平成23年1月8日(土)に行われた、坦々塾新年会の報告です。
文章:浅野正美
今回の坦々塾は従来と趣を変えて西尾先生のご講演と新年会の宴というプログラムで開催された。会場も定例の会議室を使用せず、最初から懇親会場の部屋に集合し、ここで西尾先生の講義を聴くスタイルとなった。
当日は過去最高となる51人の出席者が集まり、宴会場の一部屋では収まりきらない人数であったが、何とか全員で膝を寄せ合い、かつての寺子屋を髣髴とさせる雰囲気での勉強会となった。
西尾先生の講演は、田母神元空幕長解任における先生の強い怒りが、ある私的な感情に基づくことから語られた。西尾先生と当時の麻生内閣総理大臣とは古くから面識があった。マスコミが政権交代必至と扇情的に報じる時の世相において、先生は必ず読まれる手はずを整えて、麻生氏に手紙を書き送った。そこには、保守政治家を自負する麻生氏が、保守としてとるべき行動と心構えが具体的につづられていたが、麻生氏はその忠告に耳を傾けることなく、何者かにおもねるような政治姿勢を取り続けた挙句に、田母神氏解任という暴挙に出た。
我が国は、戦後の見地からのみ戦争を批判するという宿痾に蝕まれ、勝敗とは別に、開戦前に立ち返っての大東亜戦争における必然性と正当性を深く思索するという営為を放棄してしまった。その結果、反戦、平和、民主主義といったものが、進歩主義として認識せられ、侵略戦争を否定するアメリカこそが侵略者であったという自明のことが忘れられた。
敗戦時、我が国で0時(国家の非在)を体験したのは、満州など外地からの引揚者、復員兵、昭和天皇だけであり、国民は「リンゴの歌」と「青い山脈」の能天気なメロディーに慰められて、それ以降の教育とマスコミによるばかばかしさの再生産は、今もやむことがない。ドイツの敗北後の惨状はこの比ではない。
真に必要なことは、0時の時代の正確な認識を取り戻すことである。
講演終了後、20名に西尾先生署名入りの御著書が当たる抽選会が行われ、当選者には一番から順番に希望の書籍が贈呈された。この日のために広島から駆け付けた日録管理人の長谷川さんが一番くじを引き当て、長谷川さんによる乾杯の発声で新年懇親会が始まった。
この日塾生一同は、新年の祝賀にも勝る慶事に沸いた。それは、西尾先生の個人全集が国書刊行会から出版されることが発表されたことである。全22巻、箱入り、二段組、年間4冊の予定で、完結は5年先になるという。この発表によって会場は大きな拍手に包まれた。懇親会は、お正月の華やかさに加え、この吉事により一層の歓びが重なった。
文:浅野正美