題児か、と題したSPECIAL REPORTの「反対論」を代表した。「賛成論」を書いたのは大前研一氏と聞く。
外国人1000万人の導入のための移民庁設立案(中川秀直の唱える)の出ている時代だから、いよいよ来たなという感じだ。昔とった杵柄(きねづか)でさっさと書いた。
移民庁、外国人参政権、人権擁護法――すべてひとづながりの悪法、自民党腐敗政権のおできが発する膿を見る思いだ。
4)皇太子さまへのこれが最後の御忠言
『WiLL』8月号(6月26日発売)(52枚)例の第3弾である。21日校正も終了したばかりだ。
「最後の」と付けられたが、じつは第4弾も予定されている。まだまだ書くことが残っているから、書き切るまでは止まらない。ただ皇太子さまへの御忠言にはもう限界がある。今度は国民の責任が問われねばならぬ。
5)巻頭言・真贋について(前)『澪標』5月号(15枚)
岩田温君や早瀬善彦君がまだ学生だと思っていたら、堂々と立派な思想雑誌を発刊して、存在感を一段と発揮してきた。日本保守主義研究会に、会名も改めたようだ。
その雑誌『澪標』(れいひょう)に巻頭言をたのまれて、お祝いの意をかねて書いた。保守的はあっても保守主義はない、と書き出したら勢いがついて長くなり、3回に分載されるらしい。お手数をおかけして申し訳ない。
岩田氏、早瀬氏――お二人ともよく勉強をしていて、とてもたのもしい。保守言論界に若い力が欲しかった。いよいよ出て来たという感じだ。自重して大成して欲しい。
この次からはこの雑誌にのっている思想は本格的な論評の対象にする。勿論、遠慮もしない。
年間購読料5000円、Tel.Fax.03-3204-2535にお問い合わせになるとよい。岩田氏は「松柏の会」という会員制のゼミナールも主宰している。