九段下会議の考え方 (三)

*****「国家解体阻止宣言」の狙い*****

西尾: この「国家解体阻止宣言」と銘打った提言は、ここに署名している6人以外に、9人の新聞や雑誌等の有名マスコミのジャーナリストが最初から参画し、7回に及ぶ討論を経て作られました。その動機は、マニフェストの最後にも書いてあるとおり、現状打破への激しい欲求であり、またマスコミの現実の中で、何を言っても一つの意見とみなされて埋没してしまい、前へ進まないという苛立ちです。そうした苛立ちが、私たちにもあり、また世の中にもあると判断し、志を同じくする限られた人で深い討議をして、また志を同じくするジャーナリストと討議を重ねて、今までとはがらりと変った結果を引き起したいと願って作ったわけであります。

 今までは物書きが、自分が勉強した結果か、せいぜい仲間うちの討議で出た知見を分析してオピニオン誌に発表し、一方通行で終わっていたわけですが、この提言はそうではないことを強調したい。つまり、このペーパーは私たちの文章ではなくて、読者の皆さんに勇気を喚起し、知恵を絞っていただくためのきっかけに過ぎず、誘発の起爆剤にしたいということです。

 それ故、完璧なものを書いているわけでもなければ、分析が現実に十全にあいわたり全面的に納得いく形で論じられているものでもない。おそらく、読めば、不足感を持つ人もいるでしょう。

 ただ、今回の提言は、十全ではないものの、ある一つの覚悟をもって出したものであり、共感した方は自らが研究会に出てきて、発展的な問題提起や、こういう社会運動に展開していくべきではないかというような声を届けていただきたいと思っているのです。

 とりわけ専門的な職業をもちながら同じ志を持っている人たちには、専門職であるがゆえに持っている知見や、われわれ物書きには見えていない現実の場のめぐり方や内部事情、あるいはポイントとなる人物などを紹介していただきたいのです。
 
 むろん、この提言は非常に重要な提起もしています。例えば、いまほど国家の自由な意志決定が必要とされているにもかかわらず、それがほとんど議論されず、逆に子供の世界を中心とする教育の現場において自由があり過ぎている状況の中で、さらに子供に自由を与えよという倒錯した議論が行われているという分析です。つまり、同じ自由という言葉が、国家では全く叫ばれず、個人には必要以上に叫ばれるという矛盾です。符合が内と外で正反対になっているという一種の逆説的で悲喜劇的な状況を指摘しています。これなどは、誰かの独創ではなくて、15人の議論から出てきた貴重な意見です。

伊藤: つまり、この日本をどうしたらいいのかということについて、単なるいいっ放しではない、これから更に深めていくべき政策提言をしたということですね。

西尾: ええ。具体的に希望する例を挙げますと、この緊急政策提言の一番最初の国家基本政策の5番目に、「政府審議会から左翼リベラル勢力を一掃せよ」という項目があります。そのためにも、政府審議会の内幕を知り、その衝についている官僚の参画を望みたい。

 また、教育政策の最後の項目に、「文部科学省の『日教組化』を阻止せよ」というのがある。要するに教科書検定で、文部科学省はなぜあんなひどい左翼検定を許しているのか、ということです。役人達の日教組や日教組的な思考への数限りない屈服が見られ、それがむしろ混乱を増している。加入率が激減しているにもかかわらず、未だに日教組が勢いをもっているのは、官僚の中に国民の敵、つまり日教組の味方がいるからです。こうした問題についても、文科省の内部や、彼らに近い人たちからのいわば国のために「内部告発」を求めたいのです。むろん、名前を隠したいというのであれば、それは確実に守ります。

 今二つの例をあげましたけれども、要は、このままで日本はいいのかということであり、そのために私たちの手の及ばない部分に協力を願いたいと呼びかけたのがこのペーパーの目的です。

 ちなみに、九段下会議は日本政策研究センターの事務所を借りて討議を重ね、また同センター所長の伊藤さんも参画されました。当然、九段下会議と同センターは精神や目的を共にしているのですが、組織やこれから展開していく活動の仕方は、自ずと異なります。もちろん、同センターの今後の様々な活動に、このペーパーが貢献することを私は期待していますが、しかし同時に、同センターのお力を借りつつも、九段下会議はまた同センターとは別個の活動であるということを理解していただければと思います。

伊藤: 今、マニフェストで論じようとしたことは一体何なのかということをお話いただけたかと思います。西尾先生は最初に、今の日本の現状に対する苛立ち、歯がゆい思いというところから出発したとおっしゃられたわけですが、八木さんはいかがですか。

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