上田三四二『この世 この生 西行・良寛・明恵・道元』(昭和59年9月新潮社)の文庫化に伴い、解説を頼まれた。解説を書いたのは上田三四二が昭和64(1989)年に病歿して8年たった平成8年のことである。
上田は何度もガンの発病を経て18年の歳月を病気とともに生きた。私は生前何度かお目にかかっているし、文通その他交流もあった。
解説を依頼して来たのは新潮文庫編集部である。通例の解説よりも長くなった。私ものめりこむような思いで通読して、書いた。
私は上田の私小説が好きで、丁寧に読んでいた。『この世 この生 西行・良寛・明恵・道元』は『新潮』に連載され、小説とは違った宗教評論なので、新鮮な思いで愛読したものだった。
周知の通り私もガン患者だった。私が舌ガンにかゝりラジウム針刺入手術を受けたのは昭和58年である。それよりも前に私は上田の私小説を愛読し、評価していたから、私の病気と直接のつながりはない。
私の体験は『人生の価値について』(新潮選書、ワック文庫)の中でごく小さく書きこまれている。
つづく