“我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。Japan has repeatedly expressed the feelings of deep remorse and heartfelt apology for its actions during the war. — Such position articulated by the previous cabinets will remain unshakable into the future.”
12月7日プライムニュース拝見。西尾先生独演会の趣き、お疲れだったと思われますが、すっきりされたことでしょう。見ている方もすっきりです。立憲民主党ブレーンとかの山口先生はまったく精彩ナシ、衛藤先生もしどろもどろでしたね。それだけ「revisionists」が「現実」を追い越す時代に入っているのだと思います。司会の反町氏は、短時間に的確な西尾先生の発言を引き出していました。
昨夜のプライムニュースを視聴して
西尾先生は、年下だけでなく知的レベルも遥かに違う、衛藤補佐官という安倍首相の側近や山口二郎という左翼教授と対等の場で議論するには相当の覚悟があってのこと、御体がかなり衰弱されているにも拘わらず出演されたのは、「保守の真贋」の出版と同様、憂国の止むにやまれぬ心からと推察しました。
いま日本の安全保障が現実に脅かされるという切迫した国難に際して、保守の星と目される安倍首相にどうしても言わねばならないことを命懸けで発言される姿には痛々しいものがありましたが、それだけ切実な言葉に対して、安倍首相の分身ともいえる衛藤氏の返答は、予想した通りの御座なりの言い古されたものばかりで改めて失望しました。
ただこの番組の意義は干されるのを恐れ保守の誰も言わない謂わばタブーの安倍首相糾弾(弾劾)を公開の場で堂々と正面から採り上げ、政権の本音が聞けたことで、かなり注目すべき番組でした。衛藤氏から反論らしきものはありましたが、時間的余裕のないため西尾先生の再反論につながらず、双方が言い放したまま終わったのは残念でした。時間さえ許せば、西尾先生がソクラテスのようにこの場の人達をうまく誘導・説得して、政権に靡くという意味での保守本流の贋保守の開眼や転向を迫る格好の機会だったのですが。この本丸が変わればB先生方もCの人々も変わったことでしょう。
衛藤氏の発言は政権なり安倍首相を代弁するもので、ある意味で、予期通りであり、これへの反論を以下に私なりに試みてみたいと思います。衛藤氏を初めて見ましたが、正直に言って、彼に日本国の総理を輔佐する資質、器量、経歴があるとは思えません。寧ろ人材は左に多く、保守に人が居ない、有能な人材が居ても出て来れないシステムになっているのも日本の大きな問題といえます。保守言論界の大先達である西尾先生に対して薄笑いするのではなく、敬意を持って意見を真剣に傾聴してから発言すべきでしたし、「国民の歴史」等々の著作を熟読してから出てくるべきだったでしょう。
衛藤氏曰く、「東京裁判史観を否定することは(将来ありえても?将来はやるが?)いまオープンにすべきでない。グレーゾーンとして伏せておく。今の日米関係の中で米国と喧嘩できない。」「未だアメリカが日本を戦争に引きずり込んだと言える状況ではない。」「70年談話は戦後のケジメをつけるためで新しい時代を切り開くものだ。執るべきステップを少しずつ執って前に進める。」
曰く、「抑止力として頼む米国と喧嘩できないので村山談話は置いておくしかない。安倍は安倍だ。戦後体制を見直す姿勢は明らかにした。」
→「2項温存3項追加」もそうですが、ロジックがありません。誤魔化しと先延ばしに過ぎないのですが、本気で自分は立派に仕事をしていると勘違いしています。実際の談話は次のように述べています。
“我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。Japan has repeatedly expressed the feelings of deep remorse and heartfelt apology for its actions during the war. — Such position articulated by the previous cabinets will remain unshakable into the future.”
