小泉政変への私の対応予定

 杉並区で私たちの歴史教科書が採択された日の夜、つくる会の理事会があった。議案の討議がすべて終ってから、別れる前にひとことと許しを得て、私は理事の前で、教科書とは関係がないがと断った上で、此度の政変、郵政改革の日本経済への危険な破壊性、それを無視した衆議院の無謀解散について、個人的に断固反対理論を展開するつもりだと告げて、了承を得た。

 4年前の教科書採択で、栃木県のある地区が扶桑社版をいったん正式に取り決めてから、マスコミの攻撃と韓国からの外圧で覆した事件があった。参議院で否決されたら、衆議院に再送するのが憲政の常道で、衆議院を解散するのはルール違反において栃木県の田舎芝居と同じではないか、と私は言った。教科書のことで怒るなら、この件でも怒らなければ筋が通らない、と。

 今月は月刊三誌を予定している。今日8月17日に執筆をスタートする。(論文の内容はいつもの通り当日録には発表しない)。

 8月15日に今年は靖国神社に大変な人数の人波が訪れた。日本会議主催の国民集会で2時過に頼まれていたスピーチを果した。日本人は戦争を思い出すことが難しくなった、と私は言った。私が若い人からもらったある手紙と、7月末の「朝まで生TV」の旧軍人と田原さんの対話の食い違いと、この二つから、過去を思い出すことがいかに難しいかを悟った、と語った。

 そのために、世間では反省とか責任とかをめぐって日本人が責められる議論と、それへの日本人の立場を弁明し主張する議論と、この両方の高まりがいまみられるが、後者の弁解、弁明、釈明はもうやめようではないかと私は訴えた。サンフランシスコ講和条約の11条に関連して東京裁判の受諾は「裁判」か「判決」かをめぐる議論ももちろんあってよいが、これもやはり弁解、弁明、釈明の域を出ないではないか。もうそういう受け身の姿勢をやめようではないか、と。

 これではいつまで経っても過去を思い出すことはできない。過去を思い出すのは歴史の理解を通してである。私はそう述べて、日清、日露から以後の日本史について新しいヒントを語った。5分ほどで語ったので、意を尽していない。私のヒントは大きく展開される段階にまだ達していない。

 この日小泉純一郎氏は靖国に来なかった。私はどうせ来ないと思っていたから腹も立たなかった。

 私が痛憤やるかたなく思っているのは、財務省の巨大な不始末を覆い隠すための郵政改革法案の国家犯罪的性格の危険な内容である。国民が知らぬのをいいことに、憲法違反かもしれない衆議院解散をして、大衆だましの目くらまし選挙戦術でこの国をドン底に落とす結果になりかねない独裁政権暴走の序曲の始まりである。(詳しい内容は雑誌論文を待たれたい)。

 15日夜、心ある知友の約10人に次のメイルのメッセージを送った。
 

小泉のやり方とそれに唯々諾々と付き従う無批判の自民党の大勢になんとも怒りをおさえることができない。評論界も沈黙だが、小生、無力でも抵抗するつもり。

 これに対し6人の方から返信メイルがあった。最初にまずつくる会理事福田逸氏(福田恆存先生のご次男)のメイルをご紹介する。

西尾 幹二様

メール有難うございます。
先日の「つくる会」の集まりの最後のお話を伺って、お手紙差し上げようかと思って、そのままになっておりました。昨日は早朝より昼過ぎまで靖国で参拝者などの「観察」をしていたりしましたもので。

先日のお話の折、賛意表明のタイミングを逸したのですが、最近の小泉は常軌を逸していますし、私も偶々、産経の異常な小泉寄り姿勢に不安を感じていた直後のご発言でした。おそらく遠藤さんも同じような感覚をお持ちだと思います。

昨日の、村山談話を踏襲した60年談話に到っては怒りを越えて脱力すら感じました。

この数年、僅かにせよ、日本の覚醒の兆しが見えていただけに、昨日の談話が多くの日本人に深い失望を与えたこと、どれだけか計り知れません。あの談話でも、再び、「侵略」という言葉を用い、「心ならずも」戦争に行かされた式の文言を使っていますが、どこまで英霊達を侮蔑し歴史を歪ませれば気が済むのでしょう。しかも15日参拝は見送られる。国民に対する侮蔑と裏切り以外の何物でもありません。

