WACから出た『日本はナチスと同罪か』は1994年の文藝春秋刊の文春文庫版(1997年)を底本にしている。
何が新しく付け加わっているかに関しご説明しておく。文春文庫版『異なる悲劇 日本とドイツ』には、「文庫版のための新稿 本書がもたらした政治効果とマスコミへの影響 私の自己検証」というかなりの量の新しい論文が付け加わっている。また、故坂本多加雄氏の「解説――恐るべき真実を言葉にする運命」も加えられている。
文春文庫版を底本にしているWAC版にも上記二篇は勿論収録されている。WAC版『日本はナチスと同罪か』の巻頭には「新版まえがき――90年代以降の戦後補償問題」という最近書いた新稿が付せられている。これはここ10年くらいの新しい展開を解説した文章で、サンフランシスコの日本企業への米兵による強制労働訴訟の結果にも説き及んでいて、それなりに重要な新しい指摘と発見を述べたつもりである。
「90年代以降の戦後補償問題」は本書の元版が出版された94年から2005年までの同種のテーマを追跡したもので、本書の元版における私の最初の指摘の正しさがあらためてこの10年間に証明されたことを記しておきたい。
元版しかご所持でない方には坂本さんの解説を含む三篇の新稿が付け加わった本書(WAC版)は、新しい関心をかき立てるのではないかと期待している。
この本の議論の進め方に接してもらうためにWAC版の新版まえがきの冒頭の1ページ余を紹介しておこう。
新版まえがき――90年代以降の戦後補償問題
日本はサンフランシスコ講和条約を昭和26年(1951年)に結んで、翌年これが発効し、国際社会に復帰することができた。ドイツは日本に匹敵するいかなる講和条約をも国際社会とまだ交わしていない。というと誰でもみなエーッとびっくりした顔をする。ドイツは近隣諸国と法的にはいまだに交戦状態にあるのである。
講和条約を結んでいないのだから、ドイツは戦勝国にいかなる賠償も支払っていないし、犯した戦争犯罪に対し償いも謝罪もしていないのだ。そんなバカなことをいうな、ウソいうんじゃないと叱られそうになるが、じつはそうなのである。なにしろ日本に比べドイツは理想的な戦後補償をはたし、模範となる謝罪を重ねてきたという「ドイツ見習え論」を、日本人は耳に胼胝(たこ)ができるほど聞かされてきたのでなかなか信じてもらえない。
もっとも、この本の末尾の「文庫版のための新稿 本書がもたらした政治効果とマスコミへの影響」で明らかにしたように、「ドイツ見習え論」は近頃やっと少し下火になり、日本の戦後補償は完了している事実が国内ではだんだん分ってきた。ただし、代わりに、中国や韓国の首脳がドイツに比べ日本は過去への反省が足りないなどとデタラメなことをことさらに声を高めて強調するようになり、町村外相が国会でドイツと日本とでは背景の事情が違う、と反論する一幕もあった。外相が自信をもって語るようになる程度には日本国内のこの件での認識は進んだといっていい。
・・・初耳です。どうしてこういった重要なことを教えないのでしょうか現在の中学・高校は・・・!
本当に何も知らずに、日本のことを悪く言う日本人が多いのに驚きます。私は以前より西尾先生の著書を読んでいたのですが、私より年長の戦争を知ってる世代の人の無知さに、情けなくなってしまったものです。ある年長の婦人が、戦場のピアニストという映画を観て来たと言いながら、「ドイツはきちんと謝ってるのに、いつまでもナチスのことを言われて気の毒ね、日本も南京大虐殺をやってるのに~」と言ったのです。
勿論即座に反論し、ドイツは戦争のことを謝ってないし、ナチスのユダヤ人にやったことは国家犯罪であって戦争犯罪ではないこと、日本は講和条約を結んで、戦争の償いは終了していること、又南京のことは、論争されてて、あったとしても、中国の言ってるような犠牲者の数はまやかしであることなどを伝えました。