近刊『「狂気の首相」で日本は大丈夫か』をめぐって(六)

 SAPIO3月22日号に出た記事(書闘倶楽部)P.42~43を掲載します。

 かくて小泉首相は去り、残るのは意志をもたずに漂流する非軍事的ファシズム国家だ

  総理就任時の支持率は戦後最高。昨年9月の自民党の歴史的大勝によって、選挙後、衆参両院ともが郵政民営化法案を可決。「自民党をぶっ壊す」「変人」「抵抗勢力」「人生いろいろ、会社もいろいろ」「小泉劇場」・・・・そのパフォーマンスの多くが流行語となった小泉政権は、今年9月、佐藤栄作内閣、吉田茂内閣に次ぎ戦後3番目の長期政権として任期を終える。実質的にその政治使命を終え、“花道”を去る姿勢に入ろうとするこの首相は何者だったのか?そして、その長き政権を支えてきたこの国の気風とは?『「狂気の首相」で日本は大丈夫か』の著書、西尾幹二氏に、小泉純一郎その人を語ってもらった。(構成/春日和夫)

――「狂気の首相」とは刺激的な挑戦的なタイトルですが。

西尾 「狂気の首相」と世間で呼ばれている人、というのがカッコをつける意味で、私が「狂気の首相」と断言しているのではない。昨夏、衆議院解散時の小泉さんの発言は「官のものを民へ」の、いつもと同じことを繰り返し、中身はわずか5分間程度のものだった。「あの迫力に打たれた」という人もいるが、何十年も郵政民営化を考えてきて中身となると5分しか話せない、この小泉さんの詩人のような政治運営は果たしてどこまで正気なのか、狂気を装う「佯狂(ようきょう)」なのか・・・・・本当のところは見えないのです。

――その選挙の結果は、自民党の大勝でした。「私の内閣の方針に反対する勢力はすべて抵抗勢力だ」に続けて、「改革を止めるな」。白黒つけよ、と迫り、勝ってしまった。

西尾 この間までホリエモンに拍手していた人が、ホリエモンの逮捕で、同じ手で石を投げているわけだよね。片山さつきや猪口邦子に浮かれて深く考えないで投票をした同じ人たちが今度はホリエモンは悪者だと言い立てる。大衆社会の劣化ですよ。

〈パンは満ち足りているので、サーカスが見たい。できれば高いブランコから転落する失敗者を見たい。今度の選挙ほど成功者と失敗者の色分けがはっきりし、失敗者をめぐる面白い話題が提供された例は少ない〉

――「サーカスが見たい」というのは我々国民のことですね。そして本書はこうも書く。

〈日本人の心は変わったか、今度変えさせられた〉。〈負ける者はとことん負けるがいい。どんな策を弄しても強い者は結局は勝つのであり、彼らには何でも許されている。勝つ者はボロ勝ちするのが正しい。というのが日本国民の反応だった〉。

――「刺客」を送るという非人間的な党本部のやり方に反発する心は、選挙結果に反映しなかった。

西尾 小泉さんはこの間都内の一等地の公務員宿舎をけしからん、つぶすといって人気を博した。表に目立つ官僚を叩いて、他方竹中のような自分の身近な特定の官僚に権力を与えて自分の政府内政府を作る。「官僚は悪者だ」と言いながら、財務省は守っている。

――そして、叩かれたのが、郵政だった。

西尾 財政破綻にしか道が通じていない郵政民営化を、「すべての改革の本丸」だと小泉さんは言った。郵政と簡保に、国民から330兆円が預けられている一方、国債や、財務省への預託金、つまり国家への貸し付けが304兆円。うち100兆円は不良債権化して、ほぼ償還不能。貸し手である財務省理財局の責任も、借り手である特殊法人の責任も追及されず、郵政省ばかりが目の仇にされた。構造改革をやるなら、財務省や特別会計の特殊法人にメスを入れるべきなのに、それはやらない。郵政なんて、叩く理由は何もなかった。この官僚叩きが、政治の目を逸らして財務省という官僚を守ったわけです。

――そして「官」から「民」への郵政民営化はどうなる?

