『憂国のリアリズム』発刊

憂国のリアリズム 憂国のリアリズム
(2013/07/11)
西尾幹二

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 目 次

まえがき

第一章  いま目の前で起こっていること

第二次安倍政権の世界史的使命
よみがえれ国家意識
アメリカよ、恥を知れ――外国特派員協会で慰安婦問題を語る
国防のニヒリズム
原発は戦後平和主義のシンボルに外ならぬ

第二章  少し過去を振り返ってみる

「保守」は存在しない
ノンポリ中立主義の仮面の恐怖――NHKをどう考える
アリ地獄に陥ったアメリカ依存症――憲法改正の前に立ちすくむ
自民党への失望が生み出す新しい波
亡国の大勲位、中曽根康弘の許されざる勘違い
さらけ出された小沢一郎の正体

第三章 日本の根源的致命傷を探る

米占領軍(GHQ)が消し去った歴史
旧敵国の立場から自国の歴史を書く歴史家たち
日本人は本当の敗戦体験をまだしていない
戦後日本は「太平洋戦争」という新しい戦争を仕掛けられている
戦後から戦後を批判するレベルを超えて

第四章 皇族にとって自由とは何か

「弱いアメリカ」と「皇室の危機」
「雅子妃問題」の核心――ご病気の正体
背後にいる小和田恒氏を論ずる
正田家と小和田家は皇室といかに向き合ったのか
おびやかされる皇太子殿下の無垢なる魂――山折哲雄氏の皇太子退位論を駁す
「皇后陛下讃」

第五章 実存と永遠

三島由紀夫の自決と日本の核武装(没後四十年)
吉本隆明氏との接点
ニーチェ研究と私――全集刊行を機に回顧する
宗教とは何か

あとがき

初出誌紙一覧

                    

まえがき

 こうなることは分っていた。アメリカと中国のはざまに立たされ、頼りにしていたアメリカがあまり当てにならないという現実が、やがてゆっくり訪れるだろうとは前から思っていた。ユーゴスラヴィアが火を噴いたとき、地球の東側にも同じタイプの火が点くのではないかと憂慮していた。核で維持された米ソの冷戦対立は地球の安定に久しく役立っていた。それが壊れたのだから、何が起こってももう驚くわけにはいかない。

 けれどもアジアに「ベルリンの壁の崩落」は決して起こらなかった。中国が全体主義独裁国家をいつまでも維持しつづけたからである。そして、私はふと気がついた。ああ、そうか、そうだったのだな、中国が専制独裁国家のままでありつづけていて、しかも金融資本主義国家の産業形態をもとり入れるというこの不可解なカメレオンのような変身そのものが、厄介なことに「ベルリンの壁の崩落」のアジア版ということだったのだな、と。

 尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の監視船に衝突してきて、不意をつかれて民主党政権があわててばかげた、臆病な対応をした例の事件が起こったとき、私は戦後はじめて日本は外国から物理的直接攻撃にさらされたのだと解釈した。大げさな解釈だと人から嗤われたが、それほどにも米ソ冷戦構造下の日本は安定したぬるま湯の平和を与えられていたのだ、と私は言いたかったのである。そのあと日本人の商店やスーパーや工場を狙い撃ちした中国全土を挙げた反日暴動が起こったが、1920年代の五四運動の「日貨排斥」(日本商品ボイコット)にそっくり同じであることが興味深かった。もの言いまでよく似ていた。日本経済は支那との貿易に依存している。日本を苦しめ懲らしめるには商品ボイコットがききめがあるのだ、といった声が北京や上海に広がった。それは当時の日本の新聞が、支那の市場を大切にせよ、日本の未来がかかっている、と書いていたからである。今とそっくり同じである。そんな事実はないのに、日本のメディアがしきりにそう書きそれが支那に伝播したところまでよく似ている。戦前の日支関係に立ち戻ってしまったのである。

 尖閣に対する中国政府の強引な物言いや鉄面皮なやり方に日本人はいま少なからぬ驚きと恐怖を抱いていよう。しかし第一次大戦後、山東半島返還をめぐる中国の強引で、理窟も何もないもの言いはやはり同じであった。当時の日本は軍事力があったので屁にも思っていなかっただけだ。ただパリ講和会議で中国の肩を持ったアメリカのごり押しにはうんざりさせられている。イギリスやフランスの全権代表は日本を支持しているのに、アメリカの全権代表は西洋の法理論を知らない中国人に自国の法律顧問団を全面開放して、利用させ、ひたすらしつこいほどの日本攻撃に余念がなかった。日米戦争は1919年のこのときに始まっていたともいえるだろう。

 習近平が登場して中国の強引さと鉄面皮ぶりはさらに一段と倍化した観がある。尖閣はわが方の「核心的利益」だという。中国は領土問題でどこまでも「主権」を守るという。1953年の「人民日報」と1958年の中国発行の地図に尖閣は日本領だと記されていた事実が突きつけられたし、海底の石油埋蔵が見つかってから以降のにわか仕立ての領土主張であることは今や天下周知であるが、そんなことはいくら言っても蛙の面に水である。暖簾に腕押しである。つまり俺さまが俺のものだと言っているのだから、テメエたちはつべこべ言うな、とやくざのように暴言を吐いているのが隣国であり、この厚顔無恥は世界中にみんな分ってしまっているのである。が、それでも言いつづけ、実行しようとする。侵略国家とはこういうものである。中国は自ら侵略国家であることを世界に告知しようとしているといっていい。

