ゲストエッセイ
鈴木敏明
去年、私は自分のブログで「新しい歴史教科書をつくる会」、通称「つくる会」の本を書くと宣言しました。さっそく書き上げ、原稿を出版社(A)に提出した。出版社から原稿がまるで「つくる会」の広報誌みたいだと言われました。そこで原稿を書き直し再度(A)出版社に提出した。その結果を数ヶ月待たされた。やっと出た結果は、(A)出版社は、出版する本が6千冊から8千冊ぐらい売れそうもない本は、出版しないことが社の規定になってしまったと断られてしまった。私みたいな自称定年サラリーマン作家は、売れる見込みがないといわれるとどうしても弱い。そこで同じ原稿を(B)出版社に持ち込みました。(B)社の結論は早かった。「昔はつくる会も人気があったが、いまはあまり話題にもならないし、人気が昔ほどではない。本を出版してもあまり売れないでしょう。」と言うのです。それでも、もし私が出版費用の一部を負担してくれれば出版してもいいという返事でした。出版費用の負担額を聞くと、なんとかやれそうなのです。
実は、今年の1月12日に、私のブログに「ついに英文翻訳完成」という記事を出しました。そのブログに書いていますように、私とは縁もゆかりもない鎌倉在住の渡辺氏が、私の大作、「大東亜戦争は、アメリカが悪い」の英文翻訳に参加し、出版費用の半分を持ってくださるという宝くじに当たるような幸運があったのです。その浮いた半分の費用で「つくる会」の本を出版することにしたのです。それではなぜ自分のお金を使ってまでも「つくる会」の本を出版しようとしたのか。私は「つくる会」の一会員として日本の保守陣営に対する激しい義憤を感じるからです。例えば、
1.「つくる会」を乗っ取ろうとした主人公、八木秀次氏を筆頭に6人の学者、先生たちは、「つくる会」に何をしたのか。産経新聞と産経新聞記者、渡辺浩氏は、「つくる会」に対してどういう記事を書いてきたのか、宮崎正治氏は、「つくる会」の事務局長だった。彼は日本会議会員、その日本会議の大幹部、椛島有三氏や小田村四郎氏と宮崎氏の三人は、「つくる会」に何をしたのか。
八木秀次会長、種子島経会長や小林正会長は、なにをしたのか。「つくる会」の教科書を出版していた扶桑社は、なぜ「つくる会」の教科書出版を止めたのか。あるいは新規の出版社、育鵬社は「つくる会」に何をしたのか。この事は、古い会員の一部は知っていても、私を含む多くの正会員は、あまり知らないか、ほとんど知らないのです。この時「つくる会」を去っていった会員たちのほとんどが、詳細も知らず、内部分裂とか内紛などと言って去っていったのです。会員でない人たちには、「つくる会」が内紛を起こしているらしいというような状勢だったのです。しかしこの一大騒動も、「つくる会」の一大使命である素晴らしい歴史教科書や公民教科書をつくり、それらを日本中の中学校で学ばせるという目的を理解した会員、中でも特に東京支部を中心とした首都圏支部の会員たちの奮闘のおかげで、私利私欲にかられた不埒な学者、先生たちを追い出す形になり、「つくる会」と教科書の独自性を死守したのです。もし独自性を保てなかったら「つくる会」は「中国社会科学院日本研究所」と協力関係となる恐れが十二分にあったのです。
2.二年前の教科書採択戦時、「つくる会」は、育鵬社の歴史教科書が「つくる会」の歴史教科書の盗作をしていたのを知っていた。しかし実情では、どの程度の盗作があるのかわからないので、採択戦後にていねいに調査した結果、育鵬社は、「つくる会」の教科書の47ヵ所を盗作していたことがわかった。そこで「つくる会」は育鵬社側に手紙を書き、話し合い解決の場を求めました。しかし育鵬社からは、ほとんどなにも回答らしい回答はありません。現在、中学生が育鵬社の盗作教科書を学んでいるにもかかわらず、メディアは一切報じません。有名な保守知識人も誰一人一切語ろうともしません。それどころか左翼が得するだけでなにも得にもならないことになぜ熱を上げるのかと「つくる会」を非難する保守の人々も沢山います。
