村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第九回)・講演会のお知らせ

41)「近代」はヨーロッパが自分の内部から生み出したものであるだけに、その毒を中和する対症療法もまた日本よりはなおはるかに豊富に備えている。

42)思想は道具でしかない。

43)日本人には(中略)すべてがだらしなく、相対的で、理想と現実との振幅を大きく使い分ける欧米人特有のダイナミズムに欠けているのである。(中略)いっさいの二元論的対立をはらんでいない日本人の思惟形式はその美意識にも反映しているのである。

44)美事なまでの自己完結性は、(中略)変わらぬヨーロッパの特性であり、それははっきり言って動かぬ美点だといってもよい。

45)もともとヨーロッパ人はヨーロッパ以外のことに生存をかけて、本気で関心をもつ必要などにせまられたことはかつてなかったといってよい。

出展 全集第一巻ヨーロッパ像の転換
41) P183下段より
42) P185上段より
43) P187下段188上段より
44) P194下段より
45) P195下段より

【<歴史・公民>東京塾・第24回研修会】のご案内

<日米歴史検証・第7弾「完結編」>

≪戦勝国の歴史謝罪と侵略の概念≫

<場 所> : 豊島区医師会館(池袋西口徒歩5分、東京芸術劇場前大通り
反対側、「ローソン」の横道を入って突き当たり)
TEL03-3986-2321 http://www.tsm.tokyo.med.or.jp/map/index.html
<日 時> ; 平成26年4月26日(土)午後1時00分~5時15分
会場が狭いため、入場制限があります。
予約制となっていますので、参加希望の方は、このお知らせの一番下に明記してあります島崎氏か小川氏にご連絡ください。

1) 研修会連続講座(PM1:00~1:30)質疑(5分)
「光悦と遠州の時代Ⅶ」(最終章)
講師・石川陽子(日本の伝統と文化を語る集い)

2) 講 演 Ⅰ (PM1:40~2:40)
「500年戦争史観を確立する必要」
~ヨーロッパの中世とアメリカ大陸~
講師・西尾幹二(評論家)

―――――休憩(10分)―――――

3) 講 演 Ⅱ (PM2:50~3:50)
「戦勝国の歴史謝罪と侵略の概念」
~日独関係・日中関係・米中関係~
講師・西尾幹二(評論家)

―――――休憩(10分)―――――

4) 講 演 Ⅲ (PM4:00~5:00)質疑(15分)
「接近する日米の開戦動機」
~ついに分からなくなる戦争目的、行方も知れぬこれからの500年に
キリスト教が地上に刻んだ「境界」は消えてなくなるのか~
講師・西尾幹二(評論家)

司会 : 荒木紫帆(「つくる会」会員)
【懇親会】 PM5:30~7:30 同会場にて
※ 研修会は、¥1,500- 予約優先で先着90名様迄。
※ 懇親会は、¥3,500-で40名様予約制。(立食)

<主 催> : ≪日本の伝統と文化を語る集い≫
<企画・運営>:「新しい歴史教科書をつくる会」東京支部
<連絡先>島崎隆 TEL;080-6722-5670 FAX;03-3660-5672
MAIL;simazaki@rondo.plala.or.jp
     or 小川揚司 TEL;090-4397-0908 FAX;03-6380-4547
MAIL;ogawa1123@kdr.biglobe.ne.jp

「村山秀太郎の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第九回)・講演会のお知らせ」への1件のフィードバック

  1. ナショナリズムの弱点(グローバリズム克服のための考察)

    「討論:移民問題」4/12は重い討論でした。
    三橋貴明氏が、歴史認識論争や移民論争などの根底に、グローバリズムとナショナリズムの問題を指摘されていましたが、私は以前からナショナリズムの弱点の議論が不足しているように思い、稚拙で恐縮ですが以下のような考察をしてみました。

    1.グローバリストが貶すナショナリズムの弱点  
     歴史認識論争や移民論争などにおける内外のマスコミの論調を見ると、日本派の主張は日本の危険なナショナリズムの勃興=右傾化と批判され、それは日本の全否定に繋がっている。そしてそれらの批判は、つまるところナショナリズムの対極にあるグローバリズムの立場からなされており、その立脚点を崩し、かつ、その対案の哲学を示さない限り日本の未来はないと考える。つまり、日本が自己主張をする場合は、その哲学である新国際主義(健全なナショナリズムによる国際社会建設)を謳い、グローバリズムを否定することを基礎とするしかないと考える。
     
