今日沖縄は中国の海になった!(その四)

 私にとって今回の事件は「米中はさみ撃ちにあった日本」という悲劇なのだが、中国への反発と民主党政権への怒りばかりが保守系言論メディアを蔽っていて、本当の不安が見えてこない。いつものことである。

 日本は自力で起ち上らないといけない。背筋が寒くなるようなアメリカの冷淡さが認識できていないと、起ち上ることができない。あるいは中国の理不尽な行動がもっとエスカレートしないと今度も起ち上れないかもしれない。

 元編集者の加藤康男さん――工藤美代子さんのご夫君――が私の9月29日付の新聞記事をよんで感想を寄せて下さった。

 今朝の新聞正論を拝読、久しぶりに小気味のいい先生のお言葉で多少胸の鬱憤が晴れました。

日米安保の重要性を説く人は多くても、「安保とはその程度の約束である」と語る「正論」人はなかなかおられないので、いらつく毎日でした。

先生がおっしゃるように、まずは自衛隊が、いや、日本国民が中国と一戦交える覚悟を示さなければ、アメリカはおろか、誰も助けてはくれないのです。
自分の土地は自分で守るという覚悟が、今の日本人にはありません。おっしゃるように、占領政策にその起点はありました。日本人が初めから気概がなかったわけではありません。
今回のような事件が起きて初めて少しずつ目が覚めるのかも知れませんが、時間がかかりますね。

 レアアースの妨害が解消し、フジタ社員の4人のうち3人が解放され、中国側が折れてきた印象であるが、これは中国人船長の釈放の直接の結果とは限らない。中国がアメリカの顔を立てている面がある。国際非難も怖いのである。

 中国の海洋への膨張進出の基本政策は変わっていないから、やがてまた異常な事態が発生するだろう。沖縄内部への工作も着々と行われていると思う。沖縄のメディアの偏向は日本本土への恨みと反米感情のせいだとよくいわれるが、それだけでは決してないはずである。

 アメリカの睨みがそれなりに効いている差し当りの期間に、日本は起ち上らなければ間に合わなくなる。その思いは心ある私の知友には共通している。元自衛隊内局幹部の小川揚司さん――坦々塾会員――がやはり拙文に反応して次のように言ってきて下さった。

中国を増長させるだけでなく世界に大恥を曝した菅・仙谷政権の無様な対応に憤激が治まらぬ日々が続いておりますが、先生の日録と本日(9月29日)の産経新聞「正論」の御文章を拝読し、更に深刻に胸に迫りくるものを痛感しております。
 昨日(9月28日)の「正論」は佐々淳行氏の勇ましい文章でしたが、防衛庁の官房長や初代内閣安保室長を歴任された危機管理の第一人者にしては何とも甘い対策の提言であり、矢張り西尾先生の御洞察が最も冷厳に現実を見抜いておられるものと痛感致しております。
 
 自衛隊(軍隊)はシステムであり、そのトップに乗っかっているのが小心で蒙昧な菅某や北澤某である限りシステムは作動できません。尖閣への自衛隊の出動は訓練名目でも覚束なく、自衛隊が出るのか出ないのか中途半端にマゴマゴしていれば、それを口実に中国軍に機先を制せられて瞬く間に尖閣を占領される情景が目に浮かびます。
 日清・日露の戦役から大東亜戦争までを戦い抜き白人どもの心胆を寒からしめた日本人と、この体たらくの政権与党、その醜態にも激怒せず、まるで対岸の火事を見るような蓬けた数多の日本人と、国家観を喪失すると人間はここまで見事に劣化するものかと、悲痛な思いを反芻しております。

 昨夜は私は「路の会」で、衆議院議員の高市早苗さんをゲストにお招きした。自民党の内部の動きに期待していたが、私たちが外から見ている通り、谷垣総裁とその執行部には格段の大きな変化はないようなお話であった。

 たゞ高市さんは、大変に心強い良いことを数多くなさって下さっていることが分った。例えば「領土教育」の件。学校で領土に関する詳しい授業をする熱心な先生は職員室で孤立し、教材も少いし、困難にぶつかっている。高市議員がそういう先生の連帯を考えて、全国から呼び寄せている。東京にくる出張旅費がつくように取り計らうなど、孤立しがちな少数派の連繋に心をくだいている。

 また大変に感銘を受けたのは、議員立法を作定する能力をもつ数少ない議員のお一人である高市さんは、森林の水資源を外国人から守る法案の作成に目下精を出している。地下水はこれまでいかなる規制もされていないらしい。外国人が買ってはいけない土地を定めた古い外国人土地法のリニューアルも試みているそうである。

 ありがたいご努力である。われわれはこういう政治家と連繋していかなくてはならない。稲田朋美さん、山谷えり子さんといったわれわれがよく知る保守系三人は、互いに協力し合って戦って下さっているそうで、心強い。

 私は序でにいくつかのお願いをした。その中で高市さんが議員立法の対象になる、と言って下さったのは、神田の古本屋街から日本の古地図、清朝以来の海域の地図がなにものかに買い占められてほとんどなくなっている問題である。中国人や朝鮮人が札束をもって動いている。国立国会図書館の竹島の地図は破られてなくなっているそうだ。貴重な地図はマイクロフィルム化して、貸出し禁止にする議員立法を考えて下さるというお話に私は感銘し、勇気づけられた。本当にありがとうと申し上げたい。

 私のような人間は言葉でなにか言っても現実に反映しない。言論はむなしく、実行は遠い。高市さんのような方がいないと現実はなにひとつ変化しないのである。

 『歴史通』に出すと言っていた私の次の仕事は、『WiLL』(尖閣問題特集号10月14日発売)に掲載されることになった。25枚をすでに書き終えている。

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