日本人はアメリカを許していない』(その二)

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西尾幹二『日本人はアメリカを許していない』(株)ワック刊
解説 高山正之  ¥933

同書の目次は下記の通りです。

目 次

新版まえがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

沈黙する歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
近代戦争史における「日本の孤独」・・・・・・・53
限定戦争と全体戦争・・・・・・・・・・・・・・・・・・85
不服従の底流・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124
日米を超越した歴史観・・・・・・・・・・・・・・・・163
『青い山脈』再考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・196
日本のルサンチマン・・・・・・・・・・・・・・・・・・247

解説 高山正之

 「『青い山脈』再考」と題された章から、文章の一部を抜き出し、ご参考までに紹介します。

 戦勝国にも軍国主義はあった。軍国主義は敗戦国の属性ではない。侵略戦争を是とする動機はイギリスにもアメリカにもあった。これまた敗戦国の歴史に特有のものではない。軍国主義や侵略戦争をこの地上から撲滅しようというわれわれの理想は大切である。私自身もこれを支持することに躊躇しない。ただ私はその理想を、今次大戦の勝敗から切り離せ、と言いたいのである。が、そのことが単に言いたいだけではない。軍国主義や侵略戦争がもし悪であるというのなら、戦勝国のその動機の悪を直視しなかったら、地上から悪を撲滅するという理想も片手落ちに終わり、最終的には実現すまい。敗戦国の悪にだけこだわっていては、戦勝国の悪を見逃すことになるのではないか。いかなる理想を口先で言おうと、いまの日本に茫々と漂っている敗北主義は、結局理想とは無関係なのである。こうした点に関して言えば、戦勝国も敗戦国もいまや完全に対等だということが分かっていないからである。(中略)

 第二次大戦はファシズムに対する民主主義の勝利であった、という定義をれ自体を考え直さなくてはならない時代に入っている。枢軸国に対する連合国の料理ではあったが、連合国のなかには明らかに民主主義国とはいえないソ連と、ファシスト党といってもいい蒋介石国民党政権――クリストファー・ソーンはそう定義している――が入っていた。日本が枢軸側を選んだとき、アメリカがどう思ったかは別として、日本ではそれがただちに日米戦争につながるものとは考えていなかった。三国同盟はソ連を加えて四国同盟にし、アメリカの参戦をこれで封じることが可能と考え、その政策に賭けたのである。同盟には蒋介石をも引きこむ説さえあった。日本は中国問題の「解決」を急いでいた。よもやドイツがソ連を侵攻するとは夢にも考えていなかった。

 日本は昨日の友は今日の敵という伝統的に老練狡猾な欧州外交ゲームにうかつに手を出し、引き返せなくなるや、いざ時来たれりと「オレンジ計画」を擁して待ち構えていたアメリカの軍国主義(傍点)の餌食となった。私はそう考えている。

 歴史は善悪の彼岸にある。

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