阿由葉秀峰の選んだ西尾幹二のアフォリズム(第八回)

36) 懐疑とは決断である。既知のことばを警戒する行動力である。
信ずる力があるからこそ、信じまいとする意志が可能となる。懐疑の反対は信仰ではなく、むしろ軽信である。疑ってばかりいてなに一つ行動ができないのは、疑っているのではなく、はじめから信ずる力をもたないから、なんでも信じ、なんでもゆるせるふりができるのだ。できあいの思想への無防備、軽信ぶりが全土をおおう所以である。

37)美徳ということばがあるが、やはり日本人にとって美意識がすなわち道徳なのではないだろうか。それが日本人の強さでもあるが、美は政治的な批判力にはなりにくい。美を基本とする道徳は、どうしても戒律や原理を基本とする道徳よりは弱いのである。

38)現代は知力はあっても、知性がない時代だ。現代の知性には節度と倫理性と想像力が欠けているのである。

39)人間は自分ひとりで、自分を支配することができない存在なのだろう。そんなに強い存在ではないのであろう。

40)われわれは生活の支配者であるつもりで、結果的には生活に支配されている。

出展 全集第一巻 ヨーロッパの個人主義
36) P349下段より 
37) P364上段より
38) P369下段より
39) P402上段より 掌編 留学生活から
40) P410上段より

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