 冷戦構造に守られていた日本人はすっかり忘れているが、戦前は世界中がみんなこういう無理難題をぶつけ合っていた。その代表格はアメリカだった。日本は一貫して受け身だった。アメリカ、イギリスはすでに有利な前提条件、金融、資源、武力、領土の広さの優越した立場をフル利用して、無理なごり押しを平然とくりかえしていた。日本はどんどん追い込まれた。それが戦前の世界である。尖閣紛争と中国の脅迫は日本人に大東亜戦争の開戦前夜の感覚を思い出させるのに十分であった。日本は当時も今もいかに孤独で、誠実に振舞っていることであろう。

 私は実は深く恐れている。アメリカは今だって自国のことしか考えていない。2013年6月7日~8日のオバマ・習近平会談で、尖閣についてオバマ大統領がどういう口調で何を語ったかは明らかにされていない。アメリカは強権国家に和平のサインを送って何度も失敗している。朝鮮戦争で北朝鮮が、湾岸戦争でイラクが突如軍事攻撃をしかけてきたのは、アメリカの高官のうかつな線引きや素振りやもの言いのせいだった。アメリカが軍事的に何もしないとの誤ったサインを与えると、中国のような強権国家は本当に何をするか分らない。八時間にも及ぶ両首脳の対談で、尖閣についてオバマ大統領は日中間の話し合いでの解決を求めたというが、話し合いなど出来ないところまで来ているのに何を言っているのだろう。アメリカの弱気、軍事的怯懦(きょうだ)、今は何もしたくないという尻込みしたオバマ大統領のことなかれ心理が読みとられると、習近平はこれは得たりとばかりほくそ笑んで、時機をうかがう態勢に明日にも入っていくかもしれない。そして本当に尖閣が軍事的に襲撃されるかもしれない。

 「ベルリンの壁の崩落」から「ユーゴスラヴィアの内戦」へのドラマがやっと危険なかたちで極東にも及んできたのだ。私は昨今の情勢から、あり得る可能性をあれこれ憂慮をもって観察している。

ご報告

 管理人です。
ここで前々回お知らせした、グレンデール市の慰安婦像設置について、
市議会の結果が出ました。
西尾先生のご指示により、私のブログから転送します。

残念なことに
先のエントリーで紹介したアメリカの地方都市グレンデールに
慰安婦像設置・・・・が決定したそうです。

・・・・・それにしても小さな街みたいですね。

本日グレンデール市特別委員会(現地7月9日)にて、慰安婦少女像の設置が可決されてしまいました。

現地からの情報によると

・現市長のみが反対で他の議員は賛成に投じた(賛成4、反対1)
・公聴会開会時まで決めかねていた女性議員1人がいた。
・100人の収容人員の会議室が満員で 驚くことに 韓国系らしいものが20人位? 残りは 日本人同志。
・韓国人の発言は7人 日本人は30人はゆうに発言していた
・韓国に行き 日本大使館前で写真を取られている Quintero氏 (元市長・現市議)はバタン死の行進など 自分の非を自己弁護する発言を含めナンセンスばかり。
・Quintero氏の発言で 注目した点は 総領事館と連絡をとったが反対はなかったと言った点。(真偽は未確認)
・市長は公共の場にこのような建造物が建てられることに反対するが、最終的に市は「日本人への非難ではなく、歴史的にこのようなことがあったと後世に伝えることに意義がある」との見解で閉会。
・事前に話がついていた感じ、出来レースのようであった。

とのことです。

承認されたことは非常に残念ですが、これまで現地メディアは抗議側の日本人を一方的にナショナリストと書いていたのが、採決を前に日本人の意見も記事に書くようになりました。
これは日本からの抗議メールの影響だと思います。
ニュースによると市長には約350通の抗議メールが届いたそうです。

また、たくさんの日本人が反対の声を挙げるために公聴会に集結したことは、大きな前進だったと思います。
この度立ち上がった現地の日本人の方々から、「日本からのたくさんの支援に心より感謝を申し上げたい」のメッセージをいただいております。

慰安婦少女像の除幕式は7月30日グレンデール市「韓国慰安婦記念日」に行われる予定です。

<関連記事>

Glendale approves Korean ‘comfort woman’ statue despite Japanese protest
http://www.glendalenewspress.com/news/tn-gnp-me-glendale-approves-comfort-woman-statue-despite-japanese-protest-20130709,0,7258435.story

Japanese nationalist protest of ‘comfort women’ sculpture fails
http://www.latimes.com/news/world/worldnow/la-fg-wn-japan-korea-comfort-women-20130709,0,920922.story

Korean-Japanese dispute over “comfort women” heats up in Glendale: Opinion
http://www.pasadenastarnews.com/opinions/ci_23621344/korean-japanese-dispute-over-comfort-women-heats-up
↑このニュースの日本語訳はこちら
http://sakura.a.la9.jp/japan/?p=4103

第 6 回 「西尾幹二全集刊行記念講演会」 のご案内(再掲)

 

       
  西尾幹二全集 第7巻 の刊行を記念し、下記の要領で講演会が開催されますので、是非お誘いあわせの上、ご聴講下さいますようご案内申し上げます。
        

演 題: スペイン、オランダ、イギリス、フランス、ロシアは地球をどのように寇掠したか  - そ の 概 要 と 動 機 ー 

日 時: 平成25年7月15日(月・祝) 開場:午後2時 開演:午後2時15分
    (途中20分程度の休憩をはさみ、午後5時に終演の予定です。)

