東北沖地震

 心配して下さった方々からお電話をいただきましたが、私は大丈夫です。それよりも、被災なさった方には何よりもお見舞いを、不運にも命を落とされた方々には哀悼の意を捧げたいと思います。

 昨日からテレビの画像を見つづけています。映画のセットなら考えられるようなシーンが現実に次々とくりひろげられ、言葉もありませんでした。大きな家が川面にプカプカ浮かんで流れていく光景は、子供時代に茨城の那珂川の洪水で見た覚えがありますが――あのころは台風シーズンのたびに川の決壊にはよく出合った――、今度のように商店街が一瞬のうちに河川に替わり、車だけでなく船がとりどりの店の前を平然と流れていく光景や、まるで巨獣が地を這うように黒っぽい濁流がビニールハウスの並ぶ広い畑地をゆっくり呑食していく有様に、私は正直息を呑む思いでした。

 東北はまだ寒い。雪も降っている。日本では情報が早く流れ、避難も素早い方で、東南アジアの国々の例よりも被害は少いように思えますが、寒い中での避難生活は予想以上に厳しいでしょう。私ならきっと避難所で命を落とすことになると思います。寒さには弱く、意気地がないのです。

 わが家では本が書庫の棚から落ち、額が外れ、花瓶が倒れましたが、その程度です。戸棚の開き戸はみな自動的に開いてしまいました。

 大揺れの瞬間に、あちこちのドアの鍵を開け半開きにしておくことを心掛けました。閉じこめられるのを恐れたからです。けれども、同時に犬が外へ飛び出すのも恐れました。大急ぎで犬に紐をつけ、じっと抱いていました。犬ははじめオロオロしていましたが、ほどなく安心して身を任せました。

 皆さまのご無事とご健勝を祈ります。

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