     しかしながら、日本派論壇やネット空間で展開されているグローバリズムとナショナリズムの議論では、グローバリストが貶すナショナリズムの弱点に関する反論がなく、とてもグローバニストを折伏しナショナリズムに転向させうるものになっていない。すなわち、①ナショナリズムについて回る戦争や国内少数派迫害の問題、 ②博愛精神欠落や利己主義と見做される道徳的問題、 ③今世紀に益々顕著となった交通・通信・情報処理、経済・環境の緊密化の趨勢≒技術的グローバリゼーションがグローバリズムの実現性を高めているようにみえることの3点で、グローバリストがけなすナショナリズムの弱点である。これらの観点から、世界の少なくない人々と知識層の多くは、ナショナリズムとその付属思考を道徳的に忌避し時代遅れと唾棄している。それに便乗した金儲け至上の資本家や戦略家が新自由主義などを援用してグローバリズムを煽り、世界の趨勢になりつつあるのが現状とみられる。

     したがって日本の維持発展を目指す者は、ナショナリズムの問題点を十分吟味理解して、グローバリズムを推進擁護する人々やシンパの人々のそのような問題意識に回答を示し、問題の実相を絵解きしない限り、彼らグローバニストの折伏、グローバリズム打倒はできず、新国際主義の日本を主張できず、すなわち日本の存立が危うい。  まずは、日本派の主張、新国際主義を確認してみよう。

    2.新国際主義(健全なナショナリズムによる国際社会建設の哲学)の私解
    (1)目指す世界 
     新国際主義が目指す世界は、健全なナショナリズムに基づく漸進的な自由民主主義的国家群の相互尊重の国際社会である。それは、人間の性善説性悪説の両方に目を配り、人間社会の適正統治単位が国民国家にあることを自覚し、伝統と文化と自制と法治を重んじ、国家の成員の着実な福祉と国家の繁栄を第一に目指し、その結果として人類全体の着実な福祉を目指すものである。そこでは、市場の自由は生産物に止め、生産要素(労働、土地、資本)は国家の緩やかな適度の管理の下に置くことを基本とする。すなわち国民経済を基本とする。新国際主義は、グローバリズムも共産主義のように人間の本性を理解しておらず、政治経済的にも成立し得ない全人類に悲惨な結果を招くものと認識する。 この新国際主義の問題点はなんであろうか。

    (2)問題点 
     ユダヤ人哲学者アーネストゲルナーや英国の政治学者デビッドミラーらは、民主主義はナショナリズムを基礎にしており、ナショナリズムがないと民主主義は育たず、ナショナリズムは悪ではないと言っている。しかし、これまでの世界の歴史を見ても、現在のウクライナ情勢を見ても、ナショナリズムは厄介な側面を持っている。どうしても民族間対立は過激になり易く、何らかの条件下におかれるとナショナリズムは戦争と国内少数派迫害の原因となる。
    また、自民族を優先し人類的観点を二次的にするため、利己主義的で博愛精神に欠けるとの印象は免れない。 さらに、技術的グローバリゼーションの進展に対して、国境や文化障壁はその進展の障害として認識され忌避されつつあり、これに多くの人々が共感しつつある。

     これらのナショナリズムの問題の解決案として、これまで共産主義グローバリズムと市場原理主義グローバリズムが提示されている。共産主義グローバリズムは私有財産を否定した計画経済によるワンワールドを目指し、市場原理主義グローバリズムはミルトンフリードマンらの完全自由放任経済によるワンワールドを目指している。前者は20世紀の悲惨な実験で人間の本性に反し民主主義を死なせ、どの民族も幸福にしないことが判明した。後者は、米国で実験が現在進行中であるが、弱肉強食の淘汰が進展し、自己責任と片付けられて極端な格差社会になり、大多数の民族・文化が失われ、富裕者によるロビー政治となり民主主義が廃れることは明らかになりつつあり、これもどの民族も幸福にしないことがすでに判明したと言ってよいと思われる。 
     しかし、懲りないグローバリストは次のような第3のグローバリズムを提示すると思われる。

    3.グローバリズム(民族尊重かつ抑制市場主義世界政府)の私解   
    (1)目指す世界(グローバリストの主張を想像してみた)
     国民国家はナショナリズムを基礎としており、健全なナショナリズムといえどもいずれ暴走する。そのような国民国家群で構成される世界では、戦争と国内少数派迫害は防ぐことは不可能である。本来の人類は平等であり個々人は助け合うことができるはずであるが、それに反して国境を設け国家を至上とし、自国民の福祉のみを追求し他を排斥することは、人間の本性に反し自国民の福祉すら達成できず全ての人類を不幸にする。国家の無いのが人間の自然な生き方であり、国境を無くしたワンワールドこそが人類の理想であり、その方向へ人類社会が向かうのは摂理である。