会 場: グランドヒル市ヶ谷 3階 「瑠璃の間」 (交通のご案内 別添)

入場料: 1,000円 (事前予約は不要です。)

懇親会: 講演終了後、サイン会と西尾先生を囲んでの有志懇親会がございます。どなたでもご参加いただけます。 (事前予約は不要です。)

     午後5時~午後7時 同3階 「珊瑚の間」 会費 5,000円 

お問い合わせ  国書刊行会(営業部)
   電話 03-5970-7421 FAX 03-5970-7427
E-mail: sales@kokusho.co.jp

坦々塾事務局(中村、小川)
中村 電話 090-2568-3609FAX 0279-24-2402
              E-mail: sp7333k9@castle.ocn.ne.jp
小川 電話 090-4397-0908FAX 03-6380-4547
      E-mail:ogawa1123@kdr.biglobe.ne.jp

緊急告知

管理人です。西尾先生の承諾を得て、お知らせします。

 これは5月26日に放映された新報道2001の中から、西尾発言を主に取り出した映像です。ご覧ください。

 以下のお知らせがなでしこアクションから届いています。8,9日が山場のようですので、ご協力ください。

 緊急お願い!9日までに抗議メール送って下さい!
┗…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…

カルフォルニア州グレンデール市中央公園に韓国の日本大使館前にあるものと同じ慰安婦少女像を建てる計画があります。
市議会は7月9日(火)に特別委員会を開き少女像を承認しようとしています。

現地の仲間から緊急のお願いが届きました。
一通でも多く抗議メールを送っていただきたいとのことです。

韓国団体は、グレンデールをスタートに各地に同じ少女像を建てると宣言しています。
最初の計画で潰さなくては全米各地に広まりかねません。

最近、現地メディアも日本からの抗議に関心を持ってきました。
現地日本人も反対行動に頑張っています。

我々も出来る限りのことをしましょう!

メールは以下を参考にしてください。
グレンデール市長、市議へのメールは戻ってくる可能性があります。(gmailからは送信できます)
よって、CCの宛先も加えてていただけると効果あると思います。

御協力よろしくお願いいたします。

メール内容ここから*************************

【宛先】
To:グレンデール市長、市議
fquintero@ci.glendale.ca.us, lfriedman@ci.glendale.ca.us,
anajarian@ci.glendale.ca.us, dweaver@ci.glendale.ca.us,
sochoa@ci.glendale.ca.us, ZSinanyan@ci.glendale.ca.us,

Cc: 教育委員会 とメディア( 記念碑の記事を書いた記者と日系新聞 )
NNahabedian@gusd.net, MBoger@gusd.net, GKrikorian@gusd.net,
CWalters@gusd.net, AGharpetian@gusd.net, Brittany.Levine@latimes.com,
christina.villacorte@dailynews.com, info@nikkansan.com, gwen@rafu.com,
jjgoto@sbcglobal.net,

【件名】I am against Comfort Women Monument

【メール文例】
Dear the members of the City Council of Glendale,

I heard that the City Council of Glendale will have a special public
meeting to approve Installation of a Korean Sister City “Comfort
Women” Monument on July 9th. I also heard the monument will be
unveiled on July 30that a public event in Central Park.

The core part of the Korean claims is that Japanese officials abducted
about 200,000 Korean women and forced them into sexual servitude for
Japanese soldiers during World War II. It is a completely false story
or demagogy for political propaganda forged by anti-Japan people.

I haven’t heard of a single person in the world who could present
single verified evidence supporting the story. I have a strong doubt
whether or not you have got the verified evidence supporting the
story. If not, you are going to disgrace Japanese people without any
verified evidence.

We Japanese are strongly against “Comfort Women” monument.

I would sincerely and strongly request you to review the decision
about the “comfort women” checking the true and verified evidence and
rescind the decision to keep honor and dignity of Japanese people as
well as those of American people.

Sincerely,

ここに差出人の名前

メール内容ここまで***********************

メールが苦手な方には、お手紙を用意しました。
プリントして、日付、署名を入れれば完成します。是非ご利用ください。

<グレンデールへの抗議の手紙>
お手紙ダウンロード
http://sakura.a.la9.jp/japan/wp-content/uploads/2013/07/letter.doc

封筒宛先
Councilman Frank Quintero
the members of the City Council of Glendale
Glendale City Hall
613 E. Broadway
Glendale, CA 91206
USA

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

*上記お知らせ転載フリーです。拡散にご協力いただけますようお願い申し上げます。

*今後、なでしこアクションからのお知らせメールが不要の方は、件名に「メール不要」と書いて、このメールに返信願います。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

正しい歴史を次世代に繋ぐネットワーク
なでしこアクション http://sakura.a.la9.jp/japan/
代表 山本優美子
問い合わせ先 JapanNetwork1@gmail.com

歴史認識と安倍総理

 3日午後記者クラブで行われた各党党首の記者会見をテレビで見た。質疑は多岐にわたったが、その中で歴史認識について安倍総理は質問に答え、今まで通り、歴史の内容について政治家が政治判断を下すのは間違いで、専門家に委ねるべきだと語ったが、私は聴いていて、その言葉の影に、いつもより強い信念のようなものを感じた。

