ウクライナ情勢と安倍外交

 ウクライナの情勢を憂慮しています。ことに日本の立場、安倍外交の判断の難しさは、予想されていたこととはいえ、同情に値します。

 距離が遠い国は、ある程度、あいまいに対応、ずるい逃げの姿勢でいるのを許されることがあります。かつて天安門事件のとき、欧州各国は中国に対し冷淡に拒否的でした。日本政府は孤立する中国を助ける方針を打ち出しました。ロシアのウクライナ政策に対するアメリカと欧州の制裁に日本は必ずしも参加する必要はなく、せっかくうまく行き始めた対ロシア外交を日本政府としては大切に守りたい思いでしょう。ロシアは日本の隣国です。菅官房長官はそういう方針を口にしていました。

 しかしロシアのクリミア奪い取りは中国の尖閣奪い取りと同レベルにも見えるので、ウクライナの主権を平然と犯すロシアの軍事行動を日本が黙認することはブーメランのごとく自分にはね返って来ます。ここは原則尊重で、アメリカや欧州と同一歩調をとることが一応は必要に思えます。しかし、アメリカと欧州の対ロシア制裁はどのていど本気なのでしょうか。

 欧州も戦火を交える気は毛頭なく、アメリカも同じように武力行使など考えていません。ロシアはそこを見越していて、一気にクリミアを併合する構えです。中国はこれを後押ししています。

 日本はアメリカに顔を立てても、たゞロシアの不興を買って、せっかくアメリカからの自立外交として目立っていた対ロシア接近は効果激減となるでしょう。ここは一番踏ん張って、何年か先の政治効果を狙ってロシアの顔を立て、制裁はやならいという方針もあり得るだろうと考えられます。

 しかし、しかし、ここがよく考えなければならない正念場です。ロシアと中国は接近し始めています。一連の動きは「冷戦」は終っていないこと、北方共産回廊が亡霊のごとくユーラシア大陸に再び暗雲をひろげ始めたとも考えられます。

 だとすれば、日本は反共国家として、アメリカと欧州各国の行動に歩調を合わせざるを得ないということになりましょう。結局、そういうことになり、安倍自主外交はしばらくお休みいたゞくことになるのではないでしょうか。

 尤も、この面倒な諸国家間の関係をどう泳ぐかで安倍外交はその真価を試されているともいえます。

「ウクライナ情勢と安倍外交」への9件のフィードバック

  1. ウクライナの問題は、本当に頭を悩ます問題です。
    今世紀最初に訪れた大きな決断を求められている状況だと言えます。
    欧米諸国側に立つべきか、隣国ロシアとの歩調を合わせるべきか、ここはそう安安と答えを出せない立場にあります。
    おそらく多くの日本人が同じような苦悩を背負っているのではないかと推測します。
    ただそんな中で、この問題の重要性をあまり認識していない空気もあります。戦後の日本の常識から言えば、欧米諸国と歩調を合わせることが当然だという、なにをためらう必要があろうものか、そのような探りの浅い認識に疑いもかけない国民も多くいるのが現実でしょう。

    今日本がロシア側に歩調を合わせるべき理由さえ理解できていない国民も、まだまだ大勢いるのでしょう。
    そのことはズバリ国際情勢を全く探求しようとしていないことの表れであり、論外ですが、しかしそうした呑気な空気が思いつく認識が、最後には回り回って正しい判断になることも有りうる話です。

    それはさておき、このところの安倍外交が中国包囲網のごとくその近隣に積極的に姿勢を重ねている現在、その成果をなんとか有効なものにしていきたいという願いが、今強くあります。ロシアとの関係が今のところ順調な兆しを示し始めているなか、ウクライナの問題がここに来て立ちはだかっているわけですが、いずれ日本に大きな決断が必要になるのは時間の問題でしょう。いやもうすでにそれが訪れていると見るべきなのかもしれませんが、拙速は禁物だと考えるべきか、それとも今こそ日本の立場を強く示すべきだと考えるべきか、ここが最初の分岐点でしょう。
    アメリカはともかくとしても、おそらく欧州各國も若干同じようなところで悩みを抱えているのかもしれないと見るのは誤りでしょうか。
    イギリス・フランス・ドイツなどは、どこが先頭を切るべきかで駆け引きがありそうな面も伺えるのですが、おそらくこの地域の関係国は、欧州という一つの団体の影に身を潜めることができる点、日本よりはやや有利な状況にあります。日本はその点孤立した立場にあり、当然中国や朝鮮半島とは、とても態度を同じくすることは不可能です。
    そうなれば頼みの綱はこれまで安部総理が尽力してきた諸外国との関係が微妙に働き出すのではないかと思います。
    ある程度距離を置ける立場にあるというこの距離的優位を、慎重に利用すべきではないかと考えます。

