新刊の『真贋の洞察』はよく売れているらしいが、まだ増刷の声はかからない。『GHQ焚書図書開封』と『皇太子さまへの御忠言』とはそれぞれ第二刷になった。前者に対しては書評がかなり寄せられているので、いつかご紹介しながら、考えを述べたい。今回は『皇太子さまへのご忠言』のその後(四)でご紹介した、つき指の読書日記から『真贋の洞察』についての反響をお知らせする。知らない方の読書日記から掲載させていただくのは面映いが、熱っぽい熟読の時間をもってくださる読者の存在はやはりありがたい。篤く御礼を申し上げる。
つき指の読書日記 より
2008/10/16
本の真贋 [ 読書 ]真贋の洞察楽天ブックス
またもや恐るべき本に出会ってしまった。
家人は読書中のぼくの集中力の凄さに驚いている。近寄りがたいと怖れる。実はそんなことはない。本にその力が備わっていないと、そうはならない。
オピニオン誌の類はまったく読まない。ただ、毎月、主要誌の目次だけは確かめている。ひとつだけ、のがしていた雑誌があった。「月刊WiLL」(編集長 花田紀凱)である。今月からはちがう。
だからというのもおかしいが、頭の中に必読者リストがあり、再構成され論文集になると、買い求めるのを常としている。即日、注文するのは西尾幹二だけである。氏の本は初期の文芸評論、手に入れようがないので、それと翻訳本、それ以外は過去に遡って読んでいる。
いやはやぼくの思考回路の薄っぺらさが、贋物ぶりが、いやというほど思い知らされた。対米関係の理解も、軽はずみであった。ここまで現下の経済を、国際政治、国家戦略まで俯瞰し、鋭すぎるほど論じていることを知らなかった。それがその雑誌に掲載されていた。
内田樹は師を相手に関係なく決めている。青年期のように無謀さを恥じなければ、午前、犬の散歩の折にでも同伴を許してもらい、迷惑承知で、弟子入りを願いたいくらいである。東京にいるうちに。
最新刊、『真贋の洞察 保守・思想・情報・経済・政治』(文藝春秋)である。近頃、保守の論調があまりにも類似して、読む前から結論がわかり、いささか食傷気味であった。はっとさせられるような真新しい切り口に、だんだん出会えなくなった。保守派の主張の場が増えたことも大きい。だから、だれかれ構わず読むということはしない。見分ける眼力を心がけてはいる。が、いうほど簡単ではない。それは自分をも評価することになる。
昔を知る先輩からは、保守化に拍車がかかるぼくに距離をおく人も多い。批判はするが、朝日新聞や岩波の本にも目をとおす。若い頃に染みついたものを抜き取る作業にもなる。学生の頃は進歩的文化人の本ばかり読んでいたし、主体性や個性という言葉ほど好きなものはなかった。
亡父と同年齢の福田恆存も数多く読んでいる。氏との指向性がちがうのも理解できる。
ただ、軍事的な知識の重要性と大陸中国への認識部分が重なっていたことだけは安堵した。
こういう凄さのある本はめったにない。是非、一読してもらいたい。