 記者が専門家の仕事は歴史の細かいデータの検証に関わるのであって、日本が朝鮮を植民地にしたのか否か、中国を侵略したのか否かのような大局の認識は中曽根氏がそうであったように、政治家が断を下すべきものではないのかと問うたのに対し、安倍氏は中曽根氏もそういう決定の断を下したことはない、と述べた。そして植民地とか侵略とかの概念の重さに対し政治家はどこまでも「謙虚」であるべきであって、それを簡単に認めることはかりに今の情勢下では政治家にとってやり易く、気が楽だとしても、自分はそういう風に弱い逃げの態度であってはいけないと考えている、ときっぱりと仰有った。内外からの風圧に決して負けない、との気概を示されたように私は受けとめた。

 私はそこから8月15日か秋の例大祭かのいずれかで総理は靖国参拝をなさるのではないかという気がした。アーリントン墓地にアメリカ大統領は参拝する。南軍の将兵が祀られているからといって参拝は奴隷制度を認めるものではない、と総理が言ったのに対し、記者団の中から南北戦争は内戦であって意味が違うと反論の声があった。安部氏はこれに対し、アメリカの学者の議論をもち出ししきりに切り返していた。相当思いつめいろいろ考えを深めて来た様子がうかがえた。これら全部を聴いていて、靖国参拝をなさるつもりなのではないかとの予感をもった。

 私は7月発売の『正論』8月号に40枚の評論を書いて、歴史認識についての所見を述べた。題して、「日本民族の偉大なる復興――安倍総理よ、我が国の歴史の自由を語れ――」(上)である。この題がある人の専用の題をもじったアイロニーであることは気がつく人はすぐ気がつくだろう。分らない人は、論文の4ページ目に種明かししてあるので、そこを見てもらいたい。

 間違えていけないのは、朝鮮半島は「植民地支配」ではなく「併合」である。アメリカのハワイ併合のごときものである。支那事変は「侵略」ではなく仕掛けられた挑発を受けて立った「事変」であって、従って宣戦布告はない。盧溝橋も第二次上海事件も、蒋介石がコミンテルンに踊らされた謀略攻撃に対するわが国の自衛的対応にほかならない。日本政府に対応のまずさ、深追いし過ぎた処理の仕方の混乱はあったが、全土を制圧する征服戦争の意図はなかった。日本は和平を言いつづけていたのだ。拒んだのは支那サイドだった。

 安倍総理はこうした論点に細かく深入りすることは恐らくできないだろうし、すべきでもない。せいぜい言えるとしたら、19世紀から1941年まで日本は侵略される側にいて、侵略されずに残った最後の砦であったこと、それが今から見て明らかな地球全体の動きだった、という大局観を叙べることだろう。そして詳しいことは学者の論争に委ねたい、と。(歴史家と言ってほしくない。日本の歴史家は歴史を語る資格がないのだから。)

 いくらこう言っても中国や韓国が理解を示すとは思えない。しかし世界は広い。他のアジア諸国に共鳴の手を挙げる人は必ずいるだろう。欧米にもいるだろう。

 70年近く経ってもそういう声を世界中に向けて上げて、論争の渦をまき起こす時期だろう。それができれば安倍氏は世界的スケールの政治家になれる。

 私は上記論文にこういうテーマについて書いている。『正論』8、9月号に(上)(下)として二回つづけて掲載される。始めたばかりの大型連載(「戦争史観の転換」)のほうは申し訳ないが休載させていたゞく。

西尾幹二全集第七巻『ソ連知識人との対話/ドイツ再発見の旅』刊行

 全集第七回配本第七巻『ソ連知識人との対話/ドイツ再発見の旅』が刊行された。あゝだこうだと言っているうちに早いもので全体の三分の一近い7冊目が出たことになる。

 第一回配本のとき最初の月報を書いてくれたのは高校時代の友人の早川義郎氏(元東京高裁判事)だった。早川氏は私の処女作から読んでくれていて、あるとき西尾の三大作品は自分の読んだ限りでいえば最初に『ヨーロッパ像の転換』があり、三番目に『江戸のダイナミズム』があるが、自分の考えでは逸せられない二番目の傑作は『ソ連知識人との対話』である、と言ってくれたことがある。

 ソ連が政治史から消えて、有効性がなくなったと思うかもしれないが、そういう仕事ではない。書かれた直後に文芸評論家の入江隆則氏はこの作品を長い評論文章で論評してくれた。その中に次の表現がある。

西尾氏は、連日細部にわたって周到なメモを取り、さらに帰国後一年間、ソ連邦の歴史と地理を勉強し直すという作業を行っている。その結果、われわれにあまり知られていなかった北の国の素顔と、そこに住む人々の息づかいが生き生きと伝わる、好エッセイが生まれた。

 私が共鳴を感じたのは、まず西尾氏の人間への関心である。

たぶん西尾氏は、結論を急がないことによって、西側の人間のロシア紀行にあり勝ちな二つのタイプ、あらさがし派と賛美派という二つの怠惰を、遠ざけようとしているのであろう。実際、氏は、やや度が過ぎると思われるほど、あらゆる先入観を排して、ロシアという多言語多民族国家で住む人間に、なってみようとしている。相手の身になってみるのが、つねに有効な批評の方法だとすれば、西尾氏はここで、氏の批評感覚を十分に働かせているといっていいのである。

