1888年頃、油彩・キャンパス、46*55センチ、世田谷美術館蔵
「世田谷美術館開館20周年記念、ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」展は、12月10日(日)まで、東京・世田谷の世田谷美術館で開催中。休館日は毎週月曜日。お問い合わせはハローダイヤル=03-5777-8600へ。
「サン=ニコラ河岸から見たサン=ルイ島」
孤独な人影 ここにも
一瞬パッと見たとき童話の挿絵、子供が一番最初に描いたお父さんの顔、肖像はたいてい正面を向いていて、遠い家も近い家も同じ大きさで、色がきれいな塗り絵の世界、動きがピタッと静止した瞬間の絵、それでいて楽しくて悲しい不思議な物語が絵の奥に伏せられているような詩的世界――それがアンリ・ルソーの印象である。
遠近法を欠いて基本的に二次元で描かれている。タヒチを描いたゴーガンの画法や装飾化したクリムトの世界も二次元。北斎も火や水をそこだけわざと装飾化している例がある。でも彼らはみな遠近法を承知で壊したのである。ルソーは遠近法を知らなかったのか学ぼうとして学べなかったのかそこが微妙に分らない。
この絵はパリを描いた風景画だが、彼の風景画には必ず孤独な人影がある。この絵にもある。あたかも近代絵画の流れから無縁な位置にいたルソーの孤独が写されているようにも思える。(西尾幹二・ドイツ文学者)
東京新聞11月2日掲載
お 知 ら せ 11月11日(土)に公開講演をいたします。
「富永仲基の仏典批判とショーペンハウアー」
日本ショーペンハウアー協会第19回全国大会
場所:九州産業大学(1号館2階S201大教室)
福岡市東区松香台2-3-1
問い合わせ先:日本ショーペンハウアー協会事務局
(日本大学文理学部哲学研究室内)
020-4624-9462午前中は研究発表、午後私の公開講演、そしてシンポジウムがある。
13:40~14:40 公開講演
14:50~17:15 シンポジウムショーペンハウアーと日本の思想公開講演は無料シンポジウムに私は参加しません
最近の絵画の一つの流れとして物語性というテーマがあるようですね。この絵もそういう雰囲気を持っているように感じられます。
気になるエッセイ⇒遠近法の欺瞞
http://blog.kaisetsu.org/?eid=477363
(抜粋)
◆西尾幹二先生の鋭い視線に眼が醒まされた。確かに、遠近法は、騙しのテクニックであり、また、本当に三次元が存在するのかも怪しいのだ。人間の眼は二つであり、三つでは無い。
ルソーが遠近法についてどう考えていたかは、たいていの美術史の本に何も書かかれていないようですが、ルソーはあのブグローのつるつるした質感を評価していて、その質感を意識的に目指していたそうです。(HWジャンソン)そう言われてみるとこの質感もなかなか素敵です。