西尾 日本の「官」からアメリカの「民」へ資金が流動するだけです。郵政民営化で、郵便局は、窓口ネットワーク会社、郵便事業会社、郵便貯金会社、郵便保険会社の4つの会社に分けられ、さらに4つの会社を子会社とする持ち株会社と、国民から預けられた330兆円を保有する「公社継承法人」ができる。持ち株会社が、郵便貯金会社と郵便保険会社を07年から10年で売却し、民営化することになった。公社継承法人は金を外部委託で安全運用するというが、外部とは、政府の管理外の民間会社で、運用権を外国に売れる。

 アメリカも深刻な財政状況のなか、日本から何が吸い取れるかを必死に考えているわけです。財政の基盤である郵貯・簡保を取り毀して政府から切り離し、アメリカの市場開放要求にそのままさらしてしまう。「第二の占領政策」と言われた89年~90年の日米構造協議からつながる、アメリカの標的になった日本の姿です。

近刊『「狂気の首相」で日本は大丈夫か』をめぐって(一)()()()()はこちらです。

つづく

「近刊『「狂気の首相」で日本は大丈夫か』をめぐって(六)」への8件のフィードバック

  1. 小泉依存の惨めさ

     日米首脳会談後の宴で、小泉首相は「ラブミー・テンダー」を歌ったそうである。
     昨日(2日)のフジテレビ「報道2001」で、ビル・トッテン氏(親日派で米国流資本主義に批判的な実業家)が、ブッシュ大統領の小泉首相に対する扱いは、ローマ帝国皇帝の奴隷に対する扱いだ、と酷評していた。同席した町村前外務大臣は勿論それを否定していたが、実際のところビル・トッテン氏の言うとおりではないか。
     数週間前の同番組で、宮沢元総理が、米軍再編成を支持し協力することによって日米安保のあり方が根本的に変わるのに、小泉首相は国民に何も説明していない、と怒っていたが、全く宮沢氏の言うとおりである。
     日本は、中国大陸の軍事的脅威に対抗するために、米国との一体的な対応が不可欠であるる。そのときにおける米軍の再編成は、日本の防衛力強化のチャンスでもある。防衛当局者は例によってそのチャンスを生かすべくそれなりの努力をしているが、首相の口から国民にその意味が説明されることはなく、まして日本の戦略的課題に言及されることもない。従来になく首相権限が強化されている今日、その気になれば、誰はばかることなく、そのことを語れるはずなのに、である。
     今日、中国が日本に強力な圧力を掛けてきているのは、日米が台湾海峡の危機に対して共同で対処する意思を示しているからである。中国はその意味をよく承知している。だからこそ「靖国問題」で揺さぶりをかけてくるのである。しかし、そのことを日本国民はよく理解しているとは言えない。
     小泉首相は、ブッシュ大統領との「個人的関係」のパフォーマンス以外、日米関係の重要問題をすべて人任せにしてきた。そのため、本当に危機が訪れたときの、我が国の法的準備も国民の決意形成も進められていないのだ。
     米軍再編は、日本がアメリカに一方的に引っ張られるのではなく、より対等な関係に立って、自主防衛を強化していくべきときでもある。それをはっきりさせないと、同盟と自主防衛が、二律背反であるかのようになってしまう。そのような風潮の広がりは、まさに日本防衛の危機に繋がる。先の昨日の番組における、町村~村田(立命館大学教授)の「日米同盟派」VS西部(邁)~ビル・トッテンの「自主防衛派」といった図式になってしまう現状は、まさに憂慮に堪えない。
     町村氏のような、それなりの政治家がちゃんとした発言ができないのは、自民党があまりにも小泉一辺倒になっているからであろう。つまり、郵政選挙による「翼賛体制」の結果である。
     そんな危機ををよそに、プレスリーを真似たパフォーマンスに興じる首相とは、まさに「狂気」というほかないのではないか。

  2. 東埼玉人様  銀一です。 

    過日7月01日付の私の書込みに対し誤解があったようで御理解頂けて嬉しく思います。
    ただ、私も反省しています。さしたる勉強もしてこなかった不明を恥じる57才ですが
    vagabond様の福地先生の論証に対し、はじめから異を唱える書き方に何か不遜なものを感じたからです。
    それに対する東埼玉人様の反証は私には心強く感じていました。ただ御礼を言いたかったのですが
    そのvagabonnd様に対し、単略的な思考で思わず人格を疑うような書き方をしたことを深く反省しています。

    vagabonnd様、大変失礼致しました。深くお詫び申し上げます。また持論をお聞かせ下さい。
    同じ国土で生きている男同士として、さらに修練したいと思います。

    vagabonnd様の持論も分らなくも無い訳です・・・ああすれば良かった、こうすれば良かった・・
    欲を出しすぎたから、アメリカと協力して満州を・・、それは今だから言える話であると思うのです。
    私も願わくばカッコいいアメリカ人と友達になりたい(爆笑^^)あの広大な国に移り住みたい。(泣き)
    ハワイでのんびり暮したい、イタリアのフランスの保養地で愛する妻と一生遊んでいたい(大爆笑^^)
    しかし、アメリカだって良い奴もいれば汚い奴もいる。何処の国だって人も色々、欲の深さも色々。(笑)
    先祖から預かった全地全畑、財産を売り払い異国へ逃亡する?妻と本気とも冗談とも思う時があります。
    でも、生まれ生かされた国を捨て母を捨て兄弟を友人を親戚縁者を捨て気分よく異人とうまく暮らせるの?
    先祖を守り胸を張って素敵に生きたい・・・ただ、それだけです。・・・・・・・・つづく

