新刊『民族への責任』について (六)

 鎌倉市議を長くつとめた伊藤玲子さんが今度後進に道を譲り、人生最後の課題として、地方議員に保守系の新しい女性議員を次々と送り出したいと仰言る。自分の知っている議員になるためのノウハウを有能なご婦人に教えていきたい、ついてはそういう人を紹介しれもらえまいかといわれて私がすぐに思ううかんだのは、いうまでもなく長谷川さんである。

 伊藤さんにいわせると、世に議員になりたがる女性は多いが、大半が左翼である。これでは困る。保守系女性議員が増えないと、教育も行政も良くならない、と。

 この話を長谷川さんにしたら、保守系の女性はまず自分の家庭と家族を大事にするので、なかなか議員にならない。あるいはなれない。理由は簡単です、というのである。

 長谷川さんはお嬢さま育ちで、医者の奥様である。一男三女の母親である。家族と医院を支え、つくる会の広島支部事務局長をつとめてなおかつ「インターネット日録」によく時間が割けるものと感服する。

 さて、世の中にはさまざまな女性がいて、長谷川さんのような迷いのない強靭な人もいるかと思うと、迷いを見せまいとして迷っている、強気が表に露骨に出て、しかも決して愚かな人だとは思えないが自分の知力一筋に頼むあまり危くみえる女性もいる。

 未知の女性から一通の奇妙な手紙が来た。「本を読んでの感想」と封筒の裏に書いてあるので、期待をして開いたら、のっけから私をからかう言葉で始まる。何とかして侮辱しようと苦心している風が全文にみなぎっている。が、読み終わって、私はなぜか怒りがわいてこなかった。

 案外私と同じようなことを考えてもいる。私からそれほど遠いわけでもない。しかし書き方は徹底的に私を愚弄している。これは新しいタイプの女性かもしれないと思って、この手紙を紹介することとする。

 自著を出すと一つや二つ必ず面白いこういう手紙が届くものである。

 西尾博士殿

 貴方様ほどのエリートが皇室すなわち雅子様の虚像のキャリアや日本民族に関して完全な誤解をなさっておいでなのはもったいないことで貴方様ほどのエリートならば雅子様を本気で相手にするのも滑稽です。もっと狡猾にならなければなりません。

 雅子様は田園調布双葉編入、東大中退、オックスフォード大中退、外交官試験ノンキャリア受験、ハーバード大卒と言っても米国の大学の在籍期間は3年で学位は教養学位しかもらえないこと(ドイツの大学は卒業すると日本で言うならば修士号のレベルの学位が授与されますよね、私もドイツに留学していたので知っています)は皆が知っているしインターネットの掲示板では有名です。

 日本の一流大を卒業した雅子様より若い戦前の大地主などの旧家出身の女性達は皆海外の大学で博士号まで取得し様々な国際資格や難関の国家資格を取得すれば完全に雅子さまよりもキャリアが上になることを知っているので、もう誰も雅子様を相手にしていないし、地道に日々努力して自己研鑽しています。

 雅子様がドレスを着て華やかな皇室外交をしたいならしたいだけさせてあげればいいし、それで雅子様の虚栄心が満足させられ、戦後の米国による植民地化で肥え太らされた労働者階級(それは贅沢な小作人を意味する)が自分達の成功の象徴としてピザとティファニーを愛する雅子様が欧米できらびやかに活躍するのを熱狂を持って迎え、女系天皇が誕生して日本神話から連なる歴史が完全に途絶えれば雅子様は日本プロレタリア革命の女王として永遠に歴史に偉大なる功績を残すことになるのです。

 貴方様は日本国と日本民族が未だに存在していると勘違いしているようですが、日本国なんていう国は、もうずいぶん以前から存在しなかった。この国はナポレオン帝国下のワルシャワ公国と同じであり、戦前の地主などを支持基盤とする最も保守的であるはずの自民党、行政機関、皇室こそが最もワルシャワ公国なのであり、日米安全保障条約は双子の赤字を抱える偉大なる世界の基軸通貨ドルを外貨準備に持ち、そのドル資産で世界一の外貨資産の保有者だと誇る累積債務財政赤字国家日本と米国との間の連隊保証債務と同じです。

 連帯保証人は、金を借りたひとが金を返せなくなったら代わりに金を返してあげなければならない。二つの大学中退という華麗なるエリート・キャリアを持つ米国帰国子女雅子様は双子の赤字を持つ強い米国ドルの象徴であり皇太子は円の象徴であり二人の結婚はドルと円との完全な愛の結晶を意味し、この連隊保証債務によるオーストラリア・ハンガリー帝国は力強い米国株式相場に支えられて永遠に繁栄するのです。

 私は今二つ目の学位(一つ目はドイツ哲学、そして今は経済学)を取得している最中ですが、この後修士号を取得したらスイスのロザンヌ大学で博士号取得を目指し、もう日本には戻ってこないつもりだし、私の友人達にも米国以外の海外で博士号取得を目指して真の国際人になって二度と日本に戻ってこない方がいいと勧めています。

 連帯保証人には近づかない方がいい。私は靖国の英霊達が、もう自分達の郷土と自分の生家と自分の氏神と郷土の地主神だけを守って自由に羽ばたいてくれと言っているように思えてなりません。貴方様のようなエリートが幾ら頑張っても日本国と日本民族は、もはや存在しないのです。