いずれにしても、彼等(ロシア人)の「劣等感と優越感の混り合った」「愚直さ」を、ここまで生ま生ましく表現し得たのは、やはり氏の文学者としての眼であって、その感受性の鋭さに、私は説得された。

 入江氏がこう言って下さった同作品を、ぜひあらためて今の時代の新しい眼で読み直してもらいたい。

目 次

Ⅰ ソ連知識人との対話(一九七七年)
第一章 トルストイの墓
第二章 一女流詩人との会談
第三章 フィクションとしての国家
第四章 中央アジアに見る国字改革
第五章 コーカサスの麓にて
第六章 ロシア喜劇の登場人物たち
第七章 愚直な愛国心
第八章 道徳的な、あまりに道徳的な
第九章 ソ連に〞個〝の危機は存在するか
第十章 世紀末を知らなかった国
第十一章 競争をあおる平等社会
第十二章 メシア待望
あとがき

Ⅱ 自由とは何か
真の自由には悪をなす自由も怠惰である自由も含まれている
ソルジェニーツィン氏への手紙――貴方は自由をどう考えているか

文明や歴史は複眼で眺めよ
 ソ連はソ連なりに「自分中心の世界像」に生きる――西側を憧れてなんか いない
 アメリカの長所は明日は弱点となり、その逆も真である
 戦後日本の農地改革は英仏などと同時代の改革だった
全体が見えない時代の哲学の貧困――〞知的遊戯〝が多すぎる
無思想の状況――むなしく飾り立てられた精神生活

Ⅲ 世界そぞろ歩き考(一九七〇年代)
世界そぞろ歩き始め
中国の変貌
ヨーロッパの中の日本人
西ドイツの昨日と今日
垣間見た中国
ヨーロッパの憂鬱
日本と西ドイツのハイジャック事件
ヨーロッパ文化と現代
西ドイツからみたアメリカ像

Ⅳ ドイツ再発見の旅(一九八〇年代)
【小説風紀行文】
ベルリンの「古い家(アルトバウ)」と「新しい家(ノイバウ)」
マスルンカ夫人の一日
仮面の下の傲慢
祖国をなくした老人
【掌篇】
ミュンヘンで観た『ニーベルングの指環』
技術観の比較――日本とドイツ
人口増加に無力なヒューマニズム
「 福祉」に泣いたある政変
私もスイス嫌い
日本女性のセンス
ドイツの家
【教育現場】
ドイツの大学教授銓衡法を顧みて
個性教育の落とし穴
ドイツの子供たち
思わぬ副作用――西ドイツ教育改革・十五年目の現実

Ⅴ 東西文明論の書評十五篇
司馬遼太郎『ロシアについて』(文藝春秋)
柳宗玄『西洋の誕生』(新潮社)
ディエス・デル・コラール『過去と現在』(未来社)
手塚富雄『ものいわぬ日本を考える』(筑摩書房)
桑原武夫『伝統と近代』(文藝春秋)
鯖田豊之『生と死の思想』(朝日新聞社)╱『生きる権利・死ぬ権利』(新潮社)
加藤秀俊『イギリスの小さな町から』(朝日新聞社)
森有正『砂漠に向かって』(筑摩書房)
犬養道子『私のヨーロッパ』(新潮社)
小松左京『歴史と文明の旅(上・下)』(文藝春秋)
木村尚三郎『組織の時代』(潮出版社)
中村雄二郎『言語・理性・狂気』(晶文社)
新保満『人種的差別と偏見』(岩波書店)
鶴見俊輔『グアダルーペの聖母』(筑摩書房)
加賀乙彦『虚妄としての戦後』(筑摩書房)

Ⅵ 和魂洋魂
日本の宿命 比較論の落とし穴 西洋の没落 周辺文化 芸術の近代化 抽象と具象 国際指導力 国家意識 国籍 共同体意識 留学 文化観 科学の精神 詩魂の凋落 教養と行為 自己意識 無心 教育と平等 先進性と後進性 革命 権力 領土観 通と野暮 言葉と朗読 漢方医学

Ⅶ 放射線
女権論者へ 日本語と話し言葉 日本語教育のすすめ 教養の錯覚 無法社会 学校と階級社会 保守停滞の兆し 学校群の失敗 貧富の比較 イギリス病の一面 日本型経営の矛盾 人間の卑小化 島国の内と外 官僚的非能率 開放性と閉鎖性 外交としての留学 経済の奥にあるもの ソルジェニーツィンの発言 国境について

Ⅷ 直言
書店の革命 マンションの名称  日本人の長所は弱点 文化の輸出
中国からの留学生 実践家の方法 マンガと大学生 親しさに溺れるなかれ
米中ソへの警戒 礼儀の凋落 壁新聞という謎 再び「壁新聞という謎」

追補一 岩村忍・西尾幹二対談 中央アジアから世界地図を見る
追補二 内村剛介・西尾幹二対談 西側には理解できぬソ連の思想風土
後記

 西尾幹二全集は年四巻、三ヶ月に一巻づつの配本を原則としているが、今度出版社は、あらたにご購入をいただく方に今までの7巻をいっぺんに買っていただくのも大変なので、毎月一巻づつお届けし、七ヶ月で全集刊行のペースに追いついていただくように配慮してお届けする方法を考えている。国書刊行会Tel 03-5970-7421 FAX 03-5970-7427にご連絡下さい。販売部長の永島成郎氏に直接お問い合わせいたゞけると便宜を計って下さると思う。

