阿由葉秀峰の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第二回)

6)ヨーロッパの歴史過剰そのことが不健康なわけではない。歴史を喪うまいとするヨーロッパ人の意識過剰が不健康なのだ。

7)善かれ悪しかれ、われわれ日本人は自己の独自性への執着心がうすい。頑迷な自己愛を賤しむ。

8)ヨーロッパの価値観や美意識の延長線上に成立している日本の近代文化は、自分を測る基準を他文明に求めてしまった以上、自分の過去が自分自身の基準にならないという情けない状況におかれていることは誰にでも見易い事実だろう。

9)文化とは出来上がった過去の遺産のなかにあるのではない。文化とはわれわれの現在の生き方のなかにしかない。過去の文化遺産に価値があるのではなく、過去に対するわれわれの関わり方のいかんで価値が定められるのである。

10)人間にはもって生まれた能力の差がある。資質の違いがある。社会にはそれぞれの役割が必要である。もし不平等を前提として認めた安定社会であれば、日本のように平等意識だけが異常に、病的に発達することはないだろう。

出展 全集第一巻 ヨーロッパ像の転換
6) P92上段より
7) P93下段より
8) P118下段より
9) P119上段より
10) P125下段126上段より

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