『WiLL』12月号
編集部の今月のこの一冊より
真贋の洞察―保守・思想・情報・経済・政治 (2008/10) 西尾 幹二 |
『真贋の洞察』西尾幹二
著者は常日頃「保守を標榜している勢力の思想が硬直している」と嘆く。本書では例えばこう述べる。
「反米、反中の時代は終わりました。ということは、親米、親中の時代も終わったのです。
どちらかに心が傾くというのは、イデオロギーにとらわれているということです。イデオロギーにとらわれるとは、自分の好みの小さな現実を尊重し、救われた気になってホッとし、不愉快な現実を含むすべての現実を見ようとしないことです。」
これはすなわち真贋の「贋」を排そうとする著者の声だが、では「真」とは何か。言論界では「本当のことを言うこと」。それができないのは「大抵は書き手の心の問題」だと言う。そして「真」は自分に心地よいつくり話を書いてしまうきわどさと常に隣り合わせだと警鐘を鳴らす。
真贋の判定を読者に委ねると言い切ってふるう筆の気概は凄まじい。
「WiLL」12月号より