八木秀次氏との対談形式の共著であるこの本(PHP研究所刊、¥1500)には、「ジェンダーフリー」「過激な性教育」は国を亡ぼす、という副題がついている。副題が示す通りグロテスクでショッキングなグラビア、図版、写真が一杯のっている告発的攻撃本である。
今までジェンダーフリー派の本はたくさん出版されているが、反論本はまだ出されていない。ことに一冊で問題のすべてを引き受ける反撃の本、実例も豊富で、必要な科学的知識の手引きもあり、反論するための理論上のマニュアルにもなる本、そういう根本的な本を作りたいと二人は考えた。
ジェンダーフリーとか性教育とかいうことになると、どうしても具体的な事例に目が奪われ、現象論になりがちである。それだけでは面白くないので、なぜこんな奇現象が起こったかという冷戦以後の政治史的解明をも試みているが、さらにそれだけでも性愛に関わるテーマは論じ尽くせない。
八木さんと私とではアプローチの仕方が少し違う。私は種族と個体の生命、古代の生死観、宇宙の神秘にも関わる問題とみなし、愛とは何かから羞恥心とは何かまで、スタンダールの恋愛論からサデイズムの心理にまで説き及んだ。
性に関する現代の露骨と隠蔽の二重性に、古代ローマ末期との文明論上の類似性を示唆したが、これはほんのとば口を書いただけで、これから以後にもっと深く考えてみたいと思っている現代文明の新しいテーマの発見である。
ところでこの本には約10ページにわたって日録の管理人長谷川さんのインサイドレポートがのっている。彼女が約一年間広島県廿日市市で男女共同参画プラン策定ワーキングメンバーをつとめた体験記録が収録されているので、当日録の読者にはその点の興味をも引くであろう。
「まえがき」は八木氏、「あとがき」は私である。
(二)に目次の概略と「あとがき」の全文を紹介する。