そこで「つくる会」は、直接自ら編纂して「歴史教科書盗作事件の真実」というタイトルの本を自由社から昨年10月末に出版し、記者会見もした。それでも新聞の小さなベタ記事になり、育鵬社の盗作否定を報じただけ。育鵬社の教科書を支持した保守知識人は、数え切れないほど沢山いました。その彼らの全員が一言も語らないのだ。育鵬社のバックにあるフジサンケイグループが恐いのでしょう。いつも日本人はいざとなると論理的な行動ができず、情緒的に行動しようとするのではないでしょうか。戦前の話に飛びますが、関東軍の起こした満州事変は、日本陸軍の軍法違反で起きた事件です。ところ大成功したため、軍事裁判にかけられるどころか、昭和天皇に誉められ、石原莞爾ら首謀者は、ほとんど昇進。このことが大東亜戦争に悪影響をあたえたことが知られているのです。47箇所の盗作歴史教科書を書いた執筆者は、有名人ばかりです。伊藤隆(東大名誉教授)、八木秀次(高崎経済大学)、渡部昇一(上智大学名誉教授)、渡辺利夫(拓殖大学学長)、石井昌浩(元拓殖大学客員教授)、岡崎久彦(元駐タイ大使)などです。実際に彼らが直接書いたわけではなくても責任があります。育鵬社は、教科書ビジネスとしては成功したかもしれませんが、歴史教科書の大盗作という大スキャンダル事件を起こし、責任者を一切追及することなく、謝罪さえもせず、なにもなかったことにしてすまそうとしています。はたしてそれで良いのでしょうか。将来の教科書業界に悪影響及ぼすことが心配されます。
3.育鵬社が保守派の教科書として歴史教科書、公民教科書に進出すると聞いた時、私たち「つくる会」の会員は、保守系教科書の共存共栄と喜んだものです。ところ八木秀次氏は、「つくる会」の会長の時、「つくる会」の執行部には内緒にして秘密裏にシナのスパイ網の一組織といわれる「中国社会科学院日本研究所」を訪問し、歴史認識をめぐって会談しているのです。その後、「中国社会科学院」の歴史研究者が日本訪問したりして八木氏らとの交流が続いているのです。「つくる会」の藤岡信勝氏は、二度にわたって月刊誌「WiLL」に八木氏らの行為はスパイ活動だと非難していますが、その非難を明瞭に否定する回答がありません。育鵬社側のスパイ活動もこの「WiLL」による二度の報道以外に語られることはありません。保守どうしけんかして得するのは左翼ばかりということで、盗作という違法行為とスパイ行為という不道徳行為を見逃そうとしているのです。その八木秀次氏が、今度の第二次安倍内閣が作った「教育再生実行会議」のメンバーの一人に選ばれるとは仰天に値します。
この度、出版する本は、この三点だけを書いているわけではありませんが、とりわけこの三点には、私は義憤を感じるのです。それだけに詳細に書き、多くの読者に訴えたいのです。特に「つくる会」を去った人たちの中には、反「つくる会」行動にでた人たちの言動に惑わされた人も多いいと思います。ぜひこの本を読んで、入会時のような国に対する熱い思いを思い出し、再入会して欲しいと思っております。最近、高校の日本史教科書の自虐史観ぶりがひどいと聞いております。「つくる会」の存在感はますます高まっています。「会員」が減ると資金力が足りなくなり、教科書出版の可能性がなくなります。
是非読者の皆様も入会していただけたらと思っています。私の本は今年の6月前後に出版されます。本のタイトルは、本の原稿を書くよりむずかしく、まだ決まっておりません。出版日が決まりしだい。また連絡いたします。
最後に「つくる会」は、日本全国の私のような小市民の方が日本の歴史教科書や公民教科書の内容を改善しなければだめだと自ら立ち上がって行動している団体です。資金力も少なく、それだけに吹けば飛ぶような存在かもしれません。その「つくる会」を、日本の保守言論の雄である一流マスコミや一流保守知識人がグルになって「つくる会」を乗っ取ろうとしたり、潰そうとしたり、大盗作したりして私たちを翻弄しているのです。怒りを示す私が悪いのか、何事もなかったかのうようにすましてしまおうとする現在日本の保守陣営が悪いのか、読者に判断してもらいたいと思っています。一寸の虫にも五分の魂。「つくる会」は、これからも戦い続けます。
文章:鈴木敏明