新しい友人の到来(二)

 それからしばらくして、さらに次のような長文の感想文が届いた。今の私が今の私の置かれた環境をこれ以上語ることは困難だと思っていた矢先、外から私と私の環境を心をこめて語って下さる次のような文章を得て嬉しい。さっそくにも紹介したい。


伊藤悠可氏誌す

「つくる会」幹部の不可解。おそらく語るに落ちる行状がふくまれているにちがいない。尋常なら今のような収拾(注・4月3日の段階・八木氏副会長へ復帰)をするはずがない。易経の水地比の卦にある「人に匪ず。また傷ましからずや」といったものだろう。「人にあらざる人と交わりを強いられ」先生が心を傷められたという卦です。それらの大部分を胸内に秘めて語らずにおられるのは、保守の軒下にいるはずのない人間がいたという衝撃と、もう一つは理ありとも事に益なきは君子言わず、という思いがおありになるからだ。ここでいう「益」とは足を引っ張ってきた君たちが思っている「利益」「私益」ではない。「実りあるもの」に資するという意味なのだ。先生は大変な忍耐をしておられる。

事実無根の中傷と誹謗に対して、おのれ自身のために弁明するのは時として徳を損なうかもしれないが、人がいわれなき中傷誹謗にさらされているのを見たときは、断然その人のために弁明しなければならない。それが日本人ではなかったのか、保守ではなかったのか。理事の面々よ。

産経新聞の某記者まで繰り出して、狂騒乱舞しはじめた「つくる会」。やっぱり「ふるいにかけられた」連中は想像したとおりの愚をおかす。彼らは苦しくてしかたがないのだ。つまり、先生の眼前で、正体をあらわしてしまった悶えにすぎない。これからもっと百鬼夜行のような景色がみられると思う。楽しみにながめていたい。

八木氏は、蘇生する最後のチャンスを自分でつぶしてしまった。わざわざ先生が一日、会って下さったというのに。転んだ少年がまた馬上に乗っかってしまった。彼はいつか見たことのある「上祐さーん」というようなファンがいっぱいいる。先生が日録に書かれた御婦人たちもその類になる可能性が高い。目覚めてほしい。

「つくる会」が内部から腐ってしまったというのに、「つくる会」の看板だけ磨いて住みつづけようという人がいる。Bestではないが、Betterならよいと、声援をおくる人が私の近しい中にもいる。私はいずれもうまくいかないと思う。同志的結合でない利害集団はかならず内ゲバをおっぴろげる。小人の群はそれが専売特許だから。

泣いて馬謖を斬ろうとしたら、「ぼくは斬られるのがイヤだ」と馬謖が走り去ってしまった。そんなやつなら「魏」に逃げ込むのだろうと、思っていたら何と「蜀」に戻ってきていて、この国をよくしたいと言い出した。西尾先生の泣く機会を奪った八木さんの罪は重い。だから先生は泣かないで笑うしかないのだ。

つくる会のゆくすえを案じる方々、どうか不謹慎だとお怒りにならないでください。吾々がいま見ているのはまさしく「喜劇」なのだ。国は「喜劇」のなかにおいて亡びていく。「悲劇」のなかでは国は亡びない。
(つづく)

SAPIO最新号(5月10日号)に怪メール事件が報じられました。

4/29 追記

「新しい友人の到来(二)」への11件のフィードバック

  1.  「愛国無罪」って言葉ありますよね?

     つくる会や保守方面の人間には、知らず知らずのうちに、罪悪感が麻痺しているのではないだろうか?
     支那の方が悪い、サヨクの奴らは卑怯なことをやっている、だから、我々がちょっとくらい人の道に外れようがかまわないと尊大になって、「道徳心」が弱くなっていることに気が付いていない。。。

     「悪いことは悪い」とちゃんとケジメをつけないと、結局は「何でもやってかまわない」というところまで堕落するのが人間である。。。

     膿を出すのはもちろん、綱紀粛正も徹底して貰いたい。。。(内ゲバやれというのではない、あくまでも「世間一般の常識」レベルの道徳心くらい持てということだ)

     それと、同じ仲間だからと、身内を庇いすぎるのも問題である。。。
     サヨクの悪行を口汚く罵るくせに、身内の悪行には平気で目をつぶるようでは、本当に「倫理観」があるのか疑わしい。。。
     敵と味方の単純な感情論で物事を判断しているのではないか?

     こういう倫理意識の脆弱な人間が、権力のある地位についた場合、間違いなく、身内を優遇した不公平な人事とか、腐敗した行動を取るに決まっている。。。

     身内だからといって、対米宣戦布告を遅らせる大失態をした外務省の役人が、その後も地位を守られて出世までしたという話は、保守の間では、これ見よがしに揶揄するための定番エピソードになっているが、自分たちもやっていることは同じという皮肉に気が付いているのか?

