天下大乱が近づいている(四)

 毒入り餃子事件で、責任は日本側にあるというようなあからさまに挑戦的な中国官憲のもの言いに対して、わが国政府は警察に任せて、自らはひと言の抵抗のことばも述べないでいる。中国からの輸入製品の同様な不始末に対し、アメリカはただちに輸入禁止措置をとった。中国はこれに応じ食品関連の高官を汚職を理由に処刑してみせるという恐るべきパフォーマンスを以ってした。

 日本政府は食品検査体制を強化するという、例によって自分の内側で問題を解決する措置しかとれない。中国は当然ながらいっさいを黙殺する。それどころか中国の食品を侮辱した罪で日本側に補償を求めるという度外れた再挑戦の言辞すらもてあそぶ始末である。

 日本政府のとるべき唯一の方策は、輸入食品の品不足からくる混乱をあえて承知で、大幅な禁輸措置に踏み切ることだった。そのほうが外交的にも中国政府を安心させるという情勢判断がなぜできないのだろう。食品への農薬混入は中国社会では日常茶飯事で、根絶不可能なことは中国政府もよく知っている。昼のランチで腹痛を起こしては午後休職する労働者が少しも珍しくない社会だそうである。農業や殺虫剤の混入を科学的に分析して大騒ぎしてみせた日本側の対応は、日本の市民教育にはなったが、「敵」の正体を知らぬ行為と言うほかない。輸入禁止措置の即決だけがあの国に対する唯一の合理的で、無用な摩擦を引き起こさずに報復を封じる外交政策であった。

 餃子事件に対する日本政府の対応の手ぬるさと見当外れは、東シナ海の領土侵犯の日本側の敗北を不気味に予感させている。チベットの血の弾圧、台湾の国民党の勝利、北京オリンピック・ボイコット運動の予想される終熄(まだ分からないが)は、東アジアの中国の勢威拡大、日本押え込みの第二階程である。第一階程は首相の靖国参拝と歴史教科書の敗北にあった。だから日本の言論オピニオン誌がいっせいに反中国の論調を掲げ、中国の脅威に警鐘を鳴らしているのは当然と思うかもしれないが、私にいわせればこれが「敵」の正体の見えていない言論人の見識の無さである。

(「修親」2008.5月号より)

つづく

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