昨日の日本会議の集まりで、小野田氏は裂帛の気迫で「心ならずも」ではない、「誇りを持って戦い、死んだ」のだと怒りを露にしていました。

政治家は結局、選挙に当選してナンボ、権力を取ることしか頭にない、そのことを今まで以上に鮮明の浮かび上がらせた今回の解散と対立、そいて小泉追随です。
靖国、教育、経済、外交など、国家感は全く顧慮されぬ対立と野合、これは、民主も含めもはや政治とも政治家とも呼べるものではありません。そのことをマスコミは一切論難しません。おかしなことです。これから、論壇がどういう反応を見せるか、大いに関心を持っています。
せめて西尾様お一人でも敢然と戦って下さること、心から期待しております。お気持ち、つくづくお察しします。

とりあえず。ご返信無用に願います。

暑さもまで続くようです、ご自愛下さい。

 次の二例は匿名とさせていたゞく。

本当にこの世の中はスジの通らないことが往行していて、いまいましい限りです。

ついにホリエモンの名前が挙がってきましたが、今の自民党首脳は、選挙に勝つために何でもありの世界のようで、政治家としての気概、国家観など全くなくてただ地位や権力に汲々としている姿を見せ付けられると、元来日頃の議員の不勉強にもあきれていましたが、幻滅を通り越して、私もふつふつと怒りが湧いてきます。

現代のまやかしの中で生きていかなければならない中で、先生はいつも物事の本質を見抜き、それから目を逸らさず力の限り果敢にぶつかって下さるので、先生の背筋がスーと立った姿は、本当に私の苛立ちを鎮めてくださって、安心な気持ちにさせて下さいます。

先生、大変でしょうが、頑張って下さいませ。応援致しております。

昨日は、暑い中を大変でしたね。桜チャンネルで国民集会の模様を見ていたのですが、いつのまにかテレビの前でうたたねをしてしまいましたが、先生が御出演されたとき運よく目が覚めて拝見する事ができました。

今回の解散劇に関しましては私も言いたいことは山ほどございます。

しかし敢えて筆を納めている理由は、これまでのネット論陣の言説と、今回の解散劇によるその方々の揺れは、いったいどうしたものかと思うところにあります。

彼らは政界再編の期待感があまりに強すぎ、まんまと小泉の罠に嵌りました。
そして小泉が靖国参拝を拒否してはじめて自分の判断が間違いである事に気付く次第であるわけです。
おそらく私はそれらは間違いないことだと予測しています。
掲示板を閲覧せずとも、日録や遠藤先生のブログにあるコメントを読んだだけで想像できます。

もしもこれが憲法改正という大掛かりな外科手術を国民に求められた時、はたして日本国民は冷静さを維持できるのだろうかと疑いたくなるような現実が、今回巷でおきているわけです。
とにかく殆どの意見が的外れです。
中には冷静に分析されている方もいらっしゃるのだろうとは思いますが、たぶん殆どのネット論陣は慌てふためいている事でしょう。
その証拠に今度の選挙でいったい誰に投票して良いやら判断しかねているのではないでしょうか。

私はここで国民がとるべき態度は、小泉への糾弾だと思うわけです。
いくら造反組みが浅はかな部分があろうとも、彼らの態度こそは正道を貫いている事は間違い無いわけです。何故ならこれまでさんざん議論されてきたことに忠実なのは平沼氏以下真の保守政治家だけだからです。
また賛成派に残った議員の中にも相当数の不満を抱きながらじくじたる心境でいる政治家も多かろうと思うわけです。

小泉の策略に気付いていながら、党の運営を思うばかりに手足を出せない政治家は多いはずです。その事を何故国民は援護できないのか?
持論として数年前から小泉の危険性を公で訴えてきたのは西尾先生だけであります。
しかも当初はその批判に対しあざ笑うものばかりでした。
いまここに来てそれらの人間があだ討ちに合っていると言えるのではないでしょうか。
つまり自分達の論説がいかに左右に触れているかを認識し始めているはずです。
そうなれば普通ならばとても書きこみなど出来ないわけでありまして、時代が時代なら切腹ものです。

