『WiLL』現代史討論ついに本になる(二)

宮崎正弘の国際ニュース・早読みから(平成24年12月26日号より)

西尾幹二ほか『自ら歴史を貶める日本人』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 本書は月刊誌『WILL』に連載された四人の座談会をまとめたもので、西尾幹二、福井淳、柏原竜一、福井雄三という四人の論客が近・現代史を縦横に語り尽くしながらも偽歴史家、偽学者等の出鱈目な所論を俎上に載せて、ふたたび立ち上がれないほどに批判している。

 ノモンハンは日本が勝利していたのに、ソ連の謀略宣伝と敵のプロパガンダに内通した日本側の利敵行為などにより、ソ連が勝ったと長く信じられてきた。

 すでに南京大虐殺も、三光作戦もでっち上げであることは120%証明されたが、まだ左翼のプロパガンダを鵜呑みにして、意図的に中国に都合の悪い事実を伏せる売国的学者、それも東京大学あたりに蟠踞しているから始末が悪い。
 
 本書では主に加藤陽子、北岡伸一、それから「長屋の歴史講釈師」として、まだ命脈をもっている半藤一利の三人を批判するが、ほかにも大勢の左翼作家(司馬遼太郎とか)や学者が批判の対象となって登場している。

 小誌の読者にとって、おそらく内容の紹介は多言を要せずだろう。

 そこで本書のなかでふたつ気になった個所をのべてみると、第一は文明の衝突、あるいは宗教の衝突だったとする日米戦争という解釈において(その論旨には賛成であるが)、蒋介石は宋美齢にいわれて敬虔なキリスト教徒になったため米国の支援を受けたという流れ。 

 この指摘はまことにその通りだが、評者(宮崎)は一貫して蒋介石は偽キリスト教徒だったと考えている。

 蒋介石の生まれ故郷は浙江省寧波郊外にある。かつて寧波のホテルからクルマを雇って二時間ほどで着いた。生家は観光客用に解放されているが、この家には礼拝室がない。

 他方、南京、廬山、杭州などにある宋美齢の別荘を見学したが、かならず立派な礼拝室があり、大きなマリア像が客間に飾られ、いかにも意味深であり、そして不思議なことに夫婦のベッドルームは別々、風呂も別々だった。

 蒋介石は積極的に聖書から引用しての演説をしていない。つまり礼拝室を意図的につくるなど、米国向けの演技の舞台装置である。

 張作霖爆殺人も河本大作犯人説は覆った。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B5%E4%BD%9C%E9%9C%96%E7%88%86%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%82%BD%E9%80%A3%E7%89%B9%E5%8B%99%E6%A9%9F%E9%96%A2%E7%8A%AF%E8%A1%8C%E8%AA%AC

 真犯人は張作霖の子、張学良か、あるいはロシアの謀略機関、もしくは両者の共同謀議であり、これも伊藤博文暗殺の真犯人が安重根でなかったことと同様に謀略の仕掛けは、ソ連式であることに留意しておきたい。

 これらはともかくとして本書は中味がぎっしり詰まって左翼史観への反撃集となったが、装丁も親しみやすく、価格も廉価に抑えられていて、願わくは大ベストセラーとなって世の迷妄を晴らしてほしい。

「『WiLL』現代史討論ついに本になる(二)」への3件のフィードバック

  1. ノモンハンの戦訓でソ連は日本恐るべしと考えた。というよりもドイツよりも日本を恐れた。ソ連崩壊よりも10数年前に小室直樹氏は本に書いていた。蒋介石は偽装クリスチャンだった。米国の支援が欲しくて。そして自分の私腹を肥やすために!もともと彼らの結婚は妻が聖書を売ってもうけた家の出身で金がありお互いの利害が一致したためだった。

  2. ノモンハンは長らく日本の敗戦だと思い込まされてきたわけですが、実際はロシアをかなり封じ込めた戦いであったと知り、驚きを隠せませんでした。
    ロシアがその後、日本の矛先を南方に向けさせるために、各方面にスパイを送り込み、その象徴がアメリカのホワイトハウスだと、他所で知りました。
    当時いかに世界は赤化していたかを象徴するこの事実は、はたして本当に日本だけが蚊帳の外だったのか、悔恨とはこういうことを言うのかという思いです。
    海軍は予算を取るために、北進する陸軍にいちゃもんをつけたそうですが、まさかその当時、予算の折り合いが原因で敵対するという事実があったなんて、今は信じられない事実です。
    様々な面で信じがたい事実があって、はたして当時の国政は本当のところどんな状況だったんだろうと、勘ぐりたくなります。

    西尾先生が嫌っている山本五十六は、聞くところによると、海軍の予算をいかに取り付けるかに真骨を惜しまなかったと聞きます。たしかに海軍は、一艘の船を作るにも、莫大な費用がかかりますが、しかし、自身がコミンテルンに気遣いするようなことがなかったのか、そこらへんが今疑わしいというのが、もっぱらネット界の話題のようです。
    その象徴がノモンハンでの日本側の早すぎる撤退にあり、この現実はおそらく、海軍の横槍があったんだろうと噂されています。

    最近人気が急上昇の倉山満氏は、特にそのへんの日本の軍事予算が打算的だったかを指摘していますが、いずれにせよ金に絡むと、厄介なのがこの世の常であります。
    ただし、そんな現実があるなかで、現代人がある意味ほっとするのは、予算が軍事に多大な影響を及ぼしていることが、私にはかえって新鮮な情報でありました。歴史を現代の矛で裁断してはいけないと言われますが、しかし今も昔も、金が絡む現実は、時間軸は分け隔てがないということを学びました。

  3. ソ連崩壊後の出てきた資料や内部記録では、戦闘においては日本軍の勝利でした。しかし、戦争目的を達成したのはソ連でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です