  3. そのアメリカに対して私の伯父(85才戦中派)の思いを紹介します。
    先の小泉自由民主党が圧勝した選挙期間中、伯父貴が戦友に宛てた手紙を
    私にも送ってきて、その心中を教えてくれたものです。
    (以下、伯父貴の思い)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    九月十一日の選挙について、今の思いを書きます。
    小泉氏が郵政も含めた改革を公約として自民党総裁戦に当選し選挙でも
    改革路線が国民多数の賛成を得て大勝した(私も古くからの党員として
    小泉を支持した)。にもかかわらず、今国会で自民党は賛成すべきなの
    に三十数名の反対で否決された。どのような理由があるにせよ、党員の
    多数で選んだ総理の公約に反対する行為は人間として最も恥ずべき裏切
    りではないのか厳しく言えば犬畜生よりも下劣であると思う。
    九月十一日に小泉が負けて喜ぶ大国がある反面、落胆する大国もあるこ
    とは賢明な者には良く判るでしょう。64年前の昭和16年3月、師範学
    校を卒業し4月、国民学校に20歳で教諭として着任した年の12月8日
    無理を承知で米国他、三国と戦争となり20年8月15日敗れた。
    今日、世界の中で唯一、日本を支援している大国のトップに落胆の思い
    を与えて良いのでしょうか。今後の日本の運命に重大なる影響を与える
    事は必定です。64年前からの事は「青の洞門」の「怨讐の彼方」之の
    故事に習い、忘却の彼方に置き、強い同盟を保っていかなければ、日本
    の未来は暗いと信ずるが故に小泉を応援するのです。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    伯父貴にすれば戦ったアメリカは戦友であり、中国共産党はロシアの入れ知恵で漁夫の
    利を得た非道な国と観ているのでしょう。現在の中国にすり寄ったら、
    日本の未来は無いとまで申しておりました。小泉さんに批判的な西尾先生の心配も
    何となく分ります。アメリカの奴隷かも知れません^^しかし今はそうすることでしか
    この国を進めるしかないという臥薪嘗胆の気分でもあります。・・・つづく

  4. さして資源も無い国で一億数千万人の老若男女が生きてゆく日本に於いて
    互いに思想信条を開陳し国家の行く末を案じる・・・素晴らしいことだと思います。

    しかし自由民主主義国家で既に破綻した共産主義、社会主義者達、相変わらず政府への
    反対だけ与党も旧来の利権派閥政治にしがみつく姿。右でも左でも儲かればいいマスコミ。
    西尾先生のアノミー状態は地方の田舎も成りつつあります、その原因は戦後自虐史観だったという。
    それを正し、広く国民に真っ当な日本人に成って欲しいと新しい歴史教科書運動が
    起こされたと私は希望を持って関わりました。しかし、そこは人の世、利権や高名を求める
    御仁も寄って来ます。金が無いのはクビが無いのと同じで幾ら理想やアイデアがあっても
    お金が無ければ実現しない、これも伯父の言葉でした。公の事柄については私心を捨てろ。
    これも伯父の言葉ですが、きょうも政治家の資産が公開されみんな大金持ちです。
    政治家は費用がかかるなどと言い訳しないで優秀な選ばれたエリートとして正しい日本の
    歴史をわきまえ先人に感謝して官僚とともに国家運営をして国民の範となって欲しいものです。

    銀さん、それは理想だよ・・・と言われたことがあります。
    しかし、人間は理想に向かって生きるのじゃないか?今日の繁栄もすべて時代毎に
    理想を求めた人達の英知と苦難の積み重ねであると思います。年代を超えて歴史が語りつがれ
    互いに論争し批判し合いながらも、やがて、理想の日本が必ずや実現すると信じます。
    日本人は、ともすれば一代で自分の理想を築き上げたいと思うが支那人は三代目くらいで
    目標を実現するという考え方をすると、これも昔、聞いた伯父からの伝言ですが・・・
    ふと中国の情報に接すると最近納得する時があります・・・。

    しかし、ネット上に歴史情報が無かったら、優秀な人達の意見を知らなかったら・・・
    今もタコ壺の中で身動きも出来ず、もがきあがいていることでしょう・・・・・そして
    ネット上に素晴らしい優秀な若者達がいることも知り希望と理想を思う次第です。
    これからも、西尾先生、福地先生、また日録に登場する皆様、色々勉強させてください。(合掌

