暑中お見舞い申し上げます(一)平成23年

 6月末から真夏が始まり、このまま9月末まで猛暑がつづくのかもしれません。私は夏男で、どんなに暑くてもこたえません。血圧の高めの人間はたいていそうで、冬の寒さの方が嫌いです。

 私の書斎は太陽の光の入る地下室で(妙だと思うでしょう)、室温自体は低く、クーラーも扇風機もあまり使いません。しかし冬は地下暖を入れて、それでも腰から下が冷えて困ります。最近は椅子に坐って腰から下を包む電気炬燵を用いています。

 『WiLL』に書いていた震災の感想(5月号)と脱原発論(7月号)が人の目に留まり、KKベストセラーズが数人の論者をあつめて出す単行本に収録することを申し出て来たので、合意しました。刊行は8月で、数人の論者とはだれか、近づいたら詳しい内容を公表します。

 別の出版社から「保守主義者のための脱原発論」を一冊にまとめて欲しいと頼まれ、半ばその気になりながら、決心がつきかねています。

 資料はどんどん貯っています。ジュンク堂に行って20冊くらい原発関連の本を買って来ました。雑誌や新聞やブログに書いたものはそのままでは一冊の本にはなりません。時代が動き、情報もどんどん変わるからです。もう一度一から考えを整理し情報を再構成してみなくては、一冊の本は書けません。私はいわゆる専門家ではないので、一文学者として、一思想家として、一人の人間として、思索の書を書くのでなくてはなりません。まとめるのには相当に時間がかゝりそうな気がしています。

 『WiLL』8月等にはなにも書かないことになります。『正論』の臨時増刊号に相次いで二論文を書いたのはご存知でしょうか。別冊正論15・「中国共産党」特集に「仲小路彰がみたスペイン内戦から支那事変への潮流」、正論8月号臨時増刊号「『脱原発』で大丈夫?」に「さらば原発――原子力の平和利用の誤り」を出しています。

 『GHQ焚書図書開封』5と6とが相次いで刊行されることになります。5の題は「ハワイ、満州、支那の排日」、6の題は「日米開戦前夜」です。5はこの7月中に店頭に出ます。6は12月8日のパールハーバー攻撃70周年記念日までには刊行します。

 このところあれやこれや多種の原稿の整理で追いまくられました。というのは、全集の第5巻の校了後、第1巻の再校ゲラ、第2巻の初校ゲラが相次いで出て、やいのやいのと言われているからです。第3巻の目次内容がまだきまらないのでそれも編集部から早くせよと要求されています。

 各巻に私以外に4人の校正者がいて、厳密な作業をしてもらっていますが、私が再校を読んで「後記」を書き、三校を私を含め4人が読み直してそれぞれの巻を終わらせます。各巻600ページですから容易ではありません。

 全集の内容見本は出来ましたが、各巻の収録文の内容はまだ厳密にはきまっていないのです。昔の本を読み直すすべての作業はこれからです。

 全集の内容見本(カタログ)は国書刊行会03-5970-7421に電話すれば送ってくれます。よろしくおねがいします。

 今日『GHQ焚書図書開封 5』の「あとがき」を書き上げましたので、どんな内容か次にお知らせします。

 尚、16日午後8時から一時間放映された水島総氏との討論がYouTubeにありました。

「暑中お見舞い申し上げます(一)平成23年」への7件のフィードバック

  1. 前半30分ほどは西尾氏が言葉につまる場面もあり劣勢であつたが、最後に盛り返して日本的妥協で終つた。

    西尾は学者でもレヴィットやニーチェの翻訳者でもあり、『歴史の進歩』が神学的幻想でありその世俗化であることは充分知つてゐるから、水島のやうな単純な幻想を持たないし教養が根底からして違ふ。

    石油が化石燃料であるのも科学的に分かつてない - 何故なら天然ガスは化石燃料ではない - のに炭酸ガスが温暖化の原因だとか、原子力の平和利用がありうる(中曽根も正力も核武装を想定してゐたはずだが)とか - 蛇足ながら捕鯨は食日本の文化だとか - 嘘と幻想で固めた日本が滅びるのは良いことだらう。

    日本には(まだ)技術があるとか、日本人は優秀だとか、経済は成長しなくてはならぬとかが暗黙の根拠である言論は空しく更に破滅に近づくだけだらう。

  2. ☆チャンネル桜拝聴しました。
     水島社長の原発推進の理屈に押されていた感がありましたが、現実論として西尾さんが言われることが正しいと思います。日本を守るということは日本国民を守るということであり、現時点で原発推進をいう人間は国民を犠牲にしていいと言っているようなものです。
     それから、「CO2ってそんなに悪いのですか?」という質問に皆が温暖化になるから悪いとTVで洗脳されて言っていますが、武田教授の話では、何も問題なさそうです。特に海に囲まれた日本はCO2も温暖化も全く問題ないということです。
     そうだったら、脱原発の代わりに石炭で発電することをやるべきです。石油とドルでアメリカが統制する世界からの脱却が日本にとって幸せだと思います。温暖化、CO2 完全無視すればいいんです。元々、日本が一番CO2は排出してなくて、問題は中国、アメリカなのだから、日本がどう努力しても地球規模で何の影響もないから、震災復興のため日本は京都議定書の約束を破棄すると宣言すべきです。
     そして、1000年以上なくならない石炭で発電することに日本丸は舵を切ることが一番いいと私は考えます。西尾さんからも武田教授にこの件ご確認し、エネルギー問題の論拠に加えてください。

     最後に水島社長の右だから原発推進だという発想に余りにも短絡すぎると、言い方代えると、無知無謀だと冷静に私は感じました。

  3. 16日の桜チャンネルでの水島氏との討論を拝見いたしました。

    西尾先生の脱原発の主張には、まったく賛成であります。
    というよりも、私の最初の素朴な反原発の感情が、西尾先生の論によって、確固たる考えに昇華していったというのが、正しい経過でしょう。

    保守の中の原発推進論は、現民主党政権や菅直人現総理に対抗する意識が、あまりに神経質に成り過ぎて、正常な判断をなくしているのではないでしょうか。

    あるいは、国家システムの産業経済面重視に傾いていて、事は国の存在に関わるという問題意識が希薄なのではないのでしょうか。

    確かに、民主党政権や菅直人総理は、大変危険な政治状況であり、大問題です。
    しかし、ポスト菅民主党となるべき今の自民党に、まったく期待できません。
    自民党が自らの反省に立って、断固たる変革ができないうちに、また55年体制然とした、順繰り自民党政権に戻るかと思うとウンザリです。
    今自民政権に戻ったら、原発問題においても、携わる人間も組織も根本的に変えることなく、曖昧なまま続けていこうとするでしょう。

    今回の人災である原発事故は、自民党の責任の方が格段に大きいのです。

    菅総理の事故処理の拙さは、確かにありますが、それを遥かに上回る責任が、旧政権、旧体制にあります。

    西尾先生が述べられているように、佐藤政権から中曽根政権への流れの中で、原発推進体制は形づくられ、その後の自民党政権でも、安全面、保安面での有効な手立てがなされませんでした。

    そして、そのこと以上に重大な問題は、アメリカほか戦勝国の思惑のまま、只ひたすら、核廃棄物を日本国内に貯め込むような愚かなことを続けてきたことです。
    平和利用の名のもと、軍事関係の機関が原発体制に関わるようにしなかったことが、愚劣化に拍車をかけました。

    この原発推進体制は、国防を考えない、正に亡国の政策でした。
    核・原子力に関わることが、国防の範疇だったことを、国民は改めて思い知ったのです。

    その愚かな体制を作り進めてきた自民党が、菅総理の失政を契機に、したり顔をして再度、原発推進を始めるというのは、どうしても受け入れがたいことなのです。

    また一方で、保守の原発推進論には、今回のTV討論で西尾先生が言われていたように、「日本病」の再発を見てしまいます。
    大東亜戦争の終戦間際に日本人が陥った「一億総玉砕」の思考を見てしまうのです。

    次に原発事故が起こったら、日本が壊滅的になるということを何故、考えようとしないのでしょうか。
    ましてや、これが他国やテロによる攻撃によるものだとしたら、確実に二度目の日本国敗戦、否、それより悲惨な「一億総玉砕」の達成です。

    保守の脱原発論を弱虫の発想とするところも「一億総玉砕」思考と全く同じです。

    事ここに至った原発の問題は、反左翼、反民主党、反菅直人よりも、もっと大きな問題で、国家の存在に関わる問題であるということを、国の全体を俯瞰して考えるべきです。

    東日本大震災は、現原発体制の危うさを日本国民に知らせるための神の啓示ではなかったか、と思えるほどの、わが国原子力発電体制の堕落でした。

  4. 放射性廃棄物を人類にとって安全な物(笑)にする技術、それは在り得ないとは言えないとは思います。
    しかし、それは安直な”近代”文明信仰のみからは生まれて来ないでしょう。
    言うならば、古代、近代、現代を貫く歴史的科学観が必要とされましょう。
    私はアインシュタイン氏は、いわば現代科学に生きた古代のシャーマンと推察しています。
    さて、先ほど笑ってしまいましたが、”物”を壊して創ったエネルギーを再び安全な”物”にするとは可能でありましょうか。素人考えで可能な気がします。しかし、覆水盆に還らずの諺もある。???。再びアインシュタイン氏級の科学者の出現を待つしかないのでしょうか。否、西尾先生も私も哲学学徒であるならば我々自身も考えてみるべきではないでしょうか。
    哲学は諸学の冠、理系、文系の区別はありません。

  5. 私はおたおたどころか正直に言って、生きたここちがしませんでした。茨城で震度6に襲われ、例外的に停電をまぬがれたおかげでその揺れの中で仙台の地獄図を目の当たりにした時の衝撃はいまだに恐怖として体にこびりついています。広瀬隆氏の「危険な話」「眠れない話」を当時読みあさっていただけに、ついに来るべき時が来たかと茫然自失でした。この期におよんで冷静ぶっている論者がいることが信じられません。それは強がりですら無く、やはりバカなんだろうと思うしかありません。自虐史観しかり、常識的な生活感さえ持ってれば騙されることもあるまいに。私は今回も西尾先生の論考がいちばん頼りになりました。

  6. ill 8月号の西尾先生の論文拝読いたしました。

    中でも「二国間原子力協定の真実」の章、金子熊夫氏の著作の引用部分は
    私の不勉強ゆえ、初めて聞く話でした。
    これには驚きました。皆が知るべき、重要な話だと思いました。

    推進派の主張している「エネルギーの安全保障」だの「純国産エネルギー」などは大いに怪しいということになります。
    このように主張している通産官僚のN氏は通産省にいながらこの事実を知らないのでしょうか?
    (たしかN氏は原子力関係の部署におられたと聞きしましたが。TPP問題では頼もしい言論を展開し期待していたのですが残念です。)
    水島氏も原発について書かれた西尾先生の最近の論文を読んだと言っておられたが本当なんでしょうか?
    (読解力が足りなかったのでしょか?)
    この点について討論していただきたかった。
    それにしても討論に招いておきながら、西尾先生の話を遮って最後まで言わせない、
    水島氏の度量の狭さ、ずるさ、小心さが浮き彫りになった討論でした。
    実に失礼。不愉快でした。

    多くの犠牲の上に成り立っているエネルギー政策、
    処理もできず増え続ける核廃棄物
    この2点だけで原発は許されない
    と思っております。

  7. 今日中部大学の武田先生のブログで自民党の議員が平均4500万円の献金を
    東電から受けていたニュースがあったと記述がありました。
    ニュースソースを探しましたが見あたりませんでした。
    本当でしょうか?
    本当だったら頭が痛いです。
    保守と言えば短絡的かもしれませんが有事の際に頼りになるものと
    思っていましたが はてさて・・困ったもんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です