この文章のどこが嘗て故渡部氏が賞賛したように、「村山談話はおろか東京裁判史観をも乗り越え」ているのでしょうか?衛藤氏の心裡にこれらB先生方の意見が兆しているのでしょう。堤氏が評価したように、どうやって「どうにでも受け取れる」ことができるのでしょうか?「歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎない」と言い切っています。安倍首相は沈黙を守ればいいものを、この言葉を明言した途端に、無用な河野・村山談話を踏襲する確約を再びやっています。このセンテンスを保守の大方は、4名を除き、敢えて無視します。しかし、他の記述で、いくら欧米列強の植民地支配、経済封鎖に触れ、原爆投下、都市無差別爆撃に触れても、これら全てを吹き飛ばすインパクトがあります。日本のB、C層は誤魔化せても外国人は誤魔化せません。海外に通用しないロジックは何の役にも立ちません。
曰く、「保守派は内ゲバをすべきでない。左翼はよくまとまっている。」
→保守は大同団結し国民戦線を作るべきです。しかし自民の本流は安倍氏を含め保守ではなく、左派でしょう。西尾先生が喝破され山口氏がキョトンとしましたが、これが本当です。日本の国益を思うなら、当然、国家の独立を目指すべきであり、対米従属による「各国との協力」「諸国民の公正と信義」を吹聴する者は保守ではなく、左派に過ぎません。
曰く、「日本は歴史戦を仕掛けられており我々は戦っている。従軍慰安婦など一つ一つ整理しつつある。一歩一歩水掻きを尽くしており、いきなり全部は出来ない。半島有事の際の日本人救出も措置しており外交努力はしぶとくやるしかない。」
→一つでもいいから実績を挙げられますか?整理する必要はありません。整理でもたついている間に敵は攻勢を募らせます。海外の前線で歴史戦を実際に戦っている目良氏や山岡氏らは日本政府の後押しが無いと嘆いています。先月のSF市での敗北も政府支持がなかったことが原因です。
“対北制裁強化は開戦行為。日本のレッドラインを越えているのに米国は守ろうとしない。北から攻撃されたとき子供だましのパトリオットが迎撃する能力はない。日本国民の安全は危機に瀕し、日本の外交政策は破綻している。こうなった以上、北は叩くしかなく、基地攻撃をすべきだ。“という西尾指摘に対して、曰く、「米国は北が制裁強化に対して開戦すれば討つ用意がある。日本には抑える力がないので米国と完全に一致していると云わざるを得ない。」
→なぜパトリオットなど米国のべら棒に高く売りつける武器の性能品質の実験をしないのでしょう?なぜ国産の武器で武装しようとしないのでしょう。なぜ米国の軍事力に頼り、米国に縋るのでしょう。自主防衛力の軍備をもてば済む話ではないでしょうか。
曰く、「アメリカを引きずり込んで日本を守ると言わしめ、行動を起こさしめた。」
→トランプが日本に対して具体的に実行したことは、自衛隊装備を大量に売るという宣言以外、具体的に何をしたのでしょう。
曰く、「日本の活路を開くには、北朝鮮も少子化も2,3年を目途に急いでやる。」
→北対策を2年や3年かけては日本が滅びる可能性があり、今すぐ、年内にも今年度内にも措置すべことではないでしょうか?
曰く、「9条2項は削除が望ましいが国民意識がそこまでいっていない。削除したいが国民意識として受け入れて貰えないと判断している。」
→西尾先生の仰ったように今国民の啓蒙を周到にやり民意を問えば削除に賛成するはずです。今がチャンスではないですか。
最後に先生のご健康とご長寿を祈りますが、山口氏の左翼の典型意見も引用しておかねば片手落ちかもしれません。自らの非と矛盾を不用意に暴露しています。
「村山談話は戦後の日本が従い受け入れた欧米中心の枠組みとしての「国際標準」に安倍首相も70年談話で従わざるを得なかった。
戦後野党の役割は自民政権へのイチャモンを外野からつけることだった。言論人はたとえ支持する政党でも非は非として批判すべきで、贔屓の引き倒しをするべきではなく、この意味で西尾先生に共感する。
対北政策で選択肢は対話と圧力以外ない。安倍政権の圧力強化に賛成する。ラストには米軍の軍事力があろうが圧力強化を国際協力でやるしかない。軍事手段は取り返しのつかぬ結果となる。日本単独では解決能力が無い。
長年定着した自衛隊の姿を変える必要は無い。専守防衛を守るべきで、国軍に変えてはならない。」
→これに対しては衛藤氏も一部反論していましたが、「国際標準」を打破しなければ日本の将来はない、この間違った国際標準を墨守することが国を売ることになる、とだけ付け加えておきます。
最後の「正直」にしびれました