「ドイツ・EU・中国」そして日本の孤独(六)

 ここにきてドイツは、移民が入ってきて更にとんでもないことになるのではないでしょうか。良いことは絶対に起こりません。それでも私はドイツを根源的に信じているところがあって、それは何かというと、ナチスがあったためにメルケルさんがあんなセンチメンタルなことを言い出して大変なことになっているわけですけれど、ドイツはEUの陰に隠れて、ナチスのために「ドイツ・ドイツ!」と言えないのです。やってはダメだから。ドイツ主義を隠して、「EU・EU!」と言っているうちに自分が大きくなって、EUの陰に隠れて自民族の拡大を図ったのではないか。あるいは図ろうとしているのではないかと。「膨張するドイツ」とはそういうことで、「仮面としてのEU・正体はドイツ」そういうことがあるのではないでしょうか。同時にユーロが無くなることをドイツは、ドイツの企業家は最大限に恐れています。

 フランスの知識人エマニュエル・トッドはユーロを無くしたいと思っていて、ギリシャもそうなのですが、フランスはドイツ産業にすっかりやられているわけです。フランスもイタリアもドイツほどの力を出せないのです。そのためユーロから外れてそれぞれ元の通貨に戻ると一時は経済が下がりますが、しかし「平価切下げ」を行うことができるわけです。切り下げると今度は独自に展開を遂げますから、マルクに支配されないでフランスは競争力をとり戻すことができるかもしれません。フランスには独自の産業の力があるのに、マルクに思うままにされていたらダメだから、フランの復活ということです。それは国民戦線党首のル・ペンが言っています。フランを復活させようと。そうすれば平価切り下げをして。ギリシャもそうです。ドラクマに戻れば最初は大変でしょうけれど、ギリシャは黙っていても観光収入があるから、それを柱にします。国際通貨としては安いドラクマです。しかし安いから人は行く。ユーロは高いから行かなくなってしまうのです。他にもそういうことは沢山あります。私はイタリアに昔よく行きましたが、安かったからよかったのに、ローマの空港に行ったって今は高いですよね。ユーロになったら昔だったら考えられないくらい小さなパンが千円もするとか。平価切り下げをすれば競争力を持つわけですね。それがEUの失敗であり、矛盾であると私は思います。だからEUはいつか無くなるだろうと言っているわけです。

 各国の主権の回復、EU議会の権限の制限をやる。そういうことで意見が一致して、イギリスもドイツもそう言っているわけです。しかしドイツはユーロが無くなったら、各国が独立したら、ドイツの一人勝ちができなくなります。今のドイツはこの構造に守られて、ドイツの産業界だけ儲かっています。そうではないですか。日本が円高で苦しんでいるときユーロがどんどん安くなって、競争力を高めた。韓国もウォンがどんどん安くなって貿易の競争力で日本に立ち勝りましたね。あの時期ドイツと韓国は輸出立国で稼ぎに稼ぎまくりました。今日本は円安になったのでようやく競争力を回復するようになったけれど、長い間円高で苦しんだ私たちは、EUを犠牲にしたひとり勝ちのドイツのことを変だと思って見ていました。長い間ドイツは儲けるだけ儲けたのですから、いってみればドイツの力がEUにヒビを入れたと言っても良いでしょう。それは先ほど言ったように、地方が衰え東京ばかりに富が集中するというのと同じように、ヨーロッパは北にだけ偏って富が集中するから、これは解体するか、帝国ドイツが本当に出現して一国が全ヨーロッパに富を分配する、というふうになるかどちらかであるべきなのですが、難しいですね。

 ドイツが中国と組んでいるのは現実ですが、ドイツと中国の間の「二国間政府サミット」というのがあるらしいのです。それくらいドイツは中国に入れ込んでいるし、中国人はドイツ人にペコペコに頭を下げます。川口マーンさんに聞いてびっくりしたのは、ドイツは鉄道の全車輌を中国から入れることにしたというのです。それまではジーメンスだったのですが。イギリスは日本から入れます。日立がもうイギリスに送り込んでいるようですが、最近のイギリスとドイツの関係を考えると、これも将来わかりません。「中国の車輌に命を預けていいの?脱線して土に埋められちゃうよ。あれはニュースにならなかったの?」と聞いたら「ニュースにならなかった。」というのです。中国の悪いことはドイツで報道されないそうです。もちろん専門家の間では知られていますが、皆が見る時間帯のニュースにはならなかったそうです。あんな大きな事故がテレビの画像に出てこなかったのです。それから中国の株を政府が止めたことも報道されなかったというのです。つまりドイツも中国に対してなにか意図的なのです。中国も日本の悪口を言うためにドイツを利用するし、もちろんこの紛争の問題では「日本はドイツのようになれ」とうるさいことを言ってきます。(註・2015年末ごろから2016年にかけてドイツのメディアは様子が変わり、厳しい中国報道を少しづつするようになった。)