    なかなかはっきりした態度や意見は示せませんが、安倍氏の外交努力がここでどう影響を及ぼすかが着目点ではないかと思います。

  2. 中立の立場を取るというのはどうでしょうか?
    アメリカにすれば、日本が裏切ったということになるかも知れない。
    しかし、では、日本を手放す気が、本当にアメリカにあるのか?
    嫌がらせが色々あるに違いないが、そのタンビに日本は姿勢を硬化
    させる。どこまで行くか分からないが、辛抱だ。

  3. 本当に悩ましいです。
    私も、米国にリップサービスしながら中立の立場を堅持するのが日本のとるべき道かと思います。グローバリズムとナショナリズムの相克の観点からです。多少ずるくても、多少非難と実害があっても。

     なお、ナショナリズムやナショナリストと言う言葉は、必ず「偏狭な」などの否定的形容詞が付くように、否定的・右翼・ナチス・悪鬼のイメージを伴い、その伝統と漸進と平和を希求する本来の真実を実感できない名称となっています。 
     この名称の悪印象を避けるため、我々の基本的な考え方の名称をナショナリズムではなく、「グローバリズムを排する新国際主義」または短く「新国際主義」(ニューインターナショナリズム)などと称えてはどうかと思います。 私達はお互いのナショナリズムを尊重し合って、健全で平和な国際社会を目指そう、虚妄のワンワールドをユートピアとするグローバリズムは人類に悲惨をもたらすと考えるからです。

    英国の政治理論家でオックスフォード大学教授のデイッビッドミラーは、リベラルナショナリズムと言っているようですが、しっくりきません。もっといい名称があればと思うのですが・・・・・。

    プーチンの手法は問題がありそうですが、彼はグローバリストではなくナショナリストだと思います。

  4. >神様様

    ここの管理人をされている奥様の場合もそうなんですが、最後に「様」が付くHNの場合、>様・・・は日本語的にあまり美しくないのではないかということを、過去に語り合ったことがありまして、神様様の場合も最後の「様」を、今後省かせてレス致しますこととをお許しください。

    さて、神様がおっしゃる「中立の立場を取るというのはどうでしょうか?」というご発言ですが、私も正直なところ今はそうせざるをえないような状況なんだろうなと思う気持ちは十分理解できます。
    おそらく世界の波のなかで真剣に国家を守る意識が保たれる為には、それくらいの柔軟な対応は必要なんだろうと思います。
    しかし、中立ありきな基本姿勢はどうなんでしょうか。よく比較対象される中立国があげられるケースがありますが、基本的にその政治姿勢は「戦っている」ことが前提なんですよ。
    オブラートにくるまれたようなイメージが一般的なイメージだと思うんですが、例えばスイスに憧れて実際に訪れた少女たちが、スイスではライフルがどんな貧しい家にもあって驚いたとかよく言いますよね。これこそ間違いなく「中立の立場の厳しい現実」なんだと思うわけです。

    中立って聞こえは良いのですが、実際には「破滅」の第一歩だと私は思うようになりました。どうしてかと言いますと、例えば湾岸戦争というのがありましたね。父ブッシュがしかけたイラク制裁ですが、この時日本は金だけ出して汗出さずの外交姿勢だったわけです。日本人の多くがこの海外からの批判を理解できませんでした。
    「日本はどれだけのなり様なんだ。金だけ出して労せずなんか、世界で通用すると思っているのか」
    まぁこれも少し言い方に問題があるとは思いますが、しかしこの反応はやっぱり「普通」なんだと思いますよ。
    金で解決できる問題なら、おいらが真っ先にやってるわい・・・とアメリカテキサス州の農家のおっさんが言ったとか言わなかったとか・・。