     加えて、近年の通信情報処理と交通機関の進歩は、世界を小さくしており経済の相互依存も進展する一方で、これらの動きは加速している。したがって前世紀以前は国家が人間社会の適正統治単位であったかもしれないが、今世紀以降は、世界は狭くなりその世界が適正統治規模であり、民主的なワンワールドの世界政府の樹立は可能だ。この摂理に逆らうナショナリスト達は犯罪者であり、結局ナチスだ。彼らから人類を守るために、彼らの息の根を止める必要がある。

     世界政府は三権分立し、連邦議会、大統領指揮下の行政府(世界警察軍を含む)、裁判所、旧国家単位相当の州政府群からなる。私有財産は認められるが、自由市場経済は生産物にのみ認め、生産要素は連邦政府(場合によって州政府)の緩やかな管理下に置くことを原則とする。連邦議会議員、大統領などはITを活用した全人類の普通選挙で選出される。各民族の文化宗教は世界政府および州政府により徹底して尊重保護され、過激なナショナリストは裁判により処罰される。

     治安は世界警察軍が担い、核兵器など大量破壊兵器の製造は禁止される。ただし核兵器のみは世界警察軍のみが所有管理する。それらの監視は世界警察軍が行い、違反があれば実力で摘発処罰する。各州内の紛争は、州内の世界警察軍支部が解決寄与し、州間紛争は世界警察軍が解決寄与する。

     言語は英語を連邦公用語とし、各州政府は複数の州公用語を選定できる。全世界市民の居住と移動の自由は完全に保証され、雇用、健康、年金の最低保証がなされる。通貨は単一の共通通貨ユーロに統一し、その管理は連邦中央銀行がおこない、連邦議会が中央銀行を監督する。税制は最大90%の累進課税、一律10%の消費税、最大90%の相続税、最大20%の法人税を基本とし、タックスヘブンは存在できない。政治献金とロビー活動は禁止される。
     
     社会文化教育政策は、人種差別や文化紛争を最終的に解消するため、混血と文化融合統一を第一として、世界単一化を目指した方策を採る。この最短距離としては、アメリカ合衆国と欧州連合と中国を中心に拡大発展させて、中小国を州として融合し、さらに最終的に人種民族が完全に融合した単一世界を現出させる手順を採る。すなわち初期のサラダボール状態からメルティングポッド状態にするような社会文化教育政策をとる。

    (2)問題点
     上記のグローバリズムの描く世界を眺めて多くの問題に気付くが、直ちに気づくのはその実現性の問題である。確かに米国や欧州はその前段階かもしれないが、これをサラダボール世界に持っていくだけでも至難のわざであり、ましてメルティングポッド世界にするのは全く不可能と思わざるを得ない。それは宗教を考えれば早い。例えばイスラムは政教不分離であり、世界がイスラム化しない限り世界政府は不可能である。また、中国人が世界人口で最大勢力であり、民主主義であれば世界は中華世界になる可能性が高い。そのような中で日本人と日本文化は百年程度で消滅してしまう。日本以外の中小の国民文化の多様性の消失は明らかであろう。そして有力民族の横暴と民族弾圧と紛争の激化が必至である。
     どう考えても、歴史的国民国家を急激に変えることは、よほどの力の行使と流血を経ない限り不可能であろうし、各国の文化の維持発展は国民国家なくしてはあり得ないのは、この想定未来図から明らかである。

     また、いくら通信情報処理交通の進歩と経済の相互依存が進んだとしても、政治の問題は多種多様で複雑でコンピュータで解けるものではない。大統領が連邦議員が膨大で複雑な世界の政治問題を統御できるだろうか。人間の脳の統治能力を超えている。少しの間違いが混乱と紛争をもたらし、世界政府は瓦解し、割拠混乱に至るのではないか。富裕国の民が地球の裏側の貧困国の民のために生活レベルを落とすことを承諾するだろうか。より身近なものを優先しようとする人間性は自然であり、これを逆転できるとする人間観は狂っており、現実的な社会を構築しえない。

     このモデルでもだめならグローバリズムの世界は存立しえない。やはり健全なナショナリズムに基づく漸進的な自由民主主義的国家群の相互尊重の国際社会以外実現性はない。問題はナショナリズムの暴走を如何に防ぐかに収斂する。

    4.結論(狭き門より入れ)
     グローバリズムは一見魅力的だが、やはりユートピア論に過ぎない。困難はあるが、ナショナリズムが暴走しないように統御しつつ、あらゆる知恵を絞り汗をかいて、国際関係の維持改善で世界を各国の協力で運営してゆくしかない。ユートピア論にとらわれた絶対正義などを振りかざさず、それらの努力の蓄積が数百年も続けば、有効な国際調整機関や国際法の確立と、多彩で魅力的な民主的多文化世界が確立する可能性は高いと思われる。

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