日記風の「日録」 ( 平成16年9月 )(七)(前の月の生活に即した所感です)

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お 知 ら せ

Voice11月号(10月10日発売)
拙論「ブッシュに見捨てられる日本」25枚

尚同誌に横山洋吉(東京都教育長)、櫻井よしこ両氏の対談「扶桑社の教科書を採択した理由」があり、注目すべき内容です。

福田恆存歿後十年記念―講演とシンポジアム
日 時:平成16年11月20日 午後2時半開演(会場は30分前)
場 所:科学技術館サイエンスホール(地下鉄東西線 竹橋駅下車徒歩6分、北の 丸公園内)

 特別公開:福田恆存 未発表講演テープ「近代人の資格」(昭和48年講演)
講 演:西尾幹二「福田恆存の哲学」
     山田太一「一読者として」
シンポジアム:西尾幹二、由紀草一、佐藤松男
参加費:二千円    
主 催:現代文化会議
(申し込み先 電話03-5261-2753〈午後5時~午後10時〉
メール bunkakaigi@u01.gate01.com〈氏名、住所、電話番号、年齢を明記のこと〉折り返し、受講証をお送りします。)

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9月18日(土)~23日(木)
 頭を切り換えて国際政治の現状分析に没頭した。『Voice』11月号に25枚の評論「ブッシュに見捨てられる日本」として発表されたが、題は書く前から編集部があらかじめつけてきていた。

 私は日高義樹氏の論文2篇と新刊本
『日本人が知らないアメリカひとり勝ち戦略』のゲラの一部、及び江畑謙介氏の新著
『日本防衛のあり方―イラクの教訓、北朝鮮の核』、さらに英文と和文の大量のインターネット検索から得た米韓情報を読んだ。A4で300枚くらいはあったろうか。

 米議会下院を7月に通過した「北朝鮮人権法」が丁度上院の審議にかかっていた。私は資料を読むために4日、書くのに2日かけた。丁度資料を読み終わったころ、法案は下院の審議に入り、私が原稿を書き上げた日に北朝鮮のミサイル発射の不気味な情報が流れた。私は同法案成立へいら立つ北朝鮮の威嚇であろうと察知したが、日本の新聞にはそもそも同法案のニュースそのものがその頃もなおほとんど出ていない。日本人は北のミサイルの威嚇意図が何であったかついに分らず仕舞いではないかと、私はマスコミの迂闊さに憤った。

 米議会上院は民主党が修正動議を出したので、いったん動きが止まった。ミサイル威嚇が停止したのも丁度そのころである。私の論文もそこで雑誌校了となった。

 米議会上院の通過は結局10月4日だった。日本のマスコミは「北朝鮮人権法」についてようやく、そして一斉に報じだした。私にいわせれば遅すぎる。

 10月7日付コラム「正論」に、次の関連論文を書いた。本当は10月1日付けでも出せるほど早く私は書き上げていたのに、産経新聞も7日付に延ばし、タイミングを逸した。それでも末尾は十分に新しい見方かと思う。

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金政権崩壊促す米国の「北朝鮮人権法」

――日本政府に求められる自助努力――

≪≪≪ミサイル威嚇のサインは≫≫≫

 北朝鮮のノドンミサイル発射の兆候を日米両政府がつかんだのは9月21日午後だった。22日夜に公表された。結局何も起こらなかったが、何かのサインであったことは間違いないだろう。

 「北朝鮮人権法」というこのうえなく重要な、中朝両国に厳しい内容の法案が7月に米国の下院を通過し、9月21日に上院に上程された。23日付『ワシントン・ポスト』は共和党議員が全員無条件で賛成、そこまで行ったが、民主党議員が法案内容をもっと詳しく知りたいといって留保した。丁度そういう日に当たっていた。

 私は同法案とミサイル威嚇の間には、なんらかの関係があったと推理している。

 同法案は中朝両国の人権侵害を弾劾し、内政干渉となろうがなるまいがお構いなく、「世界政府」的見地から、米国の法律を他国に適用するといういかにも合衆国一流の強引な内容である。

 けれども、これからの北朝鮮に対しては、拉致された日本人と韓国人の情報の全面開示、彼らの本国への全員無条件帰還が認められるのでなければいっさい経済援助の交渉には応じないものとする、というきっぱりした内容をうたっている。

 いったいどこの国の法律であろう。米国の徹底度には目を見張るものがあり、人権と民主主義の総本山としての自負心横溢(おういつ)の文書といっていい。スキあらば日朝国交正常化を行おうとする小泉内閣の姿勢は明白に否定され、退けられたに等しい。

≪≪≪腰が引けた外務省の姿勢≫≫≫

 同法案は脱北者を摘発しては北朝鮮へ強制送還する中国政府を、手厳しく批判し、脱北者を助けようとする外国人牧師などの活動を迫害する中国政府の国際法違反を問責している。

 腰が引けたこれまでの日本政府とは大違いで、日本政府の非倫理性は改めて糾弾されてしかるべきと思うとともに、やはり軍事力の支えがなければ一国の外交に正義と倫理を反映させることは不可能なのか、と改めて痛恨の思いを抱かざるを得ないのである。

 国際協力とかいっている日本政府が脱北者支援のための国家プロジェクトを一度でも考えたことがあるだろうか。

 同法案は北朝鮮の人権回復のために働く団体に年間二百万ドルの資金を提供することや、米政府系「自由アジア放送」を一日4、5時間から12時間に増やすこと、脱北者の保護を中国政府に要求することなど、具体的なプログラムを掲げているが、軍事制裁には触れていない。しかし金正日政権の「転覆」をめざす政治意志は明らかで、法案は上院で28日修正可決、4日に下院が再可決したので、今後米国は同法に従う。

 謎の爆発や相次ぐ大量脱北で末期に近づいている金政権は1988―89年の、まずハンガリー人が逃げて、全面崩壊につながった東欧の状況に似ているように思われているが、決定的に違うことが一つだけある。ハンガリーからの避難民はウィーンなど西側自由圏に直接流れ出した。

 北朝鮮の避難民は中国へ逃げるしかない。これはハンガリー人などが当時のソ連へ逃げるというあり得ないばかばかしいケースに当てはまる。中国の協力がない限り、大量脱出といえども体制崩壊につながらないことを示すが、中国政府にその意志はない。

≪≪≪海外逃避の兆候出た韓国≫≫≫

 盧武鉉が大統領になってから韓国の親米派、自由主義者、富裕層は不快な攻撃にさらされ、北朝鮮が中国化されることを思うと不安で夜も眠れない、と書いている韓国人の文章を私は最近読んでいる。韓国から海外への不法送金は前年の十倍に達し、ロサンゼルスの不動産が高騰している。『中央日報』9月7日付によると、南米型の資本流出、富をそっくり持っての海外移住が始まっているらしい。

 つまり、朝鮮半島でいま起こっていることは東欧の状況に似ていない。1975年のサイゴン陥落後のベトナムに似ている。南ベトナムの人々がボートピープルになって脱出したあの悲劇がまた起こるか否かは、米中両国の意志ひとつにかかっているが、日本の政治意志も全く無関係ではないのである。日本の目の前に迫っている日本の危機である。米政府が求めているのは自助努力である。

 6カ国協議という外交交渉の限界は見えてきた。中国の対日敵意もはっきりしてきた。日本政府は「北朝鮮人権法」に示された米国の法の精神を他人事のように扱っているわけにはもはやいかないはずである。

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