    まぁ冗談はさておき、かなり昔の中国の国内内乱の際、ご存知のように当時は今のような大国ではなく、中国は大小の国が群雄割拠する時代でしたが、その中で勢力争いする際に、絶対とったはいけない政治姿勢というのがあったそうです。それは、仮に二国間の争いに巻き込まれた際、両方の国に中立な態度を取る行為だそうです。
    何故ならその場しのぎな政治姿勢にしかならず、両方から恨まれる結果を生むからだそうです。
    日本はおそらく中立という政治姿勢をこの世界中の中で、一番嫌う民族のはずです。私はあまり存じ上げないのですが、戦国時代なんか、その基本理念がとても行き渡っていたと聞きます。
    おそらく、現代人に一番欠乏している要素はそれなんじゃないかと私は思いますね。
    まぁ、とにもかくにもウクライナに関する問題は容易ではないですよ。
    半端なく難しい問題です。何故なら、戦後初めて日本が政治の「駆け引き」を思考して臨む問題だからです。
    今までの問題は有事からかけ離れた問題でした。イラク戦争でさえも、後ずさりしながらの参加でした。しかし、今回はもしかすると前傾姿勢な軍事介入が起こりうる問題なんです。
    この違いがどえだけ国民が認識しているか、そこがまず問われるんじゃないかと、私は思うわけです。

  5. <追記>

    まずは、先の私の投稿文に所々誤字がありましたこと、お詫びいたします。

    私は今回の西尾先生のご発言は、かなり重く受け止めています。
    先日チャンネル桜の討論会で、まさしくこのウクライナ問題が話題に上がっていましたが、その時私が感じたものは、保守論壇の方々が、ロシアとの親和路線をかなり推し進めようとしている気分の高さについてでした。
    たしかにアメリカとの関係が今あらゆる点で見直しが要求されているのは現実なんですが、しかし、だからといってアメリカに逆らう態度は表立ってできないことも認識し直さなきゃならないわけであり、アメリカという国に見切りをつけることはいつでも可能であっても、それを露骨にするのは安全な策ではないことも認識しなければならないのでしょう。

    どんなに日本が優秀な国家だとしても、「孤立」は危険です。
    国民の一般的な認識が問われているのと同様に、知識人の認識も問われている事態なわけです。
    問われているものがあまりに多すぎて、なにを選択すべきか本当に迷うわけですが、しかしそれと同時に「国際的に明確な尽力」というものが存在しなければならないのも事実です。
    それをどう表すのかが今問われていると言えますでしょう。

    安易な親米路線や親露路線もここではタブーですが、しかしその両方を兼ね備えた底の深い外交姿勢も根底になければ、日本は簡単に世界から阻害されてしまうのも事実でしょう。
    いみじくも「中立」という立場を押す意見もこのスレッドにありますが、私はそれすらも実は危ない意思表明だと思います。
    ですので「国際的に明確な尽力」という、かなり苦し紛れなな表現をさせていただいたわけですが、おそらく諸外国の多くが、反米路線を根っこに抱きつつも、それが容易に表現できないジレンマが現存していて、この世界情勢をどうくみするかによって、日本の基本姿勢は浮き彫りされていく運命なのではないかと想像するわけです。
    なぜならそれは過去の日本の歴史的対応が絶対条件としてあるわけで、この条件から我々は逃れることはできないわけです。

    戦後の日本国内での様々な苦悩とは別に、もう一つの世界から見た日本の歴史の歩みが存在していることをここで知るべきなのではないでしょうか。
    もしかするとその点を、われわれ戦後の日本人は身勝手にも知らんぷりしすぎてきた。ある意味今後我々に不幸が訪れるとしたら、このツケがこのあと倍返しされてしまうという可能性だってありますよ。
    恐ろしい話ではありますが、けして否定できないのも事実だと思いませんか。

  6. アンネの日記は大騒ぎになるが、保守の図書焚書の大事件は報道されない。 すべてがこのような不公平な世の中になってしまっている。

    もしも船橋市立西図書館の土橋悦子司書が「アンネの日記」等、ユダヤ人の著作を107冊焼却したらこんなことでは済まされないだろう。
    マスコミにも取り上げられ、刑事事件となり懲役ともなることは明白だ。勿論、自分の本を公的な機関に購入させるという厚かましさは許されず、社会的に抹消されるはずだ。この温度差はなんだろう。日本に住みながら日本人以上にユダヤ人の人権が優遇されている。

