ポスト小泉について(四)

 いわゆる造反議員といわれ、郵政民営化法案に反対して党を追われ、離党勧告まで出された無所属議員の大部分が、特別国会で続々と法案に賛成票を投じ、「転向」してしまった。無所属で反対票を投じたのは平沼赳夫氏ひとりであった。

 『読売ウィークリー』(2005.11.13)で平沼氏が興味深いことを言っている。

 「ちょっと残念でした。3、4人は反対すると思っていたのですが。大方の人が『民意に従って』ということを言い訳にして白票(賛成票)に転じていました。でも、民意は100万票も反対派が勝っているんです。国会議員は独立した存在で、その善し悪しは言いたくありませんがね」

 私が宮崎の都城市にまで応援演説に出向いた古川議員も「転向」してしまった側に入る。私に直接票を伸ばすなにほどの力もないが、私の依頼でかなりの数の運動家が加わって、支援組織は強化されたはずである。けれども古川氏からは当選後も私に何の挨拶もない。「転向」が気羞しいのかもしれない。

 郵政民営化法案に反対して彼に投票した有権者を彼は裏切った結果になっている。同じような無所属議員が他に何人もいる。平沼さんは彼らはそれぞれ「独立した存在だから善し悪しを言いたくない」と語って、寛大である。けれども裏切られた思いをした有権者はそのことを次の選挙で決して忘れないだろう。

 それはともかく、平沼氏は立派だった。称賛に値する身の処し方をした唯一の方で、敬服に値する。たゞ不足をいえば、なぜ解散の直後に真正保守派のメンバー、城内実、衛藤晟一、古屋圭司、森岡正宏の諸氏を糾合し、新人も入れて、15人くらいの党を結成しなかったのか。そうすればギリギリまで当選圏に近づいていた城内氏、衛藤氏らは比例で当選しただろう。

 しかし、先述の通り、小泉首相の今後の自民党に対する対応の仕方いかんで、政局は大きく動く可能がある。革命家気取りの彼の傲慢と暴政がさらに加熱し、ある限界点に達することをむしろ期待している。そのときこそ平沼氏の出番である。また裏切られて煮え湯を呑まされた安倍晋三氏が起ち上がる可能性もある。

 小泉氏はどうでもいい。真の敵は自民党内の左翼がかったリベラル勢力である。これを一掃するには党のある自壊現象が必要である。小泉首相は起爆剤になり得る。

 平沼氏は次のように語っている。
 「いまの自民党は、真の自民党ではない気がします。本当の自民党、本当の保守というものを打ち立てることが必要になってくる。そのときには、民主党の一部も巻き込んで、真の保守を打ち立てる局面があるのではないかと考えています。」(前掲誌)

 まったくその通りである。私は大いに期待している。民主党の一部が一日も早く殻を破って保守派と大同団結する日の来るのを祈っている。

 終りに当ってもう一度、小泉郵政選挙の実像を読者に思い出してもらうために、コラムニスト清野徹氏の「小泉劇場に乗っ取られたテレビの自殺」(『週刊文春』2005年10月13日)の中に印象的な名言があったので、その幾つかを書き抜いて記念とすることにしよう。

「ナチス宣伝相のゲッペルスよりも小泉のメディア戦略は巧みだった。」
「ネタを提供してくれる彼をテレビは追いかけた。要は、小泉はホリエモンと二重写しなのである。」
「本来、国民は関心がなかったはずの郵政民営化がぐっと争点に浮上したところに、メディアの役割はあったと思う。」
「郵政民営化の中身が具体的によくわからない、という声をよく聞いた。にもかかわらず、それに丁寧に答えるような番組はなかった。」
「『改革の流れを止めたら日本は終る』と叫んでいた。その言葉に根拠がなくとも、こういうレトリックに若者は動く。『本当にそうなのか?』と自分で考える力がないからだ。」
「かつてナチスが『ハイル、ハイル』と大衆を煽動したように、小泉は『改革、改革』と叫んだ。」

尚、ハイルとはドイツ語で「幸福を与える」とか「救済する」という意味である。
 

「ポスト小泉について(四)」への6件のフィードバック

  1. ピンバック: 玄倉川の岸辺
  2. ピンバック: なめ猫♪
  3. いや全く先生の考えることには全面的に同意します。自民党の方でも、彼を追い詰め過ぎて逆に英雄視されることを警戒しているフシがある以上、いざことあらば起ってくれるのは、福田某ではなく、彼しかいないでしょう。新党・・・ということは私は想定外でした。慧眼、敬服するばかりです。私もまだまだ若輩の身ですが、なんとかもう少し色々なことが見えるよう、努力したいと思います。それでは

  4. ピンバック: すーさん’s アイ

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