私は解散後の小泉の言葉を聞いて幻滅しました。
日本は今目を覚ますべき時に来ています。
ここまで小泉にやりたい放題やらせてもまだ自分に降りかかる火の粉さえほろえない程度の国民の民度というものに、私は幻滅しているわけです。
全ての答えは靖国参拝拒否に答えがあるわけです。
国民の言葉よりも中国・朝鮮半島・国内の左翼団体の方が、小泉にとっては重要な立場にあり、その為には日本国民および政治家、そしてこの国の歴史までも犠牲に出来るファッショだと言えるでしょう。

とにかく先生におかれましては、ご自身の意思に忠実に行動され、少なからずこうして理解を示す人間がいる事を忘れないで頂きたいです。

 なお、私は8月28日に大分一区の衛藤晟一候補の選挙応援に出かける。ひきつづき宮崎三区の古川禎久候補の選挙応援にも行く予定で、今調節中である。

 今述べた二氏のほかに、古屋圭司(岐阜五区)、城内実(静岡七区)、森岡正宏(奈良一区)、平沼赳夫(岡山三区)の諸候補も可能な限り応援したい。西村眞悟候補(大阪十七区)も同様である。

 古屋圭司氏は教科書議連の会長。衛藤、古川、城内、森岡の四氏もいづれも教科書議連の会に属し、主導的役割を果している。平沼赳夫氏は拉致議連会長である。

 私に縁の深い九段下会議の議員団代表が衛藤晟一氏、事務局長が城内実氏である。そして何よりも特筆すべきは人権擁護法に身を張って果敢に反対した方々こそ、周知の通り、ここに名を挙げた諸氏である。

 彼らの議席は絶対に守られなければならない。全国のみなさま、よろしくたのみます。

「小泉政変への私の対応予定」への7件のフィードバック

  1. 我県は平沼・熊代のお二人がおられます。コイズミさんのいわれる賊軍です。選挙区は違いますが、手弁当持参で応援に行く事にしました。投票以外の政治活動は一切した事が無かったアデスが、今回は見過ごすわけにはいきません。県連もその覚悟のようです。銭金郵政だけではない!

  2. 西尾先生はじめまして
    遅くなりましたが杉並区の教科書採択おめでとう御座います。
    終戦日が近かったせいもあって毎日新聞の戦争意識調査でアンケートで「アメリカと中国との戦争について」聞いたところ、間違った戦争というのが全体の43%らしく、やむを得ない戦争が29%であとの残りはわからないとのことです。やむを得ない戦争との回答が20代、60代、70代と比率が高い結果を受けて評論家は20代は社会の雰囲気をストレートに反映する。60~70代も地肌で社会の空気を感じるところがあるとご判断。「自虐史観」より「自省史観」をご推奨。人間より意識が高い位置にいる人が多いようです。不思議な人達です。
    まだまだ、多難なようです。お体に気をつけて頑張って下さい。

  3. 国民新党に平沼氏など人権擁護法反対派が参加しないのは当然ですね。古賀が公認された以上、自民党内に留まるって反対しするしか道はないですから。
    わたしの選挙区からは国民新党の候補者が立つかもしれないので、わたしはその方を応援します。

  4. 郵政解散の怪しさは、例えば戦前を知っている方々には良くわかることではないかと思い、こちらで紹介させて頂きます。
    (TBできなかったのでコメント欄で失礼します。 ご了承下さい)

    こちらは最新の記事です。

    9.11郵政解散テロは統制派官僚の勝利 1
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50126275.html
    9.11郵政解散テロは統制派官僚の勝利 2
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50126278.html

    こちらは真野判事の意見です。

    いいかげんな衆議院解散は独裁と亡国に通ず:最高裁判事の意見1
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50110999.html
    いいかげんな衆議院解散は独裁と亡国に通ず:最高裁判事の意見2
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50111016.html

    以下は先日紹介のものですが、一応。

    郵政解散への強烈な違和感-権力分散を否定する「独裁」への分岐点に立つ 1
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50111864.html
    郵政解散への強烈な違和感-権力分散を否定する「独裁」への分岐点に立つ 2
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50112491.html
    「9.11解散同時多発テロ」の標的は、議員内閣制ツインタワー(衆院と参院)
    http://blog.livedoor.jp/manasan1/archives/50112636.html