  5. 銀一さん、

    【ああすれば良かった、こうすれば良かった・・欲を出しすぎたから、アメリカと協力して満州を・・、
    それは今だから言える話であると思うのです。】
    ・・そこまではなんとか我慢できても、調子に乗って、
    【イタリアのフランスの保養地で愛する妻と一生遊んでいたい(大爆笑^^)】
    などと言うのはふざけてませんか。

    人を殺せば「ああいうことはすべきでなかった」として罰を受けます。
    その罰によって我々は(というより、比較的おかしなヤツは)気を引き締める
    ・・だろうと期待するのです。

    【今だから言える話】だとして笑い飛ばせば【(大爆笑^^)】、同じ論法を
    「原爆は投下されるべきではなかった」、]「シベリア抑留はすべきでなかった」
    ・・なども同様なのですか。

    「ああすれば(しなければ)良かった」というのは
    歴史を検証する上で、きわめて重要な「問いかけ」です。
    それを「した(しなかった)」ことにより、後世賞賛されたり、罰せられたりします。

  6. 「ああすれば(しなければ)良かった」というのは
    歴史を検証する上で、きわめて重要な「問いかけ」です。

    とは思いませんね。

    人の一生にも あんときこーーすりゃ良かった と思ぅことはゴマンとありますよ、そりゃ。

    しかしね 人にわ宿命ちゅーものがありまして 個別の事象をとらえて あんときこーしときゃなぁ~ なんてゆってもね。

    福田和也「乃木稀典」を最近読んだけど、福田恒存「乃木大将と旅順港攻略」の中に出てくる「近代日本の弱さ」とゆぅ言葉、これは決定的な言葉だ、と福田和也がゆっておりますが、時々の事象をとらえて あーすればこーすれば、なんていうことよりも、近代日本の弱さ、民度を含めて、あるぃは、指導者層もふくめて、やはり「近代日本の弱さ」これが、昭和前期までの日本の本質であった、と、こーゆーふーに、もっと巨視的に見たらいかがか。
     歴史の教訓とゆぇば カルタゴ滅亡、ローマ滅亡、南宋の滅亡、あるぃわ、先の大戦ではミュンヘン会談だとか、ゴマンとある。歴史の教訓にわことかかない。
     敗者の反省なんて聞きとーなぃ。

  7. 機械仕掛けの歴史観

    歴史上の 具体的事象において あんときこーしときゃなぁ~などとゆぅ 事象の積み重ねをもって歴史とみるのは まぁ機械仕掛けの歴史観とゆっても良いのではなぃか?

    今の日本は、歴史的な重大な、あやまちをおかしているのではなかろうか、それは具体的な内政や外政の政策としてみることもできようが、重大なのは、その背景にある時代精神というか社会風潮というか国民精神の堕落というか・・・・アメリカの属国でもいいんじゃなぃの、51番目の州でもいいじゃん、などという声が一般人の中からも聞こえてくるし、財界のお偉方からも聞こえてくる。こーゆーのが歴史上のあやまちだ。

     さきにご紹介申し上げたが、なんとかいうドイツ人の「ドイツ現代史の正しい見方」とゆぅ本によれば、現代はローマ帝国末期に非常に似ているとゆう。当時も今も庶民は早くリタイヤーして趣味に生きたいとか・・・・そのローマの末期、ゲルマンの蛮族たちが、ローマの少年皇帝を年金生活に追いやったときもローマ人達の生活に変化はなかった、ゲルマン人たちは字も読めず、手つかみで食事していたが、そんなのは笑い飛ばしておけばよかった。しかし それからはすべてが変わった、もちろん急には変わらなかった、しかしそれだけに根底から変わっていった・・・・・
     なにか日本の将来をみるような恐い話しである。

  8. 飛び入りさんの杞憂、何となく分ります。以前、勉強会でもそうしたカルタゴやローマの滅亡を
    敗戦後の日本に当てはめ、結局日本人に拝金と欲望と享楽を植え付け(いわゆる3s)骨抜きにして
    国を滅亡に導く謀略が仕組まれている・・・と。今日のテレビが正しく、その姿と言っては
    言い過ぎでしょうか?享楽にふける愚民として貶め、その上で君臨しようとする・・・
    日本ばかりじゃないですが^^
    「茹でカエル理論」というのも聞きました。熱くお湯が湧いた鍋の中へカエルを入れると
    熱いから、さっと飛び出すが、水の鍋に入れて、ゆっくり湧かしてゆくと茹でカエルとなって
    死んでしまう。・・・だそうです。そして、その国家を滅亡させるには、その国の歴史を抹消
    すれば良い・・・だそうです。真面目な議論のサイトにエロ情報を入れ込むのも、その手合いつうことです^^

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