講演「正しい現代史の見方」帯広市・平成16年10月23日(五)

 さて、それではナチスドイツと日本ということですが、ドイツは謝ったんでしょうか?日本人はやっぱり謝るべきだってこのお手紙の中でもそう言っているわけですよね。謝る必要はないと私が言ったことはいかんとお叱りになり、「次世代の若者が何が起ったか、事実を知らなかったでは情けない、日本は悪くない、謝る必要はないとおっしゃいますが、それを言っちゃあおしまいよ、と私は言いたいんです」と、こう私に向かって書いてきている。こういう考え方を持っている人が、ごまんといて、朝から晩までマスコミがこういう調子でことばを流してきましたし、いまだにそうです。新聞だけでなくNHKあたりまでが戦後ズーッと朝から晩までこういう調子で物を言っていましたから。これは決して、日本にひどいことをしようと意図しているわけではない。こういうことを言っていると無難だという考えなんですよ。

 自分が悪いと言っていれば気が楽なんです。ホッとしていられるんです。抵抗して自分は正しかったと言ってスックと起ち上がるのには努力が要ります。意力が必要です。ところがですね、はっきり申しますが、ドイツは全く謝っておりません。侵略戦争を謝っていません。ユダヤ人虐殺だけ謝ったんですよ。この事実も知らないんだから、日本人は困ったもんです。ドイツが謝ったのだから、日本は謝り方が足りないと言って十年くらい前に戦後謝罪問題というのが起りました。

 ドイツは個人補償として沢山のお金を、日本の何倍と言うお金を犠牲者に払っているじゃないかと、細川内閣の少し前、たしか宮沢内閣のころですね、宮沢さんって人はすぐそれに同調しましたから。個人補償ということばがパッと広がりました。どういうわけだか「従軍慰安婦問題」がそのとき一緒に出てきました。誰かが裏で糸をひいていたんでしょうね。この二つはセットで新聞紙面におどりでました。そして細川内閣にかわっても、同じことで、細川さんもすぐあわてて、侵略者戦争謝罪発言というのをやりました。そしてその時彼はドイツが個人補償に7兆円だしているんなら、日本も1兆円くらい出すべきだなんてどんぶり勘定言って、根拠はどこですかと言われて笑われたんですが、真面目にそう言った人ですよね。これまた無知の然らしめるところは恐ろしいということなんですが、ドイツは戦争犯罪に対してビタ一文も払っていないんですよ。謝罪もしていません。それどころかドイツは平和条約をさえ結んでいないんです、まだ。ヨーロッパは何百年にわたり互いに侵略戦争をしていた処ですから、互いに非難なんかできません。

 日本はサンフランシスコ平和条約を結んで賠償を支払うべきところには支払い、在外地における財産は全部没収されて、しかもA級戦犯のみならず、BC級戦犯3000人の命が処刑の対象になり、これも不当ですからね、こんなことする根拠はないんですから、BC級戦犯と称して、いい加減な裁判で沢山の日本の人たちが処刑されて、そして昭和28年サンフランシスコ平和条約が結ばれると同時に日本の国内で戦争は終ったということになり、解決しました。しかしドイツはこの平和条約を結んでいません。近隣諸国と今でも法的には交戦状態にあるのです。しかし、それではやっていけないので、戦争の謝罪はしないが、ホロコーストにだけは補償しようという対応をしたのでした。

 他方、日本では平和条約を結んだそのとき、いいですかそのときに、なんと、まだ依然として巣鴨に拘留されていたA級戦犯の人たちの釈放運動がはじまりました。その釈放運動で旗を振ったのは社会党議員です。一社会党女性議員が旗を振って署名運動を展開して、皆さんのご年齢の方の中できっと忘れていないかたもおられると思いますが、4000万人もの署名が集まって、そうしていわゆる東京裁判の巣鴨拘置所に拘留されていたまだ処刑されていない人々が釈放されて、ならびに皆さんも知っている、軍人恩給というものにも平等に浴するするという立場を得られるのであります。戦争は終ったんですよ、そこでケリをつけたんです、国民の心の中で。社会党議員がですよ、すべてを許さなければならないと言ったのです。つまり誰か個人が他国を害したのではない、A級戦犯もB級戦犯もくそもない、みんな国民は天皇陛下と一緒に運命共同体の一員として戦ったんだから、誰かに罪があるという話ではない、と。

 死んでいるものに鞭は打たないとそういうことだったわけですね。それがですね、何が故に中国が今ごろになってA級戦犯を別に祀れとか言い出すのか。A級戦犯、A級戦犯というけれど、皆さん立派な人がいっぱいいるんですよ。あの中には、東郷外務大臣もそうだったし、戦後大蔵大臣をやった賀屋興宣さんもいたし、みなさん戦後復活して政治家として活躍された方々少なくない。何がA級戦犯ですか。あれは勝手に東京裁判で勝者がレッテルを貼っただけの話であります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です