謹賀新年(四)

 空白の歴史のうちに足踏みしていると、退行するというか、途方もない方向へ逸れてしまうというか、思いもかけない不安が露呈するのは憲法の場合にも当て嵌まる。

 自民党案といい、民主党案といい、財界の案といい、最近出ている憲法改正案には、在日外国人の人権を認める条項とか、環境権とか、男女参画社会の基本権とか、妙なものが次々と並んで、今のままの憲法のほうがまだましだという思いすらしてくる。

 私は3年ほど前、改正憲法からは「化け猫」が出てくるという論文を書いたが、不幸にも私の予言通りになってきた。

 私は今、憲法改正反対論者である。たゞ一点、9条の2項を削除する改正案だけを国民投票にかけて、それ以外は当分凍結するにしくはない。今の国会議員には新憲法を作成する力はない。

 そこで教科書のことを考える。「新しい歴史教科書」が普及し、それで育った世代が政治家の主流を占める時代になって初めて、憲法改正に取り組む資格が生じ、その時まで待つほうが安全だろう。今の政治家に任せていては危くて仕方がない。

 長い歴史の「空白」に漂っているうちに、次第に退行し、自ら正しい道を発見する本能を失い、当初は考えてもいなかった思いもかけない方向へ曲ってしまうことが起こり得る。日本の未来は恐ろしい。

 すでに確定した真実をも忘れた振りをして、前の嘘をよびもどして、平気な顔で嘘をくりかえすかと思うと、いつまでも昔のパターンにもどって、昔の習慣的思考にしがみつく――今の日本の光景である。

 中国の問題、東アジア共同体という妄想も今年は正念場を迎える。男女共同参画の理念委員会が次の五ヵ年計画を7月までに作定するという。そんなものを許していいのであろうか。

 平成17年(2005年)は本当に扉を開けて、国家意志を回復できるか、そうならずに一段と後退するか、雌雄を決する一年になりそうである。

「謹賀新年(四)」への3件のフィードバック

  1. このサイトをご覧になっている方から憲法九条について、面白い説があるとご紹介をいただきました。
    遠藤浩一先生のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/endoh-opinion/2004-12-31-1
    が再開されたのを読んで、このような文章があったのを思い出しアップして下さったそうです。
    どこから探してこられたのかはお聞きしていません、本文のソースを教えていただけるようお願いしました。
    恥ずかしながら、この様な説に考えが及んでいませんでしたので、オピニオンは控えさせていただきます。
    熟読した上で、このことについて資料を調査してみます。
    このような話もあるということを知らなかったのは私だけかもしれませんが、リンクをご紹介しておきます。

    文藝春秋元編集長 堤氏のエッセイ抜粋
    http://f52.aaa.livedoor.jp/~sailor/newpage1.html

  2. 現行憲法の成り立ちと資料についての公文書はここで閲覧できます。
    国立国会図書館ホームページ「日本国憲法の誕生」より
    掲載資料一覧
    http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/keisai.html
    白洲次郎氏のジープウェイレターの原本もここで閲覧できますし、文書庫には芦田均氏の日記などもあります。

    それぞれのリンクを開き、「拡大画像を開く」をクリックすると大きな文字で原本画像を閲覧できます、画像画面上部の「次へ」をクリックすると次のページに進み、「印刷」をクリックすると画像がそのまま印刷できます。

    また「テキストの表示」で文字データの閲覧が出来る文書もあります。
    その場合の印刷は通常の印刷と同じです(テキスト表示の出来る場合はこちらで印刷されることをお薦めします)

  3.  西尾先生、初めて西尾先生に投稿します。先生の、『諸君』の論文を読み、色々と考えさせられました。
     また、自分は先生の事を少し誤解していました。先生が村尾二郎先生を評価されている事に、先生が所謂反皇国史観の戦後民主主義的保守主義者では無いという事が分かりました。これまで、つくる会の歴史観とは一体どのようなものなのか、判断が付き難いものでした。それは単に、反共歴史観に基くものなのかなど。先生の論文を読んでそれが間違っているという事に気づきました。
     村尾先生は戦後一方的に皇国史観と誹謗中傷された平泉澄博士の御弟子の一人であります。つくる会の歴史観が平泉史学による歴史観であるならば、私はつくる会を応援させて頂きます。では。

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