     採択戦に全く力を発揮できなかった事務局長が、更迭もされたかどうかよく判らない内に、元の地位に復帰し、大失態で会の運営に多大な支障をきたした会長が、解任されてからすぐに元のポストに復帰する。。。(やっていることは外務省と同じじゃん?)

     しかも、当の本人は、自分の失態を特に反省している様子もないらしい。。。

     それでも、つくる会は必要だから、続けるしかないというのならそれもよかろう。。。
     しかし、今後は二度と、偉そうに外務省批判とかサヨク批判とかしないでねw

    (批判してもいいいけど、その際には、「我々つくる会でも同じようなことやっているんだけど、戦前の外務省ってやっぱり問題ありますよね? いや、我々も人のこと言える立ち場にないんですけど (^^ゞ」とか「サヨクって、ヒドイやり方しますよね、もっとも、私たちも脅迫メールなんかばらまいたりして、どっちもどっちなんだけど(苦笑)」とか、必ず「謙虚」な言葉を添えておいて下さい (^o^))

  2. 採択戦に力をはっきできなかった事務総長をさっそく絞首刑(粛正)にするのは権力亡者の左翼の政治文化だな。教科書はおいおい正される。そうしたら左翼新聞も売れなくなる。宣言ジャーナリストと左巻き教員は失業だ。左翼国家に移住したら汚職にありつけるよ。

  3. 私と同じように考える深いご同輩がおられるのですね。
    私もそう思います。真の愛国心のない政争の具としか歴史・歴史教科書を考えない連中はほっとけばいいのです。

    先生には哲学の深い深遠の森が似合っています。

    ご深慮お願いします。

    哲学者の先生が好きです。政治介入の先生はあまり好感を持っていません。

  4. 尊野ジョーイさん、いい機会なのでマナーの話に便乗させていただきます。

    最近の尊野さんの投稿を興味深く読まさせていただいています。同感する所も、「この西尾掲示板の場でよく言ってくれた」と思う所も大いにあります。

    ところで、書き込む事はあまりないのですが、私も(おそらく尊野さんと同じように)恥ずかしながら2ちゃんねるをよく見ます。
    ですから、所謂「2ちゃん語」というものには慣れてますし、それを目にしても全く気にしません。むしろ時にそれを楽しんでいますし時に自分もそれを使うことがあります。

    ですが、それはあくまでも「2ちゃんねる掲示板内での」話です。
    ここは2ちゃんねるの掲示板ではなく、西尾幹二という人の掲示板です。

    絵文字連発、「…」のかわりに「。。。」、句点の省略等、2ちゃんねるでよく見かけるネット上での表現方法として尊野さんがそれを採るのなら、それはそれで理解します。
    しかし「w」だの「orz」だのは、正直言って不快です。

    もしあなたが「wやorzなんて2ちゃんに限らず今やネット共通語だよ」と言うのなら、それはあなたが「ネット=2ちゃん」という図式にどっぷり漬かってるからだと思います。
    kwskやsnegは使いますか?「でつ」は?「まつ」は?「よろしくおながいしますです。。。」と言いますか?
    「ちょ、おま、必死杉wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww西尾ヲタワロスwww」
    「まあ今回は八木プギャーだけどな(プゲラッチョ」
    「つヒント つくる会お家芸のない(ry]
    等も使いませんか?何故これらを使いませんか?何故「w」を使って上を使わないのですか?

    あなたがそれを使おうと使うまいと、許容出来ようと出来まいと、あなたがそれは極端な例だと言おうと言いまいと、あなたの「w」だの「orz」だのは所詮同じレベルだと思います。
    つまり、それを読んだ他の読者があなたの2ちゃん語を理解出来なかったら上の例と同じなんですよ。
     ・例文:「~はこう言ったとさ(笑)」→「(笑)=warai」→「その頭文字=w」=つまり「笑」の略語。
      以前は「(藁」」が多用されており、また、笑ったの意で「ワロタ」「ワロス」などが現在使用されている@2ちゃん
     ・「orz」=人が落ち込んでうなだれている様の絵文字。o=頭・r=手をつく背中・z=突き出た尻と地に付く膝と見よ@2ちゃん
    などという理解をしているんでしょうか、西尾掲示板を見に来るおっさんおばさんじーさんばーさん達は。

    西尾掲示板を見に来る人は、重度軽度は抜きに、老若男女問わず、皆2ちゃんねらーではないはずです。
    いや西尾掲示板だろうがどこだろうが、極端を言えば実は西尾先生自身が大物2ちゃんねら(笑)で読者の9割が隠れチャネラだとしても、同じはずです。
    「ここは2ちゃんねるではないから、投稿の際は2ちゃん語は使わない」。
    ネット上のルールだのマナーだのというより、なんというか、それ以前の話のような気がします。