 孔子学院をご存知でしょう。これは中国共産党のイデオロギーを教える学校ですが、これがもうカナダとアメリカでは追い払われています。その理由はカナダやアメリカに逃げた中国人が共産党から逃れて来たのに、ここに来てまでこんな教育を受けるのは厭だ、と言ったそうです。ところがヨーロッパではドイツの国立大学の中に入り始めていて、ドイツのある学者は「中国の民主主義は他の国が及ばないほど立派である。」と讃えています。この姿は第一次世界大戦の戦間期のドイツとシナの関係によく似ています。

 ハンス・フォン・ゼークトをご存知でしょうか。蒋介石を応援したドイツの将軍です。ドイツは第一次世界大戦のあと、戦争放棄する形をとりますが、密かに武装を続けていてシナにも潜り込んで蒋介石を応援します。蒋介石は長い間日本を苦しめます。1937年に第二次上海事変があり、日本は大変な苦労をして、将兵4万人くらい失っていますが、そのときゼークトが指導して作らせたトーチカでやられるのです。それは1936年の日独防共協定の後なのです。「頭は左で財布は右」という言葉があるそうですが、蒋介石とドイツが繋がった一つの理由としてタングステンがあり、比重が大きく硬度が高いため軍事上としても貴重な金属です。ドイツが産出量の多いシナからタングステンを手に入れるということがひじょうに大きな動機のひとつと聞いています。それは戦間期の歴史にありますが、日本の歴史教科書には出てきません。日本の歴史教科書は話になりませんね。つまりドイツは歴史的に日本に対して非常に悪質な国なのです。やっぱり私はドイツ文学をやらなきゃよかったと・・・。

 最近のドイツはイスラエルに反発するようになりました。今までそんなことは考えられませんでした。メルケルはイスラエルで「ドイツ語」で演説しました。イスラエルは「イスラエルの地でドイツ語を使うとは何事か」と反発しましたが、これはイスラエルもおかしいですね。だからメルケルは堂々とドイツ語で演説をしました。これは評価できます。つまりユダヤ人も戦後いい気になってやり過ぎたのです。ユダヤ人がそんなことをしてドイツ人を虐めていると必ず報復される、というかまたユダヤ人殺戮が起こります。そんなことは無いと皆さんお思いでしょうけれど100年、200年後には分かりませんよ。日本と韓国だって分かりません。100年、200年後には「征韓論」を言い出すかもしれませんよ。「西郷隆盛に続け」とばかりに。歴史は分からないのです。

 中国のAIIBにイギリスが真っ先に参加すると言いましたね。私は「腐肉に群がるハイエナ」という題で論文を書きました。というのは中国はいま金が無いのですから、他国の金を当てにして自転車操業しながら過剰生産設備投資をやり過ぎていて、鉄鋼でも何でも、労働力も余り過ぎてどこかで使わなければならない。それを他人の金でやろうとしている。AIIBとはそういうことです。何で日本がそんなものに参加する必要があるのでしょう。他国の金で自国の欲望を果たそうとしている、なぜイギリスやドイツはそれが見抜けないのか。見抜いているはずです。アメリカからも私たちよりもっとたくさんの情報が入っているでしょう。見抜いても中国が潰れるまでしゃぶりぬけということか。潰れたって知ったことではない、儲けるだけ儲けよう。多分そうでしょう。習近平も同じでしょう。自分が少しでも延命するためには国民がどうなったって構わない。未来がどうなったって構わない。どんどん火ダルマのように積み上げて自転車操業すればいい。そういう悪魔同士が握手をしているということです。それがEUと中国との結びつきです。私たちはそれを呆然と見送っているばかりですが、アメリカは多少は気がついていることでしょう。中国が大きくなることはアメリカの利益に反しますから。しかしアメリカとイギリスは兄弟国だったはずです。最近ではイギリスはアメリカの意向に完全に逆らっています。でもよく考えてみると、シティとウォール街は決して別人格ではなく繋がっているのですから、お互い照らし合っていることでしょう。それがどうなのかは言えません。分かりません。分かっている人は日本にはいませんよ。私たちは歴史と時間の推移をじっと見守って正体はどこにあるのか。でも今日はどっちか分からないところにあると最初に申しましたね。サイコロを転がさなければわからない。最後はシティとウォール街が何を考えているのか分からないので何も言えないというのが正直な答えですが、もう一か月くらいでいろいろなことが分かってきますから、見つめ続けることにしましょう。どうもありがとうございました。

(まとめ 阿由葉秀峰)

つづく

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