第 6 回 「西尾幹二全集刊行記念講演会」 のご案内

 

       
  西尾幹二全集 第7巻 の刊行を記念し、下記の要領で講演会が開催されますので、是非お誘いあわせの上、ご聴講下さいますようご案内申し上げます。
        

演 題: スペイン、オランダ、イギリス、フランス、ロシアは地球をどのように寇掠したか  - そ の 概 要 と 動 機 ー 

日 時: 平成25年7月15日(月・祝) 開場:午後2時 開演:午後2時15分
    (途中20分程度の休憩をはさみ、午後5時に終演の予定です。)

会 場: グランドヒル市ヶ谷 3階 「瑠璃の間」 (交通のご案内 別添)

入場料: 1,000円 (事前予約は不要です。)

懇親会: 講演終了後、サイン会と西尾先生を囲んでの有志懇親会がございます。どなたでもご参加いただけます。 (事前予約は不要です。)

     午後5時~午後7時 同3階 「珊瑚の間」 会費 5,000円 

お問い合わせ  国書刊行会(営業部)
   電話 03-5970-7421 FAX 03-5970-7427
E-mail: sales@kokusho.co.jp

坦々塾事務局(中村、小川)
中村 電話 090-2568-3609FAX 0279-24-2402
              E-mail: sp7333k9@castle.ocn.ne.jp
小川 電話 090-4397-0908FAX 03-6380-4547
      E-mail:ogawa1123@kdr.biglobe.ne.jp

オバマ・習近平会談、皇室の新しい兆し、そして私の新刊(二)

 『週刊新潮』6月20日号に「『雅子妃』不適格で『悠仁親王』即位への道」という目をみはらせる巻頭記事が掲げられている。日本の歴史の中で「幼帝」というのは何度もあった。小学生、中学生でも天皇に即位できる。摂政をつければ問題はない。今上陛下、皇太子、秋篠宮の三人による頂上会談が昨年来つづいていて、そこで煮つまった案だという内容の記事である。週刊誌といえども、ここまで書く以上、それなりの証拠があってのことであると思う。

 皇后陛下が雅子妃を見放した、という書き方である。何かとんでもない事件があってとうとう事ここに至ったのかもしれない。宮内庁も官邸も動いているという書き方だが、宮内庁長官はそんなことはない、と直ちに新潮社に抗議した。記事では雅子妃だけでなく、皇太子に対する両陛下の失望が公然と語られている。さりとて、皇太子は短期間でも一度は即位しないと、日本の皇室のあり方として具合が悪い。秋篠宮は兄弟争いの図を避けるために、即位を辞退している。かくて「幼帝」の出現ということになる。

 私の読者ならお分りと思うが、以上の流れは本当かどうかはまだ分らないのだが、実現すれば大筋において私が書いてきた方向とほゞ一致している。私はすべての焦点を「雅子妃問題」に絞って書いてきた。だから批判や非難も受けた。そして、雅子妃に振り回される皇太子の不甲斐なさにも再三言及してきた。私は「廃太子」(橋本明氏)とも「退位論」(山折哲雄氏、保阪正康氏)とも違う立場だった。そして、何度も天皇陛下のご聖断を!と訴えた。ついに「ご聖断」が下りたのだとしたら有難い。「幼帝」というアイデアは陛下以外の誰が出せるであろう。正夢であってほしいと祈っている。

 『週刊文春』6月13日号にも重大な記事がのっていた。読者アンケート1500人で、皇后にふさわしいのは雅子妃38%、紀子妃62%という結果を報じていた。皇室問題をアンケートで論じるのは間違いだが、各週刊誌とも堪忍袋の緒が切れた趣きがあるのが面白い。雅子妃は今月18日に予告していた被災地お見舞いをまたまたキャンセルした。

 私の新刊『憂国のリアリズム』のリアリズムというところに注目していただきたい。この本も6篇の私の皇室論を収めている。読んでいる方も多いと思うが、あらためて題名と出典だけを書いておく。

『憂国のリアリズム』の第四章「皇族にとって自由とは何か」
「弱いアメリカ」と「皇室の危機」(THEMIS)
「雅子妃問題」の核心――ご病気の正体(歴史通)
背後にいる小和田恒氏を論ずる(週刊新潮)
正田家と小和田家は皇室といかに向き合ったか(週刊新潮)
おびやかされる皇太子殿下の無垢なる魂
  ――山折哲雄氏の皇太子退位論を駁す(WiLL)
皇后陛下讃(SAPIO)

 私は皇室問題について書くのはもうここいらで止めよう、と思って、WiLLの担当者に昨日その話をしていた処へ、本日、『週刊新潮』の驚くべき記事に出合ったのである。

 間もなく出版される『憂国のリアリズム』と併せ読んで、問題の落ち着くところが何処であるかを皆様も占っていたゞきたい。

 『週刊新潮』の記事内容の続報を知りたい。

追記: 皇室典範の改正報道に抗議  「朝日新聞」6月14日号より

 内閣官房と宮内庁は連盟で13日、宮内庁長官が皇位継承をめぐる皇室典範改正を安倍晋三首相に提案したと報じた「週刊新潮」の記事は「事実無根」だとして、同誌編集部に抗議文を送り、訂正記事の掲載を求めた。風岡典之宮内庁長官は記者会見で「このようなことは一切なく、強い憤りを感じている」と述べた。菅義偉官房長官も会見で「皇位継承というきわめて重要なことがらで国民に重大な誤解を与える恐れがあり、極めて遺憾」と語った。週刊新潮編集部は「記事は機密性の高い水面下の動きに言及したものです。内容には自信を持っております」とコメントしている。