  5. 杉並区ならびに玉川学園中、日大三中の教科書採択おめでとうございます。
    杉並区はもちろんですが、とくに玉川に採用されたのは大きいと思います。
    リベラル教育のイメージのある学校ですから。あそこが採用するんなら、
    どこが採用してももうおかしくない。
    PDFで公開された教科書見本も見ましたが、非常に完成度の高いものだと
    感じました。以前のものよりずっとよくなっていると思います。
    文句を言う人がいたり、文部省に検定意見を多数付けられたおかげで、
    内容的には誰が見てもおかしなところがないものに仕上がってる。
    あとは、全体の調子が愛国的か否かということだけですから、これ
    ばっかりは生き方のスタンスですから、歩み寄りようがないと思います。

    また、国民新党ですか、これもおもしろいですね。
    直接には郵政改革反対から出来た新党のようですが、
    結党理由がなかなかふるってます。
    基本政策・方針
    >一、まじめに働く人が報われる政治を実現。
    ここがいいですね。
    5〜10人では、大した勢力にはならないかもしれませんが、
    こうしたはっきりした行動がとられた意義はやはり大きいです。
    ちなみに、私は亀井静香さんがわりと好きな方です。
    自民党内に限らず、小泉さんに郵便貯金をいじらせるのは危ないと
    誰もが感じているのでしょう。へたをすると日本国が壊れてしまいます。
    (民営化うんぬんの問題ではないですよね)
    小泉さん一派は思い切ったことは言いますが、全然責任をとろうという
    意志が感じられない。あとはどうなれ山となれ、とりあえず自分たちの
    係累に利益を誘導しようとしか考えてないように思えます。
    一言でいえば、アメリカのように銀行がすべてを支配する国にしたいん
    でしょうが、アメリカと日本では状況や成り立ちも違います。
    ちょっと経済的に困ったら、すぐ戦争というわけにもいかない。
    ここのところ国民年金にしろ、国の根幹にかかわるようなシステムが
    ぐらぐらになってるのに、政治家は誰もおかまいなしです。
    誰もこの国の政治に責任をとろうとしていない。
    こうした世相に国民の誰もが不安をもっていると思います。

  6. 15日は本当に暑い日でしたが、式典おつかれさまでした。
    先生の「日露戦争での勝利こそがシナをまもったのである」とのご高説に、目の覚める思いがし、改めて己の不勉強を反省したしだいです。

    さて、件の「朝まで某テレビ」ですが、あれは本当にひどかったですね。番組の意図とはまったくかけ離れ、元軍人さんの勇気や愛国、克己、忠誠といった真の「日本人精神」が語られるたびに、テレビの前で拍手しながらも己のふがいなさに恥じ入るばかりの私でしたが、田原以下といえば、どうにもそれが気に入らないらしく、必死で黒歴史に染めようとしている様は、もはや国賊や売国などという言葉では表現できないほどの醜さを晒すばかりでした。
    回転から生還されたその人を向かいに平気で「そんな無駄なことを!!?」と絶句してみせる彼の血は何色なのだろう。なぜ「ありがとうございました」「ごくろうさまでした」を言うことをしないのだろう
    長くなりそうですのでこの辺で失礼します

  7. 私も、小泉さんには以前から違和感を覚えておりましたが、何せ対立する民主党がとんでもない政党なので、仕方なく自民党支持せざるをえなくて、北朝鮮対応などに憤慨をしながらも手をこまねいておりました。
    しかるに今回の勇気ある自民党議員さん達が毅然と彼の手法に反旗を翻されたのですが、彼らへの仕打ちには常軌を逸したどす黒い怨念を感じざるを得ませんね。小泉さん自身もそういう人ということでしょうが、影の総理大臣といわれている飯島秘書官の影響もあるのでしょうね。常々思っていましたが、彼を取り巻く人間の質も本当に悪いですね。
    人権擁護法案に身を呈して戦っていただいた方々こそ、日本のことを真に思う政治家たちです。だから、今回反小泉票としてでてきたのだと思いました。 古賀誠が、郵政反対派の中心人物でありながら、姑息にも棄権し公認を得るため書面を提出し、小泉さんに擦り寄っていったことを覚えておきましょう。古賀誠は秋に人権擁護法案をまた出してくると見られます。そのとき、この法案に強く反対された政治家達が自民党にいなかったら、国家観のない小泉さんは無関心ですし、執行部は公明党にもいい顔をするため、通してしまうことになるでしょう。まんまとしてやったりと古賀誠がほくそえんでいる姿が想像できます。 「郵政民営化賛成です」の一言で、本来体質的に反日のホリエもんを出してきたことからも、この選挙はとても危険なのがわかります。

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