    尊野さんの揚げ足をとった形で申し訳ないです。ごめんなさい。
    以前から、2ちゃんとは全く関係ない掲示板でも投稿者が平然堂々と2ちゃん語で発語(一挙に押し寄せるあの荒らしの2ちゃん語ではなく普通の発語)しているのを見ていて、この平気面の傲慢さにイライラしていました。
    前述した通り尊野さんの投稿はなかなか思い切りがあって好きです(なんでも俺が俺が話の部分も多いですけど…)。2ちゃんも見ているからには、やっぱり好きです。

  5. >クリップさん

     貴重なご意見、ありがとう御座います。。。

     のっけからなんですが、私は2chって覗いたことないんですよ、実は。。。

     絵文字関連は、ベストセラー『電車男』から引用しているだけなのですね。。。(これも、流行ったからどんなものか見てみただけだし)

     ここまで2ch語を連発するのは、ここに集う人間が、わざと物々しくて堅苦しい言葉づかいをするわりには、あまり中身のない議論をしていて、それに対するアンチテーゼみたいな意味合いがあって、かなり意識的に使っているのです。。。(こんな若者語を使っているヤツでも、これだけの議論は出来るんだぜ?あまり甘く見るなよ?みたいな。。。)

     それと、2ch語も、自己満足的な要素もあるのでしょうが、やはりこの言葉を使わないと表せないニュアンスもあったりするので、それに対する理解もある程度は深めて貰って、若者とのコミュニケーションを図って欲しいという思いもあったりします。。。

     まあ、完全に年配者を無視しているわけでもなく、けっこう意識はしているんですよ、これでも?(かといって、年配者の機嫌を取るようなマネはしたくないけどね)

  6.  初めまして。西尾様の文章中に、福田恒存のことが書いてありましたので一言申し上げます。
     福田はあなた様の師だそうですが、彼はとんでもない野郎です。以前に私は朝日ジャーナルに「国語評論は2倍儲かる ふくだつねありのあくどいかねもうけ」というような題で投書したことがあります。
     その意味は、福田が新仮名遣い・当用漢字の批判を大々的に行って、その方面の対象のような立場に立っていることについて、彼が国語評論を行う目的は、日本語の本質とか学問などといった高尚なものではなく、ただただ金儲けを目的とするものである、ということを論じたものでした。もちろん採用はされませんでしたが。
     私がそのように論じた根拠は、彼の有名な「私の国語教室」の内容にありました。詳しいことは今はすっかり忘れましたが、新仮名論者のある国語学者を指して、「新かなで本を書けばよく売れると持っているようだが、それは誤りである。新であろうが旧であろうが、ほんの売れ行きは形式ではなくて無いようである、と論じ、自分の例を引いて、自分の本はすべて旧仮名遣いで書かれているがよく売れている。」というようなことで、その書き方がその国語学者が金の亡者であるような事を強調したものでした。読んだときはそうかなあ、と思ったものでしたが、その後、福田が訳したある探偵小説を読みましたら何と新仮名遣いで書かれており、しかもその小説は前記「私の国語教室」より数年も先に出版されたものでした。
     そこでおかしいと思って、国会図書館に行って、その当時(20年以上前)出版されていた福田の著書について調べたところ、今でははっきり覚えていませんが、なんと総数の70%以上が新かなで表記されていました。著書には国語問題関連の本がかなりあり、それらは当然旧仮名遣いで書かれていましたので、その種の本以外はほとんどすべて新仮名表記でした。これは何を物語っているのでしょうか。前に私が「国語評論は2倍儲かる」と書いた意味はそれです。何のことは無い、自分も金の亡者だったわけです。そういえば、先の戦争中には福田は30歳そこそこ、別に体も悪くなく、特殊技能も持たない人間に過ぎないのに、なぜか徴兵を免れたのも不思議な気がします。医者でも、優秀な技術者が、しかも40歳以上の人も(たとえば技術員総裁松前重義)どんどん徴兵された時代でしたのに。おそらく普通人には到底できないようなあくどい手口でもって苦役を逃れたのでしょうが。
     なお、福田の名誉のために追記すれば、こういうことは福田一人に限りません。有名な国語学者で旺文社の受験参考書でしこたまもうけた塩田良平も、新仮名反対論者でありながら、新仮名礼賛をその参考書で開陳していたのですからお話になりません。あなたも東大受験の際には塩田の参考書のお世話になったことがあったでしょう。私も電通大を受験した際には大いにお世話になりました。以上」