 日本が再び生まれ変わるとき、それは米国ドルが暴落して米国株式市場が崩壊し、米国が世界の覇権国でなくなるときです。でも、そのときの日本は、もはや古代神話から続いた日本ではなくなるのではないかと私は思っています。大和朝廷による神話が成立する以前の、その郷土、その郷土の守り神と長い歴史を土台にした新しい国が生まれる可能性はあると思います。

                                (原文改行なし・適宜改行)

「新刊『民族への責任』について (六)」への3件のフィードバック

  1.  今日の悩める女性からの手紙面白く、レスポンスさせていただきます。着実に西尾先生は悩める若い女性層のメシアになりつつある、そんなことを感じました。この方はおそらく日本国、自分が日本人であることが嫌なのだと思います。それも所謂地球市民とかイデオロギー的なものではなく心の底から嫌悪感をもよおしているのでしょう。だからこそ海外へ留学したり国家資格を目指して自律して生きていけるように努力する。いいことだと思います。しかし日本国や日本人を否定するわりには日本国の大学の学歴や日本の国家資格を気にするという矛盾があり、どうも自分の将来のライフスタイルについてコンフリクトを起こしているようです。自律的に生きる、たとえば起業したりする、いったいどこでするのが一番やりやすく金が儲かるでしょうか?それは日本です。日本にはオレオレ詐欺に引っかかるような馬鹿な金だけ持った子羊達がいっぱいいます。幸いなことに私たちは日本人ですからアメリカ人や中国人よりも日本で起業するのに圧倒的に有利です。外資に邦人大手企業が乗っ取られるなぞと悩む日本人にはまず、じゃあお前が乗っ取ればいいじゃないか!と言いたいものです。しかしそれができないのが私を含めた現代日本人なのです。かのように個人として全く無力である現代日本人が今なお豊かな生活ができるのは、要は「日本国」「日本人」という偉大なる名刺を持っているからにほかなりません。この名刺が紙切れになってしまえば、現代日本人は何のとりえも無い一個人(下手すりゃ人間以下の動物)に成り下がるでしょう。むろん自分はそうでは無い、自分は「日本国」「日本人」なる名刺で生きるつもりはないというのであれば、裸一貫で世界を相手にビジネスすればよいのであり、海外名門大学の卒業資格なんか必要ない。ましてや日本国の国家資格なんか必要ありません。しかしやはり日本でバイトする方が世界を相手にビジネスするよりよほど儲かります。今中国では月給4万円くらいでこき使われている現地採用の中国語ペラペラの日本人がいっぱいいます。彼らは本当にチャレンジ精神があり努力していると思います。が、そんなわざわざ海外へ飛び出さなくても日本でフリーターをやれば月給20万円は超えます。そして普通に「日本国」の一流大学を卒業して「日本人」採用されれば彼ら及び中国人を丸の内のクーラーの効いた部屋でパソコン一台で月給40万円(しかも老後の年金付き)くらいで動かすことができます。強い個人は何国人であろうともいます。ライブドア堀江社長も強い個人なのかもしれません。しかしみんながみんなそうではありません。となれば私たち現代日本人は個人の自律心を高めるのも必要ですが、それよりもまずみんながちょっとした愛国心に目覚めて、「日本国」と「日本人」という世界の中でもトップクラスの名刺のクオリティーを保つ方が必要というか楽ではないでしょうか?そのために靖国神社の英霊達に祈りをささげる。英霊に祈りをささげるのは5分でできます。私はこちらの方がドイツ語の単語100個覚えるよりも楽で得であるような気がします。

  2. 初めてコメントさせて頂きます。たぬきと申します。

    6/13日のコメントで「議員になりたがる女性の大半は左翼、保守系の女性は家庭にいたがる」というのは非常に怖いと思いました。男女共同参画や女子差別撤廃条約は明らかに結果の平等を目標にしているわけですが、フランスの様に国会議員の女性を半数にするといった法律が制定された場合、左翼が大幅に増えかねません。役所等でもアファーマティブアクションを導入して男女同数採用するところも随分でてきてます。

    アファーマティブアクションが適用されるには、従来差別を受けてきたことが前提なのですが、女性は本当に今まで差別されてきたのでしょうか。確かに、法的な権利においては差別されていたかもしれませんが、戦争で死ぬのは大半が男だったわけですし、タイタニックが沈没するときも女性が優先して逃げて、死んだのは男が多い(笑)。トータルでみれば男が得してきたとは思えません。そもそも、異性を差別すれば、もてなくなり、生殖の面で不利になるので、異性差別には自制がかかると思うのです。この点が、人種差別
    等の差別と異性差別とでは根本的に差異があるのではないかと思います。にも拘わらず、人種差別等と同様に捉えてアファーマティブアクションを適用するのはただの逆差別にすぎない思います。

    家庭にいたがる女性を無理やり引っ張り出すわけにはいかないですし、結局のところ女性の社会進出の美名の下、左翼の勢力ばかりが拡大している気がします。

  3. >総合学としての文学氏
    我々日本人が日本を愛するのは、日本が「世界の中でもトップクラス」だからなのでしょうか?
    そうすると、仮に日本が経済的にも文化的にも世界の中で最低ランクであったとするならば、日本人は日本を愛せないのでしょうか?
    私は愛国心というものは、家族愛や郷土愛の延長線にあるものと考えております。
    そうすると総合学としての文学氏の言説によると、親は勉強も出来ず運動音痴な子供は愛せないということになりますが、家族愛というものはそういうものなんでしょうか?

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