「株式日記と経済展望」からの書評(三)

 現在西尾幹二先生自身の筆による「西尾幹二のインターネット日録」は休載中ですが、許可を得て、管理人(長谷川)が西尾先生関連のエントリーを挙げています。
 
 今回は、ブログ「株式日記と経済展望」から、西尾先生の本の書評を、許可を得て転載します。最初は「江戸のダイナミズム」についての書評ですが、本の引用が長いので三回に分けて、転載します。(一)からお読み下さい。

(私のコメント) 注:私とは株式日記と経済展望の著者2005tora氏のことです。

日本の教育は憶える事にばかり重点が置かれて考える事に対する教育があまり行なわれていない。もちろん低学年においては憶えなければならないことに重点が置かれますが、高校大学においてもその傾向は変わらない。歴史教育も何年に何があったという事ばかりであり、そこからの価値観や意味づけなどは教育の場では避けている。

もっとも歴史教育は、入学試験からも排除されているから高校のカリキュラムからも排除されて、世界史などは学ばないまま卒業してしまう学生もいる。しかし毎日の政治や経済を見る上では世界史などが分からないと現代の政治や経済も理解する事ができなくなる。日本の教育は一番大切な科目を排除して教育しているのだ。

西尾幹二氏の「江戸のダイナミズム」という本は、江戸時代に対する歴史的解釈において、西洋よりも先に近代の芽が出てきた事を指摘している。西洋に近代の芽が出てきたのは、宗教戦争の後からであり、それまでは政治と宗教の区分けが出来ていなかった。

西洋における16世紀から17世紀におけるカトリックとプロテスタントの宗教戦争は、政治の世界に宗教が持ち込まれると凄惨な結果をもたらすことになり、政治と宗教は明確に区分けされるようになった。しかし日本では信長や秀吉や家康が宗教勢力と一線を画して政治を行なうようになったのであり、近代的日本が中世的ヨーロッパを排除したのがキリシタン禁令だ。

そのような意味で言えばアメリカははたして近代国家といえるのだろうか? アメリカはヨーロッパと違って宗教戦争を経験していない。だから今頃になっても第九次十字軍遠征軍をイラクやアフガニスタンに送っている。その目的はイスラエルの支援であり、ユダヤ・キリスト教の聖地エルサレムの恒久的な確保がその目的だ。

アメリカがキリスト教原理主義の国家であることは、福音派の信者の数からも明らかなことです。中には聖書を絶対視するファンダメンタリストに至っては進化論を否定して神が7日間で世界を作ったと信じて、ハルマゲドンの戦いが近いうちに起こってキリストの降臨を信じている人がブッシュ大統領の有力な支援団体になっている。

日本やヨーロッパの人から見れば、このようなアメリカはバカバカしく思える。しかし非キリスト教徒に対する無慈悲な扱いが時々出るのであり、日本に原爆を投下できたのも日本がキリスト教国家ではなかったからだ。ハルマゲドンの戦いではキリスト教徒だけが生き残ると書いてあるそうだから、非キリスト教徒は死んでもかまわないとも解釈できる。

近代人である日本人は、信仰の領域と自然科学の領域を一緒くたにすることはありませんが、アメリカのキリスト教の一派は聖書の絶対性を信じている。そして旧約聖書の中の預言された世界を実現させようとしている。そのようなアメリカ人を近代人であると見ることが間違ってる。

日本には7世紀に仏教が入ってきて、その後から儒教や朱子学などが次々入ってきましたが、神道をベースに仏教や儒教や朱子学などが地層のように積み重なっている。秀吉や家康がキリスト教を禁令にしたのも、キリスト教の教義に疑念を抱くだけの信仰の基盤がすでにあり、キリスト教の背後に隠された侵略的な意図に気がついたからだ。

家康は宗教勢力を東西に分裂させることで宗教が政治に口出しをすることを排除することが出来た。このような結果が葬式仏教といわれるほどに骨抜きにされてしまったのですが、明治になって基盤にあった神道が国家神道となりました。日本人は基本的に仏教も信じていなければキリスト教も受け付けていない。

しかし神道には教祖も経典も無い古代宗教であり多神教だ。アメリカ人にはこのような日本人が野蛮人に思えたことだろう。しかし実際の日本は戦国末期には宗教と政治とは分離された近代国家であり西洋よりもそれは早かったのだ。日本の歴史教育ではそのようなことは教えられず、鎖国によって近代化に遅れた日本を教えている。

先日はアメリカの高官が原爆の投下が100万人の日本人を救ったと述べていましたが、やはり原爆を投下したことに対する後ろめたさがあるのだろう。しかし投下を決断したルーズベルト大統領は選民思想から非キリスト教徒である日本人を抹殺しようとしたのだ。

このようなアメリカ人の精神的な発作はキリスト教の選民思想が原因であり、ブッシュは”神の声”を聞いてイラクに侵攻した。宗教戦争を経験していないアメリカ人だからこそこのような”神の声”を信じてしまうのでしょう。

文・株式日記と経済展望:2005tora氏

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です