  7. 西尾幹二様

     まさか私の投稿がそのまま掲載されようとは思いませんでした。  電通大という同じ大学に縁があるよしみから書店で立ち読みして以来、あなたの初期の著作は共感して何冊も購入して読んだことがありましたが、貴方が自虐史観問題にかかわるようになってからは、考えの違いが気になるようになって読むのをやめてしまいました。貴方が福田恒存の弟子だとは知りませんでしたが、ともあれ師匠の悪口を書いた文章をそのまま掲載された貴方の度量には、思想信条の異なる私ですが非常に感服しました。

     それにしても福田恒存という男はひどい野郎でした。こいつが新かな排斥を看板にしている一方で、新仮名表記の本を多数出版している事実は、同じ出版業界の人ならすべて知っていたはずですのに、なぜ現在に至るもそれが全く問題にされないのかきわめて不思議であります。日本的馴れ合い社会の必然でしょうか。「つくる会」にもそういう現象が見られるようですね。もっとも、新かな反対論者のほとんど(たとえば丸谷才一)は、反対しているはずの新仮名表記で本を書いていますから福田恒存のみを非難するのはかわいそうな気もしますが。福田を含めた連中もできるだけ大きく稼いで贅沢な生活をしたいでしょうから。

  8. 武蔵大和様

    福田恒存は、徴兵のがれはしていませんよ。福田恒存全集の年譜を参照されてはどうでしょうか。戦時中は大日本帝国内の国語教育に関する仕事に従事していたはずです。中国出張もありましたからその意味では戦地に直接出向いたわけではありませんが米軍に搭乗している船を撃沈される危険性にも直面しています。また、東京大空襲も経験しています。

    福田恒存はその著作のほとんどが旧字旧仮名で書かれています。翻訳も含めて。実は旧字旧仮名で批評や小説を書いていたのは福田恒存だけではありません。小林秀雄も三島由紀夫もそう。昭和30年、40年代の雑誌は旧字旧仮名を使う人と新字新仮名を使う人が混在していたのです。旧字旧仮名を正統漢字正仮名遣いとして守るべきことを大々的に主張したのは福田恒存ではありますが、福田恒存に言われなくても戦後まもない頃は旧字旧仮名を使っていた人はいっぱいいたのです。

    今、小林秀雄も三島由紀夫もそして福田恒存の文芸評論ですらも新字新仮名で世に出回っていますがそれは出版社がリメイクしたからです。おそらく遺族の方がリメイクを承諾したのだと思いますが。それは遺族の方の判断であって本人の問題ではありません。

    なお、新字新仮名で書かれている推理小説とはチェスタトンの推理小説の翻訳をさしているのでしょうか?これは実際は当初は福田恒存氏翻訳で発売されましたが実際に翻訳したのは中村保男氏です。

    確かに福田恒存氏は文芸批評、小説、戯曲、評論とはいいがたい物についても翻訳しております。それは食うためには致し方なかったのでしょう。昭和20~30年代の話です。しかし、私の知っている限りではそれらも旧字旧仮名で書かれていましたよ。

    いずれにせよ誰にもわかる嘘をついてはいけません。

  9. 総合学としての文学さま

     私のいささか乱暴な文章に対してご感想をお寄せ戴気、ありがとう存じます。
     あなた様の文章をまだじっくりと読む時間がありませんので、後で内容を十分に検討して、もし反論すべきであると判定されましたら、西尾様のご迷惑にならない範囲で反論の文章を投稿しようと考えています。
     ただ、ざっと読んだところでは、あなた様は、福田を擁護するだけあって、福田の人間としての諸欠点と同じ部分をお持ちになっていらっしゃるようですね。たとえば、「それは食うためには致し方なかった」とか、「いずれにせよ誰にもわかる嘘をついてはいけません。」とう表現です。

     食うためにはなんでもして良いわけですか。貴方には人間の品格・品性というものは無いのですか。これは私が福田を非難する最も要の部分ですが、貴方もこの語句で福田と同様品格ゼロの人間であることを端無くも暴露なさいましたね。最近、品格を感ぜられない数学者の「国家の品格」という駄本が売れているそうですがその本でもお読みになったらいかがですか。
     また、嘘をついてはいけません、という仰せですが私の文章のどの部分が嘘ですか、明確に指摘してください。

     「私の国語教室」の内容を確認するために今探していますので、その本の内容を確認し次第反論を投稿します。
     
     それでも、さすがに大学院の文学部で研鑽を積んでいらっしゃる総合学としての文学、者さまだけあって、私がうろ覚えで書いた、「国語教室」出版の何年か前に出版された何とか言う探偵小説の翻訳、というヒントだけで中村保男との共訳であるチェスタートンの小説であると判定したのはさすがですね。たいしたものです。これで人間としての品格が身につけばいいのですが無いものねだりでしょうねえ。

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