オバマ・習近平会談、皇室の新しい兆し、そして私の新刊(一)

 評論集が出しにくい時代なのに、つづけて何冊か出して下さるという版元があって、その編集をずっとしていて、今日ほぼ終った。題して『憂国のリアリズム』という。版元の名はビジネス社。七月初旬に店頭に出る予定だ。

 全集第七巻『ソ連知識人との対話/ドイツ再発見の旅』もすでに出て、その内容報告もまだしていないのに、気になることが相次いで起こり、暇がない。

 習近平が登場して、中国の強引さと鉄面皮ぶりは一段と倍化した観がある。尖閣は中国の「核心的利益」だって? 1953年の「人民日報」と58年の中国発行の地図に、尖閣は日本領だと中国政府自らが記していた事実が過日突きつけられたが、そんなことはいくら言っても蛙の面に水である。厚顔無恥もここまで堂々としていると毒気を抜かれる。

 つまり、彼らは、俺さまが俺のものだと言っているのだから、テメエたちはつべこべ言うなとやくざのように開き直っているのである。先日のシンガポールの会議では、東南アジアの国々が怒った。中国が自分たちは対話の窓を開いているときれいごとを言ったからだ。海上侵略をしている国が対話を口にするのは、出席している欧米オブザーバーに聞かせるためなのだ。宣伝しつつ侵略する。昔から中国の体質はまったく変わっていない。孫文も蒋介石も、鄧小平も習近平もみんな同じだ。

 尖閣紛争と中国の脅迫は、私たちに大東亜戦争の開戦前夜の感覚を思い出させた。日本人はすっかり忘れているが、戦前は世界中がみんなこういう無理難題を吹きかけて来た。その代表格はアメリカだった。

 今日はその話は詳しくはしないが、日本はトータルとして受け身だった。アメリカ、イギリスはすでに有利な前提条件、金融、資源、武力、領土の広さの優越した立場をフル利用して、無理なごり押しを平然とくりかえしていた。日本はどんどん追い込まれた。それが戦前の世界である。

 私はじつは深く恐れている。アメリカは今だって自国のことしか考えていない。2013年6月7日~8日のオバマ・習近平会談で、尖閣についてオバマ大統領がどういう空気の中でどういう口調で何を語ったかは明らかにされていない。アメリカは強権国家に和平のサインを送って何度も失敗している。朝鮮戦争で北朝鮮が、湾岸戦争でイラクが突如軍事攻撃をしかけてきたのは、アメリカの高官のうかつな線引きや素振りやもの言いのせいだった。アメリカが軍事的に何もしないとの誤ったサインを与えると、中国のような強権国家は本当に何をするか分らない。八時間にも及ぶ両首脳の対談で、尖閣についてオバマ大統領は日中の話し合いでの解決を求めたというが、話し合いなど出来ないところまで来ているのに何を言っているのだろう。アメリカの弱気、軍事的怯懦、今は何もしたくないということなかれ主義が読みとられると、習近平はこれは得たりとばかりほくそ笑んで、突如尖閣を襲撃する可能性はある。

 オバマ大統領はいま国内の情報問題で行き詰まっている。軍事的知能に欠ける大統領だという説もある。アメリカの大統領の体質いかんで日本の運命が翻弄されるにがい経験をわれわれはつみ重ねている。日米安保は果して日本を守るためにあるのか、日本を束縛するためにあるのか、見きわめる必要がある。

 『憂国のリアリズム』はこういう問題点について、さまざまな角度から追究している。七月に入ったら、目次をここに掲示する。

『自ら歴史を貶める日本人』評(三)

宮崎正弘氏のメルマガから

このまま外国人労働者を放置しておくと、日本は確実に破壊されるだろう    警鐘を乱打する西尾氏の古典、中国に絞っての改訂バージョンが登場  ♪西尾幹二『中国人に対する「労働鎖国」のすすめ』(飛鳥新社)

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 このまま外国人移民を、とくに労働移民を無造作に受け入れていけば、日本の精神の紐帯はかくじつに破壊される。いや、現実的にはすでに多くの場面で日本が破壊されている。会社の会議を英語でおこなって得意がるバカ企業が目立つが、そのうち中国語でやるようになるだろう。 我が国の税金で東大に中国人が千名も留学しており、やがて日本国籍を取る者が増えれば、数十年先に官僚トップ、国会議員は隠れチャイナで横溢する日がくるだろう。中国はおそるべき対日侵略を、この移民問題に潜ませ、気がつけば日本国家は朦朧として足場を失い、日本文化の独自性を喪失、日本の精神陥没という凄まじき惨状に陥っていたことがわかる。目先の労働不足のために国を売った政治家、官僚。その旗振りを演じた堺屋太一、石川好らの軽薄無国籍言論人の責任が問われる。

 本書はEUの労働問題ならびにアメリカの不法移民を論じて、これが明日の日本の姿だと警鐘を乱打した『労働鎖国のすすめ』(1989年カッパブックス)に、中国の一章を書き足された増補改訂バージョンである。加筆の一章分だけでも82ページ分の分量がある。とくに表紙のデザインにおもわずゾッとさせられる。イナゴの大群が美田を食い尽くす。 イナゴの羽の裏は五星紅旗、それが日ノ丸を食いちぎり、穴を空けてボロボロにしているという、いやにリアリスティックは構造である。  このイナゴの大群の典型的な事件がふたつ、現実に日本でおきた。

