九段下会議の歩みと展望 (三)

 今申し上げたとおり、中国には日本を威圧するという一つの単純な政治意志があるだけで、従って、日本の精神をいち早く打ち壊してしまいたいということがあるだけですから、靖国、靖国と言ったり、歴史認識と言ったりして日本の気持、意気というか、精神というものを叩き潰すというのが中国政府の一貫した政策になっていて、それだけの話だと、私には見えてなりません。最近も虐殺記念館を整備したり、南京虐殺史実サイトを最大手ポータルサイトが開設して、その式典を催したり、じつにしつこい限りで、彼らの意図ははっきりしています。

 このことも、日本人はみんなわかってきたのではないかという気がします。幾ら鈍感な自民党のリベラル保守の先生方にも、分って来たんじゃないかという気がするわけです。しかし、どうしても不思議で仕方ないのは、先ほど申し上げましたように、中国が市場経済に入って来たのは、まだ10年くらいなんですね。鄧小平が、93年くらいでしょう、いわゆる国際的経済秩序に中国が参入すると宣言したのは。ですから、中国という国は、資本主義国としてというよりは、そういうポーズで市場経済の立場を取れるようになったのは、少なくともそういう顔を外見上しているのは、まだ10年の歴史しかない。

 本当にある種の圧力としてこの国が浮かび上がってきたのは、3年くらいの話なんですね。しかも、奥地はアフリカの最貧国に等しいていどで、それと先進領域と言っても、アジアの中心国程度の部分を抱えているという、これでどうして大資本主義国に割って入るようなことが可能になるのか、疑問でしょうがありません。

 と申しますのは、普通の経済の通念から言うと、ご専門の方がたくさんおられるから、お伺いしたいところでありますが、高成長というのは、必ずインフレを招くわけですよね。貿易に携わっていないような業種においても、賃金の上昇が起るわけであって、つまり、高成長を遂げると、たとえば貿易に携わっている人の賃金が上るというだけではなくて、床屋さんの賃金も上るわけですよね。それが世界中の何処でも起っている経済の普通の法則だと思います。ところがどうもそうなっていないみたいですね。どうしてそんな奇妙なことが可能なのかというのが不思議でしょうがない。

 われわれが1ドル360円時代のことを思い出せばわかるんですが、為替を固定性にしていた場合には経済が成長すれば、物価上昇は限り無く起るわけであります。それから変動性にすれば、当然為替が上昇するのは目に見えて、中国元というのがどんどん上っちゃうのはもう避けられないわけです。固定性にしているわけですね、中国は。だけれども、それならインフレ、物価上昇になって当然なのに、それがなっていないんですね。つまり、高成長の中でもデフレという経済の状態が、中国の社会を覆っているというのは想定外のことでありまして、何故そんなことが可能なのか。普通の資本主義国では有り得ないことが、有り得ているということが疑問であります。

 さっき言ったように中国はにわかに航空母艦を作るとか、アメリカの巨大な石油会社を買うとか、それだけではなくて、日本が20年もかけてやっと成し遂げた成田空港よりもすごい空港を北京で3年くらいで作っちゃうというようなことが現に起っているわけですね、北京で。これは日本のODAだけでやっているわけではなくて、中国にそういうようなパワーがあるということが証明されたわけであります。しかも時間が早いんですよ。ものすごく早い、迅速なんです。

 こんなことがどうして出来るのかというのは不思議で、中国という国を研究しないと、われわれはこれからどんな対策もたたない。アメリカと中国に挟まれていて、アメリカは中国をどう見ているかという問題と、アメリカが日本にどういうゆさぶりをかけてくるかという問題と、それから中国の経済がこのまま上昇していくのか、いかないのか。

 と申しますのは、防衛とか外交とかいうテーマがわれわれの委員会の最大の興味でありますけれども、これからの時代は力というのが、今までもそうですけれど、力というのが軍事力だけではないんです。軍事力は使えない力ですから、むしろ経済の力。日本は経済が強いと言ってこれが政治や外交をやってきましたけれども、只の一度も、政治とドッキングさせて考えて来たことがなかった。経済そのものが政治の力だと思ってやってきたんです。しかしそうではなくて、経済を維持するにも政治力が必要になる。

 経済をパワーとして維持する為には、政治意識というものが切り離せない関係にあるということが日本人にはどうしてもわからないで、ずっと戦後やりすごして来ているわけで、経済自体でもって政治力になっていると思い込んでいる。これは間違いなんです。それは湾岸戦争の時に、巨大なお金を払ってばかにされたり、国連の拠出金が多いから安保理の常任理事国いなれると思ったり、すべてのことを経済で外交するという日本の間違ったやり方が長年続いてきたわけですけれども、それがもうだめだと、今度こそ壁にぶつかった。

 つまり、経済を維持する為にも、政治力が必要である。政治力を維持する為には軍事力が後ろに必要である。これは諸外国がみなやっていることです。中国は堂々とそれをやり出しているわけですから、今まで経済の力がなかったから、中国は脅威じゃなかったわけですけれども、中国は政治の力と経済の力と軍事の力をドッキングさせて、アメリカ型スタイルの国家として浮上しているわけであります。

「九段下会議の歩みと展望 (三)」への3件のフィードバック

  1. 西尾先生、はじめまして。
    TVタックルは視聴者側としても「なんか噛合わないなぁ」と
    思っていました。
    そしてこのサイトに辿り着いたわけですが。
    さて、今回の日本経済パワーと政治の融合もまったく仰るとおりです。
    日本は経済は一流であるが政治は三流といわれるとおり、
    企業から税金で吸い上げた資金を単に世界にばら撒くことしか
    行っていません。
    金持ちの子が、友達が居ない為におもちゃを学友に配って、
    見た目上仲良くしてもらっているくらいのものではないでしょうか。
    経団連の某会長などは国を捨てているようにしか思えません。
    一体誰のおかげで此処まで大きくなったのかと思います。
    この企業の「自由闊達さ」が企業の繁栄を促しているのかも
    しれませんが、国の統制管轄力をもっと強め国益のために
    企業を育成し活用していくべきと思います。
    末尾にありましたが、猛暑の折、ご自愛くださいませ。

  2. 私は中共には何回か訪問し、私なりにビジネスの構築を計画していました。しかし、最近の北東アジアの反日運動を見て、歴史を最勉強しています。この点で本ブログは参考になります。
    ところで、私は、日経に代表されるマスメディアは中共の経済発展に関してあまりにも楽観視しすぎると思います。特に日経は中共の表面的な経済発展を煽っているように感じます。何が目的なのでしょうか?真実は、中共の経済発展は農民への搾取および環境・資源問題の無視の上に成り立っていると考えます。農民の犠牲なしには現在の発展はないと思います。環境問題と言えば、本日付け(7月19日)の産経新聞に中共で環境汚染に起因したであろう奇形児が多発しているとのレポートがあり、環境問題の深刻さを再認識しました。中共からの輸入食品は極力避けたいと考えます。さらに重要なことは資源(特に水資源)は有限であり、無限の発展はありえないと思います。中共が資源を買いあさっている姿は見苦しいですし、水資源は買う事ができません。また中共人民『農民を含め』が全員中流生活を送るようにになると、環境負荷で地球は滅びます。限界を知るべきです。物質以外の満足度が得られるような新たな価値観を創造すべき時ではないでしょうか?

  3. 夕張市議 くまがい桂子 さんが ブログ
    でつくる会の教科書の採択活動の妨害をやっています。
    典型的な左巻きの自虐史観者の彼女ですが
    どうも やりすぎのような気もします。
    http://kumakei.exblog.jp/

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