イスラム・中世・イギリス、全集第10巻

 2月1日に坦々塾の会合を久し振りにもった。参加者は51名だった。私が1時間40分の講演をして、あとは懇親会だった。講演の内容は阿由葉秀峰さんのご協力を得て、近く少し調節し、文字化してここに掲示する。

 冒頭にイスラムの非情殺人のテーマに触れた。昨日のことだから、当然である。イスラムと西欧との2000年前の歴史について、アンリ・ピレンヌを引用してお話した。イスラム教徒とキリスト教徒の積年の宗教対立に無関係だとはどうしても思えない。がんらい日本人には何の関係もない争いなのだ。基本のテーマに日本人は手を出さない方がよい。

 私はいま「正論」連載で、「ヨーロッパ中世」は暴力、信仰、科学がひとかたまりになった一大政治世界であるとの認識を披瀝している。今、私たちが国際的な「法」と見なしているものは、18-19世紀に中世の争いを克服したヨーロッパがやっと辿り着いた約束ごとでしかない。いつ壊れてもおかしくない。実際20世紀に秩序は大きく壊れた。そして今、地球上で起こっていることは「中世」の再来のような出来事である。

 私たちは文明というフィクションの中を生きているにすぎない。『GHQ焚書図書開封』⑩の副題「地球侵略の主役イギリス」は計らずも19世紀の秩序の創造者であったイギリスが最も過酷な秩序の破壊者であったことを証明した。

 私の全集の最新刊はこれとは必ずしも同じテーマではないが、「ヨーロッパとの対決」という題で、今述べたこととどこか関係はある。1980年代に私がドイツ、パリ、その他で行った具体的な対決の体験談を基礎にしている。最近私のものを読みだした新しい読者の方は、この一連の出来事を多分ご存知ないだろう。

 後日立ち入った議論をこの欄にも展開するつもりだが、今日はとりあえず目次を紹介する。

序に代えて 読書する怠け者
Ⅰ 世界の中心軸は存在しない
Ⅱ 西ドイツ八都市周遊講演(日本外務省主催)
Ⅲ パリ国際円卓会議(読売新聞社主催)
Ⅳ シュミット前西ドイツ首相批判
Ⅴ 異文化を体験するとは何か
Ⅵ ドイツを観察し、ドイツから観察される
Ⅶ 戦略的「鎖国」論
Ⅷ 講演 知恵の凋落
Ⅸ 文化とは何か
Ⅹ 日本を許せなくなり始めた米国の圧力
追補 入江隆則・西尾幹二対談――国際化とは西欧化ではない
後記

「イスラム・中世・イギリス、全集第10巻」への2件のフィードバック

  1. 先生のお話もライブで聴けたこと(著書、共著、動画などほとんど追いかけていますが、やはり生が良い!)そして久々の皆様とお会いでき、懇談できたこと
    日頃の鬱憤もをはらせてストレスリリースにもなりました。外務省(害務省)の歪んだ実態はいまさらですが、時間も無かったし〆の挨拶としました。(笑)
    日帰りで時間が取れなかったことが残念です。
    やはりイスラム事件の話題となりましたが、この日は仙台にて拉致家族会の集会もあって(報道も僅かでした)横田早紀江さんの悲痛な叫びは
    外務省、政府への憤りでもあるのですね。私はそう思います。
    詳細は省きますが(西岡さんや荒木さんの発言に詳しい)昨年夏に始まった北との交渉においては相手の組織、権限等の実態を何処まで調査し挑んだのか
    、これでは進展などありえない(家族会はご存知です)まったくもって頓珍漢としか言いようがありません。(怒)

    移民問題受け入れやら拉致問題、重い課題は数あれど、確かに安倍政権は前政権よりも安心できる?歴代のトップが酷過ぎるといえばそうなんですが
    みんな安倍さんを好きではないですか、そんなことで講演の最後に安倍批判をされた先生の最後のご発言がとても印象的で重く受け止めました。

    自民党がダメになったのは佐藤栄作からですね。先生の「三島由紀夫の死と日本の核武装」から窺えます、核武装論者であるはずの佐藤が非核三原則と沖縄返還、
    ノーベル平和賞、キッシンジャーの恫喝(挨拶文修正?)、田中角栄とロッキード事件も策略?1990年代~宮沢内閣から小泉内閣(郵政民営化)まで続く年次改革要望書
    現在に至ってはTPPといったところでしょうか。ず~~と日本を貶めていようとしているのはアメリカでしょう。
    馬渕さんの著書(ユダヤ資本)からも勉強させて頂きました。
    西尾先生は日本の為になる?このアメリカの要求に対して「本当に信じることはまずは疑え」と仰っています「アメリカの日本改造計画」(関岡英之氏)

    さて戦後、これだけ日本を貶めようとアメリカは仕掛けてきているのに、なんだかんだと言いながらも日本は毅然としています(これから先はわかりませんよ)
    政治が酷くとも(それにしても民主党政権は最悪だ!)とっくに疲弊してヨーロッパの何処かの国のように潰れかかっても 不思議じゃないですよね、この国は。

    そんな日本をアメリカは心の底から恐れているのではないか、そして、このこと(私だけが勘違いしているのかも知れないが)を知らない日本(人)を
    私は心配しているのです。

    次回を楽しみしています。

    小池広行拝

  2. フランスの人口歴史学者のエマニュエルトッド氏が、20年前に「移民の運命」(藤原書店)という本を上梓しましたが、彼は膨大な資料を綿密に分析した結果、社会から疎外された移民の二世、三世が西洋的価値観を否定するイスラム原理主義に走り、近未来深刻な対立や衝突が生じると警告しております。
    彼は、昨年来日した際、「日本は移民を入れると大変な苦労を経験しますよ」と警告してくださいましたが、今日の状況を予見した同氏の分析能力の高さには、脱帽するばかりです。

    また、もう一つ興味深い本として、「奴隷になったイギリス人の物語」(アスペクト)がありますが、イスラム世界に100万人ものヨーロッパ白人奴隷がおり、キリスト教対イスラム教の対立の構図は、現代において全く変わっていないという事実に改めて驚愕せざるおえませんでした。
    更にこの対立にユダヤ教が参戦し、同じ宗教同士の宗派対立、同じ宗教、宗派を信仰しても民族対立、人種対立が複雑に絡み、より一層深刻な状況をもたらしているように思われます。
    現在欧州では、イスラム教対キリスト教対ユダヤ教という三つ巴状態、移民と国民との対立、移民と移民との対立によって、事実上欧州全土が、「欧州の火薬庫」と呼ばれたバルカン半島と同じ状態になりつつあるように思われ、どこの国が導火線になっても不思議ではないでしょう。
    多民族共生社会だの、多文化共生社会だの言った言葉が、現実から乖離した能天気頭の中でしか存在しえない妄想社会であることは、現状を見れば幼稚園児にでも理解できることです。

    日本国外の民族対立、宗教対立にわが国が首を突っ込んで火傷を負うのは避けねばなりませんが、移民を入れることは、そうした民族、宗教対立の構図を、そのまま日本国内に持ち込むことを留意しなければならないと思います。

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