 西尾氏はつぎを指摘する。 第一は北京五輪直前の聖火リレーが日本国内で行われたが、とくに長野。「中国の巨大は五星紅旗がコース周辺を埋め尽くし、ささやかな抗議をしていた日本人や在日チベット人に、中国人が巨大な旗竿をふりかざして殴る、蹴るの乱暴狼藉を働き、重傷まで負わせた」ところが日本の警察は中国人の横暴を無視した。この大量動員は「中国大使館と密接に繋がっていた」のだった。大使館の指導の下、五千人の中国人がバスを仕立てて長野にやってきたのだ。 第二は逆に「東日本大震災時には、中国人が我先にと大挙して、日本を逃げ出すということがおこった。これも中国大使館が数十台の大型バスを東北四県に派遣し」、ネットや携帯電話網を通じ空港などにあつめての集団脱走劇。つまり何かが起こると、「在日中国大使館が司令塔になり、統一行動をする」という「不気味な行動」ぶりが露呈したことである。

 今後、このイナゴの大群をいかにして日本から排斥するか、いやそんなことが出来るのか。深刻な問題が示された。    
 
文章:宮崎正弘
  

 宮崎正弘氏の上記書評(3月29日付)に対して、5月31日の同氏のメルマガの読者の声の欄に、次のようなオピニオンが載った。ここに出てくる(FK氏)の私への批判を私は観ていないし、これがいかなる人物かも予想がつかない。ただ拙著を読まないで書いた感情論にすぎないことが判明した、と書かれてもいる。

(読者の声2)いささか旧聞ですが、貴誌3月29日の、西尾幹二氏著の書評(『中国人に対する「労働鎖国」のすすめ』(飛鳥新社)に対し、ドイツ在住の(FK生)氏から「西尾さんのような発言はもうすでに時代遅れだ」とする、氏を少々揶揄するような投稿文を目にし、(FK生)氏はもう読まれてあるのか、書評が遅かったかなど内容が気になり馴染みの書店に即発注をかけました。
何故か日にちを要し、先々週やっと届いた。
仕事の合間に読んでいたため完読に日を要しましたが(FK生)氏の評は些か解せませんので少々異見を述べさせてください。
著は(FK生)氏が卑下されるような内容ではなく、帰化人が種々齎している悪しき現状から、日本国の将来を危惧しての警鐘であり、至極ご尤もな見解の著であった。(FK生)氏の評はどうもおかしいと想い、発売日を確認したら4月8日が初版と成っていた。(FK生)氏は著を読まず、又、警視庁が調べた「外国人犯罪検挙状況」等の実情もご存知なく、西尾幹二氏を只管に攻撃の論評をされている。
と言うことは常日頃より氏と対立軸にある人のような気がします。(FK生)氏が本当にドイツ在住ならドイツの実情も良く分かっておられるはずなのに何故氏を揶揄されるのですか。
国の成り立ちも歴史の長さも違いうし、属性も違う(FK生)氏の見解は解せません。祖国を捨て日本のために心から貢献してくれた支那人といえば、759年に唐招提寺を建立した鑑真和上くらいしか想い浮かばない。
偉大な革命家と勘違いされている孫文は、日本人から莫大な活動資金を集めて裏切った単なる詐欺師。周恩来も、蒋介石も皆裏切り者。
帰化の有無は知らないが「社団法人世界孔子協」会会長の孔健などは生活の基盤を日本国に持ちながら、孔子とは蓮根の糸程度の繋がりでしかなく、人格も別物なのに臆面もなく末裔を売り物にし、「営業同志」宜しく堂々と反日活動を行っている。こんな人物をちやほやする日本人も馬鹿といえば馬鹿だが。
中国吉林省延吉市出身の張景子に至っては、自己活動の利便性だけで日本国籍を取り、臆面もなく涼しい顔で反日活動を行っている。在所の教育委員会の中にも帰化人がいるが、「尖閣諸島は中国のもの」との認識を示し物議を醸している。過去に、態々帰化して日本国発展のために尽してくれた支那人がいただろうか。
 中には日本文化に心酔して帰化され、嘘、詭弁を平気で突き通す拡張主義「中共」の本 質を伝え、日本国民に警鐘を鳴らしておられる石平氏や鳴霞氏のような例外もおられるが、他は百害 あって一理無しの奸物ばかりではありませんか。
 殺人、騙しに嘘かっぱらいが常道の中国人。西尾幹二氏ならずとも、此の侭では日本が危ない、と多くの日本人が感じているは当然のことではないでしょうか。
 (FK生)氏は、日本人になりたがる人に快くとめてもらわないと一旦日本を見捨てれば、もう帰ってこないものだ。そうすると日本はますます困ってしまう」とされているが、元々留学とは、自国発展に貢献するために諸々の、技術、文化等々を他国から学ぶのであって、帰化するために留学するのではないと想います。
 卒業すれば帰って当然。留学と帰化は別問題ではないでしょうか。
中国人に対する「労働鎖国」をしても、日本国が困ることは何もありません。東大の件のご指摘は仰言る通りで、実に愚かなこと想います。
  (TK生、佐賀)