  7. 本文に無関係なコメントで申し訳ありません。
    映像付最新ニュースをお届けします。すぐに消えるかも知れないので、少し大急ぎで。実は関連記事を長々と書いていたのですが、映像付ニュースが入り、記事の最後に挿入しました。
    とりあえずはニュースを。
    安倍首相、「河野談話」を見直すことは考えていないと表明
    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20140314-00000747-fnn-pol
    安倍総理「河野談話見直さない」歴代内閣の立場継承
    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20140314-00000024-ann-pol
    思えば去年の2013/4/13土曜日のこの日録に西尾先生の日本外国特派員協会での意見陳述、米議会・慰安婦問題決議への憂慮が入り、大反響でしたね。河野談話・村山談話で苦しんでいる、普段はここにコメントを書きこまないような方が大勢いらっしゃいました。
    しかしここにきて日本の総理の謝罪です。これではアメリカよ、恥を知れ、はそのまま日本に逆戻りです。これでは今までにも増して中韓の餌食です。
    安倍総理のこの発言は、今に始まったことではなく、すでに何度も小出しされています。何故とどめを刺すような発言があったのか。それはいくら小出しにしても、安倍内閣支持率が下がるわけでもなく、むしろ保守からはさらに熱狂的な支持があり、「総理と言うお立場上、言いたくてもいえない。お気の毒に」とさらに人気と信頼が倍化される状態でした。それらが揺ぎ無い自信となって、総理自身の今回の決定打発言が出たのだと思います。
    安倍総理は人気が高く有力者とはお友達関係を構築しておられるので、今回のニュースも、「見ないこと」にして、今までのように驚くことも無く、静かに消えていくのかもしれません。しかし、慰安婦の像が世界中にさらにどんどん立てられていくでしょう。南京もどんどん世界各国で映画や芝居に化けて出てくるでしょう。無数の電話や抗議の署名、国民の努力はむざむざと泡と消えました。簡単な疑問です。日本の総理が村山・河野談話を踏襲して謝罪して、日本にどんな国益があるのでしょう。もうひとつ疑問です。保守は何故この問題にかくも平然としていつまでも聞こえない見えないふりをしているのでしょうか?

  8. 【外国人参政権で対馬クリミア化】
    かつてクリミアはタタール人の土地でしたが、現在はロ
    シア人が多数派となっています。そこでの住民投票で、
    ロシア編入の可能性が高くなって来ました。これは対岸
    の火事ではありません。この事象をヒントに、南朝鮮族
    は対馬乗っ取りを企てていそうです。

    現在でも経済的には、対馬は南朝鮮経済圏に組み込まれ
    ようとしています。例えば、南朝鮮人による土地の買収
    が活発化したり、観光客はほとんど南朝鮮族です。その
    ため、対馬は朝鮮文字で溢れています。

    その内、観光客が定住者になり、外国人参政権が与えら
    れれば、被選挙権が無くても、アメリカでの強引なロ
    ビー活動のように、対馬でも同様なことが起き、必ず南
    朝鮮編入のための住民投票が行われ、対馬の南朝鮮編入
    の下準備ができます。すでに南朝鮮族の反日サイバーテ
    ロ部隊VANK
    (実質的国家機関で、ウィキペディア英語版では捏造記事
    を強引に掲載させ、反日思想汚染の定着を図っています。
    http://www.youtube.com/watch?v=BCWd4-IoSjk )
    は、捏造歴史作文で、対馬の南朝鮮領有権の歴史的正当
    性を主張するプロパガンダを、国際社会で行っています。
    住民投票結果と反日プロパガンダで形成された国際社会
    世論により、対馬の南朝鮮編入の可能性が高まるでしょ
    う。

    南朝鮮が対馬乗っ取りを成功させれば、味を占めた南朝
    鮮族は、九州を次のターゲットとするでしょう。実際、
    九州のゴルフ場やホテルが、南朝鮮族によって買収され
    ています。それを見た漢族は、同様な手で沖縄を乗っ取
    る謀略をめぐらすかも知れません。

    なお、外国人参政権が制度となれば、アメリカでの南朝
    鮮族の強引なロビー活動が、日本でも展開されるでしょ
    う。

  9. だから、移民など駄目なのですね。もし北海道で中国系移民が多数を占め、中国への編入を希望したらどうなるか?
    イギリスは、自国民を南アフリカへ送り込み、内政干渉の口実を作って、戦争を仕掛け、植民地化に成功しました。
    民族を混ぜることは戦争の原因になり、外国人を国内に多数居住させることも、同様のことであるといえます。

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