GHQ焚書図書開封 2 (2) (2008/12) 西尾 幹二 |
◆おわりに~作られた言葉と消された言葉~
最後に面白いことを一つ、二つ、この本に書いてないことをお話しましょう。この本の付録を作ってくださった溝口さんが気づいたことです。7000冊のデータが全部、溝口さんのコンピュータに入っていますね。ババーッと打ち出すと色んな面白いことが出てくるわけですが、その中でいくつかその面白いことをこのあいだ発見したと言われたんです。
ある言葉が戦前にはないということです。たとえば「天皇制」という言葉は、本の中にも題名としてもどこにもないのです。これは戦後作られた言葉だという証拠ですね。
『WiLL』に少し書いたと思いますけど、共産党が「君主制」(Monarchy)というコミンテルンの指令書にあった言葉を「天皇制」というふうに訳した。ということで、私はしゃくに障るから「天皇制度」という違う表現を使っています。
それから、皇国史観という言葉もゼロですよ。皇国史観というのは、戦後に戦前の歴史観を悪く言うために作られた言葉です。皇国史観その物だったはずの戦前には全く使われてないわけです。
さらに言えば、逆に「国体」という言葉は戦後、一切なくなりました。現在、国体という言葉は使わないじゃないですか。だから国体は昔あって今はない。皇国史観は今あって昔ないわけです。
それから面白いですね、侵略戦争という言葉。これもゼロです。「侵略戦争」という言葉が表題になっている本が一冊も焚書されてない。「侵略戦争」という言葉は戦後作られたのです。
しかし、侵略戦争はなくて、「侵略」はある。欧米の侵略という言葉はある。「英米の侵略」、それは何十冊とあります。侵略という言葉はこういう形でいくらでもある。しかし、「日本の侵略」という言葉はありません。
「侵略戦争」という言葉がないのは、この言葉は戦後の歴史観で付けられた言葉だということですね。無論、「日中戦争」という言葉もありません。これは皆さん分かっていますね。
こうした一連の発見は、溝口さんの功績です。いやーっ、と思ってびっくりしています。さらに言えば、「八路軍」がないですね、「八路軍」が(笑)。
こういった事実が非常に面白い。概念をちょっと整理しましたら、また好評につき、次の本にでもまとめたいと思っています。
それでは長い間、ご清聴ありがとうございました。
了
日本保守主義研究会7月講演会記録より