暑中お見舞い申し上げます(二)平成23年

『GHQ焚書図書開封 5』の「あとがき」

 本書は『GHQ焚書図書開封』シリーズの第五冊目に当たる。副題に「ハワイ、満州、支那の排日」という言葉が並んでいる。互いに関係のない文字のように思われるかもしれないが、第二次大戦に至る日本の歴史に関わりの深い重要な地名ないし概念であることは一目で分るであろう。

 三冊の非常に良い本に出会うことができた。吉森實行『ハワイを繞る日米関係史』、長與善郎『少年満州読本』、長野朗『日本と支那の諸問題』の三冊である。このほかに長野朗のきわめてユニークな短い満州論も視野に入れることができた。また蒋介石による黄河決壊の蛮行を告発した仲小路彰の格調の高い文章も紹介することができた。

 最初の三冊の本に出会えたのは偶然であった。けれども太平洋を西進するアメリカの覇権意志の起点はハワイ併合にあり、満州への関心は日米両国の不幸な一致点であり、支那の排日はよく知られたこれらの事実の背景をなす泥沼のような現実であった。そう考えれば日米戦争の前史にいずれも関係が深く、三冊の本を見つけたのは偶然でも、三冊を選んでこのようにここに並べたのは決して偶然ではない。戦争に至る歴史のほんとうの姿を知りたいと願ってきた本シリーズの動機に添う選択であって、いよいよ五冊目で戦争の真相探求に次第に迫ってきたともいえるであろう。

 ハワイも満州も戦争の歴史を解く鍵をなす地名である。けれどもハワイについて知る人は少ない。ましてアメリカのハワイ併合に激しく抗議した日本の歴史を知る人はさらに少ない。満州について、たくさんの研究があるが、戦前の日本人がどう感じ、どう考えていたかを具体的に分らせてくれる本は少ない。支那の排日についても、支那人のしぶとさやしたたかさを踏まえて、十重二十重に絡まる複雑な心理的、経済的、政治的原因を手に取るように分解し、説き明かしてくれる本は少ない。この三冊は以上の点で私を満足させてくれただけでなく、ここに大戦に至る前史のこのうえなくリアルで微妙な内容が展開されたと信じている。

 じつは『GHQ焚書図書開封』第六冊目がすでに準備されていて、二、三ヶ月の後には刊行される手筈である。こちらは「日米開戦前夜」と名づけられる予定である。「前史」ではなくいよいよ「前夜」である。私は第六冊目のほうを先に世に送ろうと最初考えていた。しばらく迷って計画変更し、第五冊目と第六冊目をほゞ同時出版することにした。この二冊をもって、昭和16年(1941年)12月8日の真珠湾(パールハーバー)攻撃の70周年記念に時を合わせるのがよいのではないかと考えるに至った。

 第五冊目のハワイをめぐる日米関係史はその意味でいよいよ今こそ知るに値する内容であるといえよう。加えて第六冊目の冒頭が満州をめぐる日米関係史から説き起こされることもお知らせし、ハワイ、満州、支那大陸が大東亜戦争のキーポイントであることをあらためて